「共感がファンをつくる──社会貢献を仕組み化した新しい会員制度」
株式会社チョイスホテルズジャパン

ご支援いただいている法人様のインタビュー
NPOカタリバのご支援をしていただいている法人様から、ご支援のきっかけ・内容・今後の展望などをお伺いする「ご支援法人様のインタビュー」。今回は、日本全国でコンフォートホテルを展開する株式会社チョイスホテルズジャパン(以下、CHJ)/ブランドマーケティング課セクションチーフの鈴木さまに、ご寄付の背景や取り組みへの思いについてうかがいました。
コンフォートホテル公式サイトの会員制度「Choice Guest Club(TM)」について
2016年に開始したコンフォートホテルの公式サイトの会員制度「Choice Guest Club(TM)」は、会員向けの特別価格で宿泊できるだけでなく、泊まることで社会貢献につながる会員制度です。利用者の方々の旅をサポートし、ともに「世界」と「まち」を元気にするという想いをこめて「旅で世界とまちを元気に。」をコンセプトに掲げています。
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寄付の仕組みについて
「Choice Guest Club(TM)」では、宿泊のたびに「choice」というポイントが貯まり、「choice」は年に一度集計され、SDGsや社会課題の解決に取り組む団体に寄付されます。カタリバもその寄付先の1つとして継続したご支援をいただいています。
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会員制度の見直しから生まれた、社会貢献という選択肢
カタリバ:
カタリバには、2016年から継続して「Choice Guest Club(TM)」という会員制度の中で寄付を行うという仕組みの中でご支援いただいています。まずは、この制度が生まれた背景について教えていただけますか。
鈴木さま:
2016年に、既存の会員制度をゼロから見直すことになったのがきっかけでした。それまでにも会員へのポイント還元などの会員制度はありましたが、宿泊業界も競争が激化していく中で、他社との差別化やお客様との関係構築という面で不十分なところがあったんです。
基盤を築いていくうえで重要視したポイントが、他社との差別化とお客様のファン化という点でした。そこで、「共感」を軸にした会員制度をつくりたいと考えたんです。私たちの価値観や姿勢に共感し、長く応援してくださる方々とつながっていく。そのための方法として、「社会貢献」を会員制度の中心に据えることにしました。
カタリバ:
会員制度というと割引やクーポン発行などが思い浮かびますが、それだけではなく、”価値観の共有”を目指されたんですね。
鈴木さま:
はい。もちろん、キャッシュバックなども選択肢にはありましたが、金銭的なメリットだけではお客様と長期的な関係を築くのは難しい面もあると感じていたため、価値観という土台のところでつながっていけるような仕組みをつくりたいと考えました。
社会課題と向き合う3つのテーマ──環境・教育・雇用
カタリバ:
Choice Guest Club(TM)では、社会貢献のテーマとして「環境」「教育」「雇用」の3分野に注力されていると伺いました。それぞれの分野を選んだ理由を教えていただけますか。
鈴木さま:
私たちはホテル業を営む企業として、社会に対してどのような責任を果たすべきかを考えています。その中で、私たちが展開する事業において特に影響の大きい3つの分野として「環境」「教育」「雇用」に注力すべきだと考えました。
「環境」に関しては、宿泊施設という性質上、建物の運営やお客様の移動に伴ってCO₂の排出が避けられません。だからこそ、地球への負荷を意識し、持続可能な運営のあり方を追求していく必要があると考えています。
そして「教育」と「雇用」は、“人”を大切にする事業だからこそ重要視しているテーマです。ホテルは地域の方々に支えられて成り立っており、お客様とも日々直接向き合う仕事です。従業員の育成や多様な人材の活躍、地域とのつながりの中で、教育や雇用の分野における社会課題は私たちにとって向き合うべき責任があると思っています。
カタリバ:
企業活動の中で必然的に向き合うことになる社会課題を、自分たちの手で解決していこうという意志を感じます。

お客様と一緒に、社会課題の解決に取り組む仕組み
カタリバ:
宿泊代の0.5%を寄付するという仕組みになっていますよね。このようにパーセンテージを決めて寄付をするというのは、かなり思い切った制度だと感じました。
鈴木さま:
ありがとうございます。制度上は、宿泊料金220円(税込)ごとに1ポイント「choice」が貯まるようになっています。このポイントには、会員様ご自身で使えるクーポンの発行や会員ランクのアップなどのメリットがあります。加えて、会員様の貯められた「choice」ポイントは、「応援ポイント」として年に一度集計され、当社からの寄付としてお届けしています。
カタリバ:
宿泊されるお客様にはまったく金銭的な負担のないかたちで、寄付が実現できているのですね。
鈴木さま:
「貯めたポイントの中から自分で決めた分だけ寄付できる」というような仕組みは他社様でもよくあるかと思いますが、当社の場合、公式サイトからご予約いただければ自動的に社会貢献につながる仕組みなので、意識的に寄付をしたことがない方にとっても、無理なく関われる良いきっかけになると考えています。実際、そういった形で社会貢献ができて嬉しいというお声もお客様からいただいています。
被災地域での支援活動に従業員が共感
カタリバ:
数ある寄付先の中から、カタリバを選んでくださった理由を教えてください。
鈴木さま:
先ほどもお伝えしたように、会員制度の立ち上げにあたっては、「環境」「教育」「雇用」という3つの分野に注力しようと決めていました。
その中で、カタリバさんは活動内容が明確で、ビジネスパーソンであるお客様にも、関心や共感を持っていただけると感じました。加えて、当社の従業員からの共感も大きかったですね。
カタリバ:
それはとても嬉しいです。
鈴木さま:
実は、2016年に仙台で全社の大きな会議を行った際、現地の従業員から「子どもたちの学びの場が不足している」という声が多く上がったんです。当時は東日本大震災から5年が経過していましたが、それでもまだ、住む場所や遊び場、学びの場など、子どもを取り巻く環境にはたくさんの課題があるということを知りました。
それと同時に、カタリバさんが東日本大震災で被災した地域で、子どもたちにとって安全安心に過ごせる居場所をつくり、学習支援や子どもたちが自分の未来を描くことへの伴走といった活動をされていることも知ったのですが、従業員たちはカタリバさんの活動にすごく感銘を受けて共感していたんです。そういった経緯もあって、ご支援先として決めました。

単なる寄付にとどまらない“共創”の取り組み
カタリバ:
カタリバの事業のひとつに、「外国にルーツをもつ高校生支援プロジェクト(以下、Roots)」という事業がありますが、CHJ様には、2024年9月と2025年2月の2回にわたって、Roots事業が主催するインターンシップの受け入れにご協力いただきました。
このインターンシップは、外国にルーツをもつ高校生たちがCHJ様の従業員の方々と一緒に、Choice Guest Club(TM)の会員様親子を対象にした多文化共生のイベントを企画・運営するという内容でした。寄付だけでなく、カタリバによる実際の支援現場にもご参画いただいたことについての背景や想いを教えてください。
鈴木さま:
はい。ただ「寄付するだけ」ではなく、従業員や会員様も何らかの形で活動に参加できる機会を大切にしたいという思いがあるので、カタリバさんの他にご支援している団体でも、作業体験をしたり、そこで作成された製品を会員特典のノベルティとしてお客様が手に取れるようにしたり、社会貢献を“自分ごと”として捉えられるような体験の機会をつくっています。
カタリバさんのRoots事業のインターンシップは、外国にルーツをもつ高校生たちが対象で、そういった高校生たちの統計的な人数や、彼らを取り巻く課題が国内で増えていっていると聞いていたので、従業員も含めて一緒に取り組めることがあればと思って実施させていただきました。
また、当社はグローバルブランドなので、多文化共生という観点から会社としてこういった取り組みに参画させていただいて、勉強になりましたし、会社としての可能性を広げていただいたと感じています。
カタリバ:
インターン生の様子を間近でご覧になって、印象に残っていることはありますか?
鈴木さま:
まず企画会議を行ったのですが、高校生たちの着眼点やアイデアの多さには驚かされましたね。言葉ではうまく表現できなくても、一生懸命に課題に取り組む姿が印象的でしたし、私たちだけでは生み出せなかったであろう価値を作り上げることができたと思っています。
また、多文化共生イベントに参加くださった会員の方々からは「どの国も素敵だったとワクワクしている子どもの表情をみることができた」「自分の子どもが高校生のお兄さん・お姉さんに積極的に話しかけていて嬉しかった」など、ポジティブな声をいただきました。イベントの満足度も100%と非常に高かったです。
カタリバ:
実は、今回のインターン生の中には、これまで家庭の事情から参加することがなかなか叶わず、4度目にしてやっと参加ができたという高校生もいました。
本人からは「本当にすばらしい体験で、チャレンジしてよかった。CHJの皆さまのおかげで、安心して参加することができた。またトライしてみたい」と、長文のメッセージが届きました。
ほかにも「普段小さな子どもと話す経験がなかなかないので、どんな声掛けをしようか迷っていたが、やっていくうちに自分から話しかけられるようになって、子どもたちの反応がとてもうれしかった」など、参加したインターン生はそれぞれに自信をつけることができ、意欲も高まりました。改めて、大変有意義な機会をいただきありがとうございました。
インターンシップの事前打ち合わせの様子
「旅で社会を変える」新しい挑戦へ
カタリバ:
今後、どんな取り組みにチャレンジしていきたいとお考えですか?
鈴木さま:
今回、高校生たちとは「多文化交流」をテーマにイベントの企画運営を行いましたが、やり方はさまざまだと思うので、会員制度のコンセプトである”旅で世界とまちを元気にする”というテーマを軸に、大人も子どもも気づきを得られ、世界の循環に繋がっていくような機会をまた一緒に作れたらなと思います。
たとえば、外国ルーツの子どもたちに向けた職場体験のような取り組みも考えています。ホテルの現場で働くことに興味を持ってくれている子も多く、そういった機会をもっと作っていけたらと。
前回のインターンは、カタリバさんとだからこそできた取り組みだったと思うので、そういった機会を今後も一緒に作っていけたら嬉しいです。
インターンシップ後にCHJ様と外国ルーツの高校生と記念撮影
変わり続ける社会の中で、変わらず大切にしていること
カタリバ:
最後に、2016年の取り組み開始当初と比べて、現在のお気持ちに変化はありましたか?
鈴木さま:
そうですね。最初は、被災地支援を主として始めたものでしたが、そこから10年近くが経ち、カタリバさんの活動も、教育現場の多様な課題に向けて広がり続けています。
こうして長く支援を続ける中で強く感じているのは、「続けること」の大切さです。先日、能登の地震に関するお話を聞いた際、かつて東日本大震災の被災地の子どもだった方が大人になり、今度は支援する側になっているというエピソードを伺いました。それは、支援が単なる一時的なものでなく、「未来をつくる循環」を生み出している証なんだと、胸が熱くなりました。
カタリバ:
そういった循環があることは、カタリバとしてもとても嬉しく思っています。時間をかけて続けてきたからこそ見えるつながりですよね。
鈴木さま:
はい。そして、社会にはまだ“名前のついていない課題”がたくさんあります。
世の中がどんどん変化していく中で、カタリバさんがそれを見つけて言語化し、解決へと進めていくということをされているのを見て、我々企業も社会の変化に応じて、新たな課題にも柔軟に目を向けていくことが大切だと感じています。
カタリバ:
ありがとうございます。
教育というテーマは成果がすぐに見えづらい部分もある中で、こうして継続的にご一緒させていただけていることを、私たちも心からありがたく思っています。
おっしゃる通り、カタリバは現場で子どもたちと関わりながら、「まだ名前のついていない社会課題」を見つけて、旗を立て、周囲に伝えていくという役割を担っていますが、それを続けてこられた背景には、やはり皆さまのご支援があります。
御社のように、共に考え、共に歩んでくださるパートナーがいるからこそ、次の一歩を踏み出せます。これからも、ぜひ一緒に、社会に必要な変化をつくっていけたら嬉しいです。
鈴木さま:
こちらこそ、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
参考
▼CHJ様とのインターンシッププログラムの詳細はこちらをご覧ください。
【記事1】タイやフィリピン、ブラジルなど8カ国の国にルーツを持つ高校生を対象にしたインターンシップを開催
【記事2】5ヵ国を巡る世界旅行を小学生が疑似体験
▼東日本大震災で被災し、カタリバが支援した生徒が、2024年の能登地震の支援活動で活躍してくれる様子については、こちらをご覧ください。
【記事3】カタリバの学生スタッフとして能登で活動する古川さん
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