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子どもに対して感情的な強い言い方をしてしまった―そのときの対処法と、関係&自分の整え方

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家庭でも学校でもない第3の居場所「サードプレイス」。子どもたちが安心して自分らしくいられる居場所をつくるには、そこに空間があるだけではなく、関わるスタッフの存在も重要です。

カタリバでは2011年の東日本大震災をきっかけに子どもの居場所を運営してきました。
日々子どもたちと向き合うカタリバのスタッフたちはどんな経験をし、子どもたちとの関わりの中からどんな気づきや学びがあったのか。

今回は、子どもの居場所のスタッフとして働くユキナさん(仮名)のお話を紹介します。子どもに対して、つい感情的な強い言い方をしてしまったときの、子どもとの関係や自分の気持ちの立て直し方を聞きました。

スタッフも人間だから感情的になることはある。
大切なのは、その後のコミュニケーション

数年前の出来事です。
居場所に来ていた中3の男の子と勉強の約束をしていたのですが、勉強時間の直前になって彼が「やっぱり帰る」と言い出しました。それまでも何回か同じようなことが続いていたので、私はつい「約束したんだからやろうよ!」と強い口調で注意をしてしまい、押し問答に。

私にとって、感情を抑えきれずに声を荒げてしまった苦い経験として、今も強く心に残る出来事です。

子どもに対して、感情的な強い言い方をしてしまうときってありますよね。私を含めスタッフたちも人間ですから、ついそうなってしまう場面があるのは、ある程度仕方ないと思います。

ただ、それを繰り返していると、子どもは「強く言われたから(上辺だけでも)話を聞く」ように順応していきます。それは、私たちが目指したい関係性ではありません。

なので、強い口調になってしまったときは、まず「大きな声を出して驚かせたね、ごめんね」と謝るようにしています。そして、なぜ強い言い方をせざるを得なかったのか、どういう思いで言ったのかを、説明できるときはできるだけ説明することを心がけています。

そうして、行動の背景や意図を互いに理解できると、気持ちのいいコミュニケーションができると感じています。

自分の落ち込み・モヤモヤは
その日のうちに“置いてくる”

感情的に子どもに接してしまったとき、後で「ああ、やってしまった」と落ち込むこともあります。

そういうときは、必ずその日のうちに振り返りの時間を設け、他のスタッフに共有するようにしています。内省して言葉にすることで落ち込んだ気持ちが解消され、翌日以降に引きずらずに済むのです。

子ども支援にかかわるスタッフに限らず、保護者の方も同じかもしれません。家族、友人、あるいは少し距離のある相手のほうが話しやすい場合は子育て支援等でつながりのある地域の保健師さんに話すなど、自分なりの出し方を見つけられると気持ちを切り替えられるのではないかと思います。

子どもとの関係は翌日以降も続いていきますから、どんな方法であれ、落ち込んだ感情を「その日のうちに置いてくる」ということが大切だと思っています。

「振り返り」と「言語化」で
やり過ぎ・繰り返しを防ぐ

つい感情的になって強い口調で子どもに接してしまうことがあるのはある程度仕方ないけれど、子どもとのよい関係を考える中で、行き過ぎた叱責にならないように、そして同じ状況を繰り返さないように、自分自身の行動を振り返ることがとても大切だと思います。

私自身、何度も振り返りを重ねてきたことで、自分が他人の感情や場の空気に敏感であることや、感情的になりやすい面があることに気づきました。それは怒りの場合だけでなく、悔しさやうれしさなどについても同様です。

そうした自己理解を重ねることで、「今こういう場面だな。自分はこうなりやすいな」と自分の思考や行動を客観的に把握し、コントロールする力が高まっていったように思います。

振り返る際、私は下のようなシートに沿って書き出すようにしています。

緑の「見えている部分」では、どんな事実があり、どう対応し、結果どうなったかを書き出します。
黒の「見えにくい部分」では、子どもがどういう思いや背景でその行動をしたのかという見立てや、自分の対応の背景にはどんな意図や思いがあったのかなどを、書き出します。

大切なのは「見えにくい部分」をどれだけ言語化できるか。言語化することで自分自身や相手に対する理解が深まり、次に同じ場面になったときに「この前これについて考えた」と、一瞬冷静になる余裕が生まれます

私はこれを続けることで対応する際の選択肢が増え、感情的になることを減らすことができました。

子どもに対して強い言い方をしてしまった後、怒ったり落ち込んだりしている間は意識が自分に向いています。すると視野が狭くなり、また同じように感情的になって落ち込んでしまうなど、悪循環に陥ることが多いように思います。

振り返りはその悪循環を断ち切る力になり、相手にも自分にも良い方向へ進む手助けになると思います。


 

ユキナさんは「振り返りの内容は、スタッフ皆で共有します」と言います。

「共有することでスタッフ同士の理解が深まり、『さっき少し感情的になりかけていたよ』などと言い合えたり、同じような場面でフォローができたりするように。そうして、声を荒げた人を悪者にしない対応を皆ができることも、子どもたちのためにとても大切だと思うのです」(ユキナさん)

“ゆらぎ”のある思春期世代と向き合う中で、スタッフたちの感情も揺れ動く毎日。感情的になることを「仕方ない」で終わらせず、しっかりと振り返ってチームで共有し、その後の居場所運営に活かしていけるよう試行錯誤を続けています。

※子どものプライバシーに配慮し、スタッフの名前を仮名としています。

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Writer

かきの木のりみ 編集者/ライター

東京都出身。日本大学芸術学部文芸学科卒業後、編集プロダクション3社にて各種紙媒体の編集を担当。風讃社にて育児雑誌「ひよこクラブ」の副編集長を4年間担当後、ベネッセコーポレーションにてWebタイアップや通販サイトなどの企画、制作、運営に携わる。2011年より独立。

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