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「挑戦する機会を与えてくれた」宮城県女川町の放課後施設が、10年の活動に一つの節目

vol.189Report

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category #活動レポート

writer 編集部

東日本大震災直後の2011年7月にカタリバが立ち上げた、被災地の子どもたちのための放課後施設「コラボ・スクール 女川向学館」。家庭でも学校でもない子どもたちの第三の居場所として、10年間で532人の子どもを支えつづけてきました。

14時46分。校舎の時計は、10年前に地震があったときの時間でとまったままになっています

2021年春、女川向学館は、震災10年を迎える中でこれまで使っていた校舎の取り壊しが決まり、新しい場所へと移転することになりました。

旧校舎で3月18日に行われた感謝式の様子と、コラボ・スクール女川向学館のこれからの取り組みをレポートします。

路上で勉強する子どもたちに、安心して学べる居場所を

カタリバでは東日本大震災発生後に、スタッフのみんなで街頭募金を実施。集まった募金を持って、カタリバ代表・今村久美が被災地入りしたのは、4月17日のこと。伝手をたどってあちこちの地域を巡るも、カタリバができそうなことは、なかなか見つかりませんでした。

そんな中、最後にたどり着いたのが女川町。女川町は、宮城県内で最も死者・行方不明者数の割合が高かった町です。小中学校は高台にあったため学校にいた子どもたちは助かったものの、町内の約89%の建物が被害を受けており、路上で勉強する子どももいるような状態でした。

そのような状況の中で、教育長や教育委員会と面会し、放課後の居場所をつくることを決定。「子どもたちの教育をどうしていくか?」と地元の先生たちとも話し合いながら、7月4日に初のコラボ・スクールを開校しました。

開校直後の女川向学館の様子。地元の塾の先生やボランティアが運営に協力してくれた

開校した場所は、避難所となっていた女川第一小学校校舎の1階。もともと女川第一小学校に通っていた子どもたちは、4月からは中学校の校舎、7月からは女川第二小学校(現在は女川小学校に統合)を間借りして授業を受けていました。そのため、コラボ・スクール開校にあたって、「もう授業がされなくなった校舎をまた使ってくれてよかった」と言ってくれる子どももいました。

コラボ・スクール女川向学館で受け入れることになったのは、小学1年生〜中学3年生の子どもたち。震災翌年の2012年3月には、37人の中学3年生が高校受験を無事に乗り越え、初の卒業生も送り出しました。10年の活動の中には、長引く仮設住宅での生活の疲れや震災のストレスにより子どもたちが体調を崩したりと大変な時期もありましたが、学校の先生たちや地域の人たちとともに子どもを見守り続けてきました。

20,000時間以上を過ごした「コラボ・スクール」
向学館での思い出を振り返る感謝式

震災後、女川第一小学校校舎のグラウンドにはたくさんの仮設住宅が急ピッチで設置され、町内最初の仮設団地ができました。2011年11月には、避難者全員の仮設住宅への引越しが完了。その後、町内の小学校が統合され、女川第一小学校は2013年3月末をもって閉校になりましたが、カタリバは、その後もずっとこの校舎をお借りして、活動を続けてきました。

しかし開所から10年という年月が流れ復興のフェーズも変わる中で、このタイミングで校舎を移転することに。3月18日には感謝式として、在校生や卒業生、スタッフたちが校舎やオンラインに集まり、20,000時間以上の時を過ごしてきたコラボ・スクールでの思い出を語り合いました。

中学3年生の女子生徒は、小学2年生から通った8年間のコラボ・スクール生活について、こんな風に話してくれました。

「苦手な科目にも先生が寄り添ってくれたし、学校で体験できないことに挑戦する機会を与えてくれたと思います。高校受験に必要な作文についても、オンラインで国語の先生がサポートしてくれました。第一志望校にも無事合格しました。挑戦する楽しさを忘れずにこれからも学び続けたいです」

高校生活の傍ら、ボランティアスタッフとしてコラボ・スクールで小中学生に勉強を教えてくれた生徒

現在大学2年生の卒業生は、元女川第一小学校の生徒。震災当時は10歳でした。コラボ・スクールに通いながら、高校時代は「自分も教えてみたい」とボランティアスタッフとして、小中学生へ勉強を教えることも経験。現在は教育学部で教員免許を取ろうとしています。

「日常が大きく変化して疲弊していましたが、向学館ができて、友達と遊んだり、気兼ねなく話せる大人ができたりした。失われたと思っていた交流の場所や安心できる時間をもたらしてくれて、それが自分たちの活力になりました。ここでの経験があったからこそ、子どもの成長に携わるという夢を見つけられました。これからも、子どもたちが放課後に集まって勉学に励める場所であってほしいです」


町長や教育長も感謝式に顔を出してくださり、みんなで卒業生や在校生のコメントを聞きました

また、女川町の町長や教育長からは「自分も子どもが2人お世話になっていました。ひとりひとりに外の世界を見せてくれる玄関口でした」「AI型タブレット教材など、先進的なものを取り入れてくれました。学びや遊びだけでなく、心の拠り所にもなっていたと思います」などのコメントをいただきました。

久しぶりに顔を合わせた卒業生やスタッフ同士、近況報告にも花が咲きました。大学進学や転職はもちろん、結婚したり子どもができたりという報告もあり、この10年間それぞれが頑張ってきたことを感じられる、温かい時間が流れました。

女川向学館の事例を通して、震災の記憶を受け継いでいける

女川向学館の新校舎の場所は、JR女川駅前のテナント型商店街「シーパルピア女川」に決まっています。シーパルピア女川は、震災後の女川町の顔として新しくつくられた、駅から海に向かって真っすぐに続く商店街。  小中学校からも近い町の中心部にあり、前より通いやすくなったという子どももいるそうです。

向学館立ち上げの時から活動していた山内は、これまでの10年、そしてこれからのコラボ・スクールについてこんな風に話します。

「開校から今までの10年は、コラボ・スクールは”よそから入ってきた”と捉えられていたかもしれません。でもここから10年20年は”もともと女川町にあるもの”として、どういう価値を地域で生み出せるかだと思っています」

石巻市出身。女川町で塾を運営し、3.11により被災。震災後は塾の無料開放を行っていたが、コラボ・スクールの話を聞き、参加を決意する。10年経つ現在も業務委託でカタリバに関わり続ける。

「地方ならではの教育格差や機会格差という課題がある中で、女川向学館の取り組みは、地方のモデルケースの1つになると思っています。それに女川に事例を聞きにきてくれたら、ここで起きた震災のことも知ってもらえる。被災地で育った人間としては、今後も日本各地で自然災害がおこりうる可能性があることや、備えが必要であることを忘れてほしくありません。同じような想いを持つ町民はたくさんいます。そうした想いをつなぎ続けながら、今後も活動していくのだと思います」

この地域に根付いた、持続可能な運営を目指して

北海道出身。アフリカ・モザンビークで先生として勤務中に3.11の震災が起き、2012年4月から女川向学館で働きはじめる。2021年より、拠点長に。

また、副拠点長であるスタッフ・芳岡は、これからのコラボ・スクール女川向学館について、こんな風に話します。

今回、校舎は変わりますが、やることは本質的には変わらないと思っています。放課後の居場所があって、子どもと先輩たちのナナメの関係がある。これまではカタリバという組織で運営してきましたが、この地で継続的に子ども達の成長をサポートするために経営や運営の主体を地域に移管していきたいと考えています。運営ノウハウや人材採用などはカタリバもサポートに入りながら、今後10年20年とここで運営していけるように考えていきたいです」

ここで生まれた子達が『どこで生まれても関係ない』と言えるようになるのには、女川向学館だけでは難しい。女川町として、町一体で教育に取り組んでいけたらいいなと思ってます。『向学館があるから新しい教育を生み出すことができた』みたいに、日本を代表するような事例になればと思うし、地方の教育のモデルケースをつくりたいです

これまではご寄付に支えていただきながら運営を続けてきましたが、地域の中で持続可能に運営していくための準備も少しずつ進めています。この地域で培ってきた関係性をよりしっかりと育てながら、子どもたちを支えていける体制構築に、カタリバは取り組んでいきます。


▶女川向学館と同じく東日本大震災後の2011年より、岩手県大槌町でカタリバが運営する「ラボ・スクール大槌臨学舎」も、昨年に校舎を移転しました。緊急事態宣言が明けてしばらくの移転だったため、感染予防等を考慮して感謝式等は執り行いませんでしたが、多くのみなさまに感謝を伝えたいとスタッフが動画を作成しましたので、ぜひご覧ください。現在は、大槌高校内の教室をお借りして、運営を続けています。

【コラボ・スクール大槌臨学舎 旧校舎お別れ動画】

▶東日本大震災発災10年によせて、この10年の活動をまとめた活動レポート「カタリバが、子どもたちと過ごした10年間」を公開しました。震災から10年経った子どもたちの姿をまとめたインタビューや、コラボ・スクール卒業生アンケート、これからの東北での活動などをまとめていますので、こちらもぜひご覧ください。
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活動レポート「カタリバが、子どもたちと過ごした10年間」pdf(25.43MB)

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編集部 編集部

KATARIBAMagazine編集部が担当した記事です。

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