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ふたば未来学園と福島の挑戦。学校や地域の垣根を超えた探究の可能性とは

vol.415Report

東日本大震災後、2015年に開校した福島県立ふたば未来学園中学校・高等学校(以下、ふたば未来学園)。開校当初から「未来創造探究」に取り組み、2017年からはカタリバがコーディネーターとして探究学習に伴走し、今では探究が学校の文化として根づいています。

令和5年から3年間、文部科学省の「ワールド・ワイド・ラーニング(WWL)コンソーシアム支援構築事業」(以下、WWL事業)の拠点校に指定されたふたば未来学園。今回は、WWL事業の取り組みと成果について、福島県教育庁高校教育課の梅野克也先生、ふたば未来学園企画研究開発部主任の林裕文先生、学校支援統括コーディネーターのカタリバ・横山和毅にインタビュー。

学校間のリソースシェアを中心に、その意義や全国の学校が抱える課題にどうつながっているかについて語っていただきました。

梅野 克也(うめの かつや)/福島県教育庁高校教育課主幹
1973年東京都生まれ、福島県育ち。福島大学大学院教育学研究科を修了後、国語科の高校教員となる。教員28年目。2017年に指導主事として高校教育課に異動となり、探究的な学びの推進等を担当。白河高校教頭、主任指導主事を経て、2025年より主幹となる。

林 裕文(はやし ひろふみ)/福島県立ふたば未来学園高等学校教諭
1978年福島県生まれ、福島大学教育学部を卒業後、地理歴史・公民科の高校教員となる。教員歴25年目。2018年よりふたば未来学園高校へ異動し、2021年より企画研究開発部の主任となる。同校勤務8年目。高校『世界史探究』教科書(第一学習社)執筆者。

横山 和毅(よこやま まさき)/福島県立ふたば未来学園中学校・高等学校 学校支援統括コーディネーター、コラボ・スクール双葉みらいラボ拠点長
1988年東京都生まれ、神奈川県横浜市育ち。専修大学3年生の時に初めて「カタリ場プログラム」に参加。2011年、新卒で認定NPO法人カタリバに入職。首都圏を中心に全国の中学、高校、大学にて、出張授業「カタリ場」を届ける。2016年よりコラボ・スクール大槌臨学舎へ異動し、運営に従事。2019年からふたば未来学園支援を担当している。

原子力災害を経験した福島だからこそ
世界へ発信できること

WWL事業は、世界で活躍できる人材の育成に向け、高校生に高度な学びを提供する仕組みづくりを目指す事業。ふたば未来学園は東北エリアで初の拠点校に指定されました。

掲げるテーマは「原子力災害からの復興を果たし、新たな社会を創造するグローバル・リーダーの資質・能力の育成」。同校が拠点校となり、県内の5つの連携校をはじめ県外や海外の連携校、大学、研究機関などと協働するのが特徴の一つです。

<福島県教育委員会が掲げるWWLコンソーシアム構築支援事業の全体図>

WWL事業の目指すところや意義について、梅野先生、林先生は次のように話します。

「福島の高校生が、国際的な視点をもって世界共通の課題を見つけ、その解決に向けて他者と協働し、国際社会で活躍できるリーダーとなる。そんな姿を描きながら、これからの社会をつくる子どもたちが主体的に学ぶための仕組みづくりとしてWWL事業を位置づけました。そして、福島で取り組む意義として、ふたば未来学園が開校以来取り組んできた、“震災・原子力災害からの復興”をテーマに掲げました」(梅野先生)

「原子力災害により福島が経験した地域コミュニティの崩壊・再編は、今、世界でさまざまな紛争や災害などが起こるなか、世界共通の課題となっています。世界の国や地域の人々と共に学びながら、福島の知見を世界へ発信する動きは止めるべきではないと思いました」(林先生)

学校・子ども・教員の数が減っていくなか、
直面した課題と見つけたヒント

WWL事業を進めるなかで構築したのが、「ふくしまアドバンスト・ラーニング・ネットワーク」。ふたば未来学園を中心に、県内の5つの連携校(福島高校・安積高校・会津高校・会津学鳳中学高校・磐城高校)だけでなく、県外や海外の連携校、教育委員会、研究機関、大学(東北大学、早稲田大学、福島大学)、カタリバなどからなるコンソーシアムで、探究学習の活動や指導を軸に連携が進みました。その背景について、横山と梅野先生は次のように話します。

「2022年度から『総合的な探究の時間』が必修化されましたが、ふたば未来学園のように文化として浸透している学校もあれば、模索している学校もあるのが実情です。また、SSH(スーパー・サイエンス・ハイスクール)に指定されている学校では自然科学系のテーマを扱った研究寄りの探究が多く見られるなど学校ごとの特色もあり、それぞれのもつ強みを活かして学び合えるのではないかという期待がありました」(横山)

「先生方へ他県へ学びに行ってもらう先進校研修や、カタリバさんにお願いしている探究スタートアップラボ(*1)のように、他校との交流の機会を出来るだけ作りたいとずっと思っていたなか、WWL事業はとても良い機会となりました」(梅野先生)

コンソーシアムのミーティングは年2~3回。初回は対面、その後はオンラインで開催し、自校の探究学習の取り組みや課題について発表し、情報交換しました。互いの学校で行われている探究発表会を見に行ったり、生徒が他校の発表会で発表したりと、学校の枠を超えた人的交流が生まれていったとのこと。

生徒だけでなく教員同士でもつながりができ、探究についての連携が一気に進みました。もちろん生徒にとっても、他校の同級生たちの発表を聞いたり、他校の生徒からフィードバックをもらったりするのは大きな刺激になったようです。探究活動の発表は校内にとどまりがちですが、それを開くのはいい発想ですよね」(林先生)

「連携校の中で他校発表枠を設けるようになったところもあると伺っています。福島の学校の中で、面白い取り組みが生まれているなと感じています」(横山)

「県としての観点で見ると、他県と同様に学校・子ども・教員の数が減っていくなかでどのように学校間連携や教員のリソースシェアを行うかが課題になっています。今回、WWL事業を通して生まれた教員の人的交流から、『要所では対面で会いつつ、オンラインでも交流を進めるのがこれからの時代の交流の在り方である』など、多くのヒントをもらいました。今後、この交流の輪を県全体に拡大していけたらと思います」(梅野先生)

*1 探究学習の伴走やカリキュラムづくりに課題を感じている全国の高校やその教員に、全国の先進校から生まれた知見と年間を通じた伴走支援を提供する研修
https://www.katariba.or.jp/news/2025/05/23/48039/

海外からのゲストを交え「国際サミット」を開催
前提条件が違う人との対話で生まれた学び

WWL事業の集大成として今年の8月に開催された「福島県WWL高校生国際サミット」(以下、国際サミット)。

「国際サミット当日にその場限りの形式的な発表やディスカッションを行うのではなく、ラーニング・コミュニティを形成しながらサミットに向けて学び合うことを大事にしました」と林先生は振り返ります。

こうして始まったのが、連携校の有志の生徒たちによる「ふくしまAL探究ゼミ」です。国際会議のテーマ「私たちが災害や厄災をしなやかに乗り越えるために、未来創造に向けて育てていく力(レジリエンス)」のもと、5つのテーマのゼミを用意し、関心ある生徒を募集。連携校の教員や大学・研究機関の研究者、カタリバ職員らも交えつつ、学校横断型で対話を通して理解を深めていきました。対面でのキックオフミーティング後はオンラインでつながりながら、国際サミット本番まで8か月あまり、何度か集まってディスカッションを行いました。

<「ふくしまAL探究ゼミ」と「国際サミット」の全体図>

探究のテーマは生徒により個別具体で、1校だけで各テーマに精通した人材を手配するには限界があります。例えば自然科学を探究したい生徒をSSHの学校にいる先生とつないだり、震災や復興を探究したい生徒を双葉郡に居住する先生につないだり。

今回のふくしまAL探究ゼミのように、自分がやりたいことに合わせて他校の先生に相談ができたり、近いテーマに取り組む他校の生徒と協働的に学び合えたりするような、学校を超えたコミュニティをつくっていけたら、生徒にとっても先生にとってもメリットが大きいと思ったのです」(横山)

何度も議論を重ね、ラーニング・コミュニティを形成しながら迎えた国際サミット。1日目は東日本大震災・原子力災害伝承館や震災遺構などを訪れ、2日目からは、各探究ゼミのメンバーに海外からのゲストらを交え、互いに議論し発表しました。

<震災遺構などを訪れる生徒たち>

国際サミットには、海外の連携校の生徒のほかALTをはじめ福島県内で就業・生活する多国籍の方々も参加。当日参加した横山は、インド出身の学生が参加したセッションでの出来事が印象的だったと振り返ります。

「Diversity, Equity & Inclusionのゼミで、ジェンダー平等をテーマにしていた女子生徒たちがいました。ゼミ活動を通してさまざまな人にインタビューをするなかで、平等ってなんだろう、公平・公正ってなんだろうという問いを抱え、『公平と公正があるが、公正のほうが大事でなければならない』という結論のもと当日を迎えました。

ところが、彼女たちのセッションに入ったインド人の学生から、『インドにはカースト制度があり、公正な機会提供を徹底すると、今度は上の階層の人にチャンスが回らなくなってしまう。それもまた不公平なのでは?』という意見が出て。大前提を覆す意見に驚きや戸惑いを感じつつ、改めて問い直す姿が見られました。これは、自分とは価値観が根本的に違う人との対話がなければ生まれなかった学びです。こうした場をもてたことには、大きな意味があったのではないかと思います」(横山)

最後には「2065年 私たちの手紙」と題して、未来の自分たちに向けた手紙をゼミごとに作成・発表しました。

<ジェンダー平等をテーマにしていた生徒たちが書いた手紙>

学校間連携や人的交流を絶やさず
福島から全国へ広げていきたい

WWL事業としては今年度で終了となりますが、「今後につなげていきたい」と梅野先生は話します。

「WWLの取り組み、特に国際サミットでは、生徒たちのコミュニケーション能力の向上や先生方の人的交流の活性化、対面とオンラインを融合させた学校間連携の促進など、これからも活用できそうな成果が得られたと感じたので、次年度以降にどうつなげていくかが課題です」(梅野先生)

「今回のWWL事業では、“廃炉”や“復興”など福島特有のテーマをお互いに学びあえたり、1校だけでは丁寧に伴走できない子もサポートできたりしました。こういった枠組みを、WWL事業が終わってもどう続けていくのか。今後も自分の学校では深めきれないテーマを学びたいと思っている子が、学べる環境を作っていきたいです」(横山)

最後に林先生は、WWL事業の成果を感じつつ、課題も見えてきたと付け加えます。

「WWL事業が終わり、今後はどこが・誰が旗振り役をするのかという課題はありますが、せっかく生まれた学校間連携や人的交流を絶やさず、より良いものにしていきたいです」(林先生)


 

「福島県やふたば未来学園が抱えている課題は、今後全国の学校も直面するであろう課題」だと話した梅野先生。少子化によってクラス数が減ると、探究テーマも減らさなければいけないなど制約があるなかで、どのように探究を豊かにできるか。今回ふたば未来学園が実践した「学校や組織を超えた連携」や「学校横断型の探究学習」を活かし、全国に広げていくことが打開策につながるのではないかと感じた対談でした。

 

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Writer

笹原 風花 ライター・編集者

ライター・編集者。奈良県出身、東京在住。第2の故郷はオランダ・ライデン。高校生向けの大学受験情報誌の編集部に4年間勤めたのち、制作会社勤務を経て2014年に独立。取材・執筆分野は教育や学びを中心に多岐にわたり、企業の社内報や広告制作などにも携わる。

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