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KATARIBA マガジン

寄付文化が生み出す社員と企業の成長サイクル
株式会社セールスフォース・ジャパン

vol.411Interview

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category #インタビュー #支援法人

writer 編集部

ご支援いただいている法人さまのインタビュー

NPOカタリバのご支援をしていただいている法人さまから、ご支援のきっかけ・内容・今後の展望などをお伺いする「ご支援法人さまのインタビュー」。今回は、株式会社セールスフォース・ジャパン 執行役員の遠藤さまにご寄付の背景や取り組みへの思いについてうかがいました。

社会を変える力を、企業から。1-1-1モデルの挑戦

「企業の社会貢献」と聞くと、どんな活動を想像しますか。時間やお金がかかる大変なことといったイメージを持たれる方もいるかもしれません。ですが実際には、会社が一丸となり、社員ひとりひとりの小さな行動が集まることで大きな力となり、企業や社員にとっても良い循環を生み出していくものです。そのための仕組みを築き、世の中に広げ続けているのがSalesforce(以下 セールスフォース)社です。


 

カタリバ:
御社とは、カタリバが御社の非営利団体向けSalesforce提供プログラムを利用してクラウドテクノロジーを導入させていただいた頃からのお付き合いなので、もう15年近くになりますね。2011年にカタリバが東北で子ども支援活動を始めた頃から、ご寄付や社員ボランティアなどの多岐に渡るご支援もいただいてまいりました。

カタリバ以外への支援も含め、御社ではさまざまな社会課題解決に積極的に取り組まれている印象がありますが、会社として社会貢献活動についてどのように考えられているのでしょうか。

遠藤さま:
セールスフォースは、サンフランシスコで創業された1999年から一貫して「地域社会の一員として、そのコミュニティに価値を還元する存在でありたい」という思いを持って実行し続けてきました。

その中でも特徴的なのが「1-1-1モデル」です。
これは株式の1%、就業時間の1%、そして、製品の1%を社会に還元するという活動です。

そして、「1-1-1モデル」を広げるための取り組みとして「Pledge 1%」というプログラムがあります。これは、セールスフォースがパイオニアである「1-1-1モデル」をさまざまな企業の事業活動の中に取り入れていくというものです。すでに全世界で19,000社以上の企業が「Pledge 1%」に参加して、それぞれの強みを活かした社会貢献を行っています。

1-1-1モデルby セールスフォース社セールスフォースによる「1-1-1モデル」

カタリバ:
「1-1-1モデル」はもちろんですが、それを自社だけの成果とするのでなく、他の企業に対して働きかけて、世の中全体の社会貢献活動がより発展するような仕組みへと広げられているところが、本当に素晴らしいなと感じます。

遠藤さま:
ありがとうございます。
私たちはファーストペンギンになること以上に、他の企業が後に続きやすい仕組みをつくることを重視しています。
まず自分たちが取り組み、そのフレームワークを示した上で「一緒にやりましょう」と呼びかけているんです。

例えば、2030年までに一兆本の樹木を保全・再生・育成しようという世界的な活動「1t.org」の創設メンバーとして、セールスフォース自身はそのうち1億本に取り組むことを宣言し、資金を提供しています。

カタリバ:
先陣を切るだけでなく、それを広めるための仕組みづくりも重視されている点に強い意志を感じます。御社では、どのような社会貢献の姿勢を大切にされているのでしょうか。

遠藤さま:
非常に平たくいうと、「社会を良くしていけるのは国際機関やNPOだけじゃない。企業も人材・サービス・お金を持っているんだから活かしていこうよ」ということなんです。
特にスタートアップ企業には「IPO前に株の1%を社会のために使うことをコミットし、上場後にさらに社会にインパクトを生み出していきましょう」と伝えています。

セールスフォースが実際にやってきたことを、他の企業にも広く浸透させていきたいと思っています。

ちなみに日本では2年前から「Pledge 1%」の窓口ができ、NPOサポートセンターさんが窓口になってくださっているのですが、そのおかげで日本でも多くの企業がこのモデルを取り入れやすくなってきています。

顔の見える協働でスピード感のある支援を実現

カタリバ:
長年にわたり協働させていただいていますが、最初にカタリバにご支援いただいた背景について教えていただけますか。

遠藤さま:
カタリバさんとの最初の協働は2010年12月にSalesforceを提供させてもらったことでした。当社では非営利団体への製品のご提供と活用支援をするという取り組みを行っていて、カタリバさんにもそういったご支援を始めていました。

それから程なくして東日本大震災が発生したとき、当社ではすぐに寄付ページを立ち上げて世界中で寄付を募り、集められた寄付額と同額を企業としてマッチング(上乗せ)し、支援を必要とする非営利団体に迅速に寄付を交付していきました。

その中でカタリバさんには、女川向学館(*)の1か月分の運営費200万円の寄付や、復興支援のために通常より多くのSalesforceライセンスの無償提供といったご支援をさせていただきました。子どもが登下校時にカードをタッチすると保護者に通知が届く仕組みも、Salesforceを活用して実現していただきましたね。

(*)女川向学館…東日本大震災で大きな被害を受けた地域の一つである宮城県女川町で、カタリバが2011年7月に立ち上げた放課後学校。子どもたちに「震災があったから夢を諦めた」ということが起こらないようにという願いが込められ、小学生から高校生に安心して学べる居場所の提供を2022年3月まで直営運営。以降は現地法人へ事業移管。

カタリバ:
当時スピード感のあるご支援をいただけたことは、東日本大震災の復興支援においてとても大きな意味があったと感じています。
カタリバ以外にも御社の世界的な支援に助けられた団体は多いのではないかなと想像していますが、非営利団体との協働の中で大切にされていることはありますか。

遠藤さま:
社会貢献チームを中心に、何千もの非営利団体と関わっていて、コミュニケーションの濃密さはいろいろです。
戦略的パートナーとはできるだけ対面コミュニケーションを重視し、お互いを理解しあえる信頼関係づくりを意識しています。

普段から信頼関係があれば、例えば震災が起こったときにも「現地で誰が動いているのか」「誰に聞けばいいのか」がすぐ分かり、やり取りがスムーズにでき、スピーディな支援につながります。

 

未来をつくる社員主体の社会貢献

カタリバ:
社員の方々の社会貢献活動も活発な印象ですが、実際に社内ではどのように進められているのでしょうか。

遠藤さま:
社員ひとりひとりが主体的に考えて社会貢献活動を実行していくことを重要視しています。

だから我々は裏方として支える存在で、各社員が自分で考えて行動し、成功体験を得られるように後ろから支えることを意識しています。

例えばチャリティイベントを行う際も、社員が自分の業務と社会貢献をどう結びつけるかを主体的に考えてもらい、私たちは「それいいね」とか「こうするともっと良いよ」と後押しします。

実際の例として、オフィスの施設管理部門が企画・運営した「ありがとうWEEK」というキャンペーンがあります。このキャンペーンでは「身近な人に感謝を伝えよう」というテーマで、社員が自由に感謝の言葉を書き込めるメッセージボードを共有スペースに設置しました。1週間にわたり多くの社員が参加し、その参加者数に応じた金額をカタリバさんへ寄付させていただきました。

社員が主体となって社会貢献を形にする体験を重ねることで、会社に言われて参加するボランティアではなく本物の企業文化になっていくと考えています。

しかも、そういった活動に主体的に取り組んだ経験のある社員は、セールスフォースを卒業しても、その文化を次の場所でも実践して広げてくれることも多いんです。

カタリバ:
社会貢献活動が、社員の方の成長の機会をつくることや、その先に出会う企業の発展にもつながっているんですね。素晴らしい循環です。
一方で、実際に社員の方々が取り組まれる際の難しさやつまずきやすいポイントはありますか。

遠藤さま:
社員によってNPOへの理解度は本当にさまざまです。学生時代からそういう活動をしていた人もいれば、全く関わったことがない人もいる。
だから「どこまで分かっているか」を丁寧に確認しながら、サポートしています。

また、活動に迷ったときや悩んだときに役立ててもらえるよう、プレイブックも用意しています。
非営利団体とどのようにつながればいいか、企画をどう組み立てればいいかをマニュアルのような形でまとめていて、社員が安心して取り組めるためのリソースとして提供しています。

セールスフォースの社員によるボランティア活動の様子

社会貢献カルチャーが入社理由にも。浸透させるための仕組みとは

カタリバ:
「1-1-1モデル」は創業時からの文化だと伺いましたが、入社の理由として魅力に感じる方も多いのではないでしょうか。

遠藤さま:
はい、そう思います。特に最近の若い方たちは社会貢献に関心が高くて、優秀な人材がセールスフォースを選ぶ理由のひとつにもなっています。

また、このカルチャーがあるからこそ「長く働きたい」と思ってくださる方も多く、社員が成長していく中で良い循環が生まれている
と感じますね。

カタリバ:
新しい方にとっては入社の決め手になり、長く働く方にとってはモチベーションになる。この両立は画期的ですよね。
ただ、実際には業務や納期もある中で、社会貢献にリソースを投下するのは簡単ではないのではとも思いますが、いかがですか。

遠藤さま:
セールスフォースでは、グローバルのトップも日本法人のトップも、事業年度のはじめに「今年はどのくらいのボランティア時間を目標にするか」をKPIとして掲げているんです。
それがカスケードダウンされそれぞれの部門や社員の目標に組み込まれていく仕組みになっています。

また、経営陣が社会課題解決のための活動にスポンサーとして積極的に関わることで、NPOの活動に関わっているのも大きいです。

そうした関わりがあるから、経営陣も社員も「私はこのNPOとこういう活動をしています」と自信を持って話せます。日本法人は設立25年になりますが、設立当初から続けてきたことで、今のカルチャーが築けたのだと思います。

社会貢献活動のモチベーションになるような仕組みも導入しています。
例えば、以前は社員がボランティアを通じて生み出した社会的インパクトの指標は時間数が中心でしたが、多様な貢献の形を可視化するために、4年前から「インパクトマイルストーン」という仕組みを始めました。

これは、継続的にボランティアに参加している、同一の非営利団体へボランティアだけでなく寄付をしている、などさまざまな行動に対してバーチャルのバッジを用意し、社員はそれを集めることで自分の貢献を社内で可視化できるというものです。
さらに、一定数バッジを集めると「インパクト・トレイルブレイザー」として社内で認定される仕組みもあります。

カタリバ:
先駆者として認定されるのはうれしいですし、「集める」という行為で自然にがんばれる仕掛けが光っていますね。
社員の方々が意欲的に取り組むためのさまざまな工夫が詰まっていて、大変勉強になります。

カタリバとの協働のこれから

カタリバ:
最後に、カタリバに今後期待することがあれば教えてください。

遠藤さま:
セールスフォースには「信頼・カスタマーサクセス・イノベーション・平等・サステナビリティ」という5つのコアバリューがあります。

なかでも「平等」はカタリバさんの理念とも重なり、強い共感を覚えています。AIや教育の分野では格差が広がる懸念もあります。

カタリバさんをはじめとするNPOのみなさんと共に新しい取り組みを模索し、より大きなインパクトを生み出していきたいです。

カタリバ:
ありがとうございます。
私も御社の「平等」は、カタリバが目指す「意欲と創造性をすべての10代へ」というミッションと、とても近しいと感じていました。

これからも力を合わせて取り組んでいければ嬉しいです。

編集後記

自社だけが突出して実績を出して貢献できていればよいという世界観ではなく、より大きなインパクトを作っていくための取り組みに対して貪欲に取り組んでいる人が集まる企業、それがセールスフォースさまでした。

異なるリソース・アイデアを持つものが集まり知恵を絞れば、相乗効果を発揮して新しい発想を生み出せることを、20年以上にわたってコツコツと積み上げていらっしゃいます。

カタリバへ寄付をいただくことも多いのですが、その寄付金の集め方は実にさまざまです。部署ごとにテーマを設定したキャンペーンを寄付につなげていただくこともあれば、社員の方々が主催する音楽ライブでカタリバを紹介し、そのチケット売上を寄付していただくこともあります。

社員の方とお話をすると、「社会貢献は当たり前」「役に立てていることがうれしい」と、自然に口にされる様子が印象的でした。セールスフォースさまの企業としての社会貢献への姿勢が、働く場所として選ばれる理由、そして社員の方々が働き続ける理由になっているのだと実感します。

経営層や社会貢献部門だけががんばるのではなく、社員ひとりひとりが企業活動に誇りを持つことのできる仕組みづくりの足掛かりとしてご紹介をさせていただきました。

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KATARIBAMagazine編集部が担当した記事です。

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