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遺贈・相続コラム

遺産って寄付できるの?仕組み・方法・注意点をやさしく解説

人生のしめくくりに、「自分の財産をどんなふうに使ってもらいたいか」と考える方が増えてきています。
最近では、遺産を慈善団体やNPO法人などに寄付する「遺贈寄付」という選び方が、社会貢献のひとつとして注目されています。

しかし、手続きや制度がよくわからず、不安に感じる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、遺産を寄付する方法や気をつけたいポイント、寄付先の選び方などをご紹介します。

1. 遺産は寄付できる?

自分の死後、遺された財産を希望の団体などに寄付することが可能です。

正式には「遺贈寄付(いぞうきふ)」と呼ばれ、遺言書を使って「自分が亡くなったあと、財産の一部または全部を〇〇団体に寄付(遺贈)してほしい」と伝えることで寄付が行われます。

寄付できる財産の種類はさまざま

寄付の対象となる財産には、現金や預貯金だけでなく、不動産や有価証券、美術品などさまざまなものが含まれます。「これも寄付できるの?」と思うようなものでも、団体によっては受け入れ可能な場合もあります。(※)

また、遺贈寄付は金額の大小にかかわらず行うことができます。少額であっても、寄付があることで、支援を届けられる活動があります。

※寄付できる財産については、団体に直接確認していただくことをおすすめします

遺留分への配慮に注意

法定相続人がいる場合には、法定相続人が法律上最低限受け取ることができると保証されている割合(遺留分)があります。

スムーズな寄付を実現するためにも、専門家に相談しながら、遺留分についてどのように対処するか、丁寧に準備を進めていきましょう。

遺贈の基礎知識について解説した記事はこちら:遺贈とは?相続との違い、寄付の種類や手続きを解説

2. 遺産を寄付する人が増えています

日本承継寄付協会の「遺贈寄付白書」によると、日本国内で遺贈寄付が実行された件数は2013年には369件、2022年には1,040件と、実際に遺産を寄付する方が増加していることがわかります。

遺贈寄付をする理由としては、「人生の最後に社会貢献をしたい」のほか、「独身で相続人がいない」「相続人と疎遠」が多く、相続人がいない方、あるいは相続させたい相続人がいない方の財産の受け皿としても活用されています。

また、「少額でも寄付ができる」「財産が残った場合のみ寄付を行うことで、老後資金の心配をせずに社会貢献ができる」といった点で、遺贈寄付を好意的に捉える方が多いこともわかっています。

3. 遺産の寄付先について

寄付先の具体例

遺贈寄付の受け入れ先は、実にさまざまです。

例:
・公益財団法人(がん研究、教育、医療分野など)
・認定NPO法人(子ども支援、災害支援、動物保護など)
・一般財団法人(地域振興、芸術文化支援など)
・自治体(地域福祉や図書館・公園整備など)

選ぶときは、自分の想いや関心に合った団体を探しましょう。ホームページで活動内容や実績を確認したり、問い合わせて相談しても良いでしょう。

寄付先を選ぶときの注意点

寄付先が「認定NPO法人」や「公益財団法人」のように、税制優遇の対象となる法人であれば、相続税の非課税措置や所得税控除などのメリットを受けられる可能性が高くなります。

一方で、これらの認定を受けていない一般の任意団体などに寄付を行う場合は、税制上の優遇措置が適用されないことがあります。ただ、活動内容に強く共感できる団体であれば、税制上のメリットにこだわらず寄付を選ぶ方もいます。

そのため、「想いを届けたい団体」かつ「制度上のメリットも享受できるか」をバランスよく考えるとよいでしょう。

4. 税制上のメリットと控除

遺贈寄付には、税制面の優遇もあります。

たとえば、遺産を寄付することで、相続税の対象から外れるケースがあります。つまり、寄付した財産には相続税の減税措置が適用される場合があり、残されたご家族の税負担を軽くすることができます。

また、相続人が受け取った財産の一部を、後から寄付する場合でも、一定の条件を満たせば所得税の控除が受けられる可能性もあります。

ただし、寄付先が認定された法人であることや、手続きのタイミングなどによって控除の適用可否が変わるため、必ず税理士などの専門家に確認しましょう。

5. 遺産を寄付する方法

遺贈寄付は、思い立ってすぐにできるものではありません。きちんと準備をしておくことで、想いをしっかり届けることができます。

  1. 情報収集:まずは遺贈寄付について知り、自分に合った方法を探しましょう。
  2. 専門家に相談:司法書士や弁護士、税理士など、寄付の法的・税務的問題を信頼できる専門家に相談してみましょう。
  3. 寄付先の選定:寄付先の団体と連絡を取り、意思を伝えたり条件を確認します。
  4. 遺言書の作成:内容を明確にして、公正証書で作成すると安心です。

 

また、死後の手続きをサポートしてくれる「遺言執行者」や「死後事務委任契約」なども合わせて準備しておくと、より確実です。

詳しい手順や書き方のポイントについては、以下の記事も参考になります:
遺言で遺産を寄付する方法は?遺言書の書き方や注意点を解説

6. 実際の寄付事例

寄付が支援につながる実感を感じたカタリバへの遺贈寄付──Aさんの事例

Aさんは、もともと社会貢献への関心が高く、カタリバを含む複数の団体に寄付の経験がありました。さまざまな団体がある中で、特にカタリバから届く定期的な活動報告を読むと、ご自身の寄付がきちんと、日本国内でさまざまな困難と向き合っている子どもたちへの支援につながっている実感が得られると感じ、カタリバへの遺贈寄付を決意されました。

家族が自立したからこそ、社会の未来へ遺産を役立てたい──Bさんの事例

Bさんも遺贈を考えるひとりです。お子様はすでに経済的に自立しており、「後世の役に立つことができれば」と、ご自身の財産を社会に活かすことを望まれています。ご自宅や娘さんに遺した後に残る現金について、遺言書にその意思を記されています。

このように、遺贈寄付は実際にさまざまな背景や価値観を持つ人々によって選ばれており、社会貢献の手段として着実に広がりを見せています。

7. まとめ

遺贈寄付は、自らの財産を社会に役立てる手段のひとつです。実際、少子化や高齢単身世帯の増加を背景に、相続以外の選択肢として遺贈寄付を選ぶ人は年々増えています。

寄付先の選定や遺言書の準備には一定の手続きが必要ですが、法的に有効な形で進めることで遺志を実現でき、相続税の軽減などの効果も期待できます。

今後、遺贈寄付は社会課題の解決に向けた有効な方法の一つとして、さらに注目されるのではないでしょうか。

監修者

小林 暁(こばやし さとる) 司法書士・行政書士・承継寄付診断士
司法書士法人あかつき総合法務事務所 代表司法書士開業当初から相続の専門家として100件以上の相続手続きを支援。遺贈寄付の相談にも積極的に対応し、20件以上の寄付を通じた想いの承継をサポートしてきた。2008年 立教大学法学部法学科卒業
2011年 行政書士試験合格
2012年 宅地建物取引士試験合格
2016年 司法書士試験合格
2018年 都内司法書士事務所に就職
2019年 独立・開業