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「好き」「やってみたい」から始まる学びで、可能性が磨き続けられる社会に。rokuyouが手がける、学びの仕掛けづくりとは?/「PARTNER」#07

vol.234Interview

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category #インタビュー

writer 編集部

2013年にスタートした実践型探究学習「マイプロジェクト」。年に一度、全国の高校生たちが集い、自分たちのプロジェクトを発表する学びの祭典「全国高校生マイプロジェクトアワード」を開催していますが、現在では参加者が1.3万人を超え、全国で「地域Summit」が開催されるほど規模、内容ともに大きく成長しています。

沖縄県Summitは『一人ひとりの生まれ持った可能性を磨き続ける』をビジョンに、自らの団体を“学びプロダクション”と位置づけている株式会社rokuyou(ロクユー)が事務局を担当。島しょ地域も含め、全県から高校生が集い、ともに学びあう機会が生み出されています。「学びの仕掛けづくり」に取り組むrokuyouから代表の下向依梨さんと、自らも沖縄県出身という平良朋広さんにお話を伺いました。

連載「PARTNER」では、「地域パートナー」のように、カタリバのパートナーとして各地で活躍する人物に焦点を当ててご紹介していきます。

下向 依梨  Eri Shimomukai
全国高校生マイプロジェクト沖縄県パートナー/株式会社rokuyou 代表取締役/一般社団法人 日本SEL推進協会 代表理事
大阪府生まれ。慶應義塾大学総合政策学部に進み、社会起業家について研究。在学中に、社会起業家育成のパターン・ランゲージを開発、出版。その後、米国・ペンシルベニア大学教育大学院で発達心理学において修士号を取得。帰国後は東京のオルタナティブスクール(小学校)で算数・英語などを教える。2019年に株式会社roku youを設立、沖縄県内の公立高校での探究学習伴走だけでなく、離島でのICT学習の推進やSocial Emotional Learningの導入などを全国で行う。

平良 朋広  Tomohiro Taira
全国高校生マイプロジェクト沖縄県パートナー/rokuyouラーニングクリエイター/沖縄市観光振興物産協会認定エイサー親善大使
沖縄県首里出身。沖縄国際大学(国語科教職、琉球文化専攻)入学後、沖縄県高校野球連盟に所属。県内外で沖縄音楽フェスを企画し、参加した県外大学生向けの沖縄観光ツアーをプランニング。卒業後は上京し沖縄食材・泡盛・工芸品の営業として働く傍ら、20代向け泡盛のイベント企画や沖縄修学旅行アドバイザーとして全国の学校で講演会を行う。2020年沖縄に戻りroku youメンバーに。趣味はマラソンで特技は石窯を作り島野菜ピッツァを焼くこと。

魅力と課題が表裏一体の沖縄。
子どもたちが「自分たち、価値あるじゃん」と感じられる機会を作りたい

– 株式会社rokuyou(以下、rokuyou)について教えてください

下向:「可能性を磨き続けられる社会をつくる」がrokuyouのビジョンです。2019年に沖縄で創業しました。

私自身が教育を受けた経験から、日本には自分の可能性を勝手に、しかもかなり狭く定義している若者が多いと感じています。私は海外に出ることで自分の可能性に気づいて、「可能性を磨き続けてもいいんだ」という経験ができたのですが、周りの友人を見ると、その可能性を自分で狭く定義して、自分から出口の見えない袋小路に入っているような姿もあります。これって、すごくもったいないことだと思うんです。

もっといろんな人が、自分自身が持っている「これっていいよね」「これって面白いよね」「自分ってこんなに可能性があるよね」ということを、信じて、爆発させることができれば、社会や世界が変わって、より良い方向に進んでいくはずだと考えています。

– そのビジョンを実現するためにどんな活動をしているのでしょうか?

下向:私たちは自分たちのことを“学びプロダクション”と呼んでいます。プログラムや教材の作成、研修だけを行うのではなく「学びの仕掛け作り」をしているので、将来的には歌を作るかもしれないし、空間デザインをするかもしれません。

“授業をする”とか、“プログラムをつくる”というだけでは、つくれるインパクトの大きさには限界があります。教育システム全体に深くアプローチするために「学びの仕掛け作り」を行なっています。

– なぜ沖縄で事業を?

下向:私は県外の出身ですし、「ご縁があったから」というのが正直なところですが、やればやるほど沖縄って面白い土地だなと思っています。魅力と課題が表裏一体であるとか、魅力も課題もどちらもたくさんあるとか、それが可能性だと思っています。

沖縄は、全国学力テストで20数年間「最下位」と言われ続けてきました。それに対してコンプレックスを持っている生徒、大人たちって多いんです。でもこれってすごく無駄なことですよね。頑張って学んでいる、学ぼうとしている人たちに対して、そんなやる気を失わせることを言う必要はなくないか?と。それによって、自分の可能性を信じられないとか、だから島の外に出たいとか、そういう生徒が多くいるんですよ。

でも現場で接していると、沖縄には力がある子たちが多いです。「これやったら面白そうじゃない」とか「こういうの大事だよね」とか、その感度が非常に高い子だったり、体を動かす、手を動かす、足を動かす、というのがすごく得意な子だったり。そういう“肌感覚から学ぶ”ということが上手なんですよね。なので、“お勉強”よりも“体を動かして何かを作ってそこから学ぶ”ような学び方だと「自分たち、なんかめちゃくちゃできるじゃん、価値あるじゃん」って思ってもらえる機会になり得るなと。

そういう経験から、自分たちのラーニングスタイルは県外の子たちと違うんだ、強みが違うんだ、ということに気づいてもらえたら嬉しいなと考えています。学力最下位うんぬんということが耳に入らないくらいの空気感をつくれたらいいですね。

県内の子どもたちへのプログラムの様子

– 平良さんは沖縄のご出身ですね。

平良:僕は小中高大と沖縄ですね。教員志望だった大学3年生の時に東京の大学に1年間編入しました。その経験から「東京で働いてみないと、子どもたちに未来とか選択肢とか語れないな」と考えるようになり、新卒で東京にある沖縄食材・泡盛・工芸品の卸売会社に営業として入社しました。沖縄の魅力やポテンシャルを伝える仕事を通して、沖縄を“外”に発信できる自信はついたんですが、沖縄の“中”から魅力を発掘したり変えていかないとダメだなと思って。2年前にrokuyouへ転職する形で戻ってきました。

公教育から、
「可能性を磨き続けられる社会」をつくる

– 先ほど、「可能性を磨き続けられる社会をつくる」をビジョンに活動されていると伺いました。rokuyouの事業について、もう少し詳しく聞かせていただけますか?

下向:通信制高校にPBL(Project Based Learning)を根付かせる事業や、教育寮の仕組みづくり、島しょ地域の教育の魅力化、ICTを活用したきっかけ格差の是正、公立高校の総合的な探究の時間の授業づくり、学校を社会にひらくメンター制度づくりや先生へのアプローチも手がけています。マイプロジェクト沖縄県summitの事務局は2019年度から担当しています。

– 地域企業との連携にも取り組まれているんですね。

下向:企業から、教育事業に“お金”が流れるモデルはまだ作れていませんが、“人”に来ていただく連携は進めています。現在25社程とのつながりがありますが、どうしても人材が固定化してしまうんですよね。そこで新たなチャレンジとして、地元新聞社との新規事業を企画中です。新聞社の持つ地元企業とのネットワークを活用させてもらうほか、参画企業の事業そのものにもインパクトのある取り組みにすることで、企業から対価をいただくような仕組みを模索しています。

この取り組みの背景には、日本の教育財政困難事情があります。日本って先進国の中で対GDPのうち教育にかける割合が最下位と言われているんですね。私教育(塾など)は盛んですが、公教育にかけられるお金は少ない。公教育には福祉的な要素もありますし、国にはこのお財布を広げてもらわないといけないんですが、1年2年ですぐに変えられることではないので…。そうであれば、地域の中に新たな価値を創造しながら、足元からお財布を広げていくことが重要だと思うんです。

– 公教育への想いも強いのですね。

下向:そうですね。教育をシステムとしてアップデートしていかないと「社会に必要な人材が育たない」ということになってしまいます。だからといって、私たちが日本中、沖縄中の全部の公立高校に関わるって難しいじゃないですか。なので解決に繋がりそうなポイントをうまく見つけて、いろんな人たちと協働しながら公教育を変えていくということも、ひとつのテーマにしています。

rokuyouが高校で行ったプログラムの様子

マイプロジェクトを通じて、
一人ひとりの興味や「好き」を伸ばしたい

– 下向さんは大学時代にマイプロジェクトとの出会いがあったと伺いました

下向:学生時代、マイプロジェクトの生みの親である井上英之先生のゼミに入っていました。12,3年前ですが、当時は私も3プロジェクトくらいマイプロジェクトを行いました。すべてトピックが違っていたのですが、実はひとつひとつが繋がっていて、プロジェクトが一区切りしたときには、自分の特徴や特性、価値観が露わになるんですよね。そこに大きな魅力を感じました。

さらに一番強く感じたのが、成長実感。「めちゃくちゃ成長した!!」と実感できたことが、今もマイプロジェクトに関わるモチベーションになっています。

– 平良さんは、どういった役割でマイプロジェクトに携わっていますか?

平良:2020年の沖縄県summitから関わっています。運営担当として、学校への声かけや生徒・先生とのやりとり、メンター調整などを担当しています。今年は30校ほど学校訪問をして「先生、こういうのがあるんで興味ありそうな生徒がいたらぜひ」と声をかけたり、離島には電話をかけたりして。マイプロジェクトのこともrokuyouのこともまずは知ってもらわないといけないので、きっかけづくりの営業ですね。そのおかげか、今年はエントリー数が2倍になりました。

– 昨年の運営で、印象に残っている生徒の姿はありますか?

平良:オンラインでの開催でしたが、石垣島や久米島といった離島、宜野座村という北部エリアの子たちが繋がったのが非常に良かったです。例えば同じ“農業”をテーマにしている生徒たちが「沖縄の農業にはいろんな課題があるんだ」とみんなで気づいて、質問しあっている姿がめちゃくちゃいいなと思って。大人もそれにコメントしたり、リアクションをしていて、そういう輪をもっともっと沖縄で作っていきたいなと感じる時間でした。

1月下旬に行われたマイプロジェクトアワード沖縄県Summit

ひとりひとりの心の中にある“確信”を
信じて、発揮できる地域に

– rokuyouが描いている未来について教えてください

下向:私たちは沖縄をベースにしている“学びプロダクション”なので「沖縄が」と「日本全体の教育が」の2つの側面で描いている未来があります。

まず「沖縄が」の側面でいうと、沖縄にいる若者が自分の力を信じられたり、自分の確信を発揮できるような地域にできたらいいなと思います。

ひとりひとりの心の中に「これやりたいな」とか「これやったら面白いんじゃない」とか「こういうのが必要だよね」という“確信”ってあると思うんです。そういう確信を一緒に追求していく存在でいたいですね。その先に達成感や、自己肯定感を実感してほしいですし、そういうものがいろんな場所で生まれていくのが理想です。

そこに誘発されて、高校生も大人も、自分の中にある感覚や確信、興味関心を突き詰めていく人が増えて、その先に良いアウトカムがたくさん生まれていく…そんな流れを沖縄県内に生み出せたらいいなと思っています。そのために、まずは教育現場から、学びの仕掛け作りをしていきたいですね。

次に「日本全体の教育が」でいうと、沖縄は顕在化している課題があることからも、ラボ的な存在だと感じているんですね。人口150万人弱の県なので「取り組みを3年続けると成果が出てくる」とも言われていて。だからこそ、何かを試して効果測定をすることに向いている場所だと思います。沖縄で見えてきたことを発信して、他地域にとっての先行事例や学びにつながる成果を出していけたらと思います。

平良:僕は、大人になってもマイプロジェクトを持っている人が増えれば、沖縄はこれから変わっていくと思っています。高校生の伴走をしていると「みんなを応援する」とか「自分の好きに向き合う」とか「とりあえずやってみる」という感覚を持っている子がすごく増えていると感じます。

そういう子たちが小中高でマイプロジェクトに取り組んで、大人になってもその感覚を持ち続けてくれたら、あと10年度20年後、沖縄がもっともっと面白い島になっているだろうなと思って。それを目指して、信じてやっていきたいと思っています。

高校生と大人が一緒に活動するひとコマ

– おふたりにとっての、未来に向けたビジョンも聞かせてください

下向:自分自身も常にマイプロジェクトを持ち続けていたいですね。自分の肌感覚が薄れていくと、生徒たちとどんどん離れていくんですよね。それは嫌だなと思うので、まずは自分が一生涯マイプロジェクトを持って、取り組み続けていきたいです。

平良:僕は沖縄の伝統、特に泡盛に関するマイプロジェクトに取り組んでいるんですが、そういう活動をしていると、興味関心の近い大人が集まってくるんですね。そういう大人たちと一緒に“学校を地域に広げる”というチャレンジをしていきたいと思います。大人も子どももマイプロジェクトをしていて「俺もこういうのをやっているよ」と伴走し合えるような、そんな関わりをもっと作っていきたいですね。

それから僕の母校(中学)の廃校が、いよいよ現実味を増してきたんですね。地元の友人と「母校のために何かやろう」と話をしているので、地元への恩返しというか、そういう姿を子どもたちに見せて、将来的に一緒に取り組んでいけるような形を、沖縄の中で作っていけたら良いなと思っています。

下向:もうひとつ、5年くらいかけてチャレンジしたいこととして、世界とつながる環境構築をしていきたいと思っています。最近「高校生を海外に触れさせてほしい」とオーダーをいただいて、アジア圏の大学とコンタクトを取ったんですが、世界を見たときに、どんどん先に行っている世界の子どもたちに対して、日本の中高校生は“世界”に浸かっていないなと感じることがあって。

そういう視点で沖縄を見ると、沖縄ってアジアにとても近いんですよね。2時間圏内に東京はないけれど、台湾・上海・ソウルはある。そう考えたときに、もっと世界と繋がれるはずなのに繋がれていないのがすごくもったいないと思ったんです。マイプロジェクトや肌感覚的なところで得た学びを、他国の子たちとつながって、切磋琢磨しながら深めていくような環境を生み出せたらいいなと。アジアの中で沖縄が先端として生み出していくような、そんなチャレンジもしていきたいと思っています。

■株式会社rokuyou
ホームページ:https://www.roku-you.co/

-文:宮木 慧美
-写真:株式会社rokuyouさん提供


 

●全国高校生マイプロジェクトでは、本記事でご紹介した「株式会社rokuyou」をはじめとする全国の17団体/個人の皆様と「地域パートナー」としてパートナーシップを結び、マイプロジェクトの学びを全国に広げる活動を行なっています。
地域パートナーとの協働や現場視察を希望される方は、こちらのフォームからご相談ください。

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#01/「生き生きした若者が育つ環境をつくりたい」 その思いから自衛官を辞め、地域パートナーに転身。 彼が目指す「日常的な学びの場と未来の形」とは
#02/「若者が自分の思いを大切にできる社会にしたい」という想いで立ち上がった青年二人が、 ものすごいスピードで進化させている、長野県の探究学習プロジェクトとは
#03/「新潟が一番ワクワクする」と思える環境を育みたい。 創業10年の教育NPOと高校教員が思いを一つに取り組む、 新潟県の探究学習プロジェクトとは
#04/「地元の高校生が、いつか地域のプレイヤーとして戻ってきて、未来の高校生を刺激する。そんな循環をつくりたい」彼がマイプロジェクトのパートナーになったわけ
#05/「学生、会社員、大学職員、教育委員会……年齢も状況も異なる4人が、山口県の探究学習プロジェクトに取り組むわけ
#06/「持続可能な地域振興のカギは、若者たちにキッカケを与えること」大学教員の彼が挑む、高大連携と地域経営とは

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編集部 編集部

KATARIBAMagazine編集部が担当した記事です。

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