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「地元の高校生が、いつか地域のプレイヤーとして戻ってきて、未来の高校生を刺激する。そんな循環をつくりたい」彼がマイプロジェクトのパートナーになったわけ/「PARTNER」#04

vol.227Interview

date

category #インタビュー

writer 編集部

Profile

佐藤 柊平 Shuhei Sato 全国高校生マイプロジェクト岩手県パートナー/一般社団法人いわて圏代表理事

1991年岩手県一関市生まれ。高校時代に地域との接点があった経験から、地元の活性化に関心を持ち明治大学農学部にて地域づくりを専攻。都内のPR会社にて全国各地の移住促進や地方創生事業に従事した後Uターン。一般社団法人いわて圏を設立し、岩手の公益的・社会的事業のプロジェクトディレクションを生業に事業を展開。探究・マイプロ領域でも「岩手における学びの生態系づくり」をテーマに活動中。岩手県総合計画審議会(若者部会)委員、一関市総合計画審議会委員など。

2013年にスタートした実践型探究学習「マイプロジェクト」。現在では全国で「地域Summit」が開催されるほど規模、内容ともに大きく成長しています。岩手県では県内の企業・団体・プレイヤーが実行委員会を組織し、多様な主体が高校生の学びをサポートしてきました。

「一般社団法人いわて圏」代表理事の佐藤柊平さんもそんなおひとり。行政や企業と協働し、地域振興や地域づくりに携わってきた佐藤さんですが、これまで取り組んできた「地域振興」と「教育」の取り組みがセットになることで、地域に大きなインパクトを生み出していきたいと言います。

「地域パートナー」には教育分野を主事業にしている団体が多い中、地域振興分野をメインにしている「一般社団法人いわて圏」がなぜ参画を決めたのか。その想いについてお話を伺いました。

連載「PARTNER」では、「地域パートナー」のように、カタリバのパートナーとして各地で活躍する人物に焦点を当ててご紹介していきます。

「地域にもっと深く関わりたい」
岩手県へのUターンを決意

—佐藤さんのバックグラウンドを教えてください。

高校卒業までを岩手県一関市で過ごし、大学進学とともに上京しました。新卒で入社したのは全国のシティプロモーションを行うPR会社。東京を拠点に全国各地を動き回り、さまざまな都道府県や市町村のお仕事をしていました。多くの場所・人に関われる仕事は魅力的で全国を駆け回っていたので、当時僕のスマートフォンの行動履歴はすごいことになっていました(笑)。

その一方で、どうしても浅く薄くという関わりが多く、どの地域に対しても表面的な関与に留まっていることに悶々とした思いも抱いていました。もっと地域に深く関わっていきたい、これまで東京の会社に外注されていた地方創生領域の仕事を、地元でも同じパフォーマンスやレベル感でできる事業体を作りたいと思い、岩手県へのUターンを決意しました。

—「いわて圏」設立への想いは?

岩手に戻ってきたのは2017年の終わり。地元の観光地域づくり法人(DMO)の事務局に勤務しながら、2018年に一般社団法人いわて圏を設立しました。

最近「関係人口」という言葉が地域創生界隈でのホットワードになっていますが、東京にいる頃から個人の活動として、岩手県出身者や岩手県が好きな人、復興支援をきっかけに岩手とのつながりができた人たちが集うイベントを主催していました。

年に1回行っている「岩手わかすフェス」もそんなイベントのひとつ。首都圏在住の岩手県出身者や岩手ファンの人たちが一堂に会し、岩手への想いを語り合っています。

「岩手わかすフェス」の様子(2018年)

県外にいる岩手出身者や岩手ファンの人たちって、結構岩手に対する想いが熱いんです。けれど、復興支援のボランティア活動が落ち着いてきた頃から、岩手との分かりやすい関わり方が減っていて。

一方、岩手県内を見ると、人手不足や硬直化した事業・プロジェクトなど、地域課題がなかなか解消されない現状があったりします。

人口がどんどん減っている中で、県内在住者だけで地元の産業や地域社会を維持するのは困難になりつつあります。それよりも、県外にいる岩手に想いを寄せる岩手ファンの人たち=関係人口の力で、岩手を今まで通り維持したり、新しい化学反応を起こしたりすることができたら、お互いにとってハッピーなのでは?と思っているんですよね。

—県内にいる人も、県外にいる人も、岩手に思いを寄せる人なら誰でも関わることができる。だから「いわて“圏”」なんですね。

岩手県に住んでいる県民だけでなく、広い意味での「いわて圏民」も一緒に岩手という地域をつくる。岩手に関するさまざまな取り組みに参加して、岩手を面白くしていく。そういう状態をつくるのが、いわて圏の目指しているところです。現在は岩手県をはじめ、全国の県や市町村から移住促進、地域活性化などいわゆる人口減少対策系の政策案件を引き受けています。

岩手出身の高校生に、
地域とのポジティブな接点やつながりを

—佐藤さんはどのようにマイプロジェクトと出会ったのですか?

2019年に行われた東北の高校生がマイプロジェクトの取り組みを発表する場、「マイプロジェクトアワード東北Summit」にサポーターとして参加しました。第一印象は「おお!なんだこれ!!」って(笑)。

まず、東北にこんな高校生がいるのか!!というのが衝撃でした。さらに様々な分野から社会人や大人が関わっていて、その裾野の広さにも驚きました。

もちろん高校生からも刺激を受けますし、こういった場を一緒に作っているカタリバや各業界のプレイヤーのみなさんにも刺激を受けて、僕にとって大きなインパクトがありました。

—印象に残っている高校生の姿はありますか?

探究活動を通じて自分の好きなこと・興味のあることを深めている姿や、実際にアクションを起こしている姿、そしてそこから出てくるリアルな想いや思考にまずは感銘を受けました。

実は僕も高校時代、岩手の風景写真を撮ることに熱中していたんです。今思えば、これは僕にとってのマイプロジェクトだったのだと思います。

写真好きな地域の大人たちに応援してもらっていましたが、同級生には別の世界にいる変わり者のように思われていたかもしれません(笑)。そんな自分の経験とも重なって、東北にちゃんと自分のやりたいことを表現したり、アプローチしたりしている高校生がいるのがすごく喜ばしいなと思いました。

—ご自身の原体験にもマイプロジェクトがあったのですね。

高校生の時期って、部活や勉強などやらなきゃいけないことが概ね決まっていて、+αの部分って見つけにくいと思うんです。でもそれによっていろんな可能性が閉じてしまうのは、もったいない。高校生の日常の時間の使い方がもうちょっと弾力的になっていけば…と思っていたので、マイプロジェクトはまさにそんな取り組みだなと感じました。

—いわて圏の活動とつながる部分もあったのでしょうか。

マイプロジェクトに参加している高校生は、地域をフィールドにしている子も多いですよね。僕たちも移住促進や地域活性化など、県庁や市町村と協働する機会がとても多いんです。そういう意味でもすごくマッチするなと思っています。

加えて、移住促進の事業は岩手県外にいる人に向けて、「岩手県に移住しませんか?」と伝えるので雲をつかむような活動だったりします。こういった事業をしていく中で、岩手ファンになる可能性がある“岩手出身の高校生”が県外に出て行く前に、地域とのポジティブな接点やつながりを持つことがとても重要だと考えていました。

マイプロジェクトでの出会いや思い出が、将来的に「岩手に残ろう」とか、Uターンや関係人口的な形で岩手と関わり続けたいという選択に繋がっていけばいいなと思います。

いわて圏な仲間とともに
「学びの生態系」をつくる

—地域パートナーとして、どんな活動をしていますか?

今年度から、マイプロジェクトアワード岩手県Summitの運営をいわて圏が担うことになっています。

また、Summitという1日限りの取り組みを実施するだけでなく、岩手全体で高校生の探究活動をサポートする「学びの生態系」をどうつくっていくのか?にアプローチしたいと考えています。

そのためには、高校生が学びやすい環境づくりだけでなく、地域の大人のコミュニティづくりや各地のプレーヤー・県内自治体とのつながりを活かした仕組みづくりも必要です。そういったネットワークづくりを、県内外から岩手県に思いを寄せる「いわて圏な仲間」とともに取り組み始めています。

—県内の高校とも取り組みを進めているそうですね。

県内の高校から依頼をもらい、生徒向けの探究学習プログラムの企画・コーディネート・ファシリテーションも行なっています。

探究を進めていくうえで重要なのが、高校生が自分の視界を広げていくプロセスだと思います。「岩手にもこんな大人がいるんだ」「岩手出身でこんな人がいるんだ」と、見える景色をどんどんどんどん広げてほしい。

高校の授業では、いわて圏が関わりを持っている様々な業種のプレーヤーを紹介して、交流をしています。生徒にはそういった出会いの中から、自分の体重が乗る探究テーマを見つけてもらえたらいいですね。

さらに「もっと深めてみたい」「アクションをしてみたい」という生徒のサポートもできるのが、いわて圏ならでは強みです。岩手のいろんな業界にネットワークがある自分たちだからこその役割かもしれません。

「このジャンルなら〇〇さんかな」と、呼吸をするように岩手のいろんな情報を提供できますから(笑)。

岩手でも「見たい景色は見られる」と伝えたい

—“教育”以外の分野を専門とする団体が地域パートナーになるのは珍しいように感じます。

そうですね。僕たちはずっと地域振興系の仕事をしてきたので、これまで“教育”と交わる機会はあまりありませんでした。今まさに、教育現場に足を運んで、先生との共通言語を持つべく理解を深めているところです。

しかし岩手全体で見ると、地域振興と教育の取り組みがセットになることで、すごく大きなインパクトが生まれると思っています。

—地域振興と教育の取り組みがセットになることで、どんなインパクトが生まれるのでしょうか?

今後の事業として、岩手出身の高校生・大学生・社会人のそれぞれのライフステージに合わせた、岩手との関わりを継続させる仕組みづくりをしたいと思っています。

まず、岩手県内の高校生には探究活動を通じて地元のことを知りつつ、自分の好きなことを見つけてもらう。大学生になると県外に出ていく生徒も多いので、大学生向けの関係人口づくりの取り組みを通してつながりを維持していきたい。

さらに、社会人になった頃には社会人向けの関係人口の取り組みや、移住促進の事業でアプローチをし、戻ってきた人たちとはプロジェクトをご一緒したり、マイプロジェクトアワード岩手県Summitで高校生のサポートをしてもらったり。

そうやって、高校時代につながりができた生徒が、地域のプレーヤーとして、高校生をインスパイヤする側として戻って来てくれるような循環を生み出していきたいですね。

大学生向けプログラムの様子

—素敵な循環が生まれそうですね。

岩手をキーワードに、いろんなライフステージの関わり方や生態系をつくっていくのが、いわて圏としてやりたいことです。「高校生でも大学生でも社会人になっても、岩手に関わりを深めたいならいわて圏がいます!!」みたいな。そこに向けてアプローチをしていきたいと思っています。

—いわて圏が描く未来に、高校生はどう関わっているのでしょうか。

岩手でも、「見たい景色は見られるんだ」と伝えていきたいですね。高校生の頃に見える範囲ってすごく限定的なので、「岩手って何もないな」「岩手はなんてつまらないんだ」というネガティブな感覚が浸み込んだまま、ただただ県外に流出してしまう現状をどうにかしたいと思っています。

マネタイズも含めて、地域振興系の取り組みをずっとやっているからこそ、これまで築いてきた関係性を、財源も含めてフル活用して、マイプロジェクトとうまく合流させていけたらいいなと思います。

もちろん岩手の高校生が卒業後、地域の外に出て東京や世界で活躍するのもいいな、と思います。
必ずこうじゃなければいけないとか、こうあるべきということではなくて、高校生自身の「自分がどうしたいのか?」「どうありたいのか?」に寄り添えたらいいですね。

“自由”とは、“自ら(みずから)に由る(よる)”と書くので、高校生の自らに由るものが、だんだんと形として見えたり、確立されたりしていく過程を僕たちなりにサポートしていきたいです。

 

■一般社団法人いわて圏
ホームページ:https://iwatearea.com/

―TEXT:宮木 慧美
―写真:一般社団法人いわて圏 提供


 

●全国高校生マイプロジェクトでは、本記事でご紹介した「一般社団法人いわて圏」をはじめとする全国の17団体/個人の皆様と「地域パートナー」としてパートナーシップを結び、マイプロジェクトの学びを全国に広げる活動を行なっています。
地域パートナーとの協働や現場視察を希望される方は、こちらのフォームからご相談ください。

●また11/1(月)より、今年度の「マイプロジェクトアワード」に向けたエントリーも開始しました。一人でも多くの高校生のご参加をお待ちしています。
▶エントリー概要はこちら

 

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#01/「生き生きした若者が育つ環境をつくりたい」 その思いから自衛官を辞め、地域パートナーに転身。 彼が目指す「日常的な学びの場と未来の形」とは
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Writer

編集部 編集部

KATARIBAMagazine編集部が担当した記事です。

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