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「生徒と校則をつくる”ルールメイキング”、やってみてどうだった?」先生たちに聞きました ~みんなのルールメイキング活動レポートvol.3~

vol.184Report

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category #活動レポート

writer 編集部

NPOカタリバでは、生徒が主体となって先生や保護者と話し合いを重ねながら校則やルールの見直しをする「ルールメイカー育成プロジェクト」を2019年よりスタートさせました。

本事業は、経済産業省の「2020年度未来の教室実証事業」に採択され、いくつかのモデル校でプログラムを実施しています。モデル校の1つが、広島県にある私立安田女子中学高等学校でした。

今回は、校内で中心となって1年間プロジェクトを進められた、校長補佐の安田さんと生徒会顧問の上所先生より、先生や生徒にどのような変化があったのかをお伺いしました。

校則を見直す必要性は感じていたが、漠然とした不安も

ーー なぜルールメイキングプロジェクトを導入することになったのでしょうか。

安田:私自身の問題意識として、今ある校則が時代に合わなくなってきていると感じていました。「校則を見直そう」と考えていたときにルールメイキングプロジェクトのことを聞いて、まさに私たちがやろうとしていることと親和性があると思いました。「生徒主体で校則の見直しに取り組めるのであればぜひ一緒にやりたい」と、プロジェクトがスタートしました。

ーー ルールを見直すことに対しては、先生方からどのような反応がありましたか。

上所:これまでにやったことがない取り組みだったので、漠然とした不安を感じた先生は多かったのではないかと思います。私は本校の卒業生なのですが、青春時代を思い出すと特に不満を感じていない校則を変えることは学校が変わるようで、寂しさは感じましたね。ただ、今の生徒の学校生活をもっと良くするために、校則を考え直すことは必要だと思っていました。

ーー 先生方の間では、校則やルールについて考えるワークショップを行ったそうですね。その時の様子を教えてください。

安田:最初に弁護士の方から「そもそも校則とは何か?」のレクチャーをしていただきました。その上で「今の校則についてどう感じているか」という内容で話し合い、「大切にしたいルール」、「検討の余地のあるルール」、「新たに必要なルール」の3つに分類しました。ワークショップをすることで先生間で校則についての目線合わせができましたし、お互いがどう感じているのかを知ることができたと思います。

上所:私が一番驚いたのは、生徒手帳などに書かれている校則は共通の認識があるけれど、校則というより生活上のルールやマナーは先生達の間でも微妙に認識が違ったことでした。その点は、ワークショップを通してそれぞれの考えを共有することで整理できたと思います。

「校則はともにつくるもの」と全校生徒へメッセージを発信

ーー プロジェクトはどのように進めていったのでしょうか。

安田:最初は高校の生徒会メンバーが中心となり、ルールメイキングプロジェクトについて全校生徒に周知する活動をしました。

実際にはコロナによる休校期間があり予定通りに進まなかった部分もありましたが、それでも生徒会のメンバーは新入生に対してオンラインで学校のルールを説明する企画を立て、ルールを知ってもらう機会をつくってくれました。また、ウェブ上でアンケートを取り、今の校則についてどう思うかをヒアリングしていきました。

それと同時に行ったのが、ルールメイキングチャレンジ宣言です。チャレンジ宣言は、ルールメイキングプロジェクトを進めるにあたって、学校としての思いを全校生徒に伝えるために行ったものです。そこで、「学校は先生達だけでつくるものではなく、皆さんとともにつくるもの。みんなが幸せになるルールをつくるという目標の元、新たなルールづくりにチャレンジします」という内容のメッセージを発信しました。

その後は、中心となってプロジェクトを進める有志メンバーを集めていきました。有志メンバーが集まったあとは、全校生徒や保護者に向けてアンケートを取ったり、各学年のフロアに「ルールのどこを変えたいですか?」と書いた模造紙を掲示しそこにシールを貼ってもらうことで参加型で意見を集める取り組みなどをしました。

その他にも先生にインタビューをして校則の理由を聞いたり、県警の少年育成官の方にもヒアリングをするなどして、メンバーは自分たちだけの思いでルールをつくることがないように、極力多くの人の意見を聞いた上でつくっていこうとしていました。

上所:他にも、生徒会の視聴覚委員が有志メンバーの活動の様子を取材し、新聞にして全校生徒に伝えていく取り組みもしました。プロジェクトのことを詳しく知らない生徒が発信していくことで、多くの生徒に興味を持ってもらえたのではないかと思っています。

ーー 有志メンバーは、どのような思いを持った生徒だったのでしょうか。

上所:ある生徒は校則を変えたい気持ちがあり、「このプロジェクトに参加したら変えられるのではないか」という理由で参加していました。また、「校則をきちんと理解したい」「法律に関する仕事に将来就きたいので、どのようにルールがつくられているのか知りたい」という理由で参加している生徒もいました。

この1年で、教員として生徒との関わり方が変化した

ーー カタリバの職員やファシリテーター、弁護士や大学教員などの外部チームとは、どのように連携を取っていたのでしょうか。

安田:プロジェクトの進め方や予定外のことが起きたときにどうするのかなど、常に二人三脚で話し合いながら進めていきました。月に1回程度は外部チームが加わって対話型のワークショップをするのですが、そのときにはワークショップデザイナーの方が入ってくれてたことで、より議論を深めることができました。

ーー 外部チームが入ったことで、先生としてはどのような変化がありましたか。

上所:プロジェクトに携わってくれた外部チームの方は、生徒達の話を受け止め、「あなた達が持っている意見は素晴らしい」とずっと言ってくれていました。意見をじっくり聞いてもらうことで、生徒達も安心して話すことができたと思います。

私は生徒との関わりの中で、つい結論を急いでしまったり根拠を求めてしまうところがあったのですが、外部の方が生徒を優しく暖かく見守ってくれる様子を見て、「こういう風に話を聞かないといけないな」と思いました。この1年間で、生徒への関わり方は変わったなと自分でも思います。

ーー プロジェクトを進める中で、どのようなところに難しさを感じましたか。

上所:生徒達は忙しいので、活動時間を確保することが難しかったです。試験中になるとなかなか集まることができず、週1回活動するのがやっとでした。また、教員の仕事は授業をすることだけではなく校務分掌や他の業務もあります。生徒にトラブルがあったら当然そちらを優先します。教員ではない立場の方がコーディネートしてくれたことで、最後までプロジェクトを進めることができました。

安田:先生と生徒が対等に話し合える場をつくることには苦労しました。先生と生徒が対話をしながらルールをつくっていくのが理想的だと思いますが、生徒達の中で意見が固まっていない状態で対話を始めてしまうと、生徒が先生の意見に引っ張られてしまいます。出来る限り生徒の主体性を大事にしたいと思い、その思いは先生方へ丁寧に共有するようにしました。

自分と違う意見とも対話しながら、成長した生徒たち

ーー 外部チームが入ったことで、生徒達にはどのような影響があったと思いますか。

上所:「ルールを変える」というのは多くの生徒が興味を持つテーマだと思いますが、丁寧に話し合いをするので簡単に進まないと分かったときに生徒達は逃げてしまうのではないかと心配しました。有志メンバーがたくさん集まったとしても、最後は数人になってしまう可能性もあったと思います。けれど、1年間やってきて誰一人途中で抜けなかったんです。

生徒達が発表した後には、大学の先生や弁護士の方からフィードバックをもらいました。知識面でサポートしていただけたことはもちろん、外部の方が入って応援してくれてたことで、生徒達には責任感が生まれました。それは、生徒が途中で抜けなかった大きな理由だと思っています。

安田:私自身としても学校の中に閉じたプロジェクトではなかったところは大きかったですし、生徒としてもそうだったと思います。ルールを変えるというのは意外に難しくて、肯定意見も反対意見も出るわけです。一方だけの意見で決めることはできないので、生徒達は様々な立場の人の意見を聞きながら結論を出しました。見た目以上に大変なプロジェクトだったと思います。本当によくやってくれました。

上所:この活動に関わった生徒達は、今後他の活動に参加することがあってもすぐに答えを出すのではなく、一人ひとりの話をじっくりと聞いてから答えを出していくと思います。

ーー 先生ではない立場の大人が中に入り、一つのプロジェクトと向き合うことは生徒にとって貴重な経験になったのですね。

安田:自分達の生活の場である学校をどうつくっていくのかを考えることで、学校に対する当事者意識は高まったなと思います。「このルールはない方がいい」とか「もっと校則は緩い方がいい」などの意見はすぐに思いつくものです。

では「そのルールがなかったらどういう状態になるのか?」「どんな問題が起こりえるのか?」「問題が起きたらどうするのか?」。普段はそこまで考えることはありませんが、今回はそういう問いに対して、生徒達は一つ一つ丁寧に考えていきました。

ルールが変わることで自分達の生活がどう変わるのか、そして、自分たちはどんな学校をつくっていきたいのかを深く考えるようになったと思います。ルールメイキングプロジェクトは、学校づくりとも言える活動でした。

ーー 生徒達との関わりで、印象に残っているエピソードはありますか。

上所:ルールを変えることに対して、友達から「なんで変えるの?変えないで欲しい」と言われた生徒もいたようです。「ありがとう」という声ばかりではなかったわけです。

その生徒は結論を出すまでに一生懸命考えてきたので、「否定する人の気持ちも理解できるから、そういう気持ちを理解した上で丁寧に説明したらわかってもらえた」と言っていました。反対意見を言われて誰かに泣きつくのではなく、自分の力で乗り越えていくところを見て、すごく成長したなと思いましたね。

「校則は時代にあわせて変えて構わない」という目線をつくる

ーー 校則やルールの見直しを検討している学校の先生に向けて、メッセージをお願いします。

上所:ゆっくり考える時間がない中でも活動を進めていけたのは、コーディネーターの方が伴走してくれたからだと思います。業務をたくさん抱えている教員がコーディネーターの役割を担っても、どうしても日々の緊急度の高い業務を優先することになってしまいます。

校則は、今すぐ変えないと大きな問題が起こるという緊急性が高いものではありません。私たちの学校生活の中には、今日対応しなければならないことがたくさんあるわけです。それとは違う次元でその影響を受けることなく伴走してくれる方に校則を見直す過程に携わってもらう仕組みは、多くの学校で絶対に必要ではないかと強く思っています。

また、校則はそのときの状況に合わせて追加されていきますが、削ることはあまりしていないと思います。私たちはこれまで、子どものことを考えて校則をつくり運用してきました。それによって、生徒や保護者を守ってこられた部分もあります。

けれど、「その校則が本当に大事なものなのか」という視点で考えることは、本来一番重要なことで、もっと積極的にしていくべきことです。校則は生徒達の生活に直接関わるものなので、無理をしてでも時間を割いて話し合う場をつくっていくことが、生徒の豊かな人間性を育むことにも繋がるのではないかと思っています。

安田:先生たちの間でもルールについて対話することが大事だと思います。ルールは「守らないといけないもの」「変えてはいけないもの」という認識が先生達の中にもあって、本校では「ルールは変えて構わないもの」ということを確認するところからスタートしました。

今はブラック校則という言葉があり、「この校則はおかしい」という話を耳にすることがあります。けれど、その時代に必要だったから生まれた校則でもあるわけです。課題はそこから変化していないことではないでしょうか。校則そのものを否定的に捉えるのではなくて、時代に合わせてより良い形に変えていいものという目線をつくることが大切だと思っています。

ルールメイキングプロジェクトのいいところは、前向きなエネルギーで学校をつくっていけるところだと思います。「校則を変えないと批判されるから」ではなく、「みんなで良い学校をつくりたいから」という理由で、生徒達が中心となって校則と向き合うことができる。カタリバの方が入ってくれたことは、教員と生徒双方にとって気持ちの良い場づくりに繋がったのではないかと思います。

ーー 安田さん、上所先生、ありがとうございました!



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編集部 編集部

KATARIBAMagazine編集部が担当した記事です。

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