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能登に「みんなの居場所」を。コミュニティハウス設立に向け参画団体の経営合宿を開催

vol.427Report

2024年1月の令和6年能登半島地震、9月の奥能登豪雨により、石川県能登地域は大きな被害を受けました。発災から2年以上が経過し、インフラの復興が進む一方で、子どもや地域の教育に関わる担い手不足など、子どもを取り巻く環境はいまだ厳しい状況にあります。

カタリバは、発災直後に緊急的な子どもの居場所「みんなのこども部屋」を開設したことをきっかけに、地域と連携しながら子どもの安心や学びを支える活動を継続しています。その取り組みを通して、地域の中で地元住民を中心とした担い手が育ち、挑戦できる環境を整えることが、本質的な地域再生の土台になると考えるようになりました。

能登の子ども支援を長期的に支えていくためには、今どんな取り組みが必要とされているのか――。この記事では、今の能登地域と向き合う中でスタートした「コミュニティハウスプロジェクト」と、その参画団体について紹介しながら、能登地域の新しい「担い手」たちが集った合宿での試行錯誤の様子をレポートします。

カタリバ×READYFOR(レディーフォー)協働プロジェクトとして始動

「コミュニティハウスプロジェクト」は、カタリバと、社会課題のための資金調達事業を展開するREADYFOR株式会社による協働プロジェクト。

2024年、震災と豪雨に見舞われた能登では被災した建物の解体が進み、人口流出が続く中、「地域コミュニティが失われるのではないか」「ここに残っていいのか」という心配や不安の声が多く聞かれました。一方で、現地で支援を開始していたカタリバとREADYFORには、「能登のために自分も何かしたい」という声も多く届いていました。

「コミュニティハウスプロジェクト」は、そんな地域の方々と、能登への想いを持った全国の方々が出会い、能登の未来を一緒に考えながら、地域の「拠点」をつくっていくプロジェクトです。被害規模が大きい6市町(輪島市、七尾市、珠洲市、能登町、穴水町、志賀町)で、子どもから大人まで多様な人が集まり、地域のみんなが自分のしたいことに挑戦できる拠点が、3年後の2028年3月に完成することを目指しています。

休眠預金活用事業として、カタリバとREADYFORが資金分配団体となり、設立や運営にかかる資金的支援およびプロジェクトの伴走支援を提供。初年度である2025年度はプランニングフェーズとして、1団体あたり300万円規模の支援を開始しています。

▼公式webサイト
https://fund.readyfor.jp/d_deposits/24_ktrb

参加4団体の構想と、向き合っている課題

本プロジェクトに参画するのは、一般社団法人甲駅食堂(かぶとえきしょくどう)、医療法人山桜会(さんおうかい)、認定NPO法人CFFジャパン、一般社団法人三重支援チーム楽笑(らくしょう)の4団体。

合宿前、それぞれの団体は異なる課題を抱えていました。

<山桜会>
地域住民と支援者が協働し、輪島市に地域のコミュニティ拠点としてログカフェを建設するプロジェクト。チーム全員がボランティアで関わっている山桜会の課題は、中長期的な資金の調達。持続的に事業を進めるために、人件費や管理コストをどう捻出するか、そのためにどんな事業計画を立てるべきかを考えていました。

<楽笑>
能登町小木地区にある元銭湯を改修してコミュニティハウスを作り、子どもに多様な大人との出会いを通して、越境体験と学びの機会を提供していくという構想。三重県の支援チームと地元主体者が協働する団体で、まさに物理的な距離を越えて地元の人をどう巻き込んでいくかということに課題を抱えていました。

<CFFジャパン>
七尾市の被災した蔵などの地域資源を利活用して、多世代が交流する「よりあい処」を作ることを計画しています。課題は、異なる地域に住むメンバーたちが副業的に関わっているという事情から、日常的に十分なコミュニケーションが取れないこと。共通する価値観や共感は持てているものの、具体的なビジョンに落とし込み、団体の強みを活かした取り組みとするためには?という問いに直面していました。

<甲駅食堂>
穴水町にある、廃線・廃駅となった旧「甲(かぶと)駅」を改修し、食堂の運営やランチマーケットの開催を通してコミュニティを再建するという構想。しかし、実際に甲駅付近にはチームメンバーが誰も住んでいないという課題がありました。地域の人に主体的にかかわってもらい、それをサポートする体制や仕組みをどう作るか、外部から支える仕組みを検討していました。


地域の未来のために、今、何をすべき?
経営・組織について”とことん”議論

2025年10月におこなわれたキックオフ合宿を経て、4団体が顔を合わせるのは2度目。約2カ月ぶりの再会となりました。その冒頭、カタリバ代表理事の今村久美が、本合宿の目的について語りました。

「この2日間で考えていきたいのは、『未来のためにお金を使う』とはどういうことか。3年後の地域や拠点のありたい姿を思い描いた時、それに向けて2026年は何をするべきなのか――。本気で向き合い、話し合ってほしいと思っています。

今回は、皆さんの“先輩”として、3人の起業家をゲストに迎えています。地域の中で小さな取り組みから始めてきた3人の話を聞きながら、事業や組織の立て直し方、前進のさせ方を考えていきましょう。話を聞いて終わりではなく、聞いたことを何度も自分たちの文脈に引き戻し、考え続けてほしいです」(今村)


3人の起業家をゲストに迎えた「ヒントトーク」のセッションには、合同会社シーベジタブルの友廣裕一氏、株式会社CNCの矢田明子氏、NPO法人ベビースマイル石巻の荒木裕美氏がオンラインで登壇。地域と連携した事業を率いる3人のゲストが自身の経験を語りました。

「外部から来た人間が地域の人々を巻き込み事業を継続させていくために大事なことは?」という参加者からの質問に、シーベジタブルの友廣裕一さんはこう答えます。

自分たちが抜けても、現地の方々だけで運営することのできる仕組みを考えることが大切。地域の方が『本当にやりたい』と思えることじゃないと、事業は続きません。外部から来た自分たちが何かをやらせるのではなく、現地の方々の熱源がどこにあるのかを探し、それを実現するのをサポートする。こういった、依存関係でも主従関係でもないシステムを考えるのに時間をかけました」

他にも、地域や行政との連携を進めるステップや、地域でお金が回っていくビジネスの仕組み、創業期の段階で「これをしておけばよかった」と思っていることなど、さまざまな質問が投げかけられました。

その後のグループワークには、カタリバの経営メンバーが参加。外部からの視点や客観的なコメントを得ながら、ビジョンだけではなく事業を継続させるための組織運営、事業経営について徹底的に話し合いました。

「本当に持続可能な活動になり得るのか」
合宿を経て見つけた、次の一歩

起業家の先輩たちやカタリバの経営メンバー、同じ志を持った他団体の参加者など、外部の人たちと対話しながら組織や経営について考える――。本合宿を経て、各団体は多面的な視点を得ながら今後の事業推進への手応えを感じたようでした。

CFFジャパンは、七尾市だけで事業を展開する危うさを指摘するコメントが、大きなヒントとなったと話します。

「七尾市中島町は人口が5000人程度と人口減少が進み、かなり高齢化している。そこに拠点を作ったとき、それは本当に持続可能な活動になり得るのか、という指摘はグサッときました。

その問いかけを受けて、対象の範囲について議論し、もう少し先の将来を見据えて金沢まで経済圏を広げられたらどうかというアイデアが出ました。金沢という都市圏を巻き込むことができれば、収支や組織運営の面でも、持続可能な形がつくれるかもしれない。その時には、『鉄道駅のそばにある』『建築家がいる』という強みが活きてくるはず。そうした可能性について、議論が進み始めました」

「楽笑」や「甲駅食堂」は、自分たちのように地域外から参画している団体は、外部の人間だからこそ一歩引いて俯瞰的に状況を見ることができたり、普段地域の人同士では話さないような熱い想いを吐露してくれたりするケースがあることを知り、自分たちの目線や存在にも価値があると感じたそう。

一方で、自分たちの役割はどこまでなのか、地域に委ねる部分はどこまでなのか、「役割の線引き」をしっかり考えなければいけない、という次なる課題も見つかり、「その解決策については、一方的ではなく、地域の住民と共に考えていきたい」と話しました。

「ここにいてよかった」と思える地域を目指して

2日間にわたる議論を経て、どの団体も、「ビジョンの実現のための課題をどのように見つけ、どのように向き合い、どのように意思決定まで導いていくのか」が明確になったことが感じられました。先輩起業家たちやカタリバメンバーという外部の視点が議論に加わったことは、このプロジェクトの意義や魅力が第三者に伝わるか、人を巻き込めるか、という俯瞰的な目線を持つ機会にもなったのではないでしょうか。

事業や組織運営への新しい視点を持ち、それぞれのペースで一歩一歩前進していく彼らによって、3年後、能登にはどんなコミュニティハウスができあがっているのでしょう? 実際に活動をする団体の方々も、見守る地域の方々も、さらには支援をするカタリバやREADYFORも、みんなでワクワクしながら一緒に未来を作っていく――。そんなプロジェクトになるよう、カタリバはこれまでの活動で得た知見や仕組みを届けながら、伴走を続けていきます。

 

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Writer

有馬 ゆえ ライター

ライター。1978年東京生まれ。大学、大学院では近代国文学を専攻。2007年からコンテンツメーカーで雑誌やウェブメディア、広告などの制作に携わり、2012年に独立。現在は、家族、女性の生き方、ジェンダー、教育、不登校などのテーマで執筆している。人の自我形成と人間関係構築に強い関心がある。妻で母でフェミニストです。

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