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「ここにいていいんだ」~子どもたちの「安心とチャレンジ」の場づくり

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writer 編集部

こんにちは。NPOカタリバの松本真理子です。いつも温かく見守っていただき、ありがとうございます。

カタリバは、すべての10代が、意欲と創造性を手にできる未来のために活動を続けています。中には、家庭環境など何らかの課題や事情を抱える子どもたちもいます。彼らが意欲的に学び、より良い未来を切り拓いていくために、「居場所」作りが必要だと考えています。

子どもたちのために必要なのは、場所だけではありません。学習支援や自分の世界を広げられる体験プログラムの実施など、仕掛け作りも大切です。自治体から委託を受けたカタリバは、そんな思いでこの2年間、ある中高生の居場所を作り上げてきました。この居場所に通う子どもたちの、最近の様子についてお伝えいたします。

 

1220-2trim.jpg (子どもたちの居場所での2周年感謝祭の様子)

 

「もうすぐ2周年だよ!何かお祝いしないの?」

オープン当初から通い始めた子どもたちは、中学3年生や高校生になりました。すっかり常連となった彼らの発案でこの8月、2周年をお祝いする「感謝祭」を開くことになりました。この日は、勉強を教えてくれるスタッフ、自分たちのごはんを作ってくれるボランティアさん、地域の方々などに、改めて感謝の気持ちを表しました。

また、2年間を振り返る時間でもありました。今ではキッチン、自習室、教室もありますが、当初はフリースペースだけ。カウンターや本棚、机を手作りしながら、子どもたちが過ごしやすい空間を作っていきました。そんな居場所の歴史を、みんなで動画で見てみました。この場所が当たり前にあるのではなく、いろいろな人の想いで今の形になったということを改めて実感する機会となりました。

感謝祭の食卓には子どもたちが作った食事が並びました。子どもたちが宅配ピザ店に赴き、手作りしたピザが12枚。このピザ作り体験も、寄付者の方のご厚意で提供されているものです。

 

1220-3.jpg(子どもたちが仲間のことを思って、手作りしたピザ)

 

「あいつトマトだめだから、トマトソースはやめてバジルソースで作ろう」

「アレルギーの子もいるからカニやエビのトッピングはやめよう」

そんな風に食べる人のことを考えながら、みんなで食べるピザを作りました。ピザ作りひとつとっても、自分の好みだけにとらわれず、この居場所に来ている「仲間」への思いやりが表れていました。

またある中学3年生の女の子は、日頃の感謝の気持ちを込めて、ガトーショコラを作ってくれました。通い始めた頃は、誰に対してもとげとげしく、荒い言葉使いで、人と上手くコミュニケーションをする余裕のなかった彼女。けれど、今は人に喜んでもらうことを自分で考えて実行するようになりました。

 

1220-4.jpg(子どもたちやボランティアの手作りのご馳走が並んだ、感謝祭)

 

この2年間、毎日の夕食を、子どもたちとスタッフやボランティア、皆で一緒に用意し、一緒に食べてきました。

「友達と一緒に食べられるのがうれしい」

「ずっとひとりで作ってひとりで食べてきた。そうじゃないから楽しい」

子どもたちからは、こんな声が聞こえてきます。今までは、保護者がダブルワークをするなど多忙なために、ひとりで食事をしていました。コンビニで買ったもので済ませるなどをしていた彼ら。けれどここで食卓を囲みながら、日頃の他愛のない話をしたり、一緒に「いただきます」「ごちそうさま」と言うことで、ひとつの大きな家族のようになってきているのかも知れません。

 

1220-5.jpg(皆で一緒に食べる、ボランティアさん手作りの温かい食事)

 

さまざまな困難を抱えてここにやって来た子どもたちは、最初は「ひとり」。家庭や学校で孤独を抱え、自分の殻に閉じこもっている子どもが多いのも事実です。けれどもここでは、仲間と一緒に食卓を囲める。気にかけてくれる大学生スタッフや大人たちもいる。段々と、自分が「みんな」の中のひとりなんだという意識が芽生えてくるようです。

2周年を機に子どもたちが、この居場所に向けてメッセージを書いてくれました。

「最初は自分から人に話をしようとしなかったけど、今はいろんな人といろんな話をしていろんなことで笑ってる!」

「スタッフさん、ボランティアさんのおかげで、自分から友だちを作ろう!という気持ちが持てた」

「怒る時はちゃんと怒ってくれるスタッフが好き」

 

1220-6.jpg(思い思いのメッセージを書く子どもたち)

 

今は笑顔を見せてくれる子どもたちですが、ほんの少し前までは違いました。自分に自信が持てない子、他人に無関心な子、荒れた気持ちで攻撃的な子…。自分ひとりでは対応できない理不尽な状況に置かれ、たくさんのストレスを溜め込んで、この居場所にやってきました。

そんな彼らにスタッフは、いつも通りの笑顔で声をかけてきました。そして、話に耳を傾け、頷いたり、質問したり。

「ここにいてもいいんだ」

「自分にも何かできるんだ」

スタッフが丁寧に寄り添うことで、子どもたちは安堵します。安心できる場を得た子どもたちは、勉強など次の「チャレンジ」ができるようになっていきました。

 

1220-7.jpg(自習室で落ち着いて勉強に励む中学3年生)

 

現在12月を迎え、中学3年生は受験勉強の山場。高校進学を諦めていた子たちも、スタッフとの対話や仲間との交流の中で、「みんなが頑張っているから頑張る」と前向きに勉強に励んでいます。スタッフは一人ひとりに「あなたのことを気にかけている。 だから一緒にがんばってみよう」という姿勢で応援しています。

この2年間試行錯誤しながら積み上げてきた中高生の居場所作り。カタリバはこの居場所が、子どもたちがひとりひとりの未来に向けて生き抜く力を育むスタート地点となればいいと考えながら、3年目の運営を進めていきます。

Writer

編集部 編集部

KATARIBAMagazine編集部が担当した記事です。

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