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【子ども食堂】現状と課題

子ども支援コラム

子ども食堂のはじまり

子ども食堂とは、地域住民や自治体が主体となって無料または低料金で子どもたちに食事を提供するコミュニティの場を指します。今や全国に150箇所以上も広がる子ども食堂ですが、その発祥はどこだったのでしょうか。

子ども食堂のはじまりは、東京都大田区にある「気まぐれ八百屋だんだん」の店主であった近藤博子さんが2012年に作ったのが始まりです。「子ども食堂」を立ち上げたきっかけは朝ごはんや晩ごはんを当たり前に食べられない子どもの存在を知ったことだと話されています。日本の社会に隠れた「見えない貧困」を目の当たりにした近藤さんは、自分の手でできることとして「子ども食堂」をスタートさせたのです。

そんな近藤さんの「子ども食堂」を、東京都豊島区の子ども支援をしていた「豊島子どもWAKUWAKUネットワーク」栗林知絵子さんが取り入れ、瞬く間に広がっていきました。

子ども食堂へ寄付

子ども食堂が台頭した理由

子ども食堂が2012年にスタートを切り、その活動が短期間に全国に広がったのには理由があります。

ひとつは、政府が2009年に初めて相対的貧困率(世帯所得が標準的所得の半分以下の割合)を公表したことで表面上は見えてこない貧困層の存在が、社会的に認知されるようになったためでしょう。

もうひとつの理由は、子どもの貧困層が増加していることが挙げられます。子どもの貧困世帯はひとり親の家庭が半数を占めており、孤食も併せて問題として取り上げられるようになりました。

このような子どもの食事難や孤食に対する問題は、親の就職状況や離婚状況が深く関連しているため、根本的解決方法を見つけるのが難しいのが現状です。しかし、「難しいことは脇に置いて、とにかく目の前の子どもたちに美味しくて温かいご飯を食べてもらおう」と一石を投じているのが子ども食堂なのです。

食堂を必要とする子ども達

日本には、満足にご飯が食べられない世帯がどれほどいるのでしょうか。

驚くことに6世帯に1世帯が食料に困った経験があるとされています。それを裏付けるように、国立社会保障・人口問題研究所が2012年に行った「生活と支え合いに関する調査」では、過去1年間に経済的な理由で家族が必要とする食料が買えなかったという経験を持つ世帯は14.8%という結果がでています。これは、隣の隣の隣の家では「今日は朝ごはんは無いよ」「今晩はご飯なくてもいいよね?」という会話がされているという確率です。

このように日本では、一見貧しさとは縁がない家庭にも貧困の手が迫っているのです。

全国の子ども食堂

全国には子ども食堂が150箇所以上あります。特に多いのは関東エリアで、東京都:68箇所、神奈川県:19箇所、千葉県:16箇所、埼玉県:14箇所あると言われています。

<全国の子ども食堂数>

  • 北海道・東北エリア:24箇所
  • 東京都:68箇所
  • 神奈川県:9箇所
  • 千葉県:6箇所
  • 埼玉県:4箇所
  • 北関東+茨城県エリア:11箇所
  • 長野県:11箇所
  • 甲信越・北陸・中部エリア:20箇所
  • 大阪府:12箇所
  • 大阪以外の近畿エリア:20箇所
  • 中国・四国エリア:12箇所
  • 九州・沖縄エリア:9箇所

※上記の子ども食堂数は調査当時のもので変動する可能性があります。

子ども食料の利用料金・参加費

子ども食堂の多くは無料で利用できます。全国に約150箇所ある子ども食堂のうち6割が子どもは無料で利用できます。有料の場合でも100〜300円という利用料が大半なため、安価な料金で設定されています。

大人の利用も可能で、その利用料金のほとんどは300〜500円という設定になっています。中にはカンパなど明確に設定していない子ども食堂もあります。

子ども食堂の開催回数

子ども食堂の多くはボランティアや支援によって賄われているため、開催される日時が限られています。月1回開催している子ども食堂が最も多く、次に月2回開催しているところがほとんどでした。中には、毎週開催している子ども食堂もありましたがその数は全国のなかでも数えるほどしかありません。また、不定期開催やイベント開催を行っているところもあり、開催情報をブログやホームページなどを使って発信している団体が多くありました。

子ども食堂の利用時間

子ども食堂の利用時間の多くは、17:00~21:00の間です。なかには土日祝日のいずれかの日程で12:00〜14:00といった昼間の時間帯に開催しているところもありましたが少数でした。

カタリバが実施している子ども食堂

カタリバも子ども食堂の活動を参考に、子どもたちが通ってくる活動拠点での食事提供を行っています。

足立区にある「アダチベース」の食事提供

「アダチベース」では、孤食対策の一つとして毎日、温かいご飯と味噌汁などの家庭料理の提供を行っています。スタッフやほかの子どもたちと一緒に食卓を囲み、コミュニケーションを図ることで、お腹だけではなく心も満たす時間を作っています。

文京区にある「b-lab(ビー・ラボ)」の食事提供

「b-lab(ビー・ラボ)」では、定期的に文京区に住んでいる・在学している中高生を対象に、一緒に作って食べる活動をしています。料理は生きていく上で大事なスキル。楽しみながらも「料理をする」という体験から学ぶことができます。

宮城県にある「コラボ・スクール女川向学館」の食事提供

宮城県の被災地にある「コラボ・スクール女川向学館」では、中学生を対象に料理店を営む生徒の親が手作りした、おにぎりを販売しています。

子ども食堂のサポート方法

子ども食堂のことを知り「私にできることはないか?」と感じた方もいらっしゃったのではないでしょうか。

子ども食堂では、多くの物資的支援やボランティアスタッフを募集しています。

カタリバが運営する足立区の「アダチベース」でも調理スタッフを募集しています。

>>「こども食堂への寄付の形」についてまとめた記事はこちら

子ども食堂の課題とこれからの広がり

全国に広がりをみせる子ども食堂ですが、「食事に困った子ども以外の利用」など、もともと対象としていた子ども以外の利用もあるようです。しかし、一見するだけでは見分けのつかない貧困層を見分ける安易な術はなく、「子どもたちが継続して利用することを通して見極めるほかない」「そもそも見極めて子どもたちを排除する必要性を感じない」と様々な現場の声が上がっています。

逆に言うと、柔軟な体制で子ども食堂を運営するからこそ、社会に雲隠れする貧困の子どもたちを救えているのかもしれません。