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「災害以前の笑顔をはじめて見た気がします」熱海土砂災害での支援が子どもたちにもたらしたもの

vol.226Report

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category #活動レポート

writer 編集部

7月3日に発生した静岡県熱海市伊豆山地区での土石流。発災直後は約580名の市民が避難し、26名もの方が犠牲となりました。被災したエリアにある伊豆山小学校は、土石流発生後、臨時休校に。53人の児童たちは、夏休み明けから学校が復旧する11月までの間、およそ6キロ離れた泉小中学校へ通っていました。

カタリバの災害時子ども支援 「sonaeru(ソナエル)」プロジェクトチーム(以下sonaeruチーム)は、発災後の7月6日より現地入りしてリサーチを開始。7月22日より避難所の一角に子どもたちのための居場所「カタリバパーク」を、また8月からは中高生の居場所もオープンしました。

発災から4カ月。sonaeruチームの今回の取り組みと今後の展望についてご紹介します。

12歳までのための「カタリバパーク」と中高生の居場所「熱海Youth Lounge」を開設

7月6日より現地入りしてリサーチを行ったsonaeruチームは、教育委員会や現地の団体と話し、支援の道を模索した結果、熱海市社会福祉課の子育て支援室と連携して、発災19日後に避難所内にカタリバパークを開設するに至りました。

カタリバパークでは、1歳~12歳までの子どもを受け入れ、1日に約15~20名ほどが利用する居場所となりました。また、25名の保育士さんがボランティアとして登録してくださったほか、現地団体「NPO法人しずおか共育ネット」などのスタッフにも協力を得るなど、地元の方と協力しながら子どもたちの支援にあたりました。


カタリバパークの利用者は低年齢の子どもたちが中心で、少々騒がしいときもあり、受験勉強をする中高生にとっては、ベストな居場所とは言えませんでした。そこで、8月からは、熱海銀座商店街の中にあるHUBlic合同会社の協力のもと、中高生のための独立した居場所として「熱海Youth Lounge」をオープン。運営されている会員制コワーキングスペースの一部をお借りし、毎日10名前後の中高生が安心できる居場所として心を休めたり、大学生に勉強を教えてもらうなどして利用していました。10月時点での延べ利用者数は、カタリバパークで593人、熱海Youth Loungeで209人、合計802人となりました。

災害時の支援によって、子どもたちの環境はどう変わったか

カタリバはこれまで、さまざまな災害が起こるたびに必要に応じた緊急支援に取り組んできましたが、緊急支援によって子どもたちにどのような変化が起こったのかといった事象やデータについては、十分に検証できていませんでした。また、学術的な面から見ても、年々増える被災地に関する研究の多くは自然科学系の研究が中心であり、災害時の子ども支援に関する研究はそれらと比較すると蓄積が著しく少ない状況にあります。

そこで、今回の支援では、福島県を中心に被災した子どもたちに関する支援や研究を進められてきた広島文化学園大学の伊藤駿講師にアライアンスパートナーとしてご協力いただき、今回の支援によって被災地の子どもたちの環境がどう変わり、行動がどのように変わったのかを知る、という新たな取り組みを始めました。伊藤先生には、私たちと共に支援活動に参加される中で、子どもたちに寄り添い信頼関係を築きながら、現場で見て感じ取ったことを研究に活かしてくださる姿勢で取り組まれるなど、我々と同じ目線でご参加いただきました。

伊藤先生によると、「今回の支援は子どもたちが心身を回復するための生活環境そのものを支えていた」といいます。具体的には、次のようなお話がありました。


「今回は被災した子どもたちの保護者を対象に、学術的観点に則った調査ヒアリングをさせていただきました。そうした中で、発災直後の子どもたちが突然変化した生活環境に馴染めず、それまでに見られなかったような甘え方や行動をしたということが改めてわかりました。また、今回の災害は多くの方がホテル避難となり、ある程度プライバシーが守られた一方で、より閉じこもった空間になった結果、助けを外に求めにくい状況も生まれていたように思います。不安定な子どもを抱えながらも外に助けを求められなかった保護者が精神的に擦り切れてしまい、子どもにちゃんと向き合うことができず、逆に叱る頻度が増えてしまう家庭もありました。今回のカタリバの支援は、安心安全な環境で遊ぶことにより子どもたちの心が癒えていったことはもちろんのこと、毎日朝から夕方まで子どもたちを預かることによって、保護者は一人で心を落ち着かせる時間を得ることができ、生活再建に関する手続きなどに集中することもできるようになっていました。避難生活の中で、多くの子どもたちが最も長い時間を過ごすのは保護者です。こうした支援は保護者の方のメンタルや体調の回復にもつながり、結果として子どもたちの生活環境を良い方向に促し、1日も早い心身の安定に繋がったと考えられます。」

また、子どもの変化としては他にも、カタリバパークへ通うことで学びや楽しみが増えた、日常への軌道修正ができた、災害以前の笑顔がはじめて見られたという声があったと言います。

sonaeruチームの担当者の目線からは、今回の支援を通して、子どもたちが安心安全な環境で遊ぶことで落ち着きを取り戻し、生活リズムが整うことで夜眠れなくなっていた子が眠れるようになるなどの変化が見られたと言います。中には、もともと保育園へ通っていなかった子どもが、災害をきっかけに支援を使ったことで社会性が育まれたのか、ボキャブラリーがぐっと増えたという事例もありました。


被災や避難生活によって負った心の傷が深くなることを防ぐためにも、今後も引き続き、アライアンスパートナーである伊藤先生とともに、子どもの緊急支援の研究を続けていく予定です。また、今回の研究成果については、来年春以降、伊藤先生より発表される予定となっています。研究者との協働により、こうした研究の成果をしっかりと社会へ還元し、災害時でも子どもたちが不利な状況に置かれないための支援の必要性を訴えていきたいと考えています。

現地団体との連携により、持続可能な支援体制を目指す

どのような災害でも、関連する報道が減ったからといって、復旧が完了したわけではありません。また、心の傷は被災した瞬間だけ現れるものではなく、1年後2年後に表面化することもあり、ある程度被害状況が落ち着いた後も継続した支援が望まれます。そのため、この熱海での活動も10月以降は現地団体を中心とした体制へ移行し、支援を引き継いでいく方針です。

最後に、今回の支援は、日頃よりカタリバを応援してくださっている支援者のみなさまからのご寄付にて実現しました。改めまして、みなさまのサポートに心より御礼申し上げます。これからも活動を継続していくためにも、ぜひカタリバを引き続き応援いただけると幸いです。

-TEXT:ミノシマ タカコ

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