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「震災で強くなった東北の絆があったから実現した週末の子どもたちの居場所」令和元年台風19号支援宮城県丸森町での取り組みレポート

vol.140Report

date

category #活動レポート

writer 長濱 彩

宮城県丸森町で令和元年台風19号支援開始

2019年10月12日から13日にかけて東日本を襲った大型の台風19号(令和元年東日本台風)。政府から「激甚災害」に指定されたこの台風による被害は、東日本大震災を超える14都県390市区町村に災害救助法が適用されるなど、広範囲に渡りました。(2019年11月1日時点)

NPOカタリバは即座に災害時子ども支援チームを組み、台風通過当日の13日より被害状況の情報収集を開始。15日からはカタリバが宮城県女川町で運営する拠点(コラボ・スクール女川向学館)のメンバーが、県内でも被害が大きかったとの情報を得た宮城県丸森町に向かい、状況確認とニーズ調査を行いました。

向学館から車で2時間ほどの丸森町に着いてみると、道路は冠水して通行止めになっており、泥だらけで車の走行が大変な場所が多々ありました。町内は混乱、復旧にも時間がかかりそうな様子に、子どもたちが置かれている状況が気になりました。

台風19号の影響で寸断された道路

カタリバの調査チームは早速、丸森町内の小学校4校、中学校1校、高校1校、教育委員会を訪問。町の北東に位置する丸森町立金山小学校では校舎に大量の泥が堆積し、学校再開が困難な状況になっていました。教室や机、教科書も泥だらけな状態を目の当たりにし、チームのメンバーは東日本大震災当時を思い出したと言います。金山小学校の復旧が急務と判断し、泥かきや物品の運び出しなどに協力することにしました。

金山小学校の教室内に堆積した泥

向学館スタッフは復旧のお手伝いのために17日と18日に金山小学校を再訪。駆け付けたボランティアさんたちと協力し、教室内や廊下の泥かき、校舎内の被災した物品の運び出し、次々と運び込まれる周囲の被災された方々の物品も含めて校庭での分別を行いました。

被災し運び込まれた物品が校庭に所狭しと積みあがる

当面この校舎を使った授業は実施できないため、金山小学校は週明けから町内の別の小学校を間借りして再開。この作業に参加したコラボ・スクール女川向学館の職員、芳岡孝将は当時を振り返ってこのように語ります。

芳岡:「東日本大震災のときもそうでしたが、災害によって当たり前の環境が突然変わる子どもたちへの精神面の負担はとても大きいです。そして子どもたちだけでなく、それに向けて準備をされる先生方にも相当な負担がかかります。少しでも新たな対応やその準備のための時間確保につながれば…と活動時間中ずっと考えていました。」

コラボ・スクール女川向学館副責任者 芳岡孝将 教員養成大学を卒業後に青年海外協力隊員の理数科教師としてモザンビーク共和国で2年間活動。モザンビークでは中等教育校の物理教員として講義・実験授業を担当し、地域の方と協同する難しさや楽しさを実感。2012年1月に帰国、4月からNPO法人カタリバの活動に参画し、東北コラボ・スクール、熊本コラボ・スクールの立ち上げ・運営を担当。現在は女川向学館の副責任者を務める。

芳岡:「東日本大震災をきっかけにつながった人たちや団体に連絡をとってみると、女川向学館の卒業生が友人と2日間のボランティアにかけつけてくれたり、向学館にインターンに来ている大学生の呼びかけで、福島大学と仙台大学の学生や県内の高校の先生も駆けつけてくれたりしました。またマイプロジェクト(身の回りの課題や関心をテーマにプロジェクトを立ち上げ、実行することを通して学ぶ、 探究型学習プログラム)のパートナーである丸森町の(一社)YOMOYAMA COMPANYの方々はボランティアセンターの立ち上げに奮闘されていて、今後の子どもたちの居場所について相談することができました。また、町に住む高校2年生が丸森町で自主的なボランティア組織を立ち上げて、色々なお手伝いもしていました。30人の仲間が集まったそうですが、彼は学校でマイプロジェクトに取り組んでいました。復旧までは時間がかかりそうでしたが、震災を『経験』した人たちの知恵と創造力がいたるところで発揮されていることを感じました。」

東日本大震災を通して築かれたネットワークですぐに人が集まった(右端が芳岡)

 

週末の子どもたちの居場所
「週末コラボ・スクールまるもり」始動

災害時子ども支援チームでは金山小学校の学校再開後も保護者へのニーズ調査を続けたところ、子どもたちが思いきり体を動かせる機会、そして学校が休みとなる週末の子どもたちの居場所の必要性を痛感しました。

被災した保護者の方からは、「床上浸水した家の片づけが忙しくて、2階でゲームをずっとやらせてしまっている。申し訳ないし、普段とルールを変えてしまっているので心配。」「自分の家はもう大丈夫だが、高齢者だけで住んでいる親戚の家の片付けを手伝わなければならないので、その間の子ども達の居場所が欲しい。」「被災後ずっと水も出ず過酷な環境に居るので、思いっきり発散できる場所に連れて行ってあげたい。」といった声が寄せられました。

芳岡:「生活再建が最優先される中、子どもには我慢を強いてしまっていてそれが心苦しいという保護者や、いつもより忙しく片付けをする親の様子を見て、甘えることができず自分たちが我慢しなければと思って我慢する子どもたち、どちらにもストレスがかかっていました。そんな状況を何とかしたいと強く思ったときに、東日本大震災をきっかけに繋がった方々に相談すると、みんなすでに同じ方向を向いていて、さぁどんな支援をしよう?というところからスタートしました。『はじめまして』からではないところに、スピード感と頼もしさがありました。」

こうして、カタリバと宮城県教育委員会、YOMOYAMA COMPANYさんが連携し、「自然の家」を活用した週末子どもリフレッシュキャンプを開催することが決定。「週末コラボ・スクールまるもり」と名付けられました。

宮城県教育委員会、YOMOYAMA COMPANYさんと「週末コラボ・スクールまるもり」開催に向けて連携することが決定

早速リフレッシュキャンプの計画が練られ、家庭への告知・子どもの募集を行いました。「週末コラボ・スクールまるもり」第一弾は11月9日に開催され、丸森小と金山小の全児童の約40%にあたる79名の子どもたちが参加。松島自然の家は子どもたちのにぎやかな声で満たされました。

初めて開催した「週末コラボ・スクールまるもり」には79名の子どもが参加

芳岡:「参加した子どもたちが、バスの移動中も含めて別れる瞬間まで、ずっと笑顔で楽しそうに過ごしていたのが印象的でした。帰ってきた子どもたちの表情を見た保護者からも、台風以降、子どもたちに少なからず与えてきたストレスを解消する場を与えてもらえてよかった。これからも続けてほしい、と声をかけていただきました。」

続く第2弾「週末コラボ・スクールまるもり」は11月16日に行われ、総勢85名の子どもたちとリフレッシュキャンプを開催。カレーライスづくりを通して異学年で協力しあう姿や自然の中を駆け回る楽しそうな子どもたちの姿が見られました。

異学年で協力して火起こしに挑戦する子どもたち

12月22日には、「週末コラボ・スクールまるもり」の第3弾となる、遊び場プログラムを町内の小学校の体育館をお借りして開催。今回は、特定非営利活動法人こども∞感ぱにーとYOMOYAMA COMPANYとの協力で実現しました。プログラムの内容はあえて決めず、「子どたちが主体的に自由に遊べるように」という空間づくりに注力しました。

段ボールを組み合わせて楽しい空間をどんどん創り出していく子どもたち

お迎えに来た保護者の方からは、「家の中では自由に遊ばせてあげることができないので、このような機会があると助かります。」「生活の復旧にはまだ時間がかかり、子どもたちに負担をかけてしまっている。」という声をいただき、週末の子どもの居場所はこれからもニーズがあることを実感しながら、2019年の「週末コラボ・スクールまるもり」は幕を閉じました。

100日ぶりの校舎
徐々に日常を取り戻す子どもたち

年が明けて2020年。1月18日、26日には再び「週末コラボ・スクールまるもり」を開催しました。18日は、丸森町立金山小学校で行われた「第49回竹馬運動会」にも参加。金山小学校の「竹馬運動会」は1972年から続く伝統行事。校舎の水没によって別の小学校を間借りして授業を行っている金山小学校の児童が学校に帰るのは、実に100日ぶりのこととなりました。

100日ぶりに校舎に入り「竹馬運動会」に参加した金山小の子どもたち

芳岡:「校舎には『10月11日(金)』と書かれたままの黒板がありました。校庭は災害ごみの集積場となっていたため、使えない状況が何日も続いていて。それでも地域の方たちの努力で今回の運動会は開催されました。校長先生は開会式で、こうした状況の中でも開催できた竹馬運動会を『特別な運動会』だと仰っていました。いつもの日常が『当たり前じゃない』ことを知った子どもたちは、竹馬に乗ってかけっこやサッカーや借り物競争を力いっぱい繰り広げ、いつも以上に輝いていましたね」

竹馬運動会に全力で取り組む子どもたち

同日に開催した「週末コラボ・スクールまるもり」では、宮城県レクリエーション協会の方に来ていただき、ニュースポーツを楽しみました。常連さんとなっているある女の子は、「たくさんおもちゃがあって楽しかったよ」と思う存分遊べた様子で語ってくれました。

初めて挑戦するニュースポーツに子どもたちは夢中になった

丸森町では2019年12月末に全ての避難所が閉鎖され、仮設住宅の入居が始まりました。災害ごみの撤去も始まり、町も子どもたちも少しずつ日常を取り戻しています。この町の状況から、「週末コラボ・スクールまるもり」は1月26日を最後に活動を終えることにしました。

最後の開催日となった26日。MKSC2012宮城キンボールスポーツクラブの方に来ていただき、キンボールを楽しみました。新設された仮設住宅から遊びに来た女の子は、「新しいお家は狭かったり大きな声を出せないけど、慣れてきたよ」と近況を話してくれました。

声をかけあい協力する子どもたち

再建、復興まではまだ時間がかかる丸森町ですが、学校・教育委員会・地域が一丸となり子どもたちのことを考え、現在も活動しています。カタリバ以外の団体も丸森町の外から支援に入り、中学校の放課後学習支援や放課後の子どもたちの見守り、週末の遊び支援などを継続して実施。カタリバはそれらの状況から、昨年10月から継続して実施してきた「週末コラボ・スクールまるもり」の居場所支援がその緊急的な役目を終えたことを確認し、活動を終了することにしました。

芳岡:「丸森町の支援に携わる中で、災害時、早い段階で子どもの居場所をつくることは、子どもにももちろん、保護者にとっても重要だということを改めて感じました。子どもが外でエネルギーを発散したり、第3者である大人や年の違う友達と関わる中でもやもやした気持ちを少しでも整理して家に帰ることができると、生活再建に奔走し疲れている親御さんが抱えるストレスの軽減につながります。今回の支援では、災害時、どうしても後回しになりがちな子どもたちの心のケアに対し、『これってすごく大事だよね』と共通認識を持って取り組める他団体・パートナーの存在がいたことが要となりました。東日本大震災で強くなった東北の絆が子どもたちとその家族を支えました。これからも災害や感染症などの発生は避けられません。しかし、子ども支援の質は変えていけます。子どもたちに関わる団体がよりつながって、お互いの強みを活かしあっていけるといいなと思います。」

Writer

長濱 彩 編集担当

1988年生まれ。神奈川県横浜市出身。横浜国立大学卒業後、JICA青年海外協力隊でベナン共和国に赴任。理数科教師として2年間活動。帰国後、2014年4月カタリバに就職。岩手県大槌町のコラボ・スクールで数学を担当。小学部、適応指導教室の立ち上げにも携わる。第一子出産を機に島根県雲南市のおんせんキャンパスへ異動。不登校支援を行う。第二子出産と夫の転職を機に、沖縄県那覇市へ移住。2019年5月~復職し、在宅でカタリバmagazineの編集を行う。

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