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KATARIBA マガジン

「故郷、そして自分のために」〜マイプロジェクトに挑戦する東北の高校生

vol.032Mail Magazine

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category #メルマガ

writer 編集部

こんにちは。NPOカタリバの吉田愛美です。いつも温かく見守っていただき、ありがとうございます。

私は今年3月まで、岩手県大槌町の「コラボ・スクール大槌臨学舎」で子どもたちの心のケアと学習支援にあたってきました。現在は、全国3000人の高校生が取り組む「マイプロジェクト」の担当をしています。「マイプロジェクト」とは、大槌臨学舎の子どもたちが「地域のために自分たちも何かしたい」と2012年に行動を起こしたことを発端に始まった活動です。高校生たちが身の回りの課題や関心をテーマに、プロジェクトを立ち上げ実行し、それらを通じて学び成長することをカタリバは応援しています。

さて、私には、大槌町で出会った忘れられないマイプロジェクト高校生がいます。高校2年生のみゆきさんです。

 

181227大槌マイプロ②_みゆきさん横顔.jpg (いつも穏やかな笑顔のみゆきさん)

 

みゆきさんとの出会いは、2016年1月に遡ります。

彼女は当時中学2年生、とても物静かな女の子という印象でした。周りの子たちよりもじっくりと問題を解き、丁寧に文字を書き、テストでは、解ける問題も時間が足りなくて解けずに終わることもしばしば。それでも、みゆきさん自身はあまり気にしていない様子でした。

中学3年生になっても、みゆきさんは相変わらずマイペース。こちらが何か尋ねれば、笑顔でうなづくか、笑って首をかしげるか。みゆきさんの心の内は、なかなかわからずにいました。

 

181227大槌マイプロ③_受験勉強に励むみゆきさん.JPG(大槌臨学舎で受験勉強に励む、みゆきさんたち)

 

コツコツと受験勉強に取り組み、無事志望の高校に合格したみゆきさん。その頃から気になっていたことがあったと言います。それは、大槌臨学舎でマイプロジェクトに取り組む高校生の先輩たちの存在でした。

「自分が思っていることをいろんな人の前で話せるって、かっこいいなと思っていて」

自分を変えたい…。それなら「マイプロジェクトにチャレンジしてみたら?」というスタッフの声に背中を押され、みゆきさんはマイプロジェクトに取り組むことを決意しました。

「地元の大槌のために、何かしたいという気持ちもあったんです」

しかし、どんなプロジェクトに取り組めばいいものか… みゆきさんが思いあぐねていた高校1年生の夏、マイプロジェクトに取り組んだ同じ大槌町出身の先輩の話を聞く機会がありました。

『中学時代は本当に人と話すのが苦手で、どちらかというと教室の隅にいるタイプだった』

そう話す先輩の姿が、自分に重なったというみゆきさん。 そんな先輩が、プロジェクトに取り組む中で”少しだけ自信がついた”と知り、こんなことを考えたといいます。

「自分にも、できるかもしれない」

 

181227大槌マイプロ④_ワークショップ.jpg(自分のプロジェクトを考える、みゆきさん)

 

2017年10月、プロジェクトを考えるイベントに参加したみゆきさんは、様々な大人のアドバイスももらいながら、じっくり自分の身近なことからプロジェクトを考えてみることにしました。

そこで彼女の心に浮かんできたのは、自分のおばあちゃんのことでした。

おばあちゃんは、夫を亡くしたばかり。ここのところずっと元気がありませんでした。気にはなっていたけれど、みゆきさんはおばあちゃんのことをよく知らないので、どんな風に声をかければ良いのか分かりません。

近くにいるのに、実は「よく知らない」おばあちゃんと向き合うにはどうすればよいのか?

みゆきさんは、まず居間でおばあちゃんと話すことから始めました。

「これまでずっと近くにいたのに、話してみたら、おばあちゃんの寂しさに初めて気がついて・・・。自分にも何かできることがあるかもしれない」

そこで、「郷土料理を教えてほしい」と、台所に一緒に立ってみたり、「自分のことを知ってもらおう」と、おばあちゃんを高校の文化祭に招待しました。少しずつ、でも確実におばあちゃんとみゆきさんの関係性は変わっていきました。

「コミュニケーション次第で、人との距離を縮めることはできるんだ」

みゆきさんはこの取り組みを「ばあちゃんSmileプロジェクト」と名付けました。そして2018年3月、全国の高校生たちが取り組みを発表する「全国高校生マイプロジェクトアワード」に参加しました。

「話すのは苦手。だけど、ちゃんと自分の話を聞いてくれる人もいるんだなと気づいた」

 

181227大槌マイプロ⑤_マイプロ全国大会で発表するみゆきさん.jpg(2018年3月、300人以上の観衆の前で発表するみゆきさん)

 

大勢の前で話すことが苦手なみゆきさん。しかし、大会の中でも多くの人が自分の話を受け止めてくれていることを感じます。緊張しながらも、観衆に思いを伝えようと必死に言葉を紡ぐ姿は、中学生のときとはまるで別人のようでした。

「緊張はしたけれど、自分の話を真剣に一生懸命に聞いてくれる大人たちを見て、自分が話していることが伝わっているかもしれないと思いました」

みゆきさんは、全国から集まった高校生や大人たち、300人以上の観衆が見守る中で堂々と発表をやり遂げ、見事「ベストオーナーシップ賞」を受賞しました。

「以前は小さい声でもじもじ話すのが精一杯。でも今は、相手を見て伝わるように話そうと思えるようになりました」

大舞台に立った経験を経て、今、みゆきさんの目線は社会へと広がりつつあります。

「ばあちゃんと同じように、震災で暮らしが突然変わって、寂しい思いをしている人が他にもいるかもしれない」

そう考えたみゆきさんは、1人暮らしの高齢者が多く住む仮設住宅団地の集会所を訪ね、高校生と高齢者を集めて、世代交流の場を作り始めています。

 

181227大槌マイプロ⑥_その後のみゆきさん.JPG(地域の仮設集会所でお茶会を開く、みゆきさん)

 

「マイプロジェクトは、自分が成長できる場所」

彼女のように「自分を変えたい」と願い、「自分にもできるかもしれない」と思える高校生は、全国にいるはずです。それは一部の、特別な高校生に限ったことではありません。高校生たちが変化し、成長するきっかけとなるマイプロジェクトを全国に届けていこうと、カタリバは活動を続けます。

みゆきさんの成長の原点となった「全国高校生マイプロジェクトアワード」。今年度は2019年3月22日-24日に開催されます。各地の高校生が自ら取り組んだプロジェクトを発表します。みなさんにもぜひ、高校生たちの勇姿をご覧いただければ幸いです。

 

181227大槌マイプロ⑦_アワードポスター.jpg(全国高校生マイプロジェクトの詳細はWEBページにて)

 

2001年から活動を始めたカタリバは、被災や貧困、DVや不登校など、様々な困難を抱える子どもたちを応援しています。

18年間の活動を通じて、子どもたちは周囲の応援を受けながら、「マイプロジェクト」のように自分へのチャレンジを重ねて行くことで、困難を乗り越える意欲と創造性を培うことができると感じています

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編集部 編集部

KATARIBAMagazine編集部が担当した記事です。

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