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「人に寄り添える大人になりたい」~3.11から8年、被災地・大槌の大学生が今、思うこと~[メルマガ]

vol.037Mail Magazine

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writer 編集部

まもなく、2011年3月11日の東日本大震災から8年が経とうとしています。カタリバは2011年から、東北被災地の子どもたちのために、居場所づくりと学習支援を行ってきました。

当時小学6年生だった子どもたちは、今年20歳を迎えます。彼らはこの8年間をどのように過ごしてきたのでしょう。2回にわたり、東北の20歳の今をお伝えします。今回はそのひとり、けいこさんのお話です。

 

190221_15.png (地元を離れた今でも、大槌町のお祭りには毎年参加しています)

 

190221_03.jpg (高校時代のけいこさん。中学では吹奏楽部でサックスを担当)

 

2011年3月11日当時、けいこさんは小学6年生でした。学校で友だちと話しているときに、大きな揺れが起こりました。避難した体育館から決して出ないようにと先生に言われたので、けいこさんたちは津波を見ていません。何も状況がわからずぽかんとしてしまい、夢を見ているのではないかと思ったと言います。

翌月4月に中学校に入学しました。買ったばかりの新しい制服を津波に流されてしまった多くの子たちは、ジャージを着て登校していました。制服を持っていても、持っていない友人に「あの子の家は無事だったんだ」と推察されることがいたたまれなくて、あえてジャージを着てくる子もいました。

ほとんどの同級生が、家や、家族の誰かを失っている状況でした。以前なら盛り上がったテレビ番組の話も、テレビを見られない家庭がほとんどなので、できません。仲の良い友だち同士でも、話題を探るように気を使いながら会話していました。

 

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(震災直後の大槌町の避難所)

 

震災後、カタリバは岩手県大槌町で放課後学校「コラボ・スクール」の運営を始めました。子どもたちが勉強するための場所であり、居場所でもあります。

けいこさんがコラボ・スクールに通い始めたのは、中学2年生の夏でした。けいこさんはおばあさんの家に避難して暮らしていましたが、そこには自分の部屋がなく、なかなか勉強に集中できませんでした。コラボ・スクールでは勉強がはかどり、新しい友だちもできました。

高校に進学してからも、コラボ・スクールに通いました。勉強するだけでなく、スタッフといろいろな話をする時間が多くありました。

「課外活動でうまくいかないことなど悩みを相談すると、スタッフの方は社会学や経済学の考え方も教えてくれて、アドバイスをくれました。そこから、こういう学問があるんだなという気づきもあって、世界が広がりました」

悩みがあるとき、「わたしはそういうとき、こうしているよ」と話してくれて、そのうえで「自分はどうしたい?」と聞いてくれました。けいこさんは、「こんな風にきちんと自分の考えで生きている大人になりたい」と思うようになりました。

 

190221_16.JPG(「マイプロジェクト」について話し合う高校生とスタッフ)

 

カタリバが主催する、高校生たちが地域課題や身の回りの課題に向き合う「マイプロジェクト」のスタートアップ合宿にも参加しました。東北各地から高校生が集まって、一人ずつどんなことをやりたいかを考え、発表しました。

同年代なのに、大人にも積極的に「話を聞いてもらえませんか」と話しかけたり、自分から仲間を集めたりできる高校生たちを見て、けいこさんは衝撃を受けます。彼らはすごく自由で、キラキラ輝いて見えました。「やりたいことを『やりたい』って言ってもいいんだ!」と思いました。

 

190221_04.JPG (英語で町を案内する、観光ツアーガイドにも挑戦)

 

けいこさんはコラボ・スクールの雰囲気がとても好きでした。「自分はここにいていいんだ」と思える安心感があり、そこからやりたいことに挑戦していける楽しさを感じていました。

「そんな場所があることって当たり前じゃないと思うんです。わたしはコラボ・スクールに通えて、ありがたいなと思っています。学びがあると人生が豊かになるということも、コラボ・スクールで知りました」

 

190221_12.jpg(同じく教育を志す友人と、大槌町の教育長を訪ねました)

 

けいこさんはその思いから、教育の道を志すようになりました。はっきりと職業は決まっていませんが、子どもに限らず、人々が安心を得られて、その先の未来を描けるようにサポートしたいと考えています。

 

190221_06.jpg(代表の今村と共に、事業報告会で司会に挑戦)

 

2018年12月に開かれた、寄付者の皆様に1年間のご報告をする事業報告会では、カタリバ代表の今村久美と共に司会という大役に挑戦したけいこさん。会の終わりには、「締めの言葉」として今の自分の思いを語りました。

「困難に直面した子どもたちが、前を向いて進んでいくのには本当に長い時間がかかります。

避難所で一人で過ごしていると、孤独と不安でいっぱいの子どもの心は小さなできごとで傷ついてしまう。わたしもそうでした。『自分を必要としている人はいるのかな?』と感じたこともあります。

8年近くが経ち、成人を迎える今になっても、まだ立ち直れないところもあります。いろいろな記憶を抱えて成長してきました。そのなかで出会ってきたたくさんの人たちの存在や、自分の”居場所”と思える場があったおかげで、今の自分があると思っています。

たとえば何かがうまくいかないとき、コラボ・スクールのスタッフの方が親身になって話を聞いてくれました。『自分の素直な気持ちを話してもいいんだ』『聞いてくれる人がいるんだ』と思えました。

でも、どんなに『前に進もう』と思っても、前向きに生きているように見えても、すぐに全部を忘れて元気になって前に進むというのは、難しいです。

それでも、わたしは頑張りたいなと思っています。カタリバの各拠点にも、前に進もうと思っている子どもがたくさんいると思います。

災害に限らず、誰にでも、サポートが必要なときってあると思うんです。災害はわかりやすいけれど、周りからは見えない問題で苦しんでいる人もたくさんいます。一見、そうは見えない人でも、一人では抱えきれない問題を抱えていることもあるんだと気づきました。

わたしは、そんな苦しんでいる人に寄り添える大人になりたいです。今はまだ、何ができるのかはわからないけれど、何かやってみようと思っています。コラボ・スクールがあったから、そう思えるようになりました。こういう場所が、ずっと続いていったらいいなと思います。

子どもたちが前を向いて進んでいけるよう、これからも応援よろしくお願いします」

けいこさんはこの4月から、宮城県女川町のコラボ・スクールにインターンとして関わる予定です。
教育というフィールドで、自分のこれまでの経験から、子どもたちが安心の先に目標を見つけ、主体的に学んでいくサポートをしたいと自ら手をあげました。4月以降のけいこさんの様子も、またお伝えできたらと思います。

東日本大震災から8年、カタリバはあせらずに長い時間をかけて、子どもたちに寄り添ってきました。彼らが成長し、こんな声を聞く日が来ることを、活動を始めた頃は誰も想像していませんでした。私たちはこれからも、子どもたちに寄り添い、彼らの未来に向かって共に歩き続けます。

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編集部 編集部

KATARIBAMagazine編集部が担当した記事です。

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