挑戦を恐れない。人見知りだった私に、新しい一歩を踏み出すキッカケをくれた「b-lab(ビーラボ)」[あのとき、居場所があったから。]
Interview
2015年、文京区に誕生した中高生の秘密基地「b-lab」。ここではリビングのようにくつろいだり、友達とわいわい勉強したり、やりたいことに思い切り打ち込んだり、中高生が思い思いの時間を過ごすことができます。この連載では、かつてb-labで青春を過ごした中高生たちの「その後」をたどります。
今回登場するのは、現在、薬学部4年生の「はるみん」さん。中学1年生の時からb-labを利用し、中高生スタッフとしてフリーペーパー「Cha!Cha!Cha!」の制作にも携わりました。b-labを利用する中で、何を感じ、考え、どのような経験をしたのか。b-labを卒業して数年経ったいま、改めて振り返っていただきました。
b-labを楽しんでいる中高生たち。
その輪に入りたいけれど……
——b-labはどのようなきっかけで知ったのですか?
私が小学6年生の時にb-labがオープンしました。1学年上の姉が先に利用していたので、小学6年生の時からすでに知っていました。ときどき、友人とb-labを利用している姉の話を聞いて「b-labに通っている中学生は楽しそう」という印象を持っていて、私も中学生になったら行きたいと思っていたんです。楽しみにしすぎたあまり、まだ利用者登録ができない中学生になる1日前の3月31日に行ってしまったほどです(笑)。
——では、中学1年生の頃から頻繁に利用していたのですか?
中学生になってからは文京区外の中学校に通っていたため、中学校の友人とは一緒に来ることができず、一人で利用せざるを得ませんでした。
そのため最初は、どのように利用したらいいのか分からず、自習室代わりに使うことしかできませんでした。利用頻度もそんなに高くはなく、受付を済ませたらメインフロアではなく、2階の研修室で自習して帰る。そんな使い方を2年半ほど続けていました。
b-labのメインフロアでは、いくつもの中高生グループが、とても楽しそうに談笑しながら過ごしていました。その輪の中に入ってみたい気持ちもあったのですが、人見知りだったこともあり「私もあんな風に過ごしてみたいな……」と、外から眺めるだけでした。
スタッフとの交流から
踏み出した一歩
——利用者が運営に関わる「中高生スタッフ」(*)という役割も経験されたはるみんさん。利用方法が変化していった経緯を教えていただけますか?
頻繁に通うようになったのは、中学校のバスケットボール部を引退した3年生の秋頃からでした。受付でスタッフが声をかけてくれて、それをきっかけに徐々に1階のメインフロアで自習するようになっていったんです。
また、別のスタッフに誘われて、「b-lab食堂」というイベントに参加するようにもなりました。b-lab食堂は毎月1回、火曜日に、メインフロアにあるキッチンで料理を作ってスタッフと中高生で一緒に食べるイベント。テーブルを囲んで食事をしながら自己紹介する時間もあって、中高生同士の軽い交流がありました。
b-lab食堂に参加するようになってから、私は食事の準備や片付けにも加わるようになりました。一緒に作業する中で、そのスタッフには、友達や家族にも話さないようなことをたくさん話しましたね。そんな中、中高生スタッフに挑戦してみたいと思うようになっていきました。
*2026年現在、この役割は「ユース館長」という名前で実施されています。
——なぜ中高生スタッフになりたいと思ったのですか?
b-lab食堂やその他のイベントに参加するようになると、スタッフとは仲良くなれました。しかし、中高生の友達がたくさんできるかと言われると、顔見知りにはなるけど、それ以上親しくなることはあまりなかったんです。 b-labのメインフロアで中高生同士が仲良く楽しそうにしている輪に入りたいという思いから、「そのためには、中高生スタッフになろう」と思ったんです。
ある日、意を決してスタッフに「中高生スタッフになりたいんだけど……」と伝えました。
——それでフリーペーパー制作チームに参加するようになったんですね。
中高生スタッフはどうやら、それぞれ役割があるらしいと、なんとなく聞いていたんです。いくつかの役割のうち、自分にもできそうだと思ったのがフリーペーパーでした。
すでにフリーペーパー制作チームに入っていた中高生スタッフは、同学年の女の子たち。女子校で過ごしている私にとって、女の子が多い環境の方が馴染みやすいと思ったことも決め手になりましたね。
——活動の中で、印象に残っているのはどのようなことですか?
フリーペーパーは半年に1回の頻度で発行されていて、私は3回携わりました。 その中でも3回目に自分で企画したQuizKnockさんへの取材が一番印象に残っています。
それまでも企画を出していましたが、 最初は、やりたいことを起点に企画を出すと言われても、自分のやりたいことがよく分からず、「これでいいのだろうか?」と思いながら活動を続けていました。しかしQuizKnockさんへの取材企画は、もともとQuizKnockさん好きだったこともあり、「これだけはどうしてもやりたい!!」と、初めて心から思えた企画でした。コロナ禍だったのでオンライン取材でしたが、ものすごく緊張したのを今でも覚えています。
また、フリーペーパー制作チームの中高生スタッフは私を含めて3人いたのですが、 みんな性格や考え方が全く違うタイプで、おそらく同じ学校に通っていたら絶対に仲良くならない3人でした。そのため何度も、かなり熱い議論をしてきましたが、不思議とケンカに発展することはなかったんです。意見の対立があったとしても建設的な議論ができたのは、「フリーペーパーを発行する」という共通の目的があったからこそだと思います。
中高生スタッフの経験が、新たな挑戦の
ハードルを下げてくれた

—— 現在は大学4年生のはるみんさん。 今振り返ってみて、b-labでの過ごし方でのターニングポイントはどこだったと思いますか?
中高生スタッフになったことは、自分の中でとても大きな出来事だったと思います。 今お話したように、学校では仲良くならないようなタイプのメンバーと一緒にフリーペーパー制作に取り組んだことは、人見知りの私にとって「どんな人ともそれなりにうまくやっていける」という自信のようなものにつながりました。
価値観や考え方は人それぞれであることや、さまざまなタイプの人とお互いに尊重し合いながらプロジェクトを進めていく方法を学んだのだと思います。
——では、b-labでの経験が今に活きていると思うことはありますか?
新しいことに挑戦するときのハードルは低くなったと思います。 中高生スタッフになったのは、中学3年生の2月頃。同じ頃、模擬国連にも応募しました。 また大学入学後は、フライングディスクをパスでつなぎ、特定のエリアでキャッチしたら得点になるチームスポーツ「アルティメット」の部活にも入部しました。そしてアルティメットの社会人チームにも、一人で参加するようになりました。
こういったことは、中高生スタッフを経験していなければやらなかったと思います。フリーペーパー制作チームに入り、取材活動で多くの「はじめまして」に出会い、自分とは全く違うタイプのメンバーと協力して1冊のフリーペーパーを制作する。この過程で経験した1つ1つが、新しいことへの心理的なハードルを大きく下げてくれたように感じます。
——はるみんさんにとって、b-labスタッフはどのような存在でしたか?
一言で言うと「家族よりは遠く、学校の先生よりは近い大人」。 友だちとも違います。でも友だちや家族以上に、いろいろなことを話せる相手でした。 誰よりも私のことを話したと思います。
中高生の時には、友だちや学校の先生、家族とうまくいかないモヤモヤなどが積み重なることもあるでしょう。そういった、誰に相談したらいいか分からないようなことを、身内ではないからこそ変に気負わず「一旦話してみようかな」と軽い雑談の中で言える、そんな存在でした。私自身も肩肘張らず、すごく楽に接することができていました。このような大人には、おそらくb-labのようなユースセンターに来なければ出会えなかったと思います。
——b-labのようなユースセンターがあることの意味は、どのような点にあると感じますか?
本当に必要な人にとっては必要不可欠な存在だと思うので、もっと全国にたくさんあったらいいなと思います。 どんな子でもアクセスでき、過ごし方や関わり方は十人十色でいい。中高生一人ひとりが自分に合った関わり方を見つけて、伸び伸びと過ごせることを願っています。
取材には当時関わったスタッフも参加していました。はるみんさんとスタッフたちが当時を振り返りながら楽しそうに話している姿を見て、こんなことを思いました。
b-labには10代の中高生たちが訪れやすい雰囲気があり、最初は何となく足を運んでいるうちにスタッフと仲良くなり、自然と少しずつb-labの中へ中へと入っていく。するとb-labの外の世界では、自分の活動の幅が外へ外へとどんどん広がっていく——。
b-labという安心できる場所での挑戦が、外での挑戦の心の支えになる。そんな構造があるのだと思います。
そして、b-labの中へ入っていく最初のきっかけは、スタッフのちょっとした声かけ。その声かけと、適度な距離感の温かい眼があると、10代の子どもたちは、こんなにも自らの足でどんどん階段を上っていけるのだなと思いました。
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北森 悦 ライター
2015年からインタビューライターとしての活動を始め、これまでに500名以上のインタビュー記事に携わってきた。現在はライターチームを束ね、Webメディアのインタビュー記事や、企業・団体のテキストコンテンツ制作など、聴くこと・書くことを軸に幅広く活動している。カタリバ内では、カタリバマガジンのインタビュー記事を担当。
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