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たくさん立ち止まってもいい。物事をしっかり考えながら、 自分の生き方を見つけるのが今のマイプロジェクト。[マイプロ高校生のいま]

vol.048Interview

地域や身の回りの課題など、高校生が自分の関心を軸にプロジェクトを立ち上げ、実行する経験を通じて学ぶ「マイプロジェクト」。高校生自身の主体性と、実践を両立しながら探究するプロジェクト型学習だ。マイプロジェクトに取り組む高校生が、少しずつ増えている。しかしその経験がどんな効果や影響があるのか、数字などでは簡単に語ることはできない。人の成長には様々な経験、出会いが複雑に影響し合うからだ。

それならば、一人ひとりの経験と“いま”から、マイプロジェクト経験がもたらすものは何なのかを考えてみたい。

マイプロ高校生だった、彼らへのインタビュー第二弾。

マイプロの原点は、自分の辛い過去。

高校1年生の時にマイプロジェクトを始めたはるかさん不登校の子どもたちが集まる居場所づくりと、不登校の子とそうでない子関わり合うイベントの開催を、3年半続けた不登校”をプロジェクトのテーマに選んだ理由は、自分自身が不登校だったいう原体験からだった。

中学の時に2年半くらい不登校でした。行っても別室登校という生活で。当時は、みんなと同じ学校生活を送れない自分のことが嫌だ、という気持ちばかりが膨らんでいました。

高校に入ってからはそれを無かったことにして新しい生活を過ごしていたんですが、少し学校に行くのが苦しくなる時もあって。ここでまた不登校になってしまったら、自分の居場所はどうなるんだろう?と。それで、封印していた当時のことを思い返してみたのがマイプロの始まりです。

自分の辛い過去と向き合うのは、苦しさもあったはずだしかしはるかさんは自分の経験を同じ境遇の人たちの力になりたいという想いに転換させていく。

テーマがテーマだけに、人を集めるためにSNSを使いたくなかったんです。なので、不登校保護者の会などに出向いて信頼関係をつくったり、不登校系の講演会があった時にプロジェクトのチラシを置いてもらうように頼みに行ったり、地道な方法で活動を知ってもらうようにしていきました。たくさん人を集めたいとは思っていませんでしたが、届いて欲しい子に届けばいいなと思って。

プロジェクトメンバーは5人で、学生も社会人もいました。みんな初対面だったので、お互いのこともあまり知らないし、どこまで踏み込んでいいのか分からない。タスクの分担1つとっても遠慮してしまって。私のプロジェクトに対する想いの強さと、メンバーの想いのギャップにも苦労しました。1日かけて正直にじっくり話し合う機会をつくって、これは仕事じゃないし、それぞれのスタンスやリズムでやっていけるのがマイプロだよねと合意を取れて、改善していきました。

そしてはるかさんは、MYPROJECT AWARD2014に出場、優勝したそれが逆にコンプレックスになった。

AWARDに出たのはよかったんですが、私たちの活動って集まって話すだけ。革新的な内容は何一つないっていうのが、コンプレックスでした。みんなすごいことをしているのに、どうしてこんなに普通のことをやった私が優勝なんだろうと…

2015年3月、全国高校生MY PROJECT AWARD2014で優勝した。

しかし、ある人の一言で見方・考え方に変化が訪れる。

審査員だったETICの代表の宮城さんに“ある人が特別なことができる。それがマイプロってことじゃないんだよ”と言われてハッとしました。誰か1人にしかできない特別なことをやるよりも、誰にでもできることをすると“自分にもできるかもしれない”って動いてくれる人が増えるかもしれない。マイプロってそういうことなのかなって、ストンと腑に落ちました。

結局自分の周りの人たちしか変えられない。自分の周りで“私はこれがしたい”と思ってくれた人がマイプロを始めてくれたら、地味かもしれないけど、自分の周りを変えていこうという意識のある人たちが増えていくんじゃないかなと思います。

特別でなくてもいい。自分なりにできることを始めればそれが誰かに伝わって、また別の誰かのマイプロジェクトが始まる少しずつ増えて、いつかマイプロジェクトに溢れた社会になる自分のアクションはその1歩なんだと思うようになった。

マイプロって、やっている方からすると、結構キツいです。感謝される喜びや自分たちでつくりあげるやりがいがある分、うまくいかない時やメンバー間でのトラブルもある。

でも、人ってみんな“こうなったらいいな”というものを持っている。マイプロは、誰かが何かを変えたいと思って行動したことが、周りの人にも伝わって、そこからまた新しいマイプロが生まれて、どんどん波及していく力がある。

私も活動していたら、全然違う県の知らない子から、“私も〇〇という活動をしたいんですが、何から始めましたか?”と何人からか問い合わせをもらいました。自分を変えていくことで、社会もじわじわ変わっていく。それがマイプロだなと思います。

立ち止まってもいい。自分と向き合いながら、前を向いて生きていく。

そんな“マイプロ高校生のいま”はるかさんは、大学で国際関係の学科に所属している関心は教育関連にあって、フリースクールやオルタナティブスクールなど教育とは違った学び方を勉強しているという。

夏休みに韓国のフリースクールに視察に行ったりもしました。“多様な学び”がキーワードになっています。色々な機会を探しては、飛び込んで勉強しているところです。昔から教育に興味はあったけど、学校教育に不満を持っていたわけで、考えようとしませんでした。でもどうしてこうなったのだろう?先生の立場から考えるとどうなんだろう?と視点を変えて考え始めたら、面白くなってきた。大学のどこかで休学して、教育という分野にどっぷり浸かってみるのもいいなと思っています。

高校時代にマイプロに取り組んだことはいまの自分にどんな影響があったのだろうか。

マイプロをやって、とりあえずやってみる精神がつきました。動き出さないと何も始まらないってことがよく分かったんです。失敗してもいいからやってみようという考え方と、勇気が身につきました。

あとは言葉にするのが難しいんですが・・・この先も、「マイプロ的な生き方」をしていくんだろうなって思っています。マイプロをする前はなんとなく生きてました。これはどうだろう?と疑問に思うことがあっても、まぁこんなもんかとやり過ごして。それが、「こうあったらいいな・こうしたいな」というのを、自分にもちゃんと形にできることが分かったので。

その分立ち止まることも増えました。悩んで、モヤモヤして、苦しいこともあります。でも、悩んでこそ人生だと思う。立ち止まることも大切で、立ち止まって考えるから、色々な選択肢が浮かぶんだと思う。これからもそうやって自分の心に耳を傾けながら、物事をじっくり考えていくと思います。

今も教育関連に興味があって勉強していますが、将来どんな仕事がしたいかというと、まだ答えがない。大学生活のうちにたくさん立ち止まって考えて、やりたいことを見つけることが、今の私のマイプロジェクトです。

 

どんな社会になれば、もっとマイプロに取り組む高校生が増えると思うかいう問いには、「寛容な社会。頑張れって応援してくれて、失敗しても一緒に考えてくれるような学校や社会だったらいいな。」と答えてくれた挑戦を応援してほしい」、この答えは、2回目だ

マイプロ経験が彼女にもたらしたものはきっと自分と向き合い未来を切り拓く勇気”だったマイプロに挑戦した経験は、高校生を変える

私たち大人が、高校生たちの挑戦を応援するために変えられることは何だろう。

文  = 青柳望美
取材 = 梶田悠馬
写真 = 山田将平

※2018年9月インタビュー当時

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人に言われたからじゃない。自分の意志でやりたいことに全力で取り組む。
「知る」ことで道が拓けた。マイプロがそのまま自分の仕事になった社会人1年目の19歳。

Writer

青柳 望美 パートナー

1983年生まれ。群馬県前橋市出身。大学時代は英語ができないバックパッカー。人材系企業数社で営業・営業企画・Webマーケティング・Webデザインを担当。非営利セクターで働いてみたいと考え2014年4月にカタリバに転職。全国高校生マイプロジェクトの全国展開・雲南市プロジェクト・アダチベースなどの立上げを担当。現在は新規プロジェクトの企画や団体のブランディングなどを担当。カタリバmagazine初代編集長、現在はパートナー。

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