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学校運営に子どもの声をどう取り入れる?「特別活動」を活用した合意形成の実現に大切な2つの視点

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category #スタッフコラム

writer 編集部

Profile

古野 香織 Kaori Furuno みんなのルールメイキング事務局

1995年生まれ。大学在学中、18歳選挙権の実現を契機に、若者の投票率向上や政治参加を推進するための活動を開始。 大学院では、中高校生への主権者教育について研究・実践を行う。 学校の中の民主主義と対話の実現こそが主権者育成の第一歩になるのではという思いから、2021年4月にカタリバに入職。「みんなのルールメイキング」の事業を担当する。

2月16日(月)に開催された中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会 「特別活動ワーキンググループ(第4回)」にて、代表理事の今村から、カタリバのルールメイキング事業に関する事例報告と、特別活動(*1)への提言をさせていただきました。

今回のワーキンググループでは、「学級活動・生徒会活動における合意形成と意思決定」が論点に。まさにルールメイキング事業がこれまで力を入れてきた領域ということもあり、現場からお伝えしたいことを大きく2つに絞って提案しました。

(*1) 「特別活動」とは、学級活動、児童会・生徒会活動、クラブ活動 および学校行事の4つを指し、集団生活や体験活動を通して社会性、自主性、協調性などを育み、望ましい人間関係形成や自己実現を促す教育活動のことをいいます。

合意形成の土台として―「多様な意見・価値観」が保障できるような環境を

学級・学校における合意形成は、それを実現する前段階として、多様な意見や価値観を表出できる・受容しあえる環境を整えていくことがまず大切です。

特別活動は、規律を重んじつつ折り合いをつけながら集団の中で生活することを学ぶ大事な機会であると同時に、学校における「同調圧力」を生んでいるのではないかという指摘もあり、これをどのように乗り越えていくかがこれまでの議論でも触れられてきました(*2)。

これからの特別活動では、当事者意識を持って自分の意見を形成することや、同じ集団のなかにも多様な意見があることを理解し、対話を通じて納得解をつくる取り組みの充実が求められています。そのためにはまず、学級や学校のなかで多様な意見を保障できる環境をつくっていくことが重要です。

次期学習指導要領に向けた全体の論点整理の中で、「民主的で持続可能な社会の創り手」を育むこと、そのための基盤となる考え方として「多様性の包摂」が位置づけられていますが、特別活動はまさに、その入口になっていくのではないでしょうか。

では、どうすればそういった環境が作れるのか。今回はカタリバで連携している学校で行われている実践の工夫を、いくつかご紹介させていただきました。

■つくば市の小学校での実践例

つくば市の小学校では、学級会などの話し合いの場で、自分の意見が言えない、対話が深まらないといった課題があり、全校で「ダイアログカード」(感情カードやニーズカード)を導入。自分の今の気持ちや願いをカードを使って表現することで、 低学年や話し合いが苦手な子も自分の気持ちを言語化でき、相手の意見の背景にある感情にも気づけるようになりました。また、「多数決」になりがちな学級会において、不安や心配の声も重視できるように、子どもたち同士で学級会の進め方を工夫している事例もあります。

■加賀市の中学校での実践例

加賀市の中学校では、恒例行事として行われていた体育祭の全員リレーや合唱コンクールについて、オンラインアンケートで思いを共有できる機会をつくりました。その結果、運動や歌が苦手な生徒、不登校傾向の生徒にとって参加しにくい行事になっていたことがわかりました。生徒会を中心に「走るのが心配な人も楽しめる方法」や「歌以外の方法でも、全員が参加できる合唱コンクール」を検討し、プログラムの一部見直しを行いました。これまで行事が苦手だった生徒からも「参加できてよかった」という声が届いているそうです。

なお、今回のワーキンググループ内では、一人一台端末をいかに全校の意見聴取に活用していくかという論点も上がっていました。全国の小中校の先生方からは、「特別活動において話し合いは重要だと思っているが、行事や委員会活動など常時活動もあるため、なかなか時間がとれない」ことが共通の課題として挙げられています。デジタル活用によって、より広く意見を集約し、スピーディーに分析することで、話し合いの時間を確保している例もあります。カタリバとしても参考事例などを集めていきたいと思っています。

(*2)文部科学省「特別活動における合意形成・意思決定、学級活動、児童会・生徒会活動及び高次の資質・能力について」
https://www.mext.go.jp/content/20260216-mxt_kyoiku01-000047382_3.pdf

合意形成における教師の関わりが、取り組み推進のカギに

もう一つの観点は、「合意形成における教師の関わり」です。

ルールメイキングの現場を5年間見てきた立場として、子どもたちが主体となって学級・学校づくりを進めていくためには、いかに先生方が、熱量と専門的な指導性を持って子どもたちに関わることができるかが重要であると感じています。

いくら生徒総会やアンケートなどで意見を伝えても、職員会議で議題に上がらない、受け止められないという場面をたくさん見てきました。だからこそカタリバでは2019年度から、生徒への直接支援ではなく、受け止める側の先生方への後方支援を続けてきました。

実際、先生からどのようなサポートがあると、子どもたちの主体性や学びの意欲が発動し、取り組みが前に進んでいくのか。この点についても、実際の事例を通じてお話させていただきました。またカタリバの最新調査結果から、学校における意見表明・参加にあたって必要な環境整備や、不登校/不登校傾向(教室外登校)の子どもたちへの機会保障の必要性についても提言しました。

▼3/21に本調査報告に関するイベントを開催します。一般公開ですのでぜひご参加ください。
https://rulemaking.jp/news/4817/

ワーキンググループの中でも、数名の委員から、学校運営において生徒の声を受け止めること、協力のみならず「創造」へと生徒参加の領域を広げていくなどの提言もありました。教員向け研修を充実させるという事務局からの方針も提示されるなど、一歩ずつ前進していきそうな兆しも見えています。

学校現場で「子どもたちの声を取り入れていきたいが、なかなか周囲の理解を得られない」と孤軍奮闘されている先生方にとって、少しでも支えになるような学習指導要領の改訂に繋がるといいなと思っています。

時間数、教員の多忙……実現可能性への問いは続く

今回のワーキンググループでの提案に向けて、事前に小中高の先生方や教員養成に関わる先生方に実態のヒアリングを行いました。

そのなかで「特別活動だけでは到底、納得解をじっくり話し合えるだけの時数が足りない(そのため道徳や国語、社会などの他の授業時間も活用していく必要がある)」「子どもたちの意見を受け止めたい、実現させたいという思いはあるが、教員側にそのための物理的・精神的余裕がない」という葛藤や、「そもそも教員養成課程では特別活動の指導法は1単元分しかなく、内容を網羅するのに手一杯で、実践スキルを高めるためのファシリテーション研修や模擬授業まで至れない」という実態も見えてきました。

今回示された特別活動における「合意形成」の方向性、すなわち「多様な意見・価値観を認め合い、対立や葛藤と向き合いながら 、納得解を創造していくこと」を、どのように学校現場で実現可能にしていけるか?という問いは、ずっしりと残り続けています。

伴走する先生一人一人のスキル・マインドセットはもちろんのこと、学校全体で実現性を高めるためのアプローチも同時に重要だと考えます。話し合いの時間が確保できるための時間数調整、教科横断的なカリキュラムマネジメント、教職員間で合意形成・意思決定サイクルをスムーズに回すための仕組みの整備、限られた時間でも意見収集・分析・論点整理ができるツール導入など、さまざまな環境整備も重要です。

諸外国では、子どもたちが学校運営やルール作りに主体的に参加する「学校内民主主義」を法律で定めている国もありますが、現状日本ではそこまでの整備はされていません。しばらくは各学校、自治体単位での創意工夫が求められていくことになりそうです。

NPOにいるからこそ、理念や大義のその先を見据え、より多くの現場で実践可能なモデルをつくり、現場の実践者を支えていきたい。この会議での提案や議論を通して、そんな決意を新たにしました。


 

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