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変化する社会において、生き抜ける力を子どもたちへ

レポート

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こんにちは。
NPOカタリバ代表理事の今村久美です。

文部科学省の中央教育審議会は8月5日、2020年度から小学校を皮切りに順次実施される『学習指導要領』の基本的な方針を発表しました。新学習指導要領案は、さらに議論を深め、2016年度中の答申を目指すことになります。

私も僭越ながら、この会議の委員として参加させていただき、様々な意見を述べる機会を得ましたが、それ以上にとても多くのことを学ばせていただきました。

そもそも、「中央教育審議会って何?」「学習指導要領ってどんなもの?」「答申って何をすること?」と思われる方も多いのではないかと思うので、今回から数回に分けて解説させていただきつつ、審議会ではどのような議論が行われ、何が決まったかについて、まとめてみたいと思います。

◼︎「中央教育審議会」とは?

中央省庁には、役所ごとに設置する様々な審議会があり、有識者の方々が知恵を出しあって取りまとめられた意見を、大臣に対して提案するのですが、
文部科学大臣が設置する審議会が「中央教育審議会」です。

◼︎「学習指導要領を答申する」とは?

「学習指導要領」とは、幼稚園から高校までのそれぞれの学年で、どんな内容を、どのくらいの時間をかけて学習するかなどを示したものです。
今回は、文部科学大臣から「次の学習指導要領の改定に向けて意見をとりまとめてください」とのオファーを受け、会議が開催されることになりました。そこで取りまとめられた意見を提出することを「答申」と呼びます。

◼︎めまぐるしく変化する課題や社会の要請に合わせて、おおよそ10年に一度見直し

「学習指導要領」が変われば、教科書もそれにそった新しい内容に変わります。
学習指導要領は先生方にとって、時間割を組む際のガイドラインとなりますし、子どもたちに対する指導の指針となります。時代の変化のスピードがとても早い現代において、変わりゆく子どもたちの課題や社会の要請に応えるために、これまでほぼ10年に一度のサイクルで見直されてきました。

◼︎今回の改訂の中で注目すべきポイント

今回の改訂で、私がとくに重要だと感じたのは次の2点でした。
①先生が「何を教えるか」ではなく、子どもたちが「何ができるように(わかるように)なるか」に主眼を置くという指導スタンスに切り替えること。
②グローバル化や18歳以上に選挙権年齢が引き下げられたことなどの社会の変化を受け、高校の科目を社会の動きと関連づけて学べるように構成し直すことにより、社会参画能力を育成すること。

高校の「必履修科目(全員が履修する科目)」について、とても多くの時間を使い、議論がなされました
中でも私が注目していたのは下記の4科目です。

・公民科目の中に新たに設けられた必履修科目「公共」。
・世界史と日本史を関連付けて、日本と世界を横断的相互的に捉える力を要請する「歴史総合」
・持続可能な社会づくりのために、地球規模の視点を持って地域課題を解決する力を育む「地理総合」
・実社会・実生活に生きる国語の能力の育成を目指した「国語総合」

◼︎議論を経て

近年、アクティブ・ラーニングという言葉が教育関係者の間でよく使われるようになりました。今回の改訂でわざわざ「アクティブ」という言葉を全面に出すのは、現行の「パッシブ(受動的)」な部分に大きくメスを入れたい思いの表れだと考えています。

批判を恐れずに言えば、大学受験を前提にする高校の多くは「パッシブ・ラーニング」なのが現状だと思います。
先生方の努力不足というよりは、現行の受験制度に合わせれば、そうせざるを得なかったという側面が一番の理由ではないでしょうか。

その結果、多くの生徒たちは「学校で学ぶ」ということを誰かにやらされているもの」という認識から脱することができず、「これを知りたい」「あれも学びたい」などというアクティブラーナーたる姿勢を持てずに過ごしています。

日常の教科科目の中で思考し、得られる知識やスキルを身につける学びの延長に思考力・実現する力が育ち、変化する社会を生き抜ける力が身につくことこそが本当の意味ですばらしいキャリア教育機会になりうるはずです。

生徒たちの生活時間の一日6時間〜8時間を占める教科科目の学習時間がキャリア教育的価値を持つにはどうしたらいいか。
自ら学ぶ意欲を向上させる学習はどうしたら実現できるのか。

すべての会議には参加できませんでしたが、これまで13回の会議で検討された今回の基本方針について、次回また続きを書きたいと思います。

※『新学習指導要領』の基本方針の発表を「答申した」と記載しておりましたので、修正いたしました。