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事業報告会2015〜一緒に話そう。カタリバが取り組む課題〜開催レポート

レポート

秋らしい爽やかな晴天に恵まれた10月18日(日)、2014年度の活動をご報告する「カタリバ事業報告会2015〜一緒に話そう。カタリバが取り組む課題〜」を、東京・恵比寿のサッポロホールディングス株式会社様にて開催。約90名の方にご参加いただき、終始活発な意見交換が行われる会となりました。

「これまでにやってきたことの強みを自覚しながらも、また新しい10年を作る」

はじめに、代表理事の今村久美が2001年設立以来、カタリバが子ども・若者に届けてきた「キャリア教育」について話をさせていただきました。
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今でこそよく耳にするようになった「キャリア教育」という言葉ですが、初めて登場したのは1999年の文部科学省の審議会でのことでした。「就職難と言われ、生きていくのが困難な時代だったからこそ、10年後、20年後も幸せだと思えるための教育とは何なのか、模索する過程でキャリア教育という概念が生まれました」と、今村。

ここで、「キャリア教育が必要となった理由」について参加者の皆さんにも隣同士で話し合ってもらうと、「生きていくためにはキャリア教育が必要」、「バブルが崩壊し、自分でキャリアを選ぶ時代。そういうのは早くやったほうが良い」といったご意見が挙がりました。

これらの言葉を受け、今村はカタリバが考えるキャリア教育を「自分のライフプランをどう描いていくか、キャリアを学ぶこと」と定義し、これまで一貫して、子どもたちの自発性を育むことで「生き抜く力」を届けてきたことを説明しました。

「自発的に何かに取り組むことは、やがて必ず、代え難い機会となって子どもたちの可能性を開いていくはず」。
カタリバの活動の根底にある想いをこう述べた今村は、「これまでやってきたことの強みを自覚しながらも、また新しい10年を作れるよう、学校外の立場から子どもたちにこれからも教育の機会を提案していきたい」と、新たな決意を表明することで、開会の挨拶といたしました。

次に、常務理事/事務局長の岡本拓也からは、現在の組織についてご報告させていただきました。

4年前の事業報告会で発表した時には全職員数39名だったカタリバは、現在インターン生を含めると120名の大所帯になりました。仲間が増えていく過程において、この一年間は職員一人ひとりが生き抜く力を持った存在であるために、行動指針を設定し、人事制度を整えることに注力する年となったことを説明いたしました。

団体が今後さらなる飛躍を目指せるよう、現在を「再構築期」と表現した岡本は、「10年後、どんな価値を社会に、そして学校教育現場に提供し、足跡を刻んでいくのか。今、カタリバは真価を問われています。皆さんと一緒に遠くへ跳びたい」と抱負を述べ、第一部を終了しました。
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事業を横断して、課題別のトークセッションを実施

続く第2部では、社会課題の変化に伴って新しい事業・拠点を増やしてきたカタリバの活動についてご理解を深めていただくため、現在取り組む社会課題ごとにテーマを分け、90分のトークセッションを事業横断型で行いました。参加者の皆様には、それぞれ興味・関心の高いテーマを選んでいただき、セッションに参加していただきました。

「教育を通じた地方創生」
担当:菅野祐太(マイプロジェクト事務局)、生田裕規(雲南/おんせんキャンパス)、山田雄介(大槌臨学舎)

地方の抱える課題解決に向けた、岩手県大槌町と島根県雲南市の拠点における取り組みを紹介。
自治体との連携による不登校支援や体験型学習を通じて地域で活躍できるリーダーを育成し、地域の活性化につなげる活動について共有させていただきました。参加者の方からは、「カタリバが雲南に新たな拠点を設けた理由」や「高校生がマイプロジェクトに取り組むために、どんなサポートをしているか」について質問が挙がりました。また、コラボ・スクールに対する寄付の変動についても質問があり、震災直後から比べると3分の1まで減っているなど、運営資金の確保の難しさについてもご説明させていただきました。
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「困難を抱えた子どもたちに対する支援」
担当:堀井勇太(スペシャルニーズ)、今村亮(b-lab)、渡邊洸(女川向学館)、池田隆史(雲南/おんせんキャンパス)

カタリバは貧困や発達障がい、不登校といった「困難を抱えた子ども」に対する取り組みを始めています。このセッションでは、「スペシャルニーズ」という事業名で定時制高校や進路多様校で展開している学習支援や、学校外の居場所を提供している女川向学館や雲南市の「おんせんキャンパス」、文京区にある中高生のための施設「b-lab」における不登校支援について詳しく説明を行いました。参加者からは、「文京区は一見課題のなさそうな地域だと思ったが、そういう場所だから存在する関係性の困難さを知った。アプローチする職員の背中をみて中高生たちは成長していっているのでは?」、「不登校の子の保護者も辛い思いをしている。カタリバの提供する場所は彼らの居場所にもなっていると思った」などの感想がありました。また、スペシャルニーズに対しては、「とても良い取り組み。この事業の成り立たせ方について、寄付が必要なのか?連携なのか?もっと情報発信して」とのご意見も頂戴しました。
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「ソーシャルイノベーションとNPO経営」
担当: 低引稔(経営管理本部)、下岡麻子(広報・ファンドレイジング部)、岡本拓也(常務理事/事務局長)

人事労務、経営管理面に関わる3人が、ソーシャルで働くことを選んだ理由やそのやりがい、NPO経営の実情についてお伝えしました。バックオフィスから団体を支えるスタッフだからこそ語れる具体的な事業収入やNPO経営について話が聞けるとあって、20名以上の方が参加。「事業収入の内訳」や「会社とNPOの経営の違いとは?」「寄付を安定的に獲得するための工夫は?」などについて質問がありました。これらに対し、事業収入には受益者負担(高校、専門学校など)という形があることや、利益追求を目指す会社と異なり、NPOはその活動が目指す社会にどうつながっているかが目標となること、また個人からのご寄付が確かな支援につながっていることが説明されました。
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「震災から5年。東北支援事業のこれから」
担当:鶴賀康久(女川向学館)、加賀大資(大槌臨学舎)

震災から5年目を迎え、「いつまで続けるのか?」と問われることが増えた東北復興事業。このセッションでは、被災地のこれまでとこれからについて情報共有しながら、被災地には今も支援を必要とする現場があることについて理解を深めていただく時間となりました。参加者からは、コラボ・スクールの活動に対して「(震災前には)戻れないが、ネガティブな日常を凌駕するようなポジティブな非日常を届けられてよかった」といったご意見があがりました。また、中学生の参加者は、「被災地の同年代の人たちの置かれている状況を知り、近所の人たちとの挨拶を普通だと思って過ごしてきたが、いつ何があるかわからないので、大切にしていきたい」と感想を発表してくれました。
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「高校キャリア教育の変遷」
担当:横山和毅(カタリ場事業部)、長谷川勇紀(カタリ場事業部)、和氣英一郎(マイプロジェクト事務局)

カタリバが設立以来、取り組んできた高校生のためのキャリア教育支援「カタリ場」について改めてお話させていただきました。カタリ場が高校生に届けるのは、生徒の意識・意欲を120分の授業で少しでも高める「きっかけ」。実際に現場ではどのような形できっかけを届け、生徒たちの背中を押しているのか、参加者には模擬形式でカタリ場を体験していただきました。その上で、カタリ場から生まれる「価値」を今後どのように昇華させていくのか、現在考えている方策やプログラムの内容について話し合う場へ。参加者からは「キャリア教育を学校の先生だけで行うのは難しい」「もし自分が高校生にアドバイスできることがあるなら、肩の力をもっと抜いてと伝えたい」というご意見が出ました。
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「目の前の高校生のことを感じようと思って行動すると、会話ができて、勇気が残せる」

第3部では、宮城県女川町のコラボ・スクール「女川向学館」に通う高校生3年生の橋本日菜さんのビデオレターが上映され、「落ち込んでいた自分に一人じゃないと教えてくれたコラボ・スクールは私にとってかけがえのない場所」と、支援者の方々へ感謝の気持ちが述べられました。

閉会の挨拶はカタリバの監事であり、キャストとしても年間50校もの現場を訪れ、高校生との対話を重ねる久保田が務めさせていただきました。
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久保田は挨拶の中で、カタリ場で出会う高校生の多くが自分はダメだと思っていることに触れ、その根底には「聞いたことにきちんと答えられない子をすぐにダメだと見なしてしまう大人が多く、そういうのが子どもたちに伝わっているんじゃないかと思う」と言及しました。そして、「思い通りに行かないのが世の中。それなのに、思い通りにできないことをものすごく良くないことに感じている。彼らなりに頑張っていることをわかりたいなと思って現場に行っています」とカタリ場に参加し続ける想いを語りました。

また、若者のために、地域のために、「ために」と思っている行動が「独りよがりになる」と続け、「まずは、相手のことや地域のことをしっかり思ってあげて、それから「ために」を考えるべきではないかと思っている。自分もカタリ場で生徒のためにと思うとコミュニケーションを失敗する。目の前の高校生のことを感じようと思って行動すると、会話ができて、勇気が残せる。世の中の若者、地方のこと、いろいろと思って参加してくださった皆さまにも、一歩アクションを起こしてもらえたらうれしい」と、事業報告会を締めくくりました。


終始積極的に対話に参加してくださった皆さまのおかげで、実りの多い事業報告会となりました。
今後もカタリバは「生き抜く力をこども・若者へ」の理念のもと、全拠点をあげて課題の解決に向き合って参りたいと思っております。

引き続き温かく見守っていただけますようお願い申し上げます。
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【ご協力】
サッポロホールディングス株式会社様
http://www.sapporoholdings.jp/
平素からご支援くださっているサッポロホールディングス株式会社様に、ご厚意により事業報告会の実施会場及びお飲物のご提供をいただきました。
この場を借りて御礼申し上げます。