「ルールメイキング」が学校のスタンダードに。学習指導要領改定の議論、3つのポイント[代表のつぶやき]
Voice
学習指導要領という、学校で何を何時間どう教えるかの標準を定めたものがありますが、おおよそ10年に一度の改定議論もいよいよ最終盤。文科省の中央教育審議会の教育課程企画特別部会の各教科の方針がそろそろ出揃い、ここからさまざまなプロセスを経て、全体公表に向かう見込みです。
あちこちで怒られ役になりやすい文科省ですが、今回もいろんな地雷を乗り越え、じりじりとできる範囲の最大限なのでは?と思われる冒険的チャレンジをなさっています。
戦後から、社会の要請を受けながら増えに増えまくった学習内容、「これはナショナルスタンダードとして教えるべき」とされたことの一つひとつに、業界団体があり、学会があり、こだわる個人の方々がいて、1行減らすごとに文科省へのクレームが殺到し、中には政治家を使った圧力すら起きることもある。私は「標準はできるだけ少なくすべき」派ですが、減らすってホント大変なんだと議論の中で分かりました。事務局の皆様、お疲れ様です。(多分まだ渦中ですよね。)
いろいろ大事なことはあるのですが、3つ、私の押しポイントを紹介します。
1.「調整授業時数制度」という新しい仕組み
「調整授業時数制度」という新しい仕組みが導入される方向で議論が進んでいます。
ものすごくざっくり言うと、「学校の判断で各教科の時数を一定の範囲で増減し、組み替えられるようにする制度」です(年間の総授業時数は維持)。空いた時間を他の教科に上乗せしたり、例えば個別ニーズに応える学習支援や教員研修に充てたりすることも想定されています。
つまり、カリキュラムづくりの主導権が、これまでよりも学校現場に委ねられるということ。学校の「余白」と「裁量」をどうデザインするかが、これからの学校経営の腕の見せどころになります。
2.特別活動の時間が「民主主義を学ぶ場」として捉え直されようとしている
押しの2つ目が、私も委員として関わってきた「特別活動」に関するワーキンググループでの議論です。
ワーキンググループでは、社会の分断が深まる今だからこそ、特別活動(いわゆる「特活」)の意義を捉え直そうという議論が重ねられてきました。キーワードは、「特活は民主主義を学ぶ場である」ということ。
ここで言う民主主義とは、「18歳になったら選挙に行きましょう」という話にとどまりません。本来の民主主義とは『意見の違う他者と対話し、少数の声にも耳を傾けながら、合意をつくり、自分たちのことを自分たちで決めていく営み』(出典:文部省『民主主義』角川ソフィア文庫、2018年)。
私たちはいつからか、多数決を民主主義と体得してしまったけど、それは本当は最後の手段。その手前の「話し合いのプロセス」こそが民主主義の本体です。この分断社会に放り出される前の子どもたちにとって一番身近な社会である「学級」や「学校」で実践を通じて民主主義を体得できるように、特活をちゃんと本質的な学びの時間としていこう、ということ。
先生方に聞いてみると、正直これまでの特活は「慣例的行事の消化時間」になりがちだったという率直な反省も聞きます。毎年やっているから今年もやる。準備と本番に追われて、何を学んだのかは問われない。それではいかんと。特活でしか得られない「学び」に軸足を置き直し、道徳や総合的な学習の時間とも連携させていく方向性が、今回の特活ワーキンググループのとりまとめに示されました。
3.「ルールメイキング」が位置づく
その中で、私が最も重視すべきだと考えているのが、子どもたちが身の回りの当たり前を見直すことに参加する「ルールメイキング」の経験です。
今回の特活ワーキンググループの取りまとめ案では、児童会・生徒会活動の項目に、「校則をはじめとする学校生活のルールについて、子どもが提案し、教師との話し合いを通じて改善につなげること」を盛り込む方向が示されました。
「生徒会活動の一項目にすぎない」と見る向きもあるかもしれません。でも私は、これはとても大きな一歩だと思っています。なぜなら学習指導要領に位置づくということは、一部の先進校の「いい実践」ではなく、すべての学校でやるべきこととして、日本の学校のスタンダードとして示されるということだからです。
自分たちの学校のルールを、自分たちで問い直し、対話してつくり変える。この経験こそ子どもたち全員にしてもらいたい学びだと信じて活動してきた私たちにとって、大きな追い風です。この数年間、熊本大学大学院の苫野一徳先生たちと一緒に「みんなのルールメイキングプロジェクト」を立ち上げて取り組んできたカタリバのルールメイキングチームは、のれんに腕押し感で涙を流すことも(本当に泣いていた)ありましたが、今回の方針について、飛び上がって喜んでいました。
「大事なのはわかる。でも、どう始めればいいのか」
制度に書かれることと、現場で実現することの間には、大きな距離があります。
「大事なのはわかる。でも、どう始めればいいのか分からない」
「子どもに委ねたいけど、荒れたらどうしよう」
「言い出したいけど、うちの職員室の空気では……」
そんな声を、私たちはたくさん聴いてきました。方法論もさることながら、学校の風土そのものを変えていかないと一歩を踏み出せない……それが多くの先生たちのリアルだと思います。
そこで、今年も先生のための1DAY合宿型研修「Rulemaking Teacher’s CAMP」を開催することになりました。全国から「子どもの声を聴く学校づくり」に取り組む・取り組みたい先生たちが集まり、実践のノウハウだけでなく、悩みや葛藤も持ち寄って、丸一日学びあう場です。
学習指導要領が変わるのは数年先。でも、学校の風土は一朝一夕には変わりません。だからこそ、いま動き出す先生たちと、この夏、お会いできるのを楽しみにしています。
▼イベント詳細はこちらから
https://rulemaking.jp/news/5025/
※参加申し込みは終了しました。
