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「居場所がない」と感じる若者が増えているなか、 年間2万人超の子どもが通う「中高生の秘密基地」b-labの“いま”

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ほっとできる場所、居心地のよい場所としての居場所がないと感じている子どもや若者が増えている。また居場所の数は、自己肯定感の高まりや充実感の高まりなどと相関関係がある——

今年6月、内閣府より発表された、令和3年版「子ども・若者白書」から、このような傾向が明らかになっています。

またこの調査は、コロナ禍以前に実施されたものであるため、感染拡大による「ステイホーム」や学校の一斉休校などにより、現在ではさらに悪化しているのではないかという見方もあります。

そのような状況も見られる一方で、子どもたちで賑わう場所も存在しています。

その一つが、2021年8月末にのべ来館者数が15万人に達した、東京都文京区の中高生向け施設「b-lab(ビーラボ)」。「中高生の秘密基地」をコンセプトとしたこの施設は、カタリバが文京区から委託を受け2015年4月に開館しました。

中高生が放課後や休日を過ごす「居場所」として、そして、中高生が自分の興味関心を軸に、新たなチャレンジへの1歩を踏み出す「ステージ」として、10代の日常を支えて続けています。

「居場所がない」と感じる若者が増え続ける中で、なぜ「b-lab」には中高生が集まり続けるのか。b-lab職員の私、横田が、「子どもたちの居場所」の現場からレポートします。

中高生世代のための放課後の居場所
「ユースセンター」とは

「ユースセンター」という言葉をご存知ですか?

「ユースセンター」は、北欧を中心に発展している中高生の放課後や休日の居場所となる施設です。まだまだ日本では知名度が低いのですが、b-labはユースセンターとして中高生の自主性や主体性を尊重しながら、彼ら・彼女らの様々なチャレンジに伴走するなど、多様な挑戦機会がある居場所として運営しています。

「やってみたい」が見つかる仕掛けがたくさん

「誰か一緒に卓球しよー」
「今日のテストめちゃくちゃ疲れたけど明日の対策もしなきゃでほんとやばい」——。

ユースセンターのひとつであるb-labでは、日々中高生が思い思いに自分の時間を過ごしています。

勉強スペース、卓球などのスポーツスペースやボードゲーム、図書スペース、音楽スタジオ、中高生のものづくりをサポートする「クリエイターズスペース」など、中高生たちの「行ってみたい」「これをやってみたい」を引き出す設備や仕掛けがちりばめられているのも、特徴の一つです。

またb-labでは、職員や大学生をはじめとするボランティアスタッフなどが、中高生とのコミュニケーションの中で興味・関心、憧れなどを引き出し、実際に中高生がチャレンジするためのサポートも行っています。

チャレンジの形は中高生それぞれによって様々ですが、高校生自身が企画者となって、スマホで操作できる自分だけのラジコンを制作するイベントを開催したり、中学生が自ら好きなキャラクターのグッズ(アクリルキーホルダーなど)を作るなど、色々なチャレンジが生まれています。

大学生スタッフが自身の人生やキャリア選択などを振り返り語るイベントなども行っている

なかには、b-labで行われた音楽イベントに出演したことがきっかけで照明・演出に関心を持ち、それが進路に影響を与えた卒業生もいます。

ほかにも、不登校だった中学生がb-labに訪れるようになったことをきっかけに、はじめは寡黙だったものの、趣味である漫画やイラストの話を職員と交わすようになってから、明るい笑顔がはじけるようになったような事例もあります。

パイオニアとしてユースセンターの知見を全国へ

b-labには近年、東京都・千葉県などの自治体や、全国で居場所作りに携わっている民間団体からの視察など、定期的に全国の自治体や教育機関などからの問い合わせが入って来るようになっています。2021年4~7月には、4か月で約25件の受け入れを行いました。

このようなニーズを受けてb-labでは、ユースセンターとして運営を続けるだけでなく、そのノウハウを全国に展開していくことも目指し始めています。

8月末には、ユースセンターの先進事例のひとつ、兵庫県尼崎市立ユース交流センターの片岡一樹センター長を招き、トークイベント「居場所づくりトークナイト」を開催し、全国から約90人の教育関係者が参加しました。

「居場所づくりトークナイト」の様子

b-labのようなユースセンターで行われている中高生との一連の関わりは「ユースワーク」と呼ばれていますが、中高生との日々のコミュニケーションに、明確な「正解」と呼ばれるものはありません。

そのためb-labの職員やボランティアは日々、中高生にとってより良い空間を作るため、ユースワークが目指すものやユースワーカー(ユースワークを行う大人)が取るべきスタンスを議論し続けています。

こういった取り組みもb-labの中だけに留めず、ユースワークの重要性を全国に広めていこうと、ユースセンター同士の交流会を企画して横の連携を生んだり、「Youth Work Studio」というユースワークについての論文やユースセンターの情報・インタビューをまとめたウェブサイトの運営も手掛けたりするなど、発信を続けています。

「Youth Work Studio」ホームページより

2021年度後半からは、本格的に全国のユースセンター立ち上げサポートにも注力していくこととしており、11月には、Bリーグチームの「川崎ブレイブサンダース」(川崎市)が立ち上げ予定の子どもたちの居場所について、b-labのスタッフがユースワーク研修を行う予定です。

カタリバが目指す「どんな環境に生まれ育っても、未来をつくり出す力を育める社会」に向け、全国に中高生の居場所を増やすことを見据えながら、b-labはこれからも運営を続けていきます。

Writer

横田 伸治 b-lab(文京区青少年プラザ) ユースワーカー

1993年生まれ。東京都練馬区出身。高校卒業後、東京大学文学部へ進学。在学中はバンド活動やジャズクラブでのアルバイトなどに励む。卒業後は、新聞社に入社し、記者として名古屋、岐阜エリアを担当する。取材で出会った出来事をきっかけに転職を決意し、2020年10月にカタリバへ。現在は、カタリバが運営する文京区青少年プラザ「b-lab(ビーラボ)」にて、自習サポートイベント「マナビ場」やスポーツイベント「b-sports」などを担当している。

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