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認定NPO法人カタリバ (認定特定非営利活動法人カタリバ)

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活動紹介 / Activity

GLOCAL

令和型先進校の事例をつくる

大槌高校魅力化プロジェクト

Concept

東日本大震災による地震・津波によって町民の1割を失った岩手県大槌町。人口流出も進むなか、一市町村一高校という小規模高校である大槌高校の教育活動をアップデートし令和型先進校にするために、カタリバの職員が教育専門官や魅力化推進(コーディネーター)として町の教育委員会に入っています。教員や地域の方々とともに、これからの大槌や東北を引っ張っていくリーダーが育つようなカリキュラムづくりに取り組んでいます。

活動概要

  • クライアント

  • 所在地

    岩手県上閉伊郡大槌町大槌第15地割71-1 大槌高等学校内

  • 活動期間

    2019年〜

  • 対象

    大槌高校に通学する高校生

  • 活動内容

    教育課程・個別最適授業の設計/地域探究カリキュラムの設計・授業運営/教育活動への地域資源の接続/コンソーシアムの運営/大槌高校の生徒募集・学校広報

活動の背景

震災後に生徒数が減少。選ばれる高校をめざした改革に着手

東日本大震災により被害を受けた岩手県大槌町。カタリバはこの地で、10年以上にわたり教育支援に携わってきました。2011年12月に、子どもたちが集える居場所として「大槌臨学舎」の運営をスタート。そして、2019年度からは、学校と地域が協働することで、生徒にとっても・保護者・地域にとっても魅力ある学びの場づくりを目指す取り組み、「大槌高校高校魅力化プロジェクト」に着手しています。

大槌高校は、震災前には100名以上いた新入生が、2019年度に42名まで減少し、存続が危ぶまれる状況でした。町内で唯一の高校である大槌高校は、町の担い手を輩出する「地域振興の核」です。そこで、カタリバはプロジェクトを通じて、地域探究カリキュラムの設計や全国からの入学者受け入れなどに取り組んでいます。その結果、2023年度の新入生が62名まで向上するなど、着実な成果が生まれ始めました。

また大槌高校は2022年度より文部科学省「普通科改革支援事業」に採択されており、生徒の多様な能力・適性、興味・関心などに応じた学びを実現するために、新学科設置の検討を進めています。

活動内容

大槌高校魅力化プロジェクトでは、高校魅力化のために様々な活動に取り組んでいます。

1. 地域探究カリキュラムの設計・授業運営

大槌高校では、地域探究カリキュラムとして「三陸みらい探究」を設定しています。三陸地域の未来を担うリーダーを育てることを目標に開講しているプロジェクト型学習(PBL)の授業で、子どもたち一人ひとりが自分のテーマを立て、大槌町や三陸地域の多様な大人と対話しながら、それぞれの課題意識に対してプロジェクトを計画・実践します。

カタリバは、1年間を通じたカリキュラムの全体設計・見直しや、毎週の授業プランの作成、教員とのミーティング、授業用の資料の作成、授業実施を担当しています。

2.コンソーシアムの運営

地域住民や行政・地元企業・小中学校などの多様な主体とともに魅力ある高校をつくるために、大槌高校では「コンソーシアム」と呼ばれる協働体制を立ち上げ、学校の未来について対話する場や、魅力化推進のための議論の場を開催しています。
カタリバはコンソーシアムの事務局として、議題づくり・資料作成・関係者との調整など運営全般を担っています。

3.教育課程や個別最適授業の設計

大槌高校は2022年度より文部科学省「普通科改革支援事業」に採択され、生徒の多様なニーズや興味関心に応える新学科の設置をめざしています。そのために、大槌高校での3年間で何をどのくらいの時間をかけて学ぶのかを示す「教育課程」の再検討を進めています。

また新たな教育課程の特徴の一つとなるのが、「個別最適授業」です。大槌高校には、大学進学をめざす生徒や中学校での履修内容の学び直しが必要な生徒など、多様な生徒が在籍しています。個別最適授業では、進度別クラスやICT教材の活用を通じて、生徒一人ひとりがいま必要な学習内容に取り組めることをめざしています。

教育課程や個別最適授業を設計するため、カタリバも検討メンバーの一員として教員とともに活動しています。

4.生徒募集・学校広報

生徒募集のための中学生向け説明会の実施や、学校ホームページや町内広報誌などを通じた町民向けの発信の役割も担っています。また大槌高校は全国から生徒を募集する「はま留学」にも取り組んでおり、県外での説明会実施や関連機関との調整なども担当しています。

活動の成果

魅力化によって入学者数・町内進学率が上昇

震災前に100名以上だった入学者数は2019年度に42名まで減少しましたが、2019年にスタートした魅力化プロジェクトで、独自性のあるカリキュラムの策定や広報活動、県外留学生受け入れに取り組んだ結果、入学者数が年々上昇しています。2021年度から受け入れがスタートした県外留学生は、2023年度時点で9名が在籍しています。

また近隣中学向けの説明会や広報誌など町内の方々に向けた発信にも力を入れており、大槌町内の中学生の進学率もプロジェクト開始時に比べて増加しています。

生徒の声「三陸みらい探究に取り組んだことによる成長・気づき」

■地域で様々な活動をすることで、自分は地域に役立てることができるのだなと気づきました。

■自分自身で考える力が身についたと感じました。

■以前の前の自分は、何事にもめんどくさい、やりたくないと思ってしまいがちでしたが、活動をしていくうちに自分のテーマや問いを持って取り組むことが楽しいと思えるようになりました。

■活動を通して町内のいろいろなところに足を運ぶうちに、自分自身も知らない大槌町の魅力に気づくことができました。

教員の声「魅力化で変わったことは何だと思いますか?」

■探究活動や研究会活動等を通して、自分の興味のあることについて深く学べる環境ができたことが魅力だと感じています。1人ひとりに合った学びができることによって、進路への意欲も高まってきました。また、学力以外のものさしで受験に挑戦できる生徒が増えてきました。

■コーディネーターや地域の方とのかかわりを通して、教員に求められる役割や生徒とのかかわり方について、(教員自身が)考える機会が生まれています。

■魅力化推進員(コーディネーター)が入ってくれたおかげで、生徒が他県の高校生や外部の企業、大学の先生と交流する機会が増えました。それらの活動を通して、生徒は多くの考え方や価値観、専門的な知識に触れることができています。そうした交流がきっかけとなって、よりいっそう探究活動に力を入れて取り組むようになった生徒もいます。

連携

大槌町との連携

東日本大震災直後から、被災した子どもたちの心のケアを行う居場所と学びの場「コラボ・スクール大槌臨学舎」を教育委員会・学校・保護者・地域と協働し、運営してきました。2017年度からはカタリバ職員1名が「教育専門官」として教育委員会の立場で町の教育政策づくりに携わっています。また2019年からは、教育政策推進のため職員複数名が「魅力化推進員(コーディネーター)」として大槌町教育員会から大槌高校に派遣されています。

大槌臨学舎との連携

東日本大震災で被災した子どもたちの心のケアのために開設された「コラボ・スクール大槌臨学舎」は、2020年より活動の拠点を大槌高校内に移してカタリバが運営を続けています。臨学舎は大槌町内の中学生のほか大槌高校の生徒も利用することができ、カタリバの職員が生徒の自習や探究活動をサポートしています。

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