「2026年 新年のご挨拶」代表理事 今村久美
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新たな年を迎えました。
皆さま、いかがお過ごしでしょうか。認定NPO法人カタリバ代表理事の今村久美です。
日頃より、それぞれの暮らしの中で子どもたちの未来を想い、カタリバの活動を支えてくださっていることに、心より感謝申し上げます。
昨年末には青森東方沖での地震があり、各地で警戒が続きました。
2024年元日の能登半島地震以降、今もなお仮設住宅での生活を余儀なくされている方々もいらっしゃいます。
明日、何が起こるか分からない時代だからこそ、共に思いやり、対話し、支え合う関係性の大切さを、改めて強く感じています。
昨年の夏、カタリバが支援する子どもたちが、石川県能登半島を訪れました。地震と豪雨で、大きな被害を受けた地域です。仮設住宅に暮らす方々が、笑顔で温かく迎えてくださいました。
輪島の夏祭りに参加し、担い手不足の中で地域の方々とともに伝統行事「キリコ」を担ぎました。「来てくれて本当にうれしい」と涙ぐむ現地の方の姿に、子どもたちは、支えられることと同時に、誰かを支える側になる経験をしました。
帰宅後、ある子は「自分も誰かを支えられる人になりたい」と話してくれました。
こうした共に支え合う経験から生まれた強い想いが、子どもたちが社会とつながり、未来を生き抜いていく揺るぎない力になると感じた出来事でした。
<能登の伝統行事で切子灯籠を担ぐ子どもたち>
現場で得た気づきを、全国へ広げていく挑戦
文部科学省の統計では、2024年度の不登校長期欠席の児童生徒の数が約50万人と12年連続で増加するなか、不登校の子どもの約4割にあたる13万人超は何の相談・指導も受けていないという結果が出ました。
私たちが活動の現場で得た気づきを、自治体の政策にも生かしていくことが、多くの子どもたちのためになると感じ、4つの自治体と連携協力していく「不登校政策ラボ」という取り組みも始めました。
<4自治体との連携協定締結式の様子>
▼PressRelease/NPOカタリバと日本財団が4自治体と実証事業開始・連携協定を締結
https://www.katariba.or.jp/news/2025/10/03/49317/
子どもたちが学びや社会から切り離される存在にならない地域をどうつくるのか。
今日も「つらい」と感じながら生きている子どもたちを、誰一人取り残さず、居場所と学びにつなげる仕組みづくりに、行政の内側にも働きかけて挑戦しています。
また、カタリバ代表として昨年は、2030年以降の学校の学びを規定する学習指導要領の検討議論に参加させていただく機会がありました。
「AI」が急速に発達し、浸透する中で、AIの存在を前提とした学びの転換が、正面から議論されています。
生まれた時からAIがすぐそばにあるという時代を生きる子どもたちにとって、学校は何を果たすべき場所なのか。
現在議論されているのが、教科の学習とは別に行われてきた、学級活動、生徒会活動、クラブ活動、学校行事など、いわゆる「特別活動」を、これからの時代の学びの中でどう捉え直すか、というテーマです。
膨大な情報をAIで取りに行ける時代。学校は、多様な人と過ごしながら民主主義を学ぶ場として、意思決定や合意形成を経験する場へと、より明確に位置づけ直す必要があるのではないか。私はそう思っています。
震災から15年、対話していく力を育んで
<コラボ・スクール大槌臨学舎は15年目を迎えました>
「他者と粘り強く対話していく力」。
この重要性は、今から15年前、東日本大震災で被災した岩手県大槌町で、子どもたちのための「コラボ・スクール」を始めたときに、子どもたちの言葉によって気づかされたことでした。
コラボ・スクールは、「子どもたちには安心して勉強できる場所が必要だ」という大人たちの願いから生まれた場所です。
でも子どもたちは一方的に「守られている」ばかりではありませんでした。
地域で起こっている、復興に関する様々な議論や課題に対し、自分たちなりに解決に向けた行動を起こし始めました。
例えば、「石碑ではなく木碑を建てる」という取り組みが生まれました。
▼岩手県立大槌高等学校note「4年に一度、考えよう」
https://oht-hs.note.jp/n/na1975d7e55b8
「木碑を建てる」という結論に達するまで、子どもたちは多くの地域の方たちと粘り強く対話を重ねました。
私はこうしたプロセスこそ、変化の激しい時代を生き抜いていくための大切な力だと感じました。
今、このとき生まれた学びの形は「マイプロジェクト」として、全国の高校生たちが取り組んでいます。また、子どもたちに身近な「学校の規則」という当たり前を、子どもたちから問い直し、大人たちと合意形成していく経験を積む「ルールメイキング」という活動の形も生まれています。
子どもも大人も、共に支え合い学ぶ関係性を
子どもたちの対話の力が育つには、学校から飛び出し、地域の様々な大人たちの関わりが欠かせません。そこで、子どもたちを支えようとする大人たちと、チームを作っていくことにも取り組んでいます。
現在、全国で10代の居場所づくりを広げたいと考えている35以上の団体や自治体とつながり、共に居場所づくりに取り組んでいます。能登では、復興期にある子どもたちを地域で支えようと立ち上がった14の地域活動を応援しています。
<能登で開催されたキックオフイベントの様子>
25年前、2001年に活動を始めたばかりの頃の私は、カタリバの活動が必要であるという確信はあっても、すぐには応援者は見つからず、孤独や不安に耐える日々でした。
けれど活動を続ける中で、ひとり、ふたりと、応援してくださる人が現れました。
そうして今、本当に多くの方がご自身の力を寄せてくださることで、たくさんの子どもたちに活動を届けることができています。こんな私たちの経験も、志を同じくする方々に率直にお伝えし、また私たちも各地の方との対話の中で、たくさんのことを学ばせていただいています。
地域や立場を超え、対話し、共に学び支え合うこと。
こうしたつながりがたくさんあることが、「どんな環境に生まれ育っても、子どもが意欲と創造性を手にできる社会」を、形づくっていくと考えています。
2026年も皆さまと共に、この願いをさらに大きなものへと育てていく一年にしたいです。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
2026年1月1日
認定特定非営利活動法人カタリバ
代表理事 今村久美
<冒頭写真:能登の浜辺にて>