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「高校生の学びの意欲はどんな時も止まらない」1万人と臨んだ学びの祭典とこれから

vol.141Report

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category #活動レポート

writer 吉田 愛美

去る2020年3月に開催された、全国高校生マイプロジェクトアワード(以下、アワード)。その最後を飾る「全国Summit」は、新型コロナウイルス感染症の拡大によりオンライン開催となった。全国2,654のプロジェクトから選ばれた48プロジェクトが参加する「学びの祭典」。2013年度から7度目、そして初めてのオンライン開催を通して見えた、アワードの役割とは。

史上最多の参加者と
史上初のオンライン開催

第一回のアワードが開催されたのは、東日本大震災から間もない2013年のことであった。「被災地である地元のために、自分たちも何かをしたい」。そんな思いを持ち、全国各地で同時多発的に立ち上がった高校生たちが参加した。

高校生がプロジェクトに取り組むということがまだまだ一般的ではなかった当時、家族や先生に反対されながら活動に取り組む高校生も少なくなかった。当時のアワードには、そんな高校生にスポットライトを当て、新しい学びのロールモデルとして世に発信する機能があった。

それから6年。7度目のアワードに集まった高校生の数は、8,765名にのぼった。実に、昨年度の3倍以上の数である。そのほとんどは「学校部門」からのエントリー。つまり、学校という場所でプロジェクトに取り組んでいる高校生が大多数を占めていることになる。高校教育改革の追い風もあり、マイプロジェクトに取り組むことが評価される世の中になってきたと言えるだろう。

だからこそ、アワードの役割も少しずつ変化している。役割が増えてきていると捉えたほうが良いかもしれない。その役割とは、参加する高校生たちにできるだけ多くの「学び」を提供するというものだ。私たちは時にアワードを「学びの祭典」と呼称する。

そのためにもまずは、エントリーしてきた高校生に、できるだけ多くの機会を届ける必要がある。今回は13の地域で「地域Summit」が開催された。もちろん、過去最多の開催地数である。

200名近くの高校生が参加した最大規模の関東Summit(2020年2月初旬開催)

だが、2月の下旬、地域Summitの最後を飾るはずだった関西Summitの開催直前に、予想外は起きた。新型コロナウイルス感染症の拡大だ。現地開催の可能性を残しながら検討を進めたものの、本番の4日前に全校休校が決定。やむなく、オンラインでの開催が決まった。

関西Summitを終えたマイプロジェクト事務局は、すぐに全国Summitの開催検討に入った。これまでの経験があってこそ、現地で開催することへのこだわりもある。高校生同士の創発、熱量、感動。これらは、現地で開催してこそ生まれるのではないかという仮説もあった。それでもオンラインでの開催に踏み切ったのは「高校生たちに学びを」という最上位の目的を果たすためであった。

急遽オンラインでの開催が決まった関西Summit

オンラインの壁、
大人たちの思い

オンライン開催にあたっては、いくつかの壁があった。コンテンツの見直しはもちろん、高校生のオンライン環境整備にも取り組んだ。

しかし、壁を乗り越えたのは運営だけではない。発表動画や資料の提出、オンライン環境の準備、フォームの記入などの様々な「課題」に、多くの高校生たちは懸命に応えようとした。

本番の一週間前には、高校生たちが自らのプレゼンテーションをよりよくするための「Brush up Day」が開催されていた。本来は全国Summitの前日に開催されているものだが、オンラインということもあり、5日間約20日程にわたって開催することとなった。そこで奮闘したのは、約20名のファシリテーターである。

ファシリテーターには、自らもマイプロジェクトに取り組んだ大学生のOB・OG、そして日常的に高校生たちのプロジェクト学習を支える社会教育団体や学校教員・コーディネーターなど、有志のメンバーがボランティアで参加した。突然決まったオンライン開催にも快く対応し、5日間の日程を捻出して高校生の対応にあたった。

また、当日は会場に来るはずだったサポーター(審査員)も急きょオンラインでの参加が決まったが、混乱や多忙を極める中で、臨機応変に準備を進めてくださった。ファシリテーターやサポーターの想いは一つだ。「高校生たちの学ぶ意欲に応えたい」。

ブラッシュアップの様子

高校生たちの学びは止められない

全国Summit当日。
オンライン上には出場高校生99名と引率者、そして総勢40名のサポーターとファシリテーターが集まった。この場に集まれたこと自体に感謝をしたい、と話す高校生もいた。他のプロジェクトからの学びをたくさん得たい、と話す高校生もいた。その姿は大人たちが思ったよりも何倍もポジティブで、学ぶ意欲にあふれていたように思う。

最終日の動画と出場プロジェクトの紹介ページを期間限定で配信しています。視聴を希望されるかたは、こちらからお申し込みください。

オンライン全国Summit2019での集合写真

全国Summitのクライマックス。「学びとはなにか?」という問いを与えてくれたプロジェクトに授与される賞、ベストクエスチョンアワードに選ばれた「アシタバウニ育成プロジェクト」の高校生は、受賞コメントでこう話した。「ぼくたちは無料でウニを手に入れたい。もし関係者をご存知の方がいたら、教えてほしい」。多くのプロジェクトが受賞に対しての感謝や喜びを述べる一方で、ほとんど表情を変えずに言い放ったその一言は、強く印象に残っている。

一方、文部科学大臣賞に選ばれた「気仙沼クエスト」プロジェクトは、二度目の全国Summit出場であった。彼らが評価されたのは「コラボレーション」の観点。前回出場した際に得た「自分は独りよがりだったのだ」という気づきを活かして、仲間を増やし、地域の人を巻き込んだプロジェクトへと進化した。

何より私が驚いたのは、二度目の全国Summitに挑んだ彼の変貌ぶりである。前回の全国Summit、会場の端のほうで一人佇んでいた人見知りで臆病な彼の姿はそこにはなかった。自信にあふれ、仲間と笑い合い、そして涙を流す姿を見て、人はこんなにも変わるものなのかと衝撃を受けた(彼のことは、またどこかで書いてみたいものだ)。

ところで彼らには共通点があると、私は考える。それは、アワードの先を見据えて学ぶ姿勢だ。全国Summitから一週間が経っても、高校生たちのコミュニケーションは続いた。アンケートの協力を呼びかける高校生、活動報告をする高校生。開催から二週間後には、オンラインでつながり個別に話をしたという高校生、はたまたオンラインイベントを開催したという高校生も現れた。

高校生たちの学びは、止まらない。
この困難においても、止められない。

文部科学大臣賞を受賞した「気仙沼クエスト~「内輪受け」が起こす観光革命~」の二人(左手が大きな成長を遂げた「彼」)

史上最大規模の学びの祭典は、オンライン上で幕を閉じた。もちろん、オンラインでの開催によって果たせなかったこともある。
プレゼンテーションで伝えきれない想いがあった。」
「実際に会ってもっと話をしてみたかった。」
高校生からはそんな声も挙がっているが、それさえも学びの意欲の表れのように感じる。「ウニ」や「気仙沼」の彼の姿を見ていると、高校生というこの時期だからこその学びや成長があるということは信じて疑えない。この困難な状況下においても、大人たちにはその意欲に応える義務がある。

もとより、全国Summitが学びの祭典としてあるのは、その場が学びの場であるからだけではない。そこに集まった高校生たちには、自ら学び、経験を学びに変える力が備わっている。だからこそ、今回のオンラインという環境でも貪欲に学びを得られたのではないだろうか。そして、そんな高校生たちの背景には、学びを支える「伴走者」がいる。先ほどご紹介したウニや気仙沼の高校生にも、素晴らしい伴走者がいるのだ。そうして、非日常の学びは日常につながっていく。

しかしその日常と言えば、今回の状況はこれまでとは一変している。先の見えない状況の中で、伴走者たちは戦っている。アクティブラーニングや校外活動の禁止など、高校生がプロジェクトに取り組むことをより難しく感じている伴走者もいる。

オンラインで高校生の意欲を引き出すことは相当に難しく、苦心している伴走者もいる。
私たちは、そんな伴走者たちを支えたい。

高校生の学びは止められない。止めてはいけない。きっと想いは同じはずだ。

探究・マイプロジェクトに取り組む
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全国高校生マイプロジェクトアワードは、2020年度も全国各地で開催予定です。現在、探究・マイプロジェクトに学校や地域で取り組み、来年度のアワードへご参加をお考えの教育関係者を対象に「パートナー」を募集しています。「パートナー」へのご登録後は、教育関係者同士で学び合うコミュニティでの勉強会へのご参加や教材・プログラムを無償にてご利用いただけます。詳細ならびにお申し込みは下記をご覧ください。

https://myprojects.jp/partner/

Writer

吉田 愛美 全国高校生マイプロジェクト事務局

1991年福島県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。地元の力になりたいと、転職を経て地元選出の国会議員秘書を勤めた後、2016年1月より現職。コラボ・スクール大槌臨学舎で広報・事務・教務(中学校)を担当。現在は全国高校生マイプロジェクト事務局広報を担当。地域を巻き込んだ教育を通して、地域を元気にすることが目標。東北が大好きで、旅行はいつも東北と決めている。

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