認定特定非営利活動法人カタリバ（本部：東京都中野区、代表理事：今村久美、以下カタリバ）が運営する「みんなのルールメイキング」では『児童・生徒とともに作る学校POINT BOOK』を公開しました。本書は、校則やルールの見直しはもちろんのこと、行事や授業など、学校生活の様々な場面において生徒と教員が対話を通じてともに学校をつくっていくためのヒントを、現場の事例をもとに紹介する実践ガイドです。

子どもの声を 「聴く」から「活かす」ー現場の悩みに応える実践のヒントを紹介

2022年12月に「生徒指導提要」が12年ぶりに改訂されたことや、2023年4月「こども基本法」の施行とともに「こども家庭庁」が創設され、子どもの意見表明・参画の機会づくりや、またその声をいかに社会や制度に反映していくかが注目されています。
こうした社会的な流れを受けて、自治体では若者がよりよいまちづくりを目指して政策を提案・立案する場である「若者会議」などの取り組みが行われ、学校現場では児童・生徒が主体的に校則やルールの見直しを行う「ルールメイキング」の取り組みが各地で広がっています。

カタリバでは、2019年から学校の校則・ルールを題材に、児童・生徒が中心となり、教員などの学校関係者と身近なルールを対話的に見直す「みんなのルールメイキング」をスタートしました。ルールメイキングとは、立場や意見の違う人たちと対話をしながら納得解をつくるプロセス自体を学びの機会と捉え、「自分の意見を聞いてもらえる」「自分たちでルールや環境をつくり変えることができる」という自己効力感を育む活動のことです。現在では全国500校以上へと広がり、自治体との連携も進んでいます。

しかし、学校現場と取り組みを進めていく中で、以下のような戸惑いや不安の声が聞こえてきました。

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「意見を取り入れようと思っても、実際にどう活かせばよいか悩む」
「対話的な学校づくりをやってみたいが、どこから手をつければいいのか不安」
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2024年には、こども家庭庁より『こども・若者の意見の政策反映に向けたガイドライン ～こども・若者の声を聴く取組のはじめ方～』が発表され、子どもの意見表明の機会づくりに関する手引きが示されましたが、集められた声をどのように現場に反映していくかについては、十分な知見や資料が揃っているかといった観点では発展途上というのが現状です。

本書は、そうした現場の課題に応えるため、「子どもたちとともに学校をつくる」実践を後押しすることを目的として作成しました。教員が安心して第一歩を踏み出せるよう、全国の学校の取り組みから得られた視点やステップを具体的に紹介しています。

本書のポイント

本書は、これまでみんなのルールメイキングが携わってきた学校での現場教員の工夫やアイデアをもとに制作しました。実践で見えてきた方法と、 その方法を選択した根拠となったこと、 活動を終えて振り返ったときに気づいたことなどをまとめました。

①実践を進めるための５STEPと大切にしたい4つの観点

現場の教員から寄せられた実際の相談をもとに、生徒の意見を取り入れるプロセスを5つのSTEPに整理し、その中で大切にしたい4つの観点をまとめました。また、本資料は取り扱うテーマにかかわらず、現在どのSTEPに位置しているかに応じて、必要な箇所を選んでご覧いただける構成となっています。実践の中でどうしたらよいのか迷ったときに、 具体的にどう対応したらよいかのヒントとしてご活用いただけます。

②特定のテーマに縛られず、日常のあらゆる場面で活用可能

校則見直しやルールメイキングの実践に加え、目黒区教育委員会と連携して実施した統廃合に伴う新設校での「生徒目標づくり」のプロセスでの気づきや事例も取り扱っています。校則のような身近なルールから、学校統合という大きな変化に伴う目標づくりまで、いずれの実践においても大切にしたい観点やプロセスは共通していると考えています。そのため本資料は、特定のテーマに限らず、生徒会活動や学校改善の取り組みなど、子どもとともに学校をつくっていくあらゆる場面で活用できる内容となっています。

※本資料のポイントについてこちらで更に詳しく説明しています。
URL：https://rulemaking.jp/news/4029/

【本書に込めた思い―「みんなのルールメイキング」事業責任者　藤本より】
わたしたちカタリバ 「みんなのルールメイキング」 は、 2019 年から対話的な校則・ルールの見直しに取り組む学校の活動に伴走してきました。
そして今回、 約 5 年間の 「みんなのルールメイキング」 の活動の中で、 カタリバが出会った教員や、 教育委員会の皆さんが積み上げてきた知見を再編集し、本レポートを制作しました。

児童生徒主体の取り組みは、 近年よく耳にする言葉になってきた印象がありますが、 特別活動などを通じて、 前から全国の学校で取り組まれてきました。 子どもの意見表明・反映の重要性が再認識され、学校を取り巻く環境や制度が大きく変化し、 過渡期ともいえる今、 教員の努力により新しい実践が生まれています。 その一方で、「どうしたらいいのかわからない」など 戸惑う学校現場の声も聞かれます。

本レポートは、 そんな思いを抱く学校現場のヒントや参考になればと思いまとめたものです。正解を示すものではなく、 本レポートを手に取ってくださった教員の皆さんがヒントをもらえるそんな一冊になることを願っています。

【監修】

工学院大学教育推進機構 教授 安部芳絵氏

早稲田大学助手・助教を経て、 工学院大学教授、博士（文学）。
東京都子供・子育て会議委員、 世田谷区子どもの人権擁護委員。
主著に『子ども支援学研究の視座』（学文社、 2010）、『災害と子ども支援』（学文社、2016）、『子どもの権利条約を学童保育に活かす』（高文研、 2020）など。

 

筑波大学人間系 助教 古田雄一氏

筑波大学人間系助教。博士（教育学)。大阪国際大学短期大学部専任講師、 同准教授を経て、 現職。認定 NPO 法人カタリバ 「みんなのルールメイキングプロジェクト」 調査研究・実施協力。 主著に『現代アメリカ貧困地域の市民性教育改革』（東信堂、2021 年）、『校則が変わる、生徒が変わる、 学校が変わる―みんなのルールメイキングプロジェクト』（学事出版、2022年、共編著）、『世界に学ぶ主権者教育の最前線』（学事出版、2023 年、共著）など。

 

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