経済的事情を抱える家庭へオンラインでの伴走と学びの機会を届ける奨学プログラム
キッカケプログラム
Concept
大きな災害や感染病、経済の停滞…私たちが生きている時代は、常に予測不可能な変化にさらされています。新型コロナウイルスの感染拡大はオンライン環境の加速によって子どもたちの学びに大きな変化を与えました。
そんななか、その変化に取り残され、学びの機会を失った子どもたちの存在も明るみになりました。どんな環境や状況下においても、未来を生きる子どもたちにとって「機会」を得られることは、最重要テーマです。
キッカケプログラムでは、全国の経済的に困難を抱える家庭へオンラインによる伴走と学びのプログラムを提供。デジタルの力を最大限活かすことで、直接は支援が届きにくい家庭など、すべての子どもたちの学びに寄り添い、「機会」の格差を乗り越えることで子どもたちの自立を育み、貧困の連鎖を断ち切ることを目指しています。
Serviceサービス
活動概要
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所在地
東京都杉並区高円寺南3-66-3高円寺コモンズ(運営事務局)
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TEL
03-5327-5667 (平日10時-17時)
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WEBサイト
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活動期間
2020年〜
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対象
市区町村で就学援助/支援等を受けている小学3年生〜高校生の子どもがいる家庭
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活動内容
デジタルユースワーク(オンラインの居場所と体験機会の提供)/デジタルソーシャルワーク(オンラインの家庭・保護者支援)/評価研究の実施/奨学PC・Wi-Fiの貸与
活動の背景
家庭環境の差が、子どもたちの「機会」の格差になってしまわないために
厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査」のデータによると、子どもの貧困率(※)は13.5%。およそ7人に1人の子どもが貧困状態に陥っています。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休校の長期化は、学校と子どもたちをインターネットでつなぐオンライン学習を進める契機となりましたが、経済的事情を抱える家庭では、オンライン学習をするための環境すら整っていないケースも少なくありません。
カタリバでは、そのような状況下にいる子どもたちに学びの機会を届けるために、PCとWi-Fiを無償で貸出し、オンラインでの学習支援を行う「キッカケプログラム」を立ち上げました。
一方、機器を渡す「機会」の提供だけでは学びにうまく活用できない現状が明らかになりました。そこで、学びへの意欲を育くむことが重要課題と位置づけ、保護者・子どもとの定期面談を通して、子ども1人ひとりに寄り添い、学びへの挑戦を励まし伴走する「機会」の提供を行っています。
※日本における貧困線(等価可処分所得の中央値の50%)以下の所得で暮らしている17歳以下の子どもたちの割合を指します。 2018年の貧困線は 127 万円となっており、たとえば親子2人世帯(ひとり親世帯)の場合、月約15万円以下で暮らしている子どもたちを指しています。
子ども1人ひとりに担当メンターがつき、週1回の定期的なグループ面談で子ども1人ひとりに伴走をしています。
活動内容
上記のほか、必要な家庭には、パソコンとWi-Fiも無償貸与している。
1.デジタルユースワーク
週1回のオンライン面談を通した学びのチャレンジへ継続的に伴走するなかで、子ども1人ひとりの学びへの意欲を高め、自ら決めてやり抜く力を育むための支援を行います。
具体的な取り組み:
・パソコンやインターネットの基本的な使い方の研修
・担当メンター(支援員)による週1回の面談で子ども一人ひとりの学びへの意欲を引き出す
また、子どもたちが個別に学習を進めていくことのできるオンライン学習教材や、オンライン英会話プログラムなど、デジタル学習ツールを利用して一人ひとりに最適な学習環境を提供しています。
学習支援だけではなく、世界の人たちと交流できるプログラムや、ダンス、プログラミング、歴史クラブなどといった探究プログラムなども放課後に実施しています。著名人やその道のプロを呼んだ、特別レッスンなどもあり、教科科目の勉強が苦手な子も、自分の得意なことを見つけながら学びへの意欲を育んでいくことのできるプログラムを用意しています。
様々なオンライン学習・体験プログラムにどこからでも参加できる。
2.デジタルソーシャルワーク
キッカケプログラムに参加いただくご家庭の85%はひとり親世帯です。ペアレントメンターは、子育てに寄り添う役割として、保護者と月1回面談を行い、保護者の悩みに寄り添い、子どもの成長を一緒に考えたり、教育に役立つ情報をお届けしたりしています。
また、虐待不安や子どもによる家庭内暴力、子どもの特性による依存傾向など、特定の課題を抱えたご家庭には、オンラインで専門家と繋ぎ、専門家によるカウンセリングを提供することで、解決に向けた支援を行っています。
3.家庭に寄り添う伴走コミュニティの開発
全国から参加する325名の子ども1人ひとりに、大学生~社会人若手層の方がボランティアとして伴走しています。また保護者への伴走は、子育て経験のある40~50代の方を選考し、研修を受けた方が担う仕組みをつくっています。
全国各地から集う子どもメンターやペアレントメンターには、伴走を行っていくための、事前研修や勉強会などを実施。PCスキルの獲得やオンライン上でのコミュニケーション方法など、さまざまな困難を抱えた家庭へ、オンラインを通した伴走を行っていくためのノウハウを学びます。
また、これまでの伴走事例をもとにケース討議を実施するなど、子どもや保護者に日々寄り添い、励ましていくことのできる子どもメンター・ペアレントメンターの育成を目指しています。
子どもメンター(写真上)とペアレントメンター(写真下)はそれぞれ、カタリバの行う事前研修や勉強会を受講する。
4.継続的な評価研究と発信
キッカケプログラムでは研究者の方たちと一緒に経年調査を行い、エビデンスベースでの現場改善を重ねています。キッカケプログラムでの取り組みが、これからの子ども支援や貧困改善の一助となるよう、評価研究した内容についても発信していきます。
以下のような研究者の方たちと、研究を進めていきます。
・国際大グローバル・コミュニケーション・センター 准教授/ 豊福晋平 氏
・慶應義塾大学 教授/ 中室牧子 氏
・東京大学 教授/山口慎太郎氏
活動の成果
評価研究における数値データなどの結果は、活動と並行しつつ取りまとめている段階ではありますが、支援を受ける子どもや保護者へのアンケートからは、キッカケプログラムでのオンラインでの伴走と学びの機会を得たことで、「意欲的に学べている」ことや、「新しい世界を知ることができている」こと、「保護者にとっての相談先となっている」ことなどがわかっています。
子どもたちからの声
■カタリバで週に一回の面談をしてもらっています。いろいろな話しをしますが、とても楽しいです。学校の先生とは違う、家族とも友だちとも違う、素敵なつながりだと思います。こうして話すことで、自分の気持ちをしっかり考えたり、伝えたりできるようになって、コミュニケーション力をもっと高めたいです。
■僕は、カタリバのおかげで、パソコン操作や、テクニカルな動作、作業も少しずつ出来る様になりました。カタリバの仲間や、メンターの方々にもありがとうといつも思っています。くじけそうになった算数も教えて貰えたり、僕が、思っていることに同意して貰えたり、アドバイスや、誉められたりと。
最近は、マジメにパソコンを持ち歩いたりして勉強したりしています。時には、YouTubeも見たり、音楽を楽しんだりしています。世界が、広がりました。
保護者からの声
■家には娘が使えるPCもWi-Fiもありません。
高校進学に向けて自主的に自宅学習する時には教科書等を読むだけでは理解が出来ず、どうしても無料の勉強の動画を見る必要があります。
また、それでも分からないところがあるとカタリバオンラインの「宿題消化room」に入って質問でき、分からないところが理解出来てとても嬉しいと話しています。
■わが子は不登校です。カタリバに出会うまでは、保護者が抱えている悩み、こどもの進路などの相談が誰にもできませんでした。カタリバに出会えてからは、メンターの方に相談に乗っていただいたり、アドバイスをいただいたりとサポートをいただいており感謝しております。
■キッカケプログラムを始めたことによって、今まで経済的な事情で諦めていたプログラミングなどの学習の機会や勉強以外にも色々なプログラムを通して体験や経験を積ませて頂いて感謝しています。
■月一度ではありますが、私もペアレントメンターさんと話をさせて頂け、その日だけは孤独な生活から開放できます。
■私が仕事で朝早くから夜まで子供達といることができないため、子供達を第三者の方が見守っていてくれて色々相談に乗ってくれたりする事に、子供も私も本当に助かっています。
連携
企業との連携
子どもたちが利用するオンラインの学習教材やプログラムについて、複数の企業より、「無償」ないしは「ディスカウント価格」にて提供いただいております。
クラウドファンディングによるご支援
新型コロナウイルス感染拡大の影響で困窮する子どもたちを支援するために、2020年6月~8月にかけて「あの子にまなびをつなぐプロジェクト」クラウドファンディングに挑戦し、多数のご支援をいただきました。
「キッカケプログラム」の活動は、このクラウドファンディングでいただいた支援を活動の原資の一つとしながら、支援を必要とする子どもたちに寄り添っています。
●「あの子にまなびをつなぐプロジェクト」クラウドファンディングについての詳細はこちら
https://www.katariba.or.jp/activity/project/manatsuna/