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一斉休校からおよそ1週間。現場から見えた、学びのオンライン化の可能性と、オンラインではできないこと。

vol.137Report

date

category #活動レポート

writer 青柳 望美

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、全国の小中高校の臨時休校が始まっておよそ一週間。子育て家庭や教育関係者にとって、激動の一週間となった。様々なEdTechサービスが無料開放され、EdTechで学ぶことの可能性を多くの人が同時体感する機会になっている。

一方で、学校というセーフティネットが必要な子どもたちにとっては、学びどころか、食事を摂ることも難しい状況に置かれた。

オンラインで世界中と同時につながる学びの無限の可能性と、オフラインの場と人の重要性・必要性を改めて感じた、カタリバの一週間を追った。

全小中高一斉休校
要請の衝撃

2月27日(木)19時ごろ。

首相から「2日から全小中高休校を」という臨時休業要請が発表された直後、NPOカタリバの社内コミュニケーションツール「LINEWORKS」の中では、「オンラインで子どもたちサポートしていこう」「Wi-Fiとタブレットを子どもたちに貸し出せるようにすぐに準備しよう」というやり取りが始まった。

自治体から委託を受ける子どもたちの居場所運営事業では、閉館するのか、オンライン支援はするのか、受け入れる場合の対象はどうするか、安全管理はどうするのか、行政含め調整と準備が進められた。

学校休校に合わせて居場所施設も閉鎖した場合、家庭に居場所がない子どもたちにとって、ライフラインが絶たれてしまうことにもなりかねない。慎重な検討が必要だった。

高校に深く関わるチームでは、すぐに先生方へのヒアリングなどを行い、休校になるかどうかの判断を待ちながら、オンライン対応の検討を並行して進めた。

また、カタリバには、災害時の子ども支援を行うチームがある。平時から自治体や企業とアライアンスを組み、スムーズな支援を目指す「備える」取組みや、災害発生時には子どもたちの教育支援活動に向かう「災害時子ども支援sonaeru」チームだ。各現場が普段関わっている子どもたちの支援方法を検討する中、「災害時子ども支援sonaeru」チームでは、一斉休校によって困るであろう日本中の子育て家庭や子どもたちのために何か支援ができないか、検討が始まった。

最もはやくオンライン対応に動いたのは、被災地の放課後学校コラボ・スクールを宮城県女川町で運営する「女川向学館」。27日(木)夜の発表を受け、28日(金)に機材調達や保護者連絡等を行い、29日(土)には4日後に受験を控えた中3生のための「オンライン自習室」をスタートさせた。スタッフも初めての試み、不安はあったが、思いのほか対面の自習室と変わらない学びの場を提供することができた。来週以降は小学校と連携し、教員によるオンライン授業を始めていく予定がある。

すぐに受験生向けの「オンライン自習室」を立ち上げたコラボ・スクール女川向学館

コラボ・スクール大槌臨学舎でも受験前のオンライン学習会が盛り上がった

29日(土)には、25日時点でオンライン開催を決定していた「全国高校生マイプロジェクトアワード2019 関西Summit」も開催された。およそ30プロジェクト、高校生60名前後が参加し、zoom上に集まった。チャットだからこそ全員が発信できたり、オンラインだからこそできる学びの場づくりという可能性を感じることができた。

マイプロジェクトチームには、3月末に行われる「全国Summit」のオンライン化が待っている。全国2654プロジェクトの中から選ばれた、48のAll Star Teamプロジェクトがオンライン上に集う。自分だけの探究ドラマをもった高校生たちが語り合い、学び合うことで創発が起き、一生ものの仲間との出会いが生まれ、人生の転機にすらなる、心を動かす場づくり。果たしてオンラインでどこまで実現できるのか?カタリバにとって、初めての大きな挑戦になる。

オンラインで開催された全国高校生マイプロジェクトアワード2019 関西Summit

また創業以来続く、中高生の心に火を灯す授業「出張授業カタリ場」チームのボランティアキャスト説明会もオンライン化された。ただの説明会ではなく「対話とは何か」を、体感することに重要な意味があるワークショップ形式の説明会。動画の配布なども行い、対話の体感というコンセプトをぶらさずオンライン化することができた。3月いっぱいは、オンライン説明会を続ける予定だ。

3/31(火)までの臨時休館が決定した文京区青少年プラザb-labでも、オンラインでの支援を始めている。行けば誰かが居て、とりとめもない話ができるb-labの日常を、定期的にオンラインで届ける「b-labオンライン」を開設。初回が行われた6日(金)には多数の利用者が集い、近況を報告しあった。「一人でいるとつまならないから、とりあえず友だちの家に来た」「いつまでこの状態がつづくのか不安」など、社会情勢を受けて子どもたちの間にえも言えぬ不安が広がっている。LINE公式アカウントを活用した個別相談支援も開設し、オンラインでもできるサポートを模索している。

「b-labオンライン」を届けるスタッフの様子

3/4(水)〜3/19(木)の期間、臨時休校が決定した福島県立ふたば未来学園中学校・高等学校では、準備期間を経て、「オンライン双葉みらいラボ」をスタートさせた。生徒への情報伝達方法は、朝の時間、学校の先生たちと協働し、Classiと学校のHPを活用して行う。日中は、zoomを使ったオンライン学習会やオンラインランチ会、オンラインイベントなどを実施する。

初日となった9日(月)から多くの中高生がオンライン上に集まり、学習会やランチ会、統計学を学ぶイベントなどに参加した。参加した生徒からは「普段、この時間に何をするかを考えたときに、授業を受けている時間だった。自分では勉強する時間をとるのが大変だったけれど、この機会で勉強に集中することができた」という声が聞こえてきた。オフラインと変わらない、活気ある場が生まれ始めている。

初日から無事にオンライン双葉みらいラボを開催、盛り上がりをみせた

新サービス
カタリバオンライン
がスタート

「災害時子ども支援sonaeru」チームでは、2月28日(金)から急遽新サービスの準備に入った。子どもたちは、家から出られず友達とも遊びにくい日々の中で、動画サイトやソーシャルゲームに没頭してしまい、気づいたら依存症リスクが高まるかもしれない。親がずっと付きっきりで見ていられるわけでもない。今回、日本中で災害時と同じことが起こることが予想できた。

そこで「カタリバオンライン」という、双方向にやりとりしながら楽しく学べるオンラインの居場所作りを行っていくことを2月28日(金)に決定。自分の可能性を広げる多様な人との出会いや機会を、住んでいるエリアに限らず多くの子どもたちが手にできる。大人たちにとっても、家族以外の子どもたちに自分の経験を持って関わる社会参画の機会になる。そんなサービスを開始しようと、急いで人集めを行い、Webサイト立ち上げの準備に入り、企画を日々ブラッシュアップしながら、4日間でなんとか準備を行い、3月2日(月)にサイトオープン、3月4日(水)からサービスをスタートさせた。

めざましテレビや報道ステーション、フジニュースネットワークにも取り上げられ、10日(火)時点でおよそ300名の利用登録がある。

カタリバオンライン利用に関する説明会の様子

カタリバオンラインを使った1日の過ごし方は、主に3つの時間に分かれている。「朝のサークルタイム」で全国各地の同世代の仲間たちと「おはよう」と顔を突き合わせることから始まる。場の進行を行う“カタリバオンラインキャスト”と少人数のグループでどんな一日にするか対話をし、今日一日の使い方を言葉にすることで、自分の気持ちを自分で確認する。休み中に崩れがちな生活リズムを整える効果も狙う。「各自の時間」は自由時間。カタリバオンラインで開催されている英会話やヨガ教室など様々なコンテンツに参加してもいいし、自習してもいい。最後には「夕方のサークルタイム」にまたみんなで集まり、どんな一日だったかゆるやかに振り返りを行う。

カタリバオンラインを使った1日のイメージ

またカタリバオンラインは、子ども向けのコンテンツだけでなく、7日(土)から保護者をサポートするための「みんなの保健室」をスタートさせた。保健室には臨床心理士、公認心理師、医師などさまざまな専門家がいて、保護者の不安や困り事をサポートしてくれる。休校期間をただ不安に過ごすのではなく、家族にとって意義のある時間にしてもらうために、できるだけのことをやろうと挑戦している。

カタリバオンラインを利用した保護者からは、こんな声が寄せられた。

「普段は勉強や学校が苦手な息子が大満足で、目をキラキラさせながら感想を教えてくれました!明日のなぞなぞ大会を楽しみにしていて、先ほどまで一緒になぞなぞを考えていました。何より、色々な人とお話しできることが楽しいみたいです。明日の参加も張り切っていましたよ!」

「リアルで会ったことのない子ども達とも垣根なく色々と話をしていて、今の子ども達が新しい未来を創っていくんですね。オンラインを介して、それぞれの子ども達の世界が広がっていくのだと、その一端を垣間見させてもらいました。カメラの切り替えなども、教えたことはないのですが、自分で勝手にやっていて、ちょっとびっくりしました。今の子ども達にとっては、デジタルデバイスは物心ついたときから、身近にあって、自然と生活にとけこんでいるんだなぁと。昨夜布団に入るときも、カタリバオンラインが楽しみで『早く明日にならないかなぁ』とつぶやいていましたよ」

自宅にいながら日本全国の友だちと交流したり、世界とつながり学ぶこともできる、カタリバオンラインの可能性は毎日広がりをみせている。

*カタリバオンラインに関する最新の情報は公式Web、またはカタリバオンライン公式noteをご覧ください。

オンラインでは
できない重要な支援

オンラインで可能性は広がる。
しかし、オンラインだけではできない重要な支援がある。

カタリバは、不登校や困窮世帯の子どもたちの支援も行っているが、オンラインだけでサポートしきれるとは思えない。

そもそもオンラインで学びを手にできる環境やリテラシーを持っているということは、当たり前のことではないからだ。多くの家庭では、Wi-Fiや子どもが学びのために使える端末を持っていない。

足立区から委託を受け、困窮世帯の子どもたちの心の安心安全基地としての居場所づくりを行う「アダチベース」では、慎重な検討を重ねていた。感染症のリスクと子どもたちの居場所を奪うことで起きる様々な課題を思うと、開館も閉館もどちらも危険が伴う。

区と相談しながら、3月2日(月)からは給食やアダチベースの食事がライフラインになっていた孤食傾向の子ども向けの食事支援と、来年度進路未決定の子ども向けの学習支援を継続実施し、それ以外はオンライン化することが決まった。食事支援においては、施設内での調理は行わずお弁当を購入し、食事前後の手洗い・うがいを徹底、子ども同士十分な距離を保った状態で食事をとれるように対応し、施設内の定期的な換気も行うなど、一部開館に向けた対応に追われた。

休校が始まってから、初めての一部開館となった3日(火)。孤食傾向の子どもたち10名が来館し夕食をとった。このうち6名が、『今日初めての食事』だったという。給食やアダチベースでの食事が、やはり、この子たちにとってライフラインなのだ。

いつもは手作りの食事を提供するが、既成品の食事提供に切り替えた

もちろんアダチベースでも、Wi-Fiとタブレットを子どもたちに貸し出し、昼夜逆転を回避するための「モーニングアダチベースサービス」や、「オンライン自習室」、「オンラインイベント企画」などの支援をスタートしている。日常的なオフラインでの関係性があるからこそ、うまくいっている場面がたくさんある。

しかし、オンラインだけでは救えない現実とどう向き合うか、同時に模索し続けなければならない。足立区内で感染者が出たというニュースも飛び交った。感染拡大の場合は、食事支援は宅配に切り替えるなど、その時できる最善の対応を、引き続き模索し続けていく。

オンラインで子どもたちに語りかけるアダチベーススタッフ

不登校支援を行う島根県雲南市「おんせんキャンパス」では、市内小中学校の休校措置が取られたことに伴い、その決定に準じて3月2日(月)午後から閉所することが決まった。おんせんキャンパスでは、オンライン化と徹底したアウトリーチで支援を途切れさせない方法を取ることになった。

オンライン対応では、「朝の会」「フリータイム」「学習タイム」「イベントタイム」「ランチタイム」とその日のスケジュールを伝えて子どもたちにzoomに入ってもらうようにした。関係性が出来ているスタッフであれば、子どもたちはオンライン化しても、安心してコミュニケーションが取れている。

一方で、環境の変化や初めてのことに対する不安感が強い子どもや、おんせんキャンパスの利用期間が短い子ども、これまでも家庭でのアウトリーチで関わっていた子どもなどは、オンラインだけで1ヶ月間支えられるとは考えにくい。しっかりとした体調管理を行ったスタッフが、家庭へのアウトリーチを頻度高く行うことで対応している。

また子どもたちには、毎日自分の健康状態をアンケートフォームに入力してもらうことにした。「今の体調は?」「昨日はよく眠れましたか?」などの質問に子どもたちがどう答えたかと、アウトリーチ時におけるスタッフの観察を通して、子どもたちの体調と心理的ストレス具合を常にモニタリングし、気になる子どもへの素早い対応を行っている。

今回の一斉休校期間が子どもたちにとって、保護者にとって大きな負担とならないように、できる最大限の支援をしようと活動している。

オンラインで絵しりとりをするおんせんキャンパススタッフと子ども

さらに島根県雲南市では、小中学生向けの「緊急子どもの居場所支援」を行うことが決定した。児童クラブはあるが、何らかの事情で登録していない家庭もあり、単親世帯などで家庭での見守りができず、一斉休校で困っている家庭をサポートできたらと考えての決断だ。感染リスクが高まることがないよう、複数ヶ所に設け、小規模な居場所をつくることで、本当に困っている家庭を支えることを目指す。自習や宿題のサポートはもちろん、この場所から新サービス「カタリバオンライン」にも参加できるようにしていく予定だ。

岩手県大槌町にある、とある公民館では、新型コロナの影響による休校措置を受けて、臨時で子どもたちの受け入れを行っており、そこから「カタリバオンライン」に参加してくれている。どうしても居場所が必要な子どもたちが、公民館・児童館・全国のフリースペースを居場所として利用しなから、カタリバオンラインのようなサービスを利用していく未来も近いかもしれないー。

島根県雲南市にある三日市ラボで開かれた「緊急子どもの居場所支援」の様子

一斉休校によって、カタリバは、学びのオンライン化という無限の可能性をもった新しい挑戦と、リアルの居場所があるからこそできる支援の重要性を改めて再確認している。

新型コロナウィルスの感染拡大が収まった社会では、きっとこの期間の体験から、「学びとは何なのか」「学校とは何なのか」「居場所とは何なのか」「先生とは何なのか」「NPOが果たすべき使命とは何なのか」そんな問いがたくさんうまれるに違いない。

その問いに新しい当たり前を提案することを目指して、カタリバ全社で一丸となって活動した一週間だった。


 

*既存事業についてのお問い合わせはこちら
担当:芳岡千裕(よしおか ちひろ)
Email:pr-team@katariba.net
TEL:03-5327-5667

*新サービス『カタリバオンライン』についての問い合わせはこちら
担当:戸田(とだ)、瀬川(せがわ)、齊藤(さいとう)
Email:kataribaonline@katariba.net

Writer

青柳 望美 編集長

1983年生まれ。群馬県前橋市出身。大学時代は英語ができないバックパッカー。人材系企業数社で営業・営業企画・Webマーケティング・Webデザインを担当。非営利セクターで働いてみたいと考え2014年4月にカタリバに転職。全国高校生マイプロジェクトの全国展開・雲南市プロジェクト・アダチベースなどの立上げを担当。現在は新規プロジェクトの企画や団体のブランディングなどを担当。カタリバmagazine編集長。

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