CLOSE

認定NPO法人カタリバ (認定特定非営利活動法人カタリバ)

〒166-0003 東京都杉並区高円寺南3-66-3
高円寺コモンズ2F

お問い合わせ

※「KATARIBA」は 認定NPO法人カタリバの登録商標です(登録5293617)

Copyright © KATARIBA All Rights Reserved.

KATARIBA マガジン

受験を控える中学3年生の子どもがいる保護者の方々へ[代表のつぶやき]

vol.276Voice

date

category #代表のつぶやき

writer 今村 久美

今年の高校入試から、AO入試のような、志望理由を問う新しい入試(特色入試と呼ばれる地域が多い)を実施する都道府県が増えているようです。私立入試では以前から面接で全員に志望理由を問う学校もありますが、公立では新しい動きです。これまでの、部活など中学生活での実績を問う‟推薦入試”はあったけど、本人の未来のビジョンを問う‟特色入試”のようなものは始まったばかり。

しかしこの新しい入試、まだなんなのかわからないから、中学校の先生たちも不安の渦中にいらっしゃるようです。

***

私に相談があった保護者の方から聞いたのは、

「ひとまず学校の特色をよく調べて暗記しなさいと言われて、学校の情報を調べているけど、授業の特色とかどこまで調べるべきですかね?」
「内容がわからないから責任が持てないので助言ができない。一般入試に集中すべきと言われた」
「自分のことを『私は』と言えるように練習しなさいと言われて、3学期になってから『俺は』『僕は』を使わない練習をしています。家庭でもやるようにと言われたけど、どうしても俺はと言ってしまいます」

「プレゼン資料を2枚持ち込めるらしいんだけど、学校側もわからないから塾に行ってくださいと言われた……すでに受験勉強の塾にお金を使ってしまっているから、推薦対策にまたお金がかかるのがツライ」

もちろんこれが全てではありませんが、管理教育が主流な県の先生たちほどお困りなようです。

***

保護者の方がお子さんをサポートされる場合、下記を理解していただくと良いかもしれません。

・この入試改革は、新しい‟正解”を設定した入試ではありません(と願いたい)。自分の呼び方とか、高校のカリキュラムの暗記より前に、子ども本人が自分らしく、未来をわくわくイメージできることが大切。何か夢中になっているものについて話すときのように、高校生活のイメージを自分の言葉で語れるよう、会話のキャッチボールをしながら、「どんな高校生になりたいか」志望理由を言葉にすることを手伝うのが、まずは良いのではないかと思います。

・面接で持ち込めるプレゼン資料については、明確なルールが示されていない高校が多いようです。ルールの明記がないなら自由に自分らしく話ができるように資料を作って良いということではないでしょうか。言葉につまるお子さんも、写真や絵などを使って、これがあれば自信をもって話せると思える資料を持ち込める(ラッキー!)と捉えるのが良いのではないかと思います。

・特色入試は合格枠が5名程度など、少ない学校も多いです。このタイミングからこの特色入試一本に賭けるのはなかなか厳しいと思います。ただ、誰にとっても「どんな高校生活を送りたいか」という少し先のイメージを広げることは、探究高校生モードに移行する準備体操として価値あることだと思いますので、入試のためのみならず、考えるいい機会を得たと捉える方が良いと思います。

***

初めて文部科学省の中央教育審議会に参加した2015年、教育課程企画特別部会の議場で、当時、文科大臣補佐官だったスズカンさん(鈴木寛氏)や、教育課程課長だった合田さんが、冒頭でこんなお話しをなさっていたことを思い出します。

「大学入試改革と言われますが、教育改革は3点セットで考えるべき。大学入試改革、大学教育改革、そして高校教育改革。この3点がセットで変わるよう改革すべきです。大学入試が変われば、高校教育が変わります。高校教育改革が進むと必然的に『高校入試』も変わる。そんな未来のために、実現すべき未来の公教育について本気で議論をしてください」

あれから7年たちました。こうして実現していくんですね。
英語のスピーキングテストも、こうした新しい入試も、今は過渡期なのでいろんなバグが出てきています。

親として私たちができることは、受験はこの子の人生にとってゴールではないと深呼吸しながら大きく構えて、受験という外圧をこの子のストレッチの機会に活用できるよう、見守り、伴走することしかないとのかなと感じています。
Writer

今村 久美 代表理事

79年生まれ。岐阜県出身。慶應義塾大学卒。NPOカタリバ代表理事。ここではゆるくつぶやいていきます。

このライターが書いた記事をもっと読む