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【西日本豪雨】被災地の子ども支援活動レポート①通学困難となった生徒のためにスクールバスの運行を開始しました

レポート

岡山県倉敷市真備町、8月撮影

認定NPO法人カタリバは西日本豪雨の被害を受け、7月15日・16日に現地調査を実施し、17日より現地常駐スタッフを置いて子どもたちへの支援をスタートしました。今回のレポートでは活動の中から聞こえてきた子どもたちの声と、いくつかの具体的なアクションについてご報告します。

全国各地に大きな被害をもたらした西日本豪雨。
死者行方不明者数は全国で230人、全半壊の住居は1万5千棟以上を記録しました。(消防庁8月21日発表より)

中でも岡山県倉敷市は、高梁川と小田川という2本の川が合流する真備町エリアを中心に大きな被害が出ました。倉敷市の全半壊の住居は5,240棟、真備町内の小学校2校・中学校2校・高校1校が床上浸水等の被害を受けました。

そして現在も学校などの避難所で過ごす方は倉敷市内で1,126人にのぼります。(岡山県災害本部8月21日発表より)この他に親戚の家や床上浸水し一部のインフラが整っていないながらも自宅の2階などで過ごされている方たちもいます。

応急仮設住宅の建設は8月3日、市内で50戸分の着工が始まったばかりで、いつまで避難生活が続くのか全く先が見えません。

真備町出身の生徒の数が多い岡山県立矢掛高等学校と連携し、避難生活をしている生徒たちの状況を把握するための個別訪問を行いました。学校の先生と協力して、避難先の学校や親戚の家などを訪問し、困っていることや今の環境について聞いてまわりました。また、そこで見えてきた「生徒の声」を支援につなげています。

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「雨が降ってきました。怖くて眠れない」

台風が近づいたある夜、カタリバが用意したSNSのホットラインに一つのメッセージが届きました。送信者は女子高校生。夜中ですが、スタッフからすぐに返信をします。

「そうだね、怖いね。」

しばらくやりとりが続いた後、少し落ち着きを取り戻したのか、「ありがとうございました」とのメッセージを残して会話は終わりました。

SNSに開設したホットラインには色々な声が届きます

彼女は数日前、個別に困りごとなどの話を聞いた際に、豪雨当日の話を淡々と語ってくれた子でした。

「あの日は、死ぬかと思いました」

ぼんやりとした目で話し出しました。

体が不自由な家族がいることから、限界まで自宅にいたこと。先に自分だけ避難することになり、胸まで水に浸かりながら必死で高いところまで逃げたこと。家族の安全を祈り続けて、一晩を明かしたこと。翌朝、辺りが明るくなり、水没した街並みが目に飛び込んできて愕然としたこと。

そして一通り話し終わると、涙をこぼしました。

「あの日から、初めて泣いた・・・」

家族も周囲も必死に頑張る中で、子どもたちは弱気な思いを抑えこもうとします。それは本人にとっては無意識の行動ですが、少しずつでも誰かに心の内を語り、心の傷を癒していかなければ日々のストレスも重なって数年後にもっと大きな心身の不調となって現れる可能性があります。

一人一人の話にじっくり耳を傾ける個別相談

彼女の他にも、一人一人に丁寧に個別相談を行なっていくと、色々なことが見えてきました。

まず顕著だったのは、体調の変化でした。

「避難所で配られる食事がだんだんと喉を通らなくなり、体重が5キロ以上減ったみたい」

「夜中に頻繁に目が覚めてしまって」

「勉強とか部活とか、ちゃんと頑張ろうって思っているのに、どうしても体が動かないんです」

こうした状態は、大人からすれば普通ではない状態です。けれど、彼らは続けてこうも言います。

「でも、大丈夫です」

「みんな大変だから」

「家族の方が大変だから、私がしっかりしないと」

個別相談が数少ない本音を話せる場所という子も

こうした状況の中、全校生徒400人中76人が被災している矢掛高校では、8月22日から新学期が始まることになりました。豪雨で休校となり、そのまま夏休みに入ったため、前倒しのスタートです。

ところが、新学期開始にあたり、被災した生徒たちには課題がありました。それは、通学手段でした。

「自力で自転車で通おうと思います」

「自転車も流されているので、◯◯駅まで徒歩で行こうと思います」

実際に通学にかかる時間を計算してみると、少なくとも片道2時間はかかります。

生徒は市内外の様々な所に避難を余儀なくされ、これまでより遠い所から通学しなければならなくなっています。電車は一部区間不通となったまま。被災で家庭の経済状況が悪化し、定期券代が払えるかどうか不安を覚える生徒もいました。

避難生活で体力も気力も落ちているような今の状態で、毎日の通学も困難となれば、これまで通り、学校での勉強や部活に打ち込む意欲を持ち続けられないかもしれない。何とかしなければ・・・。

先生たち、保護者、カタリバのスタッフで議論する中で見えてきたのが、避難エリアに近い駅から高校までのスクールバスを出すことでした。

カタリバは矢掛高校・矢掛高校同窓会と準備を進め、22日、無事にスクールバス運行の初日を迎えました。

8月22日から始まったスクールバス

始業式の朝、バス停には続々と生徒たちが集まってきました。

「久しぶり!」と、1カ月半ぶりの友達との再会を心から喜んでいる様子。

「これまで交通手段がなくて、自分は部長だというのに部活に行けなかった。バスが出てくれて、親にも迷惑をかけずにすんだ。これまで休んでしまった分、部活を頑張りたい」と話す生徒もいました。

周囲の大人の目を気にせずにいられるバスの中には、生徒たちの明るい話声が飛び交っていました。

いよいよ始まった新学期

そして、新学期となりましたが、対面の個別相談とLINEを使ったホットライン相談も継続していきます。

カタリバが行う個別相談では、「祖母の家に身を寄せさせてもらっているが、祖母は何をするにも手助けが必要な状況。家にいるときは自分がずっと付き添い介護をしている」「祖父母や叔父叔母と、残った2Fで暮らしているが、親もストレスらしく喧嘩が絶えない。みんな同じ部屋なので、喧嘩から逃げることもできない」といった、簡単には解決できない悩みを抱えている子もいます。

保護者の様子を見て、「進路を変更して、卒業後は働こうと思っている」と話す子も。

こうした子どもたちが抱える個別の困りごとを、カタリバは学校とも協力しながら支援していきます。

そしてこれまでカタリバが行ってきた、東北、熊本での支援活動同様、今回の災害でも、「震災によって夢をあきらめた」と子どもたちの未来が閉ざされてしまわないように、きめ細やかなサポートを行ってまいります。

【西日本豪雨】緊急支援「西日本豪雨子どもサポート募金」へのご寄付をお願いします

実態調査を経て、カタリバは現地での活動をスタートしました。

東日本大震災や熊本地震の経験を土台に、現地の状況に合わせた形を模索し、1人でも多くの子どもたちのために、できることから取り組んでいます。一人でも多くの子どもたちをサポートできるように。皆さまのご支援を何卒よろしくお願いします。

▼「西日本豪雨子どもサポート募金」はこちらから

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>>【西日本豪雨災害】子ども支援ニーズ調査報告①
 https://www.katariba.or.jp/news/2018/07/17/11617/

>>【西日本豪雨災害】子ども支援ニーズ調査報告②
 https://www.katariba.or.jp/news/2018/07/18/11623/

>>【西日本豪雨災害】子ども支援ニーズ調査報告③
 https://www.katariba.or.jp/news/2018/07/18/11637/