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発災から2か月。熱海豪雨被災地での子ども支援、現場からのレポートと今後の展望

vol.214Report

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category #活動レポート

writer 編集部

7月3日に発生した静岡県熱海市伊豆山地区での土石流。発災直後は約580名の市民が避難し、確認された死者は26名となりました。被災したエリアにある伊豆山小学校は、土石流発生後、臨時休校に。その後も断水などが続き校舎は使用できず、子ども達は市内の図書館など2カ所に分散して授業を受けていました。

8月中旬に入ってようやく自宅にはじめて入れたという方や、豪雨が起きるたびに2次被害に備えてまた避難しなければならないという方もおり、まだまだ現地では落ち着かない状況が続いています。

土石流が起きた現場。約130棟の家屋が流出・損壊した。

カタリバの、災害時子ども支援 「sonaeru(ソナエル)」プロジェクトチーム(以下sonaeruチーム)は、発災後の7月6日より現地入りしてリサーチを開始。7月22日より避難所の一角に子どもたちのための居場所「カタリバパーク」を、また8月からは中高生の居場所もオープンしています。

カタリバが居場所を始めるまでのこと、そして今の様子を、お伝えしたいと思います。

避難所に入れない…
ニーズが掴めない難しさ

カタリバは、2020年7月に発災した熊本豪雨でも子どもたちの支援を行っています。熊本豪雨では発災5日後から子どもの居場所をスピード開設しましたが、今回は発災2週間以上経ってからようやく子どもの居場所がオープンできるという状況となりました。

スピード感を持って動きづらかった理由は、いくつかあります。まず、発災の3日後から現地入りしてリサーチを開始したものの、sonaeruチームは避難所に入ることができない状況でした。

被害が遭った熱海市は、古くから湯治の地として親しまれる保養地です。通常の災害では、学校の体育館等を避難所にすることが多いのですが、今回は各世帯がホテルの個室に避難するという形で、避難所が設けられました。

コロナ禍で密を避けた方がいいという状況もある中、各家庭ごとを分離してプライバシーが守られる形で避難所が設置できたのは、保養地ならではの奇跡的な幸運でもあります。しかし、それぞれに個室があることで課題が見えづらく、「何に困っているか」「どんな状況にあるか」を知ることが非常に難しい状況が続きました。

市内でヒアリングを行う、sonaeruチームの責任者・戸田(右)。

sonaeruチームも、保護者の声を直接聞くことができなかったため、教育委員会や現地の団体と話し、支援の道を模索していきました。地元のキーパーソンに避難所の保護者の困りごとを聞いてもらったりしながら、徐々にニーズをつかんでいきました。

また、熊本豪雨の際はカタリバの別事業でのつながりもあって行政ともスムーズに連携し、迅速に支援を始めることができましたが、熱海市とはもともとのつながりがありませんでした。徐々に関係を構築しながら被災者の支援ニーズをお伝えし、最終的には社会福祉課の子育て支援室の要請を受け、発災19日後に子どもの居場所を開設することができました。

「避難生活で気が狂いそう」
1〜12歳までを受け入れ

現在カタリバパークは、1歳〜12歳まで、1日に約15~20名ほどの子どもたちが利用。保護者からは「次の住居を探すために市の説明会に行かねばならなくて、子どもを預けられるのが助かる」「家屋の掃除は危険を伴う作業なので、大人だけで行けるのが有り難い」「子どもが精神的に不安定になっていたが、カタリバさんのところにいくようになってから落ち着きを取り戻し、元気になった」という声をいただいています。

避難先のホテルの一室で開設した、カタリバパーク。

もともと熱海市には乳幼児向けの保育園や小学生向けの放課後児童クラブがありますが、仕事があって昼間に保護者が誰もいない家庭のみが利用できるものでした。被災者の方たちの中には、「学童や保育園は利用できないけれど困っている」と制度のはざまに取り残されている方たちがいました。

避難した全世帯を訪問している保健師さんも、行き詰まりを感じている家族に「カタリバがあるから行ってみたら」と声をかけてくれているようです。「避難生活でずっと2人でいるため、気が狂いそう」と小さなお子さんを連れたお母さんがカタリバパークに子どもを預け、「心が楽になった、本当に助かりました」と言ってくださったこともありました。

こうした低年齢の乳幼児から小学生の子どもたちを支えてくれているのは、ボランティアで参加してくださっている地元の保育士のみなさん。数年前に保育園で担任していた子と避難所で再会したという方もおり、地元ならではのつながりを活かしながら、安心できる空間をつくってくださっています。


昼寝する幼児や、夏休みの宿題をやる小学生などが集まる。

現在は25名の保育士さんがボランティアとして登録。保育園での日々の勤務も続けながら、園が休みの日に交代でカタリバパークにも参加。また、アライアンスパートナーの企業・団体の方や、カタリバが別事業で連携している現地団体「NPO法人しずおか共育ネット」などのスタッフにも参加していただき、地元の方を中心にみんなで協力しながら場を運営しています。

地元の中高生たちが
誰でも使える居場所もオープン

そうしてカタリバパークは運営できたものの、ホテルでの避難生活の中では、「受験を控えていても、避難所の部屋だと集中できない」「遊びに行く場所もなく、ずっと同じ部屋の中にいるため、家族との関係がギクシャクしてしまう」という声が高校生からあがっていました。

カタリバパークは、どうしても低年齢の子どもたちが騒がしく遊ぶ場になってしまうため、中高生からすると落ち着ける場所ではありません。中高生に特化した、くつろげる居場所が必要でした。

ここに協力してくださったのが、熱海銀座商店街の中にあるHUBlic合同会社。運営している会員制コワーキングスペースの一部を、中高生の居場所として使わせてくれることになりました。

「どんな場所にしたいか」を避難生活中の有志の高校生が考え、「遊ぶ、学ぶ、くつろぐ」が居場所のコンセプトに。大学生に勉強を教えてもらったり、パソコンを借りたりできる中高生の居場所「熱海Youth Lounge」が8月からオープンしました。毎日10名前後の中高生が、スペースを利用しています。


高校生が勉強中。進路の相談などにも乗っている。

家屋の損壊などの直接的な被害を受けていない子どもでも、仲のいい友人が被災してしまったり、目の前で起きた非日常の惨状に対して心を痛めている子どもたちも多くいます。また、通学路が被災していたり、立ち入り禁止区域の影響で行動に制限がかかっている子どもも少なくありません。そのため、「熱海Youth Lounge」は直接的に被害を受けていなくても、熱海市内の中高生であれば誰でも利用できる居場所になっています。

隣の小学校で2学期が開始、
地域の企業へ引き継ぎも

避難所は9月中には閉鎖を予定しており、その後、被災した方たちは県営住宅の空き部屋に仮入居したりすることになっています。なかには隣の自治体である湯河原町に仮住まいしながら通学せざるを得なくなるような子どももいます。

急傾斜地の多い熱海では仮設住宅の新規設置は難しいとされている。

8月24日には、土石流が発生したエリアにある伊豆山小学校の子どもたちの始業式が、隣の小学校で行われました。子ども達は、しばらくは隣の小学校にスクールバスで通いながら、授業を受けることが決まっています。

避難所の一角で運営していたカタリバパークは、9月からは土日開催という形で継続。本来は8月末で役割を終える予定でしたが、「家屋の復旧や引っ越し作業が続くので子どもを預かってほしい」という保護者の声や、「隣の小学校での慣れない学校生活は不安」という子どもたちの声から1ヶ月の延長を決めました。

「熱海Youth Lounge」については、「この町には中高生の居場所がなかったから、今回の支援を機に続けていきたい」とHUBlic合同会社が言ってくださったこともあり、地域にあわせた形でユースラウンジの機能は引き継がれていく予定となっています。

sonaeruチーム体制も強化。
自然災害が増える中、これからの課題

sonaeruチームは、昨年まではカタリバスタッフ1人と、現地の協力団体や企業パートナーの方達と一緒に活動してきましたが、今年からはカタリバスタッフをもう1名増員。体制を強化して、支援にあたっています。

2名体制をつくったことで、1人が熱海で支援を続けながら、もう1人が8月中旬に起きた九州での豪雨被害を受けて現地入りしてリサーチするといった柔軟な動きもできるようになりました。

それでも、全国各地で相次ぐ自然災害のことを考えると、複数箇所で同時多発的に被害が起きた場合はどのように対応すればいいのかという課題はあります。


子どもたちが使ったおもちや部屋の除菌を、毎日欠かさず実施している。

また今回の支援において、カタリバスタッフはPCR検査をした上で現地入りし、抗原検査を毎日行いながら活動しています。コロナ禍の中で、感染予防に配慮しながら動かなければいけない難しさも、昨年から続いています。

密を避けなければいけない状況ではありつつも、困ったときに子どもたちの支えになれるのは人であるということも、私たちが活動の中で実感していることです。現地の方たちと協働して可変的に支援チームをつくりながら、カタリバではこれからの災害に向けてできることを模索していきます。

-TEXT:田村 真菜

Writer

編集部 編集部

KATARIBAMagazine編集部が担当した記事です。

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