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KATARIBA マガジン

チャリティをきっかけに「常設の人気商品」へ!商品力を磨き、寄付額も売上も倍増させた舞台裏
株式会社紀伊國屋書店・株式会社エヌ・ビー・シー

vol.451Interview

date

category #インタビュー #支援法人

writer 編集部

ご支援いただいている法人さまのインタビュー

NPOカタリバのご支援をしていただいている法人さまから、ご支援のきっかけ・内容・今後の展望などをお伺いする「ご支援法人さまのインタビュー」。今回は、株式会社紀伊國屋書店(以下、紀伊國屋書店)の丸山さま、遠藤さま、株式会社エヌ・ビー・シー(以下、エヌ・ビー・シー)の野口さまに、ご寄付の背景や取り組みへの思いについてうかがいました。

※お名前は、写真の右より順にご紹介しています。
※株式会社エヌ・ビー・シーは株式会社紀伊國屋書店の傘下(100%子会社)です。

■目次
「本を読む子どもを増やしたい」━━書店として考える社会とのかかわり方
特定の絵本ではなく「ブックカバー」だから広がった、参加しやすい支援の形
前メーカーの撤退危機を乗り越えて。試行錯誤の5年間と、昨年「花開いた」売上&寄付額の倍増
企業としてのメリットも、支援の継続も考えた「売り手よし、買い手よし」の仕組み
お客さまからのお手紙に涙。現場の負担を「社会に貢献するやりがい」に変えるチャリティの力
本を選ぶ楽しさが子どもの未来をつくる。書店の1つの棚から、これからも支援の輪を広げ続ける

 

紀伊國屋書店とエヌ・ビー・シーの協同企画による「学習支援チャリティブックカバーフェア」

学習環境に困難を抱える子どもたちの支援を目的に、紀伊國屋書店とエヌ・ビー・シーの協同企画である「学習支援チャリティブックカバーフェア」。文具メーカーであるエヌ・ビー・シーが制作するオリジナルブランド「わくり」のブックカバーを、全国の紀伊國屋書店で販売し、フェア開催中の当該商品の売上の10%がカタリバに寄付されるチャリティフェアです。
詳細はこちらをご覧ください。

「本を読む子どもを増やしたい」━━書店として考える社会とのかかわり方

カタリバ:
まず最初に、簡単に自己紹介をひと言ずつお願いいたします。

丸山さま:
紀伊國屋書店の首都圏地区店売第四部部長をしている丸山です。2020年9月から2025年末まではエヌ・ビー・シーの代表を務めており、それ以前は紀伊國屋書店の社員として勤務していました。

遠藤さま:
紀伊國屋書店 小田急町田店の店長を務めております、遠藤と申します。

野口さま:
2025年12月に紀伊國屋書店より出向し、グループ会社である文具メーカーのエヌ・ビー・シーの代表取締役社長を務めています、野口と申します。

カタリバ:
よろしくお願いいたします。
紀伊國屋書店さまは、来年2027年に100周年を迎えられますよね。おめでとうございます。
大きな節目に「今日も、本と一緒に。」をテーマに掲げられていますが、会社として、社会へのかかわりについてはどのような考えをお持ちでしょうか。

丸山さま:
会社として「本を読む人を増やしたい」というのは大前提としてありますが、その中でも特に「本が好きなお子さんを増やしたい」という強い思いがあります。これは社長もよく口にしていますし、従業員全員に深く刺さっている共通の思いです。全国にある紀伊國屋書店の店舗の店長や児童書・学習参考書の担当者も、どうすれば子どもたちが本屋へ来て、楽しんでもらえるかを考え、店舗での読み聞かせやイベントなど様々な取り組みを行っています。

カタリバ:
実際に今日店舗を拝見した際、店舗内に可愛いぬいぐるみがあったり、絵本エリアが充実していたりと、子どもたちの本との関わりや教育支援を大切にされていることが伝わってきました。

特定の絵本ではなく「ブックカバー」だから広がった、参加しやすい支援の形

カタリバ:
カタリバへのご寄付として2017年から毎年続けていただいている、ブックカバーの販売を通じたチャリティキャンペーンですが、そもそもどのようなきっかけで始まったのでしょうか。

野口さま:
きっかけは、2011年3月に東日本大震災が発生したときです。私は当時、紀伊國屋書店 新宿南店の店長でした。「何か書店でできることはないか」という思いを抱き、お店の従業員全員で何ができるかを話し合いました。最初は、出版社さんに協賛していただいた絵本を販売し、その一部を寄付しようと考えたのですが、特定のタイトルの絵本よりもブックカバーの方が、より多くのお客さまにとってお求めやすく、喜ばれるアイテムではないかという結論に至ったんです。

スタート当初は東日本大震災の被災地支援を目的に別の団体へ寄付をしていましたが、2017年からはカタリバさんを通じた被災地の子どもの学習支援に変更しました。現在は対象を広げ、学習環境に困難を抱える子どもたちへの支援として継続しています。

カタリバ:
アイテム選びの段階から、お客さまの手に取りやすさを意識されていたのですね。

野口さま:
はい。その方が売上も上がって、結果的に寄付額も大きくなるだろうと考えました。そこで、当時すでに紀伊國屋書店で人気商品だったブックカバーのメーカーさんに相談したんです。すぐに二つ返事で快諾していただき、お互いの売上の5%ずつを寄付する形でスタートしました。最初は首都圏の5〜6店舗で実施する限定的なスタートでしたが、2年目からは関西の店舗にも声をかけ、徐々に規模が大きくなっていきました。

カタリバ:
新宿南店さまの呼びかけから、共感の輪が広がっていったのですね。

丸山さま:
私は当時からそのブックカバーが個人的にも大好きで、実際に使っていましたし、商品の補充も自分で行なっていました。もともとよく売れている実績のある商品だったので、これがチャリティにつながったら最高だなと思ったことを覚えています。お客さまの反応がわからない新商品ではなく、すでに販売実績があるものだったからこそ、きっと寄付にもお役立ちできると確信していましたし、実際、毎日補充するほどたくさんお客さまからお求めいただきました。

前メーカーの撤退危機を乗り越えて。
試行錯誤の5年間と、昨年「花開いた」売上&寄付額の倍増

カタリバ:
最初は別のブックカバーメーカーさまと始められたキャンペーンですが、現在のエヌ・ビー・シーさまと共同で制作・販売されるようになった経緯を教えていただけますか。

丸山さま:
私がエヌ・ビー・シー代表に就任した翌年の2021年、当時のブックカバーメーカーの社長から「コロナの影響もあってこれ以上続けられない」というお話をいただきました。個人的にも大好きな商品がもう見られなくなるのは本当にショックだったのですが、ここで終わりにしたくありませんでした。どうしてもこの素晴らしい商品を作り続けたいと思い、制作を引き継ぎたいとお話しし、今の紀伊國屋書店とエヌ・ビー・シーとの共同企画という形で引き継ぐことになりました。

カタリバ:
そこから今の形に進化していったのですね。

丸山さま:
はい。エヌ・ビー・シー制作部が試行錯誤しながら毎年新作を作ってくれているのですが、それが起爆剤にもなってお客さまへの認知も広まり、とてもいい流れができていると感じています。

野口さま:
メーカーから見た印象としては、特に昨年からものすごく売れてきています。私たちエヌ・ビー・シーとしても、お客さまのご支持をいただけるより質の良いブックカバーを作れるようになってきており、それが昨年一気に花開いたなという印象です。実際に売上も増え、カタリバさんへの寄付金額も倍くらいに増えました。

カタリバ:
私たちも、ご寄付の拡大を実感しています。ありがとうございます。
実際の店舗での反響はいかがですか。

遠藤さま:
現場でも商品そのものが持っている魅力、いわば「販売力」を非常に強く実感しています。当店でも、設置場所をお客さまの目につきやすい位置に変更して展開したことで、手にしていただく方がぐっと増えました。企画を開始してからの売上も、直近の数ヶ月と比べて上がっており、大きな反響を感じています。

企業としてのメリットも、支援の継続も考えた「売り手よし、買い手よし」の仕組み

カタリバ:
逆に、このチャリティキャンペーンを実施・継続するにあたって、慎重な意見や課題などはありましたか。

丸山さま:
当時の紀伊國屋書店では、大きな震災をきっかけに「少しでも力になりたい」という思いはみんな共通していましたし、商品自体ももともと売上が見込めるものだったので、社内での反対の声はなかったと思います。実際の販売の際、店頭でのスペースをどう確保するかという実務的な悩みは多少ありましたが、チャリティをきっかけにこのブックカバーが売れることが他の店舗でもわかったことで、今ではチャリティの期間だけでなく、年間を通じて常設で販売する店舗も増えています。お客さまから「ブックカバーは置いていないの?」と聞かれることもありますね。

野口さま:
紀伊國屋書店内では直接的なネガティブな反応はなかったものの、大々的にチャリティ商品として販売することで、「便乗商売や売名行為のように思われる心配はないのか」という意見は少しありました。しかし、メーカーと紀伊國屋書店が良いものを売って、お客さまは買うことで気持ちよく寄付ができ、被災地や寄付先の方々も喜んでくれる。「売り手よし、買い手よし」の良好な関係性であれば、きちんとお互いのメリットも生み出しながら進められると考えてスタートしました。

カタリバ:
企業が社会貢献を継続する上で、その問いやバランスはとても重要ですね。

野口さま:
ええ、この「便乗商法になるんじゃないか」という懸念に対する答えや向き合い方は、企業が社会貢献活動に取り組む限り、永遠にあるものだと思っています。自分たちのメリットだけを追求するのではないことはもちろんですが、だからといってボランティアだけで終わらせず、きちんと利益を生み出し、関わる人みんなが喜ぶ仕組みを考え続けることが、結果的に支援を長く続けることにつながるのだと感じています。

お客さまからのお手紙に涙。
現場の負担を「社会に貢献するやりがい」に変えるチャリティの力

カタリバ:
実際にチャリティに取り組んでみて、良かったことや現場でのエピソードなどはありますか。

遠藤さま:
毎年この時期は「店舗内のどこに販売スペースを設けようか」と、現場の担当者が知恵を絞る面は確かにあります。しかし、店頭に商品を展開して売上をつくり、それが支援につながっていくことで、スタッフの中にも「自分たちも、お店を通じて世の中に役に立てているんだ」という気持ちが少しずつ芽生えてきています。お店全体として、取り組みへの理解や喜び、やりがいが築かれてきている手応えを感じています。

カタリバ:
スタッフの皆さまのモチベーションにもつながっているのは、とても嬉しいです。お客さまからは、チャリティや商品のブックカバーに対するご感想の声などをいただくことはありますか。

遠藤さま:
小田急町田店は百貨店の中にあるため、比較的ご高齢のお客さまや、お子さま連れのお客さまが多く、ブランドを親しみやすいと感じてくださっているようで、とても良い印象を持っていただけていると感じます。

丸山さま:
私がエヌ・ビー・シーに勤務していた時のエピソードですが、ご購入いただいたお客さまから、直接お手紙をいただいたことがありました。商品の手触りやデザインへのお褒めの言葉と一緒に、手に取って嬉しかった気持ちが綴られていて、それを朝礼で報告していたら感極まってしまい、制作部社員とうれし泣きしたのを覚えています。

カタリバ:
朝礼で涙を…!それは本当に素敵なお話ですね。

丸山さま:
メーカーとしても、「商品がたくさん売れる」という数字はもちろん大きなモチベーションになりますが、このお手紙のようにお客さまからの温かいお声をいただけると、「さらに頑張ろう」という強い気持ちになりますよね。制作部はこの5年間、ブックカバーの品質やサイズ、プレゼント用に購入された方向けに、商品の外袋に貼られた値札シールの剥がしやすさなど、細かい部分も含めて試行錯誤を繰り返して少しずつ改良し、現在に至った経緯があります。

本を選ぶ楽しさが子どもの未来をつくる。
書店の1つの棚から、これからも支援の輪を広げ続ける

カタリバ:
それでは最後に、今後のキャンペーンの展望や、カタリバへの期待などがあればひと言ずつお願いいたします。

遠藤さま:
実は町田市は、年少世代(15歳未満)の転入超過数が、全国の市町村で最多(※)となるなど、子どもが増えている地域です。そういった背景もあり、子どもたちを支えるカタリバさんとのチャリティには、町田店としても関わっていく責任を強く感じていました。書店というリアルな場所の一角にある棚で、お客さまが本や商品と出会って選ぶ楽しさ、そして購入という行為がダイレクトに子どもの未来への支援につながっていく。ただ本を売るだけでなく、次世代を担う子どもたちのために店頭から何かを良くするための発信ができるのは、非常に意義深く、大きな喜びを感じる取り組みです。

丸山さま:
会社全体として「子どもが本と触れ合う機会を増やしたい」という思いがあるので、この取り組みを通じて貢献ができていると感じています。また、カタリバさんから届く細やかな活動報告のメールやハガキは、私もよく拝見しています。「こういう子ども支援活動の一部に、自分たちの寄付金が使われているんだな」という実感を現場が持てることも、非常に大事なことだと思っています。

野口さま:
やはり「ずっと続けること」が一番大事だと思っています。そのためには、先ほども申し上げたように、チャリティによって「会社がしっかり儲けてもいい」と思っています。そして、関わる人たちが、単純に寄付額を大きくするための仕組みを真摯に考えることが大切です。メーカーとしては、チャリティであろうとなかろうと、質の高い良い商品を作り続けること。そして、実際に売ってくださる紀伊國屋書店の店員さんが、気持ちを込めて販売すること。これらを関わる人たち全体でできるようになったとき、お客さまに伝わるものはさらに大きくなると思っています。

カタリバ:
ありがとうございます。お話を伺って、お客さまをはじめ現場で協力してくださっている書店員の方々や、制作に携わる皆さまに「こういう風に役立てさせていただきました」という、カタリバが支援する子どもたちの声をしっかりお届けする重要性を、改めて実感しました。商品が売れることが子どもたちの支援の拡大につながるという、この素晴らしい循環をさらに加速できるよう、私たちもしっかりと発信を続けてまいります。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

※総務省「住民基本台帳人口移動報告」2025年

 

編集後記

「売上倍増、寄付も倍増」という素晴らしい実績。それは自然に起きた奇跡ではなく、関わる方々の「強い想い」が手繰り寄せた、必然でした。

 インタビュー前、店舗内の特設の販売スペースでは、商品の配列を細かく手直しし、店長の遠藤さまと真剣に打合せをする丸山さまのお姿がありました。また、現場の書店員さまへの差し入れを手に、笑顔で合流された野口さまの細やかなお心遣いも印象的でした。

商品という「モノ」の細部にまでこだわり、売り場を支える「人」を大切にする。その圧倒的な熱量を見たとき、「だからこそ、これほど多くの人に届いたのだ」と深く納得させられました。企画、制作、販売。それぞれのお立場による現場での熱い想いが、社会を動かす大きな力になることを証明してくれる取材となりました。 

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