CLOSE

認定NPO法人カタリバ (認定特定非営利活動法人カタリバ)

〒164-0001 東京都中野区中野5丁目15番2号

お問い合わせ

※「KATARIBA」は 認定NPO法人カタリバの登録商標です(登録5293617)

Copyright © KATARIBA All Rights Reserved.

活動紹介 / Activity

RESILIENCE

経済的事情を抱える家庭へオンラインでの伴走と学びの機会を届ける奨学プログラム

キッカケプログラム

Concept

大きな災害や感染病、経済の停滞…私たちが生きている時代は、常に予測不可能な変化にさらされています。新型コロナウイルスの感染拡大はオンライン環境の加速によって子どもたちの学びに大きな変化を与えました。
そんななか、その変化に取り残され、学びの機会を失った子どもたちの存在も明るみになりました。どんな環境や状況下においても、未来を生きる子どもたちにとって「機会」を得られることは、最重要テーマです。

キッカケプログラムでは、全国の経済的に困難を抱える家庭へオンラインによる伴走と学びのプログラムを提供。デジタルの力を最大限活かすことで、直接は支援が届きにくい家庭など、すべての子どもたちの学びに寄り添い、「機会」の格差を乗り越えることで子どもたちの自立を育み、貧困の連鎖を断ち切ることを目指しています。

活動概要

  • 所在地

    東京都中野区中野5丁目15番2号(運営事務局)

  • TEL

    03-5942-9646 

  • お問い合わせ

  • 活動期間

    2020年〜

  • 対象

    ・非課税世帯、生活保護・就学援助費・児童扶養手当のいずれかの受給者で、小学4年生〜高校生の子を持つ家庭
    ・小学4年生〜高校生のヤングケアラーを持つ家庭

  • 活動内容

    デジタルユースワーク(オンラインの居場所と体験機会の提供)/デジタルソーシャルワーク(オンラインの家庭・保護者支援)/評価研究の実施/奨学PC・Wi-Fiの貸与

活動の背景

家庭環境の差が、子どもたちの「機会」の格差になってしまわないために

厚生労働省「2022年 国民生活基礎調査」のデータによると、子どもの貧困率*は11.5%。およそ9人に1人の子どもが貧困状態に陥っています。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休校の長期化は、学校と子どもたちをインターネットでつなぐオンライン学習を進める契機となりましたが、経済的事情を抱える家庭では、オンライン学習をするための環境すら整っていないケースも少なくありません。

カタリバでは、そのような状況下にいる子どもたちに学びの機会を届けるために、パソコンとWi-Fiを無償で貸出し、オンラインでの学習支援を行う「キッカケプログラム」を立ち上げました。

プログラム参加に必要な設定を済ませたパソコンを発送している

一方、機器を渡す「機会」の提供だけでは学びにうまく活用できない現状が明らかになりました。そこで、学びへの意欲を育くむことが重要課題と位置づけ、保護者・子どもとの定期面談を通して、子ども一人ひとりに寄り添い、学びへの挑戦を励まし伴走する「機会」の提供を行っています。

また、キッカケプログラムを届ける中で見えてきたのが「ヤングケアラー」と呼ばれる家族のケアや日常的に家事を担っている中高生の存在です。

厚生労働省の「ヤングケアラーの実態に関する調査研究(令和2年度)」によると、公立中学生のおよそ17人に1人、公立高校生のおよそ24人に1人が「世話をしている家族がいる」と回答しています。世話をしている家族がいる場合には、いない場合に比べて「ひとり親家庭」の割合が高くなっているという結果も明らかになりました。
この発表を受け、独自に調査を行なったところ、キッカケプログラムに参加している中高生の約9人に1人がヤングケアラーあるいはケアラー予備軍に該当することがわかりました。

すべての子どもたちに学びの機会を届けるためには、貧困をとりまく複合的な社会課題にも取り組む必要があると考え、2021年12月よりヤングケアラー向けの追加支援を開始しました。

子ども一人ひとりに担当メンターがつき、週1回の定期的なグループ面談で子ども一人ひとりに伴走をしている

(*)日本における貧困線(等価可処分所得の中央値の50%)以下の所得で暮らしている17歳以下の子どもたちの割合を指します。 2022年「 国民生活基礎調査の概況」(厚生労働省)によると 2021年の貧困線は 127 万円となっており、たとえば親子2人世帯(ひとり親世帯)の場合、月約15万円以下で暮らしている子どもたちを指しています。

活動内容

1.デジタルユースワーク

週1回のオンライン面談を通した学びのチャレンジへ継続的に伴走するなかで、子ども一人ひとりの学びへの意欲を高め、自ら決めてやり抜く力を育むための支援を行います。子ども一人ひとりに担当メンター(支援員)がつき、週1回の定期的なグループ面談で子ども一人ひとりに伴走をしています。

具体的な取り組み:
・創作漢字や3Dモデリング、楽曲制作など子どもの興味関心の幅を広げるデジタルコンテンツの提供
・担当メンター(支援員)による週1回のオンライン面談を通じた子ども一人ひとりの学びへの意欲の醸成

また、子どもたちが個別に学習を進めていくことのできるオンライン学習教材や、オンライン英会話プログラムなど、デジタル学習ツールを活用したさまざまな学習機会を用意しています。教科科目の勉強が苦手な子も、自分の得意なことを見つけながら学びへの意欲を育んでいくことのできるプログラムです。

学習支援だけではなく、民間企業との連携による特別プログラムや子どもが興味のある職業について実務経験のあるメンターに話を聞くことができる機会の提供など、キャリア教育にも力を入れています。

2.デジタルソーシャルワーク

キッカケプログラムに参加している家庭の85%はひとり親世帯です。保護者を担当するメンターは、子育てに寄り添う役割として、保護者と月1回面談を行い、保護者の悩みに寄り添い、子どもの成長を一緒に考えたり、教育に役立つ情報を届けたりしています。

また、虐待不安や子どもによる家庭内暴力、子どもの特性による依存傾向など、特定の課題を抱えた家庭には、心理士・社会福祉士などの専門家や各種支援機関、居住地域の行政サービスに繋ぎ、解決に向けた支援を行っています。

3.ヤングケアラー家庭への支援

家族のケアや日常的に家事を担っている中高生のヤングケアラーとその保護者に対し、メンターがオンライン面談を通じて学習やキャリア、生活の相談に乗ります。希望者には、同じ立場のケアラーや先輩ケアラーに出会う対話プログラムを提供し、将来の選択肢を広げる機会を届けています。

特筆すべきは、家庭ごとに個別支援計画を作成していること。子どもだけでなく家庭全体を捉えた「家庭まるごと支援」に力を入れています。

ヤングケアラーや保護者に対してヒアリングを行ったうえで、必要に応じて行政の窓口や地域・民間の支援機関につなぎ、オンラインとオフラインの両方でヤングケアラーを包括的に支援する仕組みづくりにも取り組んでいます。

将来について考えるワークショップの様子

4.家庭に寄り添う伴走コミュニティの開発

全国から参加する400名(2023年8月時点)の子ども一人ひとりに、大学生~社会人若手層が伴走しています。また保護者への伴走は、子育て経験のある40~50代の方を選考し、研修を受けた方が担う仕組みです。

全国各地から集う子どもメンターや保護者を担当するメンターには、伴走を行っていくための事前研修や勉強会などを実施。パソコンスキルの獲得やオンライン上でのコミュニケーション方法など、さまざまな困難を抱えた家庭へ、オンラインを通した伴走を行っていくためのノウハウを学びます。

また、これまでの伴走事例をもとにケース検討会討議を実施するなど、子どもや保護者に日々寄り添い、励ましていくことのできる子どもメンター・保護者を担当するメンターの育成を目指しています。

伴走中も、子どもメンターと保護者を担当するメンターは定期的に情報交換をしながら、家庭にとってより良い伴走のあり方を考えています。時には、専門家を交えて検討することもあります。

5.継続的な評価研究と発信

キッカケプログラムでは研究者の方たちと一緒に経年調査を行い、エビデンスベースでの現場改善を重ねています。キッカケプログラムでの取り組みが、これからの子ども支援や貧困改善の一助となるよう、評価研究した内容についても発信していきます。

活動の成果

評価研究における数値データなどの結果は、活動と並行しつつ取りまとめている段階ではありますが、支援を受ける子どもや保護者へのアンケートからは、キッカケプログラムでのオンラインでの伴走と学びの機会を得たことで、「意欲的に学べている」ことや、「新しい世界を知ることができている」こと、「保護者にとっての相談先となっている」ことなどがわかっています。

子どもたちからの声

■カタリバで週に一回の面談をしてもらっています。いろいろな話をしますが、とても楽しいです。学校の先生とは違う、家族とも友だちとも違う、素敵なつながりだと思います。こうして話すことで、自分の気持ちをしっかり考えたり、伝えたりできるようになって、コミュニケーション力をもっと高めたいです。

■メンターとのミーティングでは、親には話しにくい悩み事や将来の進路について相談しています。相談することで頭の中で整理できたり、違った角度からの意見も聞けたりしてとても参考になりました。キッカケミーティングは、自分自身の気持ちに素直になれる場所です。

■行ったことのない県の人とキッカケミーティングで会えたり、皆でゲームしたりとても楽しいです。興味のあるプログラムにたくさん参加して、いろんなことにチャレンジしていきたいです。

保護者からの声

■子も親もキッカケプログラムのおかげで本当に世界が広がりました。学習支援だけでなく、発達障害(ADHD)の支援にもなっていると感じることが多くとても助かっています。 本人に学ぶ気持ちさえあれば、いくらでも機会を与えていただける、 本当に本当に強い味方です。

■わが子は不登校です。カタリバに出会うまでは、保護者が抱えている悩み、こどもの進路などの相談が誰にもできませんでした。カタリバに出会えてからは、メンターの方に相談に乗っていただいたり、アドバイスをいただいたりとサポートをいただいており感謝しております。

■キッカケプログラムを始めたことによって、今まで経済的な事情で諦めていたプログラミングなどの学習の機会や勉強以外にも色々なプログラムを通して体験や経験を積ませて頂いて感謝しています。

■月一度ではありますが、私も保護者を担当するメンターさんと話をさせて頂き、その日だけは孤独な生活から開放されます。

■私が仕事で朝早くから夜まで子供達といることができないため、子供達を第三者の方が見守っていてくれて色々相談に乗ってくれたりする事に、子供も私も本当に助かっています。

連携

企業との連携

子どもたちが利用するオンラインの学習教材やプログラムについて、複数の企業より、「無償」ないしは「ディスカウント価格」にて提供いただいております。

また複数の企業と子ども・保護者向けのさまざまなイベントを実施し、学びの機会を届けているほか、ヤングケアラー家庭に対しては、オンライン支援にとどまらず、食事支援の実績もあります。

行政との連携

愛媛県が主催するデジタル実装加速化プロジェクト「トライアングルエヒメ」に採択され、2022年12月から宇和島市(愛媛県南部)・新居浜市(愛媛県東部)と連携。オンラインによる学びの機会の提供を通じて地域の生活困窮世帯を支援しています。

ヤングケアラー支援においては、2022年10月に茨城県と連携協定を締結。学校へのチラシ配布や支援者向け説明会の実施などを通じてヤングケアラー支援の理解促進を図ることで、当事者の発見が難しいとされているヤングケアラーを地域の支援者が積極的に見つけ出し、キッカケプログラムに誘い出すための地域連携を強化しています。

そのほか、ヤングケアラー家庭の包括的支援を目的に医療機関との連携も開始しています。

※「キッカケプログラム」は 認定NPO法人カタリバの登録商標です(登録6774065)

Photo Gallery