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当事者と支援者が語った「ヤングケアラー」のリアルとは。 セミナーから見えた現状と課題、 カタリバが支援プログラムで目指す未来の形

vol.233Report

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category #活動レポート

writer 編集部

カタリバでは2020年より、経済的困難を抱える家庭へオンラインで伴走と学びの機会を届ける「キッカケプログラム」を提供してきました。

そのプログラム参加者への調査で、約9人に1人の子どもが「世話をしている家族がいる」と回答。学びたくても家族のケアに時間が取られて学べない子どもたち、いわゆる「ヤングケアラー」が、少なからず存在する現状を目の当たりにしました。

こうした背景からこのたび、ヤングケアラーとその家族に寄り添う支援プログラム「キッカケプログラム forヤングケアラー」をスタートしました。

1月24日に開催したセミナー「“ケア”を担う子どもたちの今 ~ヤングケアラー支援の現場から~」では、当事者である元ヤングケアラーと、支援側である精神保健福祉士、ケアマネージャーを迎え、ヤングケアラーの現状と今後の課題を議論。約120名もの方が参加したセミナーについて報告します。

クラスに1人以上いるヤングケアラーたち。
ケアの負担が勉強だけでなく、健康までも圧迫。

出典:厚生労働省ホームページ

ヤングケアラーには法令上の定義はありませんが、厚生労働省ホームページには「本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っているような子ども」と書かれており、上のイラストのようなさまざまなことを、日常的に行なっているとされています。

セミナー冒頭では、カタリバが新たに立ち上げた支援プログラム「キッカケプログラム forヤングケアラー」の事業責任者である加賀大資(かが だいすけ)より、ヤングケアラーの現状に関する調査結果を報告しました。

「2021年3月に文部科学省が発表した調査結果によると、“世話をしている家族がいる”と回答している子どもは、中学2年生の場合で約17人に1人(5.7%)、全日制高校2年生で約25人に1人(4.1%)。クラスに1人程度はヤングケアラーが存在することがわかっています」(加賀)

出典:文部科学省「【概要】ヤングケアラーの実態に関する調査研究のポイント

ただし、この調査では「自分がヤングケアラーである」と自覚している子どもはたったの約2%。多くはケアをしている自覚がなく、お手伝いの一環として日常的にケアを担っており、こうした「潜在的ヤングケアラー」を含めると、実際のヤングケアラーの数はさらに多いことが推測されます。

実際、カタリバが全国の経済的に困難を抱える家庭へ行なっている支援プログラム「キッカケプログラム」の参加者に調査したところ、中学生で14%、高校生では12%がヤングケアラーという結果に。先の文部科学省の調査結果の2〜3倍にあたる数字です。

文部科学省「【概要】ヤングケアラーの実態に関する調査研究のポイント」と
キッカケプログラムヤングケアラー実態調査の比較

「こうした中で今、私たちが最も懸念しているのが、ケアの負担が子どもたちに与える影響です。文部科学省の調査結果では、ケアにかける時間が増えるにつれて、勉強時間が「15分未満」である子どもが多くなり、かつ、健康状態が「不良」である割合も増加しています。

それでもヤングケアラーの6割強が、“ケアに関する悩みの相談をしたことがない”と回答しており、彼らを取り巻く環境が非常に困難なものであることがわかります」(加賀)

出典:文部科学省「【概要】ヤングケアラーの実態に関する調査研究のポイント」

しかし、ひとり親世帯であるなどさまざまな家庭事情から、子どもがケアを担う以外の選択肢がないケースも少なくありません。単純に「子どもをケアから引き離せば解決する」というわけではない点が、この問題の難しいところです。

「また、ケアを担うことを通して、子どもに責任感や生活能力が育まれるなど、ポジティブな面があるのも事実です。大人が一方的にケアをネガティブなものととらえ、子どもをケアから強引に引き離すのではなく、ケアを担わなければならない状況やポジティブな側面を理解して、対処する必要があると感じています」(加賀)

元ケアラーと支援者の両側から見えた現状とは。
ケアのために自分の人生をあきらめずに済むために

セミナー第2部では、元ケアラー2名と、そうした親子を長く支援してきた一般社団法人Omoshiro代表理事であり、カタリバのヤングケアラープログラムにも参画いただいている勝呂(すぐろ)ちひろさんが登壇。それぞれの立場から見えた現実を語ってもらいました。

元ケアラー1人目は、カタリバ職員の和田果樹(わだ みき)。新卒でカタリバに入職した後に実母が難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」を発症し、半年ほど休職して、介護をしながらテレワークで働いた経験を持ちます。現在はこの経験を活かし、「キッカケプログラム forヤングケアラー」を担当しています。

「ALS は全身の筋肉がだんだん動かなくなり、最後は寝たきりになる難病です。そのため、医療的ケアから意思疎通の補助など、あらゆる身体的なケアを私が担っていました。

同世代の皆が普通に仕事をし、キャリアを積んでいっている中、親が病気であるという理由で仕事を諦めざるを得ない状況が辛かった。そう感じる一方で、ケアを担ったことで学んだことも多くありました。そのマイナスとプラスの間で葛藤しながら、日々を過ごしていたことを覚えています」(和田)

もう一人の元ヤングケアラーは、現在、東北地方の大学に通うえれえれさん。シングルマザー家庭で、幼い頃から精神疾患を抱えた母のケアを担ってきました。昨年の4月より、カタリバのキッカケプログラムで子どもたちに寄り添うメンターとして活動。現在は和田とともにヤングケアラーの支援活動に取り組んでいます。

「小学校5年生に上がる時、母が精神疾患で働けなくなりました。小さい頃は母が抱えるトラウマの聞き役をやったり家事を手伝ったり。高校生になってからはアルバイトをして学費や生活費をサポートしました。でも、その頃から、長くケアをしてきたことによるストレスが体に出るように。“なぜ自分は自由になれないのだろう。なんでこんなに辛いんだろう”と悩み、毎日のように保健室に通っていました」(えれえれさん)

そんなえれえれさんの支えとなったのが、「何でも話せて相談できる相手がいたこと」だったそうです。

「高校の先生が“自分の人生は自分のものだから”と励ましてくれて、私の話をひたすら聞いてくれました。それで私も“頑張って自立しよう”と思えるようになり、親と何回も喧嘩をしつつも大学進学を決意。東北の大学を選んだのは、自分が家を出ることで親にも自立してもらいたいと考えたからです」(えれえれさん)

大学生になった今も、たびたびトラウマに襲われると言うえれえれさん。その一方で、母の話に耳を傾け続けてきた経験が、人の話を受け止められるスキルとなり、現在のヤングケアラー支援に生きているとのこと。「ヤングケアラー経験者として、多くの子どもたちの支えになりたい」と笑顔で語ります。

親を責めるのは、子どもたちをも苦しめることに。
大人と社会が彼らをどう守るかという視点を持って

一般社団法人Omoshiro代表理事の勝呂ちひろさんは、「親子まるっと伴走支援」ケアマネージャー事業所を運営し、自身も精神保健福祉士として長く親子のサポートを続けています。ヤングケアラーの居場所運営にも携わっており、カタリバの事業にはパートナーとして参画いただいています。

ヤングケアラーの問題が取り上げられるとき、よく聞かれるのが「親が悪い」「親は何をしているんだ」といった言葉です。しかし、親を責めることで、逆に子どもたちが声を上げづらくなると勝呂さんは指摘します。

「周りが親を責めていると、“子どもが声を上げること”イコール“親を否定すること”になってしまいます。子どもたちはそんなことは望んでいません。それよりも、自分と、自分が大切にしたい人たちを守る方法を教えたり、守れる環境においてあげることが大事です。どうしたら社会と大人が子どもたちを守れるのか、そういう視点を持つことが大切だと思います」(勝呂さん)

子どもは自分の思いをうまく言葉にできません。自分自身がどう感じているかも、よくわからないことが多いものです。そこでOmoshiroでは、お母さんに対して訪問看護や就労支援のコーディネートなどの現実的な支援をする一方で、子どもたちには“伝える・伝わるワーク”を実施しています。

「子どもたちにやりたいことを書いたり言葉にしてもらいながら、自分の求めていることを人に伝える練習をします。そうして子どもとお母さんそれぞれが自身の願いに気づき、親子が対話して一緒に解決できるようにしていくことも、ヤングケアラーに必要な支援だと実感しています。

大事な人のケアだけでなく、自分自身のケアについても大人と子どもが一緒に考えられる環境を目指して、私もカタリバさんと一緒に頑張っていきたいと考えています」(勝呂さん)

「キッカケプログラム forヤングケアラー」で親子に寄り添い
環境を子どもの「強み」に変えられる未来づくりを

「キッカケプログラム forヤングケアラー」の全体像

こうした声を聞きながら、現在カタリバが進めているのが、ヤングケアラーとその家族に寄り添う支援プログラム「キッカケプログラム forヤングケアラー」です。サポートのポイントとして、「ケアの負担の軽減」「ケアからくる不安の軽減」、そして「ケア経験からの気づき、意味づけ」を目指しています。

「具体的には、子どもと親御さんそれぞれにメンターが寄り添い、保護者と専門家をつなげつつ、子どもにはオンライン上のピアコミュニティ(同じ立場のケアラー同士)を通じて、ヤングケアラーの孤独や心理負担を和らげます。同時に、ケアラーの先輩を通じてケアの経験を振り返り、ケア経験がその子にもたらすポジティブな面にも気づいてもらえるような関わりをしていきたいと考えています」(和田)

同プログラムをすでに活用いただいた保護者の方からは、「自分の調子の悪い時のサインに気づけた」「課題が整理できてよかった」「応援者ができたようで心強い」などの声をいただいています。

また、子どもたちからも「誰かに相談することが大切だと実感した」「目に見えないこともケアなんだと気づいた」「いろいろな人の人生を知ることができてよかった」などの声が寄せられています。

「家族と子どもを分断するのではなく、ケアを要する家族がいる環境を受け入れつつ、それによって未来が奪われることがないようにサポートすること。そして、子どもたちがその環境を強みに変えられる未来をつくっていければと思います」(和田)

セミナー後には、報道関係各社からさまざまな質問があり、改めて子どものために何ができるのかという議論を深める場となりました。

「ケアを要する家族がいる家庭で生まれ育っても、 未来に希望と豊かな選択肢を持ち、自分自身の可能性を拓いていける」という世界を目指して、カタリバでは引き続きヤングケアラーへの支援を続けていきます。

-TEXT:かきの木のりみ

Writer

編集部 編集部

KATARIBAMagazine編集部が担当した記事です。

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