あの頃の私にも、あってほしかった。10代の居場所をすべてのまちに届けるために
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米田 瑠美 Rumi Yoneda ユースセンター起業塾
大学卒業後、人材系企業にて6年半勤務し、首都圏エリア中小企業の求人・採用に携わる。同社内CSRの一環で「キャリア教育プロジェクト」のメンバーに選ばれたことから、教育への道を考えるようになり、カタリバに転職。カタリバでは、出張授業「カタリ場」というキャリア教育事業や、文京区青少年プラザb-labの館長を経て、現在は、「ユースセンター起業塾」で自治体連携を担当。図書館・児童館連携等を通して10代の居場所の立ち上げを支援している。
「このまちは面白くない、何もない」。
ある中高生の何気ないひとことが、奈良県三宅町に「子どもの居場所」を誕生させました。放課後や休みの日にコンビニの前に集まる子どもたちと、疑問を持ちながらそれを見つめる大人たちの目線。そんな現実が大きく動き出す原点となりました。
私は、文京区青少年プラザ「b-lab(ビーラボ)」で館長を務めたあと、現在はユースセンター起業塾にて自治体連携を担当しています。
今年5月、ユースセンター起業塾では、「令和9年度に向けた『10代の居場所づくり』の始め方」を開催しました。こども家庭庁の大山宏さん、そしてユースセンター起業塾が立ち上げ当初からご一緒している奈良県三宅町・千葉県柏市のみなさんとともに、「居場所をどのまちにも届けるとはどういうことか」を語り合ったイベントから、私自身が得た気づきをお伝えできたらと思います。
安心が土台になる。国で議論されている、居場所の役割と方向性
こども家庭庁の大山さんは、まさに現在進行中の国の審議会で、居場所の役割がどう捉えられているか、その必要性がどのように議論されているのかを共有してくださいました。
特別な課題があるかどうかに関わらず、「若者」という存在そのものが、漠然とした不安や孤独感を抱えやすい傾向にあること。そしてコロナ禍の影響もあって「人に関わる・頼る」経験自体が少なくなり、その傾向が加速しているように思われること……。これらの背景を踏まえて、居場所に求められる機能について大山さんはこのように話します。
「まずは、安心していられる環境があること。その安心感という土台の上に、いろいろな他者との交流やつながりが、その場・拠点をベースに構築されていく。そして、そのつながりや広がりの中で自分自身の挑戦や試行錯誤ができる。そういったプロセスを通じて、若者は自分の人生への主体性を獲得していくのだと認識しています。居場所は”ただ過ごす場”ではなく、その先の人生を育てる土台であるのだと思います」
そして、その居場所はユニバーサルに、すべての若者に必要なものだという点にも触れました。「課題が一切ない若者はほぼいない」とし、居場所が日常の中に組み込まれることで、若者の困りごとが自然に可視化され、必要な支援へ早期につなげられるという役割を持つと言います。
もう一つ印象的だったのが、居場所の「数」と「多様性」についての視点です。
子ども・若者白書のデータ(*1)によれば、居場所が1か所よりも2か所、2か所よりも3か所と複数ある子どもの方が、自己肯定感や将来への意欲で高い値を示しています。
「一か所の箱物に全員を集めるのではなく、地域の中に多種多様な居場所があって、子どもたちが自分でそのとき行きたい場所を選べること。そういう環境をつくることが居場所づくりの方向性です」(こども家庭庁・大山さん)
*1:内閣府「令和4年度版 子供・若者白書」
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/gian_hokoku/20220614kodomogaiyo.pdf/$File/20220614kodomogaiyo.pdf
大都市と、小さなまち。2つの自治体の実践からの手応え
続いて、対照的な2つの自治体から実践報告がありました。
千葉県柏市「中高生の広場」(柏市教育委員会・長谷川さん)は、2024年12月に開設。柏駅から徒歩3分という好立地に、371平米の拠点を設けました。利用登録者は開設から約1年半で6,785名、令和7年度の年間利用者は約4万7,500名に上ります。
▼中高生の広場
https://www.city.kashiwa.lg.jp/shogaigakushu/seishonen/hiroba.html
特徴的なのは、カフェエリアで活動する「大学生キャスト」の存在。有償ボランティアとして約20名の大学生が入り、中高生にとっての「少し先の先輩」として、学校や家庭では言いづらいことも気軽に相談できる「ナナメの関係」を体現してくれています。
「中高生が思い思いに過ごしている姿、成長の瞬間を身近に感じられることがこの仕事の楽しさだと思っています。多くの中高生がこの施設を利用してくれていますが、その日々の様子からも、居場所の必要性について強く感じているところです」(柏市教育委員会・長谷川さん)
一方、奈良県三宅町(三宅町健康子ども部 ・山本さん、植村さん)は全国で2番目に小さなまち。高校は町内になく、固定の大きな建物もありません。地域おこし協力隊として着任したスタッフが駅前に出没したり、移動式屋台で子どもたちのいる場所へ出向いたりと、「まち全体がユースセンター」を目指す活動を続けています。
▼三宅町ユースセンター公式ホームページ
https://www.town.miyake.lg.jp/soshiki/17/5792.html
その形になったのには、理由があります。小さなまちでは中学校がひとつしかなく、人間関係がそのままユースセンターに持ち込まれてしまう。「小さいまちなのだから、ユースセンターという場所に来ないと会えないのも変かもしれない」という気づきから、子どもたちのいるところへ自分たちから出向き、顔見知りになり、そこからユースセンターへ足を運んでもらうというスタイルにシフトしていきました。
「箱物に囚われずに、まちのいろんなところで小さく、でも子どもたちとグラデーションのある関わりを作っていきたい」(三宅町健康子ども部 ・山本さん)
中学校を卒業して町外の高校に進学した後もユースセンターを利用し続けてくれる子どもが出てきていたり、隣のまちの中学生から「うちのまちにもユースセンターを作ってほしい」という声が届いたりと、小さな波紋が広がっていると感じているとのことでした。
誰かの「善意」だけでなく、国や自治体、みんなで10代の居場所を
大山さんや、2つの自治体の話を聞いて、改めて感じることがあります。
形も規模も違う。でも、どちらも「このまちの子どもたちのそばに、いつでも待っていてくれる大人と場所を置く」という意志があって動いています。
私自身の「あの頃」を思い返すとき、帰り道にふらっと立ち寄れる場所があればと感じることがあります。遠くの素晴らしい施設より、近くの「なんとなく寄れる場所」。そしてそこに、親でも先生でもない誰かがいること。
それは、善意ある個人の熱量だけに委ねてよいのでしょうか。
担い手が疲弊すれば居場所は失くなってしまう。他の地域から転居してきた子には届かない。たまたまそのまちに住んでいなければ出会えない——それでは、まだ十分ではないのです。
大山さんがおっしゃったように、国レベルでも「子どもの居場所をどう整備するか」の議論は、今まさに佳境を迎えています。三宅町や柏市のような先駆的な実践が積み重なり、やがて制度の言葉になっていくという、そのプロセスを、現場にいる者として確かに感じています。
「子どもが自分で自分の行く先を決め、そのために必要な知識や経験を地域の大人が手助けする地域になってほしいです。」(三宅町健康子ども部 ・植村さん)
この植村さんのお言葉に深く共感します。
三宅町のみならず、あのまちのあの子にも、「ナナメの関係」や「あたたかいおせっかい」が届く社会へ。そのために一歩ずつ、居場所づくりの輪を広げていきます。
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