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「学校を最も豊かな学びの場に」探究学習の先進地・双葉みらいラボが見据えるこれから/Spotlight #03

vol.250Interview

date

category #インタビュー #スタッフ

writer 編集部

Profile

横山 和毅 Masaki Yokoyama 福島県立ふたば未来学園中学校・高等学校 学校支援統括コーディネーター/コラボ・スクール双葉みらいラボ拠点長

1988年東京都生まれ、神奈川県横浜市育ち。専修大学3年生の時に初めて「カタリ場プログラム」に参加。2011年、新卒で認定NPO法人カタリバに入職。首都圏を中心に全国の中学、高校、大学にて、出張授業「カタリ場」を届ける。2016年よりコラボ・スクール大槌臨学舎へ異動し、運営に従事。2019年からふたば未来学園高校支援を担当している。

度重なる自然災害やコロナ禍など、昨今は社会全体、さらには子どもたちの置かれる環境に大きな影響を与える出来事も少なくない。

すべての10代が意欲と創造性を育める未来の当たり前を目指し、全国各地で活動を行っているカタリバ。
その現場では、状況の変化に合わせて取り組みの内容を柔軟に進化・変化させつつ、目の前の子どもたちに向き合っている。

シリーズ「Spotlight」では、現場最前線で活動するカタリバスタッフの声を通して、各現場のいま、そして描きたい未来に迫る。

2022年度から全公立高校で、「総合的な探究の時間」が本格的にスタートした。しかし、指導法がまだ確立していない学校は多く、指導に苦心する先生も少なくない。そうした全国の学校から、探究学習の先進地として問い合わせや視察が相次いでいるのが、2017年から探究学習を開拓してきた福島県立ふたば未来学園高等学校内にあるコラボ・スクール「双葉みらいラボ」だ。

ふたば未来学園中学校・高等学校の学校支援統括コーディネーターであり、かつ双葉みらいラボの拠点長を担う横山 和毅(よこやま まさき)は、ここで探究学習の進化の過程を見てきた。そんな彼が現場で得た探究学習に必要な視点や取り組みとはーー。

学校こそ一番豊かな学びが起こる
場所であるべき

―まずはじめに、カタリバとの出会いについてお聞かせください。

大学3年生のときにアルバイト先の後輩から、高校生と本音で語り合う「カタリ場」という出張授業のボランティアに誘われて参加したのが最初です。そのときは「就活や自分の成長にプラスになれば」くらいの気持ちだったのですが、どんどんおもしろくなって4年生のときも続けていました。

カタリ場で出張授業のボランティアをしている横山

―その流れで、カタリバへ就職したのでしょうか。

いいえ、実は小・中学生対象の学習塾を経営する企業から内定をいただいていました。その企業はとても魅力的だったのですが、内定をいただいてからもカタリ場での活動が強烈に残っていて。

今の自分に最もしっくりくることは何だろうと考えたときに、「さまざまな境遇の高校生と出会い、一人ひとりを見る大切さを感じたカタリ場での活動」が頭に浮かびました。それで内定を辞退し、カタリバへ新卒で入職しました。

―カタリバに入職した5年後、「コラボ・スクール大槌臨学舎(以下、大槌臨学舎)」へ。その3年後に福島県の「ふたば未来学園、コラボ・スクール双葉みらいラボ」へ異動されていますね。

入職後、カタリ場を5年ほど担当させていただき、新しいチャレンジをしたいと考えて岩手県の大槌臨学舎へ行きました。大槌臨学舎は東日本大震災で被災した町の中高生に学習指導と心のケアを行う放課後学校で、学習支援や地方暮らしなど初めてのことばかりで大変でしたが、とても勉強になりました。
その中で少しずつ、学校の中に入って仕事をしたいという気持ちが強くなっていったんです。

―何かきっかけが?

大槌臨学舎では探究型学習プログラム「マイプロジェクト」も行っていたのですが、当時はまだ探究学習が認知されておらず、参加する学生は多い年度で10人程度でした。当時、その生徒たちが放課後に大槌臨学舎に集まっては「学校にはマイプロジェクトについて話せる人がいない」と嘆いていたんです。

探究学習というとても豊かな学びをしているのに、学校でその話ができないというアンバランスさにモヤモヤするうち、「学校こそ一番豊かな学びが起こる場所であるべきだ」という思いが強くなっていきました。そして学校の中に入って仕事をしたいと考え、探究学習に先取的に取り組み始めていた双葉みらいラボへの異動を希望したんです。

先進的に探究学習に取り組むふたば未来学園、
そして双葉みらいラボとは

―双葉みらいラボについて教えてください。

双葉みらいラボは、福島県立ふたば未来学園中学校・高等学校の校内にある放課後ユースセンターです。ふたば未来学園は2015年の開校当初から「未来創造探究」という独自の探究学習をカリキュラムの柱に置くなど、特色のある教育活動を行っています。2017年からカタリバが協働することになり双葉みらいラボを設立、2019年には新校舎の中に双葉みらいラボのスペースが作られました。

双葉みらいラボで働くカタリバスタッフの集合写真

常時数名の大学生スタッフが生徒たちを出迎え、教科や探究学習のサポート、進路や日常における悩み相談に乗っていて、必要に応じてカタリバスタッフが担任や養護教諭と連携しながら支えています。

また、放課後だけでなく日中は探究の授業「未来創造探究」のサポートも。各学年ごとにコーディネーターを配置し、先生方とともにカタリバスタッフが授業設計や生徒伴走に関わっています。

―なぜカタリバが協働することになったのでしょうか。

ふたば未来学園が開校した当時はまだ避難経験をもつ生徒が多く、心のケアが必要などさまざまな課題がありながら、同時に探究学習という新しい取り組みも開発していかなければなりませんでした。

そこで、マイプロジェクトという探究型学習の授業を行っていたり、同じ被災地である岩手県でコラボ・スクールを開設していたりしたカタリバに、協働のお声がけをいただいたというのが始まりです。

―現在、横山さんはここでどのような仕事をしているのかお聞かせください。

大きく2つあります。1つは双葉みらいラボの全体統括です。もう1つはふたば未来学園の探究学習授業「未来創造探究」の支援で、年間指導計画やカリキュラム、教材などを先生方と一緒に作ったり、新しく赴任されてきた先生方への研修などを行っています。

―先生方と一緒に作るとはどういうことでしょうか。

言葉どおり、探究学習のカリキュラムなどを一緒に企画し、作り上げていくということです。カタリバスタッフは外部講師的な立場ではなく、完全に学校のスタッフとして加わらせてもらっています。先生方と情報を共有し、パートナーとして仕事ができている点は、双葉みらいラボの大きな特徴の1つです。

この3〜4年で生徒も先生も
探究学習に意欲的になった理由

―双葉みらいラボは探究学習に先取的に取り組んできましたが、現在の探究学習の状況についてお聞かせください。

生徒にも先生にも「探究学習をやるのが当然」という雰囲気が生まれていて、「このテーマでやりたい」と自分から言うような意欲的な生徒も増えています。

私が異動してきた2019年当初は、探究学習は年間40プロジェクト程度で、それも5〜6人でチームを作り、頑張っているのはそのうちの1人だけというケースが少なからず見られました。でも今は、1人でプロジェクトを立ち上げる生徒が増え、年間60〜70プロジェクトが動いています。

内容も深みを増していて、外部コンテストに入賞する生徒が毎年出たり、進学後に探究でやってきたことをさらに深める生徒が出たりしている状況です。

―3〜4年でそれほど大きく変わった要因は?

ふたば未来学園の先生方を見ていると、「先生自身が探究を楽しむ」という観点がとても大事だと感じます。生徒は先生が思いもしないような突飛なテーマを出してきますが、そのときに生徒と一緒にそのテーマをおもしろがって学び、プロセスを楽しむ先生の姿勢が、生徒にとても良い影響を与えているのをよく見ます。

カタリバスタッフと先生方が一緒にプログラム開発・カリキュラム作成をしている様子

また、教育的意図をもって伴走してくれる地域の方々が、年々増えている点も大きいですね。例えば生徒が「再生可能エネルギーをテーマにしたい」「まちづくりについて学びたい」と言ったときに、先生やカタリバスタッフだけでは支えきれない部分があります。そういった場合に地域や専門の方とも協力してみんなで生徒の学びを応援していく形が、この3〜4年で進んできたと思います。

―どうしたらそのように地域の方々の協力を得られるのでしょうか。

基本は生徒たちが頑張っている姿を見せることが大事ですが、「協力してもらって終わり」にせず、結果や成果をきちんと見せることも大切です。先日も卒業生が、地域の方々に今の自分たちの姿を報告するオンラインイベントを開催しました。生徒の成長した姿を見て、関わった意義を感じてもらえたようです。

われわれスタッフも、地域の方々と消費し合う関係にならないことを意識しています。地域の方は本業が忙しい中でボランティアとして関わってくださる場面も多く、ただ学校に付き合わされるだけでは持続的な関係は築けません。同時に、高校生が地域の行事などに都合よく駆り出されるのも避けなくてはいけません。

「三方よし」という言葉がありますが、お互いにとって意味のある取り組みを一つひとつ丁寧にやってくことが大事だと思います。

先生同士の対話から知見が生まれ
探究を心から楽しむ姿勢へつながる

―全公立高校でも「総合的な探究の時間」が始まり、多くの先生が苦心しています。先ほど「先生が探究を楽しむ観点が大事」とのお話がありましたが、そのために必要なこととは何でしょうか。

意外かもしれませんが、先生同士の対話・議論だと感じています。先生はみなさん、責任感が強くて一生懸命な方が多いです。そのため探究学習も自分だけでどうにかしようと思い、どんどん苦しくなってしまいがちなので、不安や悩みを吐露できる場を設けることが大事です。

議論する中で「卒業生にこういうケースがあった」「こういう方法もある」などの知見が増えていきますし、先生一人ひとりの強みの活かし方も見えてくるので、みんなで集まって議論し、知恵を出し合って作っていこうという姿勢はとても大事だと実感しています。特にふたば未来学園のすごい点は、先生とカタリバスタッフが一緒に議論できる場やチームが常にあるところです。

―対話や議論によって、ふたば未来学園の先生方に変化はありましたか?

探究学習に対してものすごく前のめりになったり、自分なりの工夫を始めたりと、それぞれのやり方を見つけている先生が多いです。現在の探究学習は学習指導要領の1つですが、生徒に指導をするという関わり方ではなく、1人の人間として自分らしさを大切にしながら生徒と一緒に面白さを見つけようと関わっている先生は、探究学習を心から楽しんでいるように感じます。

自分にとって探究学習を楽しめるポイントはどこにあるかを、ぜひ探してみてほしいです。

―生徒に伴走するうえで、何か気をつけている点はありますか?

「1個のものさしでは評価しきれない」ということは、忘れてはいけないと思っています。探究学習では自身の興味関心から自分なりの課題を発見し、解決する力を高めようと言われています。ふたば未来学園では在校中に実際に課題解決の実践まで求めるので、高校生にとってはハードルが高いです。生徒の中には頑張ったけれどうまくプロジェクトが進まず、校内発表会でも評価されず、落ち込んだり投げやりになったりしてしまうケースもあります。

生徒に伴走している双葉みらいラボスタッフの様子

でもそういう生徒たちも、探究学習を進める中でいろいろな気づきを得て成長しているはずです。目に見える結果や評価だけに目が向いてしまいがちですが、そのプロセスにある「自分だけの学び」にこそ価値があると思います。それは単一のものさしでは評価できず、「生徒ごとに個別の学びがある」という“学び観の転換”が重要です。一人ひとりの学びがきちんと賞賛され、自分で自分を認められるような活動にしないといけないと強く思いますね。

―そういうこともみんなで議論をするのですか?

毎回すごく熱い議論になります(笑)。探究学習がうまくいかなくても、多くを学んで卒業していく子もいますし、探究学習での学びを進路に活かす子もいます。生徒一人ひとりの探究をどう評価するのか、そもそも評価できるのかみたいな話はよく出ます。そうやって深く議論した先にあるものが、学習指導要領を体現することにつながるのかもしれません。

互いの強みを出し合う「共創」が
より良い形を生むトリガー

―今後、双葉みらいラボで計画していることはありますか?

実は今年に入って、全国の公立学校から探究学習に関する問い合わせや視察がとても増えているんです。そこでさまざまな声を聞いて感じるのは、より良い探究学習にするには、学校ごとに取り組みや方針をハンドメイドしていく必要があるということ。

ふたば未来学園も試行錯誤しているところですが、全国の中では探究学習に先進的に取り組んでおり、これまでに生まれた知見も多くあります。かつて私たちが悩んだことは、もしかしたら他の学校が今悩んでいることかもしれません。そうした経験やノウハウを多くの学校に還元できる仕組みづくりを、今年は進めたいと思っています。

双葉みらいラボで中高生たちが過ごしている様子

―具体的にどんなことを行う予定なのかお聞かせください。

双葉みらいラボが、先生方や私たちのようなコーディネーターにとって「学べる場所」になればと思っています。わかりやすく言うと研修センターのイメージなのですが、教えるというより「一緒に学びましょう」というスタンスです。

議論の場に一緒に加わっていただき、どうしたら自分たちの探究学習をもっと良くできるのかをみんなで一緒に考えるような、そういう景色を思い描いています。今年はそのトライアルとして、実証校を全国募集する予定です。

―横山さん個人としての展望はいかがですか?

個人としては、学校の可能性をもっと突き詰めたい想いがあります。学校はGIGA スクール構想だ、ICT活用だ、プログラミング教育だ、探究学習だと、常に変化することを求められます。現場の先生方はとても頑張っていますが、構造的な問題も多く、なかなか歯車が噛み合いません。

でも、子どもたちが1日の大半の時間を過ごすのも、やはり学校なんです。そんな学校こそ、豊かな学びの場であってほしいし、学校がもっと良くなることの重要性をすごく感じます。そのためには、一方が支援をする形ではなく、互いの長所や強みを出し合って「共創」すること。それがより良い形を生み出すトリガーだということを、双葉みらいラボの仕事を通して確信しています。

 

取材中、横山は何度も「自分も成長できると思った」「成長のために必要だと感じた」という言葉を口にした。誰かや何かのためだけでも、自分のためだけでもなく、「常に共に」成長し変わっていこうという彼の姿勢は、これから始めようとしている探究研修センターにも生かされるに違いない。そして学びを届ける活動は、きっと多くの人が豊かになるきっかけとなるのではないだろうか。

-文:かきの木のりみ

 

この連載の記事
#01/「ここがあったから夢が見つかった」という居場所をつくりたい。被災地の子どもたちとの8年間
#02/「“問い”はいつも現場にあるから」震災を機に被災地に移住した彼の10年間

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