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北海道から鹿児島まで全国津々浦々!カタリバ×ETIC.の「ユースセンター起業塾」第1期メンバーが集結。キックオフ研修レポート

vol.257Report

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category #活動レポート

writer 編集部

カタリバは2001年の設立以来、子どもたちがどんな環境に生まれ育っても、未来を自らつくりだす意欲と創造性を育める社会を目指しています。2020年度には、14事業で12万人を超える子ども・若者に活動を届けることができました。

一方で、日本全国にいる10代は約1,200万人。私たちの活動は、20年続けてやっと10代の人口の1%に届いたということになります。また、子どもを支援するNPOの数や大学進学率は都市と地方で差があるなど、教育の機会格差も存在している状況です。

カタリバの『意欲と創造性をすべての10代へ』という使命を実現するためには、一緒に取り組む仲間が必要だと考え、社会起業家の支援に20年以上取り組んできた特定非営利活動法人ETIC.と連携することに。日本全国で10代の居場所づくりに取り組む方々を支援するインキュベーションプロジェクト「ユースセンター起業塾」を立ち上げ、全国各地に子どもたちのためのユースセンター(※1)がある社会を目指しています。

「ユースセンター起業塾」事業創造コース第1期として採用された14団体。

2021年度に、事業の立ち上げを支援する団体を初めて募ったところ、全国から多数の応募がありました。厳正なる審査の結果、2022年度から3年間の助成を行う全国12道県14団体が決定。去る5月19日、20日の2日間で、ユースセンター起業塾の1期生となる14団体が一堂に会するキックオフ研修を都内で開催しました。本レポートでは、北は北海道から南は鹿児島まで、全国各地から総勢約30名が参加した研修の模様をお届けします。

学校も行政も、
地域の子どもに価値を届けるための「仲間」

オープニングでは、「これからの社会におけるユースセンターの意義とは」をテーマとしたインスパイアセッションを開催。

ユースセンター起業塾の選定委員を務めた神山晃男さん(株式会社こころみ 代表取締役)、白上昌子さん(NPO法人アスクネット 顧問)、豊田庄吾さん(海士町役場 人づくり特命担当 ひと・学び・還流づくりジェネレーター)をゲストに、カタリバ代表理事の今村と、本事業で協働するETIC.の番野智行さんも加わりセッションを進めました。

インスパイアセッションの登壇者。

冒頭、今村がカタリバ創業時の苦い経験も踏まえ、ユースセンター起業塾立ち上げの背景を語ります。

「カタリバを立ち上げた最初の10年は、アルバイトを掛け持ちして生計を立てながら、余った時間でNPOの活動をしていました。当時は一生懸命向き合っていましたが、今となっては何をやっていたのか思い出せない時間も多くあって。

そのような状況の中で参加したのが、ETIC.の社会起業塾でした。異なる領域で社会に新しい価値を届けようとする存在にすごく励まされた一方、当時一番欲しかったのは『教育』という同じテーマで活動する仲間だったんです。

多様な教育課題を抱える中で、教育に割けるリソースには地域によってばらつきもあります。子どものための第3の居場所(サードプレイス)の必要性は今後ますます高まっていくはず。カタリバとしては、10代が容易にアクセスできる中学校区に1つずつユースセンターを作っていきたい。

その目標の実現のために、同じ想いをもって地域で活動していく仲間を増やしたくて、ユースセンター起業塾を立ち上げました。これからは皆さんと一緒に悩みながら頑張っていきたいなと思います」(今村)

ユースセンター起業塾立ち上げの背景を語る今村。

ゲストからは、10代を対象とした活動が地域に受け入れられるまでに行った創意工夫や、ユースセンターという新たなサードプレイスを地域に作るうえでのヒントが示されました。

2009年に島根県隠岐郡海士町へ移住し、高校魅力化プロジェクトへの参画を経て、公営塾『隠岐國学習センター』を立ち上げた豊田さん。学校や地域の方との関係性構築について語りました。

「隠岐國学習センターと、学校や先生との関係性づくりにかかった期間は約5年ほど。

古いやり方から新しいやり方へのアップデートではなく、地域の子どもたちにとって何が良い学びなのかを先生と何度もコミュニケーションを重ねる中で、連携の形を模索し続けました。少しずつ学校や地域の方々に受け入れられてきたなと感じたきっかけは、子どもが変容していく機会を実際に作ったことでした。

これから皆さんも同じような壁にぶつかると思いますが、仲間として長く関わっていきたいと思っているのでよろしくお願いします」(豊田さん)

NPO法人アスクネットで顧問を務める白上さんからは、ご自身の経験が共有されました。

「学校の先生以外が教壇に立つこと自体がタブー視されるような時代から、地域社会がもつ教育資源と学校を結びつけることで、アスクネットは理想的な『キャリア教育』をコーディネートしてきました。

活動の中で大事にしていたのは、学校現場が何に困っているのかに寄り添い、先生が抱える悩みや苦しみを分かち合う姿勢です。そのスタンスをもち続けたからこそ、徐々に社会人の方を学校へ連れていくことが認められたと思っています。

自身の経験で役立つものはぜひ皆さんに伝えていきたいですし、皆さんから私も学びたいです」(白上さん)

登壇者の話を聞き、参加者の一人である北海道砂川市で活動をするみんなのすながわプロジェクト子どもサポーター部会の望月さんはこう話しました。

「学校や行政との対話の中で、難しさを感じてしまう場面もありますが、結果を残している先輩方のお話からたくさんヒントをいただきました。学校教育に携わる皆さんへの敬意をもち続け、『地域の子どもたちのために “一緒に” 取り組みましょう!』というスタンスを大切にしていきたいです」(望月さん)

実際に行って、見て、感じるユースセンター

今回の研修では、参加者が4つのグループに分かれ、2種類のグループワークを順番に実施しました。そのうちの一つが、カタリバが文京区で運営するユースセンター「b-lab(ビーラボ)」と、足立区で運営するユースセンター「アダチベース」への訪問です。

b-labを見学する様子。

岐阜県郡上市で活動するNPO法人セブンシーズの山村雄太さんは、ユースセンター/ユースワークの共通体験や共通言語の獲得を目的とした今回の訪問を貴重な機会だったと振り返ります。

「ユースセンターという場所を実際に見ることで、そこにいる子どもたちの姿から、その空間の価値の大きさを実感できました。自分たちの地域でどういったユースセンターを作っていくのかイメージを具体化する貴重な機会となりましたし、モチベーションもますます上がりました」(山村さん)

さまざまな事情を抱えた子どもたちの支援に取り組む香川県高松市の一般社団法人ももの伊澤絵理子さんは、2拠点で感じたことを語りました。

「b-labとアダチベースの2ヶ所を訪問することで、それぞれの特徴を比較しながら、居場所の空間作りにおける工夫を知れたのが良かったです。また、どちらのユースセンターでもコアバリューをしっかりと定義し、スタッフやボランティアの方々と共有することの大切さを感じました」(伊澤さん)

「中高生の秘密基地」というコンセプトで多くの中高生を迎え入れているb-labと、「文化資本」や「社会関係資本」を子どもたちに届け、貧困の連鎖を断ち切ることへの寄与を目指すアダチベースという、特徴の異なる2拠点を訪問したことも学びにつながったようです。

スタッフからアダチベースの紹介を受ける参加者。

あるグループの訪問時には、中高生スタッフ(※2)自らがb-labの館内を案内する場面も。

「b-labには学年も学校も違う利用者がたくさんいて、ここで働くインターン、職員含めて幅広い年齢層の友達ができた感覚になるんです。b-labに来ると、いろんなナナメの関係(※3)があるので楽しいです!」

そう語る中高生の姿からは、ユースセンターに対する10代ならではの価値観を感じることができました。

地域や事業内容が違っても、
抱える悩みや想いには共通する部分が

もう一つのグループワークでは、参加者が抱える問題について、他の参加者やメンターと対話する時間が設けられました。

お互いの問題について相談し合う参加者。

参加者全員で問題解消に向けて知恵を出し合う対話型のワークでは、「利用者が固定されている中で、ターゲットの中高生にどうやったら来てもらえるか」「団体の運営及び事業を担ってくれる人材をどう確保するか」といった、10代の集客方法から団体の採用活動にいたるまで多様な問題が提起されました。

福島県郡山市を拠点とするこおりやま子ども若者ネットの小林直輝さんは、対話型ワークの時間について率直な感想を話しました。

「それぞれの課題感について問いやアイデアを出すと同時に、自団体においても同様の課題を感じることもあり、他団体の話をしながら自団体の今後の取り組み方についても内省する時間になりました」(小林さん)

また、岩手県岩手郡岩手町で活動を始めたNPO法人SETの上田彩果さんは、対話型ワークについてこう振り返ります。

「自団体での悩みや困りごとを話すと、他の地域で活動されている皆さんのご経験や視点から解決策を考えてくれて、とてもありがたかったです」(上田さん)

地域や事業内容は違っても、子どもにとってどのような機会や居場所があると良いのかという同じ問いに向き合い続ける他団体との対話から、新たな学びや気づきを得たようです。

一方、石川県珠洲市で拠点づくりを目指すガクソーの北澤晋太郎さんは、メンターとの面談を通じて勇気づけられたと言います。

「これからの自分たちの活動に対して、メンターの方々が言葉にして価値づけをしてくださり、ありがたかったです。皆さんの想像力や経験値に圧倒され、こんな仲間ができて本当に頼もしいと思っています」(北澤さん)

メンターとの個別面談の模様。

スタートラインに立った
ユースセンター起業塾のこれから

最後に、参加者は研修での学びや気づきを踏まえ、今後の目指す姿とアクションを宣言し合いました。

鹿児島県沖永良部島で10代に多様な機会と居場所を届ける一般社団法人えらぶ手帖の地下智隆さんは今後のビジョンについて語りました。

この研修は、『子どもたちのための』という活動の原点に戻って考える時間となりました。子どもが内発的に探究できる学びの場の実現に向けて、『子ども』を主語にして、学校、行政、地域とより良い関係性をこれから築いていきたいです」(地下さん)

地域で新たな居場所を立ち上げる活動は、必ずしも周囲の理解や賛同をすぐに得られる訳ではありません。ときには厳しい声や批判もある中で、長い時間をかけて信頼関係を築いていく必要があります。だからこそ、同じ志をもって取り組む仲間とのつながりが活動の支えになるはずです。

自身も投資会社から独立し事業を立ち上げた株式会社こころみ 代表取締役の神山さんは、参加者にエールを送りました。

「(ユースセンターやユースワークの価値が)世の中にまだ認知されていないなかで、絶対に価値があると信じて突き進む皆さんには、これからたくさんの困難があると思います。けれど、そこで挑戦する姿勢はものすごく格好良いです」

キックオフ研修を終え、ユースセンター起業塾はようやくスタートラインに立ちました。今後もユースセンター起業塾の参加者と試行錯誤を重ねながら、子どもたちの選択肢や可能性を広げられる居場所を日本全国に作る取り組みを進めていきます。

キックオフ研修の最後に、今村はこう締めくくりました。

「勝ち筋の見えない世界にようこそ。一緒に頑張りましょう!」

※撮影のため、一時的にマスクを外しています。

【脚注】
※1 ユースセンター 
学校でも家でもない、ユース(若者たち、主に中高生)のための “第三の居場所”
※2 中高生スタッフ スタッフとしてb-labの運営に携わる中高生のこと
※3 ナナメの関係 親や教員(タテ)、同級生の友だち(ヨコ)とは違った “一歩先を行く先輩” との関係


 

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編集部 編集部

KATARIBAMagazine編集部が担当した記事です。

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