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遺贈・相続コラム

相続財産を寄付する方法は?メリットや注意点をまとめました

相続や贈与にかかるお金や税金

大切な人から受け継いだ財産を、社会の役に立てたい──そんな想いを抱く方は年々増えています。
なかでも注目されているのが、相続した財産を公益団体などに寄付する「相続寄付」です。

この方法は社会貢献につながるだけでなく、相続税の非課税や寄附金控除といった節税効果も期待できるため、多くの方にとって現実的かつ意義のある選択肢になりつつあります。

とはいえ、「具体的にどんな手続きが必要なのか」「どんな点に気をつければいいのか」といった疑問もあるでしょう。
この記事では、相続寄付の基本から手順、メリット・デメリット、寄付先選びのポイントまで、わかりやすく解説します。

■目次
1. 相続寄付とは
2. 対象となる財産の種類
現金・預貯金
不動産(家や土地など)
有価証券(株式・債券・投資信託など)
美術品・骨董品などの動産
生命保険金(団体を受取人に指定した場合)
3. 相続寄付のメリット
寄付した財産は相続税が非課税に
寄附金控除を受けられる
寄付を通じて得られる精神的満足感
4. 相続寄付の手順
STEP1:寄付先の選定
STEP2:寄付先へ連絡
STEP3:寄付をして相続税の申告を行う
5. 相続財産を寄付するときの注意点
1. 相続税の申告には期限がある
2. 寄付できる財産は団体によって異なる
3. 遺言による寄付の場合は寄附金控除は受けられない
6. 相続財産の寄付先の選び方
1. 領収書の発行が早い
2. 活動内容や理念に共感できる団体を選ぶ
3. 寄付の使い道が明確
4. 活動実績が豊富
7. まとめ:相続寄付は、大切な想いを社会につなぐ方法

相続寄付とは

「相続寄付」とは、家族や親族が亡くなったあとに、自分が相続した財産の一部や全部を、社会貢献のために寄付することをいいます。たとえば、受け継いだ資産をNPO法人や学校法人・社会福祉法人などの公益団体に寄付することがこれにあたります。

最近では、「自分が受け継いだ財産を、困っている人や次の世代のために使ってほしい」または「社会貢献活動に関心の高かった故人の想いを継いで、寄付活動をしたい」という考える方が増えており、相続寄付が選ばれるケースが多くなっています。

また、「寄付した分は相続税の対象から外れる」という税制上のメリットもあるため、相続税の負担を軽くしたい方にも注目されている方法です。

対象となる財産の種類

相続寄付として寄付できる財産は、現金だけに限りません。法律上では、さまざまな種類の財産が寄付の対象とされています。ここでは、具体的にどのような財産が対象となるのかを紹介します。

なお、すべての団体がすべての財産を受け入れているわけではないため、寄付を検討している財産がある場合は、早めに希望する寄付先へ相談し、必要な手続きや受け入れ条件を確認しておくことが大切です。

現金・預貯金

もっともシンプルで一般的な寄付方法です。相続によって取得した預貯金を、そのまま団体へ寄付できます。手続きが比較的簡単で、ほとんどの団体が受け入れ可能です。

不動産(家や土地など)

土地や建物といった不動産も寄付可能です。ただし、管理や維持に費用がかかるため、受け入れを断る団体もあります。不動産を寄付したい場合は、事前に寄付先の受け入れ可否を確認しましょう。

有価証券(株式・債券・投資信託など)

上場株式や債券、投資信託なども、換金せずにそのまま寄付できます。証券会社を通じた手続きが必要な場合もあり、スケジュールに余裕を持って進めるのが理想です。

美術品・骨董品などの動産

絵画や工芸品などの価値ある動産も、団体によっては受け入れています。教育機関や文化施設などでは、展示・研究などの目的で活用されることもあります。

生命保険金(団体を受取人に指定した場合)

相続寄付とは少し異なりますが、生命保険の受取人をあらかじめ公益団体にしておくことで、死亡後に保険金が自動的に寄付されるしくみもあります。

相続寄付のメリット

寄付した財産は相続税が非課税に

相続で受け取った財産は、通常そのままだと「相続税」がかかります。

しかし、国や認定NPO法人などの団体に寄付すると、その分には相続税がかからなくなるという特別なルールがあります。つまり、寄付をすることで税金の負担を軽くすることができるのです。

※ただし、相続税の申告期限(相続があったことを知った日から10か月以内)を守って手続きを行う必要があります。

寄附金控除を受けられる

寄付をした人自身が確定申告をすると、所得税や住民税が一部戻ってくる(控除される)こともあります。
これは「寄附金控除」という制度で、一定の条件を満たす団体への寄付であれば適用されます。

たとえば、「年間の所得が◯円以上あったので、寄付した分の税金が一部返ってきた」といったケースがあるのです。

※遺言での寄付ではこの控除は使えません。相続人が取得した財産で寄付した場合に限られます。

寄付を通じて得られる精神的満足感

経済的なメリットだけでなく、「この財産が社会のために使われる」と思うことで、心が満たされるような達成感や安心感を得られる人も多いです。

「大切な人から受け継いだ財産を、困っている人のために活かしたい」「自分も誰かの役に立てたと思いたい」と感じる方にとって、相続寄付はとても意義深い選択肢です。

相続寄付の手順

STEP1:寄付先の選定

まずは、どの団体に寄付するかを決めましょう。国や地方自治体、NPO法人、学校法人など、相続寄付を受け付けている団体はいくつかあります。

選ぶときのポイントは以下のような点です:

・活動内容に共感できるか
・自分の想いや故人の遺志に合っているか
・寄付の使い道がわかりやすいか

また、寄付した財産が相続税の対象から外れるためには、「特定の条件を満たす団体」である必要があるので、寄付前に確認しましょう。

STEP2:寄付先へ連絡

寄付をしたい団体が決まったら、その団体に直接連絡をとりましょう。「どんな財産を」「どのような方法で」寄付できるのかを相談します。
たとえば、

・不動産や株など、現金以外の寄付が可能か?
・書類や手続きにどれくらい時間がかかるか?
・領収書はいつ発行してもらえるか?

といったことを事前に確認しておくと、あとで慌てずにすみます。

STEP3:寄付をして相続税の申告を行う

寄付が完了したら、相続税の申告を忘れずに行いましょう。

相続税の申告期限は、相続が発生したことを知った日から10か月以内です。期限を過ぎてしまうと、税金の優遇が受けられなくなる可能性もあるので、早めの準備が大切です。

また、申告の際には、寄付を証明する「領収書」などの書類が必要です。

相続財産を寄付するときの注意点

相続寄付には社会貢献や節税といったメリットがありますが、いくつか注意しなければならないポイントもあります。うっかりミスをしてしまうと、せっかくの寄付が税金の優遇対象にならないことも。事前に知っておきたい注意点を3つ紹介します。

1. 相続税の申告には期限がある

寄付によって相続税がかからなくなるためには、「相続税の申告期限」までに寄付を終えている必要があります。この期限は、相続があったことを知った日から「10か月以内」です。

「寄付はできたけど、申告が遅れて優遇が受けられなかった」というケースもあるので、早めにスケジュールを立てて動くのが安心です。

2. 寄付できる財産は団体によって異なる

現金ならほとんどの団体で受け付けてもらえますが、不動産や株式、絵画などの寄付は断られる場合もあります。

たとえば、土地を管理する余裕がなかったり、換金が難しい財産は受け取りを控える団体もあります。

「せっかく寄付しようと思ったのに受け取ってもらえなかった」ということがないように、事前に「どの財産なら寄付できるか」を確認することが大切です。

3. 遺言による寄付の場合は寄附金控除は受けられない

相続寄付には「相続税がかからない」というメリットがありますが、寄付した人の所得税が控除される「寄附金控除」は、遺言による寄付では使えません。

寄附金控除を受けたい場合は、相続人が相続後に自分の判断で寄付する必要があります。

相続財産の寄付先の選び方

1. 領収書の発行が早い

相続寄付をしたら、税金の申告のために“寄付を証明する書類(領収書)”が必要です。相続税の申告期限は相続があったことを知ってから10か月以内なので、それまでに領収書が発行されないと、税の優遇が受けられない可能性も。

寄付してから領収書が発行されるまでにかかる期間を事前に確認しておくと安心です。

2. 活動内容や理念に共感できる団体を選ぶ

せっかくの寄付だからこそ、「何のために使われるのか」「どんな社会を目指しているのか」に共感ができる団体を選ぶと、寄付の意味をより深く感じることができます。
たとえば、

・子どもの教育支援
・医療や福祉の支援
・災害復興や地域づくり など

ご自身や故人の価値観に合う団体を探してみてください。

3. 寄付の使い道が明確

「自分の寄付が何に使われたのか」がはっきりしていると、安心感と納得感があります。活動報告や使途報告をしっかり公開している団体は、信頼性が高いといえるでしょう。

団体のホームページなどで、「寄付金の使い道」や「活動報告書」をチェックしてみるのがおすすめです。

4. 活動実績が豊富

これまでの活動歴が長く、多くの人や企業から信頼されている団体は、寄付の使い道もしっかりしていることが多いです。メディアに取り上げられていたり、表彰歴がある団体も目安の一つになります。

まとめ:相続寄付は、大切な想いを社会につなぐ方法

相続財産を寄付するという選択は、受け継いだ想いを未来につなぐ社会貢献のかたちです。
相続寄付は、

・相続税の負担を軽くできる
・寄附金控除で所得税の控除が受けられる
・社会の役に立てたという満足感が得られる

といった、金銭的なメリットと精神的な豊かさの両方が得られます。

一方で、申告期限や書類の準備、寄付先の選び方には注意が必要です。
「よく分からないから…」と後回しにせず、まずは信頼できる寄付先や専門家に相談してみることから始めてみてはいかがでしょうか?

相続寄付は、亡き人の遺志や、自分自身の想いを社会に託す、大切な一歩。その一歩が、誰かの明日を支える力になります。

監修者

小林 暁(こばやし さとる) 司法書士・行政書士・承継寄付診断士
司法書士法人あかつき総合法務事務所 代表司法書士開業当初から相続の専門家として100件以上の相続手続きを支援。遺贈寄付の相談にも積極的に対応し、20件以上の寄付を通じた想いの承継をサポートしてきた。2008年 立教大学法学部法学科卒業
2011年 行政書士試験合格
2012年 宅地建物取引士試験合格
2016年 司法書士試験合格
2018年 都内司法書士事務所に就職
2019年 独立・開業