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KATARIBA マガジン

ドイツと日本の学生の交流を通して考える。「子どもや若者の声」を学校、社会に届けるとはー。

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category #スタッフコラム

writer 編集部

Profile

草加 夢野 Yumeno Kusaka みんなのルールメイキングプロジェクト

島根県江津市出身。宇都宮大学国際学部国際社会学科卒業後、共同通信社に入社。岩手・広島・滋賀で記者として約7年間勤務し、東日本大震災や平和、原爆に関する取材に従事。2023年の出産から復職後に転職を考え、2024年11月にカタリバ入職。現在は「みんなのルールメイキング」事業部に所属し、オウンドメディアやSNS発信、取材対応などを担当している。

子どもたちにとって最も身近な社会である「学校」で、校則・ルールの見直し、学級活動や委員会、行事運営などを通じて、子どもたちが主体的に学校づくりに参画する経験(ルールメイキング)を支援している、カタリバの「みんなのルールメイキング」。立場や意見の異なる他者(児童生徒・教員・保護者など)との対話を通じて、価値観をすり合わせながら、ともに合意形成・意思決定をする経験を重視しています。

私はそのメンバーとして主に広報活動を担当する傍ら、教育プログラムに取り組む各地の団体の皆さんと一緒に、中高生や学校の先生方が交流できるイベントの企画運営を担っています。

先日、ご縁をいただき、カタリバの中野事務所でルールメイキングを通じた国際交流イベントを開催しました。ルールメイキングをテーマに、ドイツの学生9名と、日本の中高生・大学生13名が何を語り合ったのか。対話の様子と気づきをお伝えできたらと思います。

ルールメイキングを通じ、日本の若者の社会参画に関して学びたい

今回の交流は、文部科学省の委託事業として、独立行政法人国立青少年教育振興機構が実施している日独青少年交流事業の一環で実現したものです。

交流の背景として、独立行政法人国立青少年教育振興機構の担当者の方から事前に、「ドイツ人の学生たちとの交流企画の中で、日本の中高生たちが対話をしながらルールメイキングに取り組んでいる姿を通じ、日本の若者の社会参画に関する学びを深めたい」と伺っていました。

冒頭、私から事業立ち上げの経緯をお話しました。2019年、「ブラック校則(児童生徒の人権を侵害するおそれのある理不尽な校則)」が社会問題化する中、「校則」という子どもたちにとって身近なテーマを対話と学びの素材に変え、生徒と教員が一緒により良い学校をつくっていく——。そんな想いで始まった活動の「これまで」や、異なる他者と対話を通して合意形成する大切さをお伝えしました。

ちなみに「校則」という概念自体がドイツの学校にはないようで、日本の校則について説明するとドイツの学生たちは驚いていました。
ドイツの学生と日本の学生のアイスブレイクの時間

多様な背景を持つ人たちとルールを考え、よりよい行事に。日本の生徒から実践を報告

続いて、飛鳥未来きずな高等学校の生徒たちが、自分たちの学校や取り組みについて発表してくれました。

飛鳥未来きずな高等学校の生徒たちの発表

飛鳥未来きずな高等学校は、宮城県に本校がある、単位制・通信制の高校。今回は立川キャンパスの生徒が参加してくれました。自由な登校スタイル、受講する授業などを自身の目的や状況に合わせて柔軟に学べる魅力がある一方で、全員が集まる機会が少なく、自分の意見を表明する場が限られてしまう通信制ならではの悩みを伝えてくれました。

また、文化祭などの行事は生徒が企画・運営するものの、最終決定は教員側に委ねられることもあるため、「一部の人だけでなく、多様な背景を持つ人たちとルールなどを考え、よりよい行事をつくりたい」といった、等身大の葛藤も打ち明けてくれました。

私自身は、ルールメイキングに関わる熱意ある教員の方々や、学校での活動を通して子どもたちがいきいきする姿を見てきたことで、自分自身が持つ「学校像」がアップデートされていく感覚を何度も味わってきました。

ただ今回、生徒たちから実際の声を聴き、「本当は『こうだったらいいのに』と思いながらも、まだ声を届けられていない子どもたちがいる」という事実にもハッとさせられ、身が引き締まる思いがしました。

ドイツは主権者教育が進んでいるように見えるけど――対話を通して見つけた共通の悩み

生徒たちがドイツの学生へ、「日本には空気を読まなきゃいけない雰囲気があるけれど、ドイツはどうでしょうか?」と問いかけると、返ってきたのは「ドイツでも空気を読むことはあるよ」との言葉でした。

「相手を傷つけないために」といった配慮はもちろん、特に政治の話題では気まずくならないよう「空気を読む」場面があるのだそうです。さらに、印象的だったのは若者の声が社会に届くハードルの高さでした。

大学生でありながらも、町議会に立候補し、多くの票を得て当選したドイツの学生は、「議会に入っても決定権を持たない部署を勧められたり、『若い』という理由でしっかりと意見を聞いてもらえなかったりすることもある」といった現実を吐露。

また、UNICEF(ユニセフ)で子どもや若者の権利に関する活動を行っている学生は、「ドイツの政治に自分たちの声を届かせるためには、年配の方の2倍、3倍、4倍、さらには5倍近くのデモや署名活動をしなければならないと感じる」とも言います。

「ドイツは主権者教育などが進んでいる」「意見をはっきりと伝えることができ、それが反映されている」というイメージを持っていた日本の学生たちにとって、この現実は意外だったようで、うなづいたり、「えー」といった声をあげたりしていました。

後半はグループに分かれての対話タイム。英語ができる日本の大学生が積極的に入ってくれ、ときには翻訳アプリを使いながら、ドイツの学生と中高生との対話をサポートしてくれました。

ドイツの学生と日本の学生によるグループ対話の様子

「政治についてどう思う?」
「学校でどんな学びを得てきたの?」
「学校の意義ってなんだろう?」

それぞれのグループで、自分たちが聞きたいこと、伝えたいことを重ね、あっという間に対話の時間は過ぎてしまいました。

言葉で表現できない行動を大人側がしっかりとくみとる必要性も

最後に行われた全体質疑では、日本の学生から「なぜドイツでは教員に反対や異なる意見を言えるの?」と問いかけられました。

ドイツの学生は、「ドイツでは『人間は皆平等であり、誰かが上で誰かが下ということはない』という教育が行われている。そのため生徒は教員に対しても自分の意見を言いやすく、授業の進め方に対してもディスカッションを求めるなど、授業づくりにも関わることができる」と言います。

とはいえ、すべての教員が柔軟なわけではないこともあるそう。その場合には、

●まずクラスの中で話し合い、「複数の生徒が同じ問題を感じている」という合意をとって提案する。

●ドイツには「生徒代表」という仕組みが活発に機能しているので、この仕組みを使って、校長や学校運営側に直接要望や意見を届ける。

といった具体的なアドバイスもしてくれました。

また、日本人学生からの率直な問いかけに、保育士の職業訓練を受けているドイツの学生は保育の視点からこのように話してくれました。

「保育士の養成過程において最初に徹底して学ぶのは『自己効力感』。自己効力感を大切にする一歩として、子どもたちが自分自身の意見やニーズをはっきりと伝えることは重要であるが、言葉で表現できない行動などを、教育者や保育者がくみとっていくことも同じぐらい重要。今の質問を受けて、自分ももっと頑張りたいと思った」。

日本の学生からの問いかけに丁寧に答えてくれるドイツの学生

多くの子どもたちが参加できるよう、扱うテーマを広げていく

国や文化が違うことで、「意見の伝えやすさ」、「意見が反映される仕組み」が違うこともあれば、同じ部分で悩んでいることにも気づき、お互いに学びを深めた3時間でした。

事業が立ち上がった当初は、学校の校則やルールをテーマにしていた「みんなのルールメイキング」。でもこれまで多くの生徒と接する中で、子どもたちが「意見を伝えたい」「もっとこうしたい」と思う場面やテーマは、校則やルールに限らず、学校の中にたくさん存在することも見えてきています。

ひとりでも多くの子どもたちにルールメイキングの経験を届けるにはどうしたらよいか…と考えながら、現在は、生徒会や児童会、学級や行事運営などの「特別活動」の分野とも重ねて活動を進めています。

日本の教育の良さを生かしながら、子どもたちが「自分たちの意見を言ってもいいんだ」「自分たちの声で学校や社会をよりよくしていけるんだ」と実感できる場を、教員の皆さんと、そして子どもたちと一緒に丁寧に作っていきたい。その思いを再認識できた交流イベントとなりました。ドイツの学生たちからもらった視点も取り入れながら、これからも試行錯誤を重ねていこうと思います。

Writer

編集部 編集部

KATARIBAMagazine編集部が担当した記事です。

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