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学生、会社員、大学職員、教育委員会……年齢も状況も異なる4人が、山口県の探究学習プロジェクトに取り組むわけ/「PARTNER」#05

vol.230Interview

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category #インタビュー

writer 編集部

2013年にスタートした実践型探究学習「マイプロジェクト」。 現在では全国で1.3万人以上の高校生たちが参加し、探究学習のプロセスや成果を発表し、学び合うイベント「マイプロジェクトアワード」が全国18か所で開催されるほど規模、内容ともに大きく成長しています。

2020年から山口県でスタートした「やまぐち若者 MY PROJECT」は、県内の公益財団法人が主催し、山口県や山口県教育委員会が共催、さらに山口大学も協力して行われているビッグプロジェクト。参加する高校生やメンターの数は、全国でもトップクラスとなっています。

その運営の中心を今年から担っているのが、年齢も出身も所在地もバラバラな4名によるやまぐち若者 MY PROJECT運営チームの皆さん。それぞれに仕事や本業を持ち、オンラインを活用しながら、他県の地域パートナーが驚くほどの「高いチーム感」を実現しています。

初めて携わるマイプロジェクトということもあり、悩みながら手探りしていると言いながら、「楽しくて仕方がない」と笑顔を見せる4人。このチームがどのようにしてでき、今何を行ない、そしてどこを目指しているのか、それぞれの思いを語ってもらいました。

連載「PARTNER」では、「地域パートナー」のように、カタリバのパートナーとして各地で活躍する人物に焦点を当ててご紹介していきます。

和泉宏  Hiroshi Izumi
全国高校生マイプロジェクト山口県パートナー/萩市地域おこし協力隊(教育委員会)地域連携サポーター
山口県光市出身。大学時代に、教育実習先の小中学校、留学先の現地校、山口県内の大学生・高校生の対話プログラム(カタリ場)、宮城県女川町の放課後学校、母校のコミュニティ・スクールなど、様々な教育現場にかかわる中で、学校を含めた社会全体で子どもの学び・成長を支えたいと思うようになる。現在、マイプロを社会全体で支えるあり方を模索中。


山下貴弘 Takahiro Yamashita
全国高校生マイプロジェクト山口県パートナー/山口大学 地域未来創生センター 地域連携コーディネーター/山口大学大学院 東アジア研究科 博士課程後期/YIC看護福祉専門学校 非常勤講師/山口市産業交流拠点施設アカデミーハウス 地域連携コーディネーター
大阪府堺市出身。2016年、山口大学で地域志向型の教育プログラム開発などを担うコーディネーターを拝命。学生と企業のワークショップや高校生のふるさと探究学習の企画・運営など、若者と社会の接点づくりを心がけている。学校の先生等と立ち上げた研究会、NPOや企業の若手経営者の会など、コミュニティづくりにチャレンジしている。


綿重早織 Saori Watashige
全国高校生マイプロジェクト山口県パートナー/広告代理店社員
山口県岩国市出身。大学在籍時に地域協働型プログラムの企画・運営に携わる一方で動画制作やデザインについても独学で習得。卒業後、広告代理店に就職。法人向け営業職として働きながら、実践型探究学習が継続的に回る仕組みを科学するべくマイプロに参画。また地域みらい留学学校説明会のファシリテーターとしても活動。


小川萌花 Honoka Ogawa
全国高校生マイプロジェクト山口県パートナー 学生インターン/山口大学 学生
兵庫県西宮市出身。大学進学と同時に山口県に移住。大学1年時(2020年度)にやまぐち若者MY PROJECT に学生メンターとして参加。同年にマイプロジェクトアワード全国summit のサブファシリテーターを務める。2021年度5月より、やまぐち若者MY PROJECT 事務局に学生インターンとして参入し、活動中。

年齢も所在地も仕事もバラバラな4人が
山口県で「チーム」になった理由

―皆さんは全員、「やまぐち若者MY PROJECT」の運営以外にも仕事を持っているとのこと。それぞれの仕事を教えてください。

山下:山口大学の地域連携コーディネーターとして、地域と大学が連携した教育プログラム作りや、地域を盛り上げる活動をしています。同時に、山口大学大学院の学生でもあり、また、他にも3〜4の仕事を持っています。

和泉:昨年は東京の会社に勤めていまして、2021年4月に山口に戻りました。現在は萩市教育委員会の地域連携サポーターとして、高校と地域との連携の手伝いをしています。

綿重:大阪で会社勤めをしていて、「やまぐち若者MY PROJECT」にはオンラインで参画しています。普段は法人向けの営業の仕事をしています。

小川:山口大学の2年生です。事務局には学生インターンとして参加しています。

―年齢も仕事もバラバラの皆さんが、どのようにしてチームを組むことになったのでしょう?

山下:昨年は和泉さんと私の2人でした。和泉さんとは2016年頃、山口県で行なったカタリバさんのプロジェクトの研修会で出会いました。その後、2019年に山口県の小・中学校の先生方と行なった懇親会で再会し、一緒に活動を始めるようになりました。

和泉:当時、私は東京の会社で働いていたのですが、母校である山口の中学校から卒業生講演会の登壇者として呼んでいただき、懇親会に参加したんです。その会で皆が、「いろいろな立場の大人の学び合いの場があれば、地域と学校の連携がもっと良くなるのでは」という話で盛り上がり、そのままの勢いで山下さんと企画書を作り、学び合いの会を発足したんです。

山下:昨年、カタリバさんが和泉さんに山口地域パートナーについて相談した際、和泉さんが私を推薦してくれて、山口地域パートナーとしてスタートすることになりました。

―小川さんはどういう経緯で参加されたのですか?

小川: 私は山下さんに誘っていただき、2020年の「やまぐち若者MY PROJECT」に学生メンターとして参加し、半年間高校生に伴走しました。

その後、マイプロジェクトアワード全国Summitに参加したのですが、高校生の想いの込もった発表やお互いを応援する姿、それを支える大学生や大人のあたたかい空気にとても感動したのを覚えています。その体験を、今度は私がお返ししたいと思い、今年から運営に関わらせてもらっています。

綿重:私も山口大学出身で、大学1年の頃から山下さんが担当していた教育プログラムに参加したり、プログラム開発のお手伝いをしたりしていました。その縁で今年の春に声をかけてもらって。教育や地域に興味があったので、お話をいただいてすぐに「やります!」と答えました(笑)。

左から、和泉さん、綿重さん、小川さん、山下さん

教育と地域、マイプロジェクトを
4つの異なる視点から考え、共有

―皆さんはそれぞれ、以前から教育や地域に関心があったのでしょうか?

綿重:先ほどはそう言いましたが、実は学生時代は山口に愛着はなく、むしろ「早く出たい」くらいに思っていたんです(笑)。でも、大学で山下さんのお手伝いをした時、地域で起業したり活躍したりしている大人の方々と、お話しする機会があり、自分のやりたいことに向かっている人はキラキラしている、こういうふうな生き方をしたいと強く思いました。

その時に、自分がやりたいことに向かう機会はどこにいてもあるし、山口県にはそれを応援してくれる風土があるということに気づきました。それから教育や地域に関心を持つようになったと思います。

和泉:私は教育学部に進学しましたが、野球部の顧問の先生に憧れていて……という感じで、教育に関心があったわけでありませんでした。

でもある時、塾講師のアルバイトで面談をした男子高校生が、「やりたいことは特にないし、行きたい学部も大学もない」と言っていたんです。その時に彼の言葉に共感を覚えたのと同時に、高校卒業までの人生に「生き方の選択肢を知る・触れる機会」や「興味を感じたことを追究してみる機会」が、当たり前にある状況を創りたいと強く思うようになりました。

―実際、和泉さんはその後、カタリバの実践型教育インターンシップという制度で、宮城県の放課後学校で1年間活動していらっしゃいますね。

和泉:その経験の中で、子どもは大人から、大人も子どもから、ものすごく影響を受けるということを感じました。そこから、地域社会全体で子どもの成長を支える「地域と学校の在り方」を追求していきたいと考えるようになりました。

大学卒業後は、企業研修のプログラム開発などを行う東京の会社に就職したのですが、いずれはどんな形であれ、地元の山口で教育の土壌を耕すことに携わりたいと考えていました。

―山下さんは現在、山口大学の地域連携コーディネーターとして教育や地域に関わっていますね。

山下:そうなんですが、元々は教育には関わるつもりは全くなかったんです。私自身、小・中学校時代はあまり学校に馴染めず、教育に関する疑問や違和感を強く感じていました。その気持ちは大学に進学した時もありましたし、たぶん今もずっと自分の中にあると思います。

大学時代は心理学部に通いカウンセラーを目指していたのですが、死にたいと思う人とそうではない人の違いを考えた時に、「生きる意味を見出せているかどうか」が大きく関わっているということに気づいたんです。一人の力には限界があって、自分の人生に生きる意味を見出すためには、教育や地域のサポートが欠かせないと考えるようになりました。

その後、色んな縁が重なって山口大学から地域連携コーディネーターとして誘っていただき、今に至ります。

小川:私も学校教育には、ずっと疑問を持ってきました。高校時代はよく「将来の夢は?」と聞かれましたが、いつも「勉強ばかりの毎日で、自分の将来について真剣に考える時間なんかないやんか!」と思っていました(笑)。今となっては、自分の視野が狭かったり、本気で自分に向き合っていなかったとわかるのですが。

だからこそ、私の高校時代と違ってマイプロジェクトに取り組むような高校生のことを知りたいんです。

「やまぐち若者MY PROJECT」は
なぜ初年度から参加者が多いのか

―皆さん、本業も出発点も違いますが、向いている方向や思いがつながっているのですね。みなさんが取り組んでいる「やまぐち若者MY PROJECT」についても教えていただけますか?

和泉:「やまぐち若者MY PROJECT」は公益財団法人山口県ひとづくり財団が主催する、「やまぐち未来アカデミア事業」の企画の1つで、財団や山口県、山口県教育委員会、そしてカタリバさんと一緒に進めている事業です。2021年度は13校から約40名の高校生が参加しています。また、高校生のプロジェクトの伴走役として県内の社会人・大学生20名にメンターとして参画いただいています。

高校生は伴走役のメンターとオンラインで相談しながら、それぞれのプロジェクトのアクションを進めていきます。その様子を私たち運営側でも確認しつつ、随時高校生やメンターの相談に乗っています。

―「やまぐち若者MY PROJECT」は、昨年度からスタートされた取り組みです。取り組み開始から1年で、参加高校生が13校から約40名というのは、全国的に見てもかなり多い参加者数のように感じます。

山下:そうみたいですね。実は山口県は、以前から地域教育が非常に活発なんです。現在、全国の学校で、保護者や地域住民が学校運営に関わる「コミュニティ・スクール」という制度が取り入れられていますが、山口県では2005年頃から導入しています。現在ではほぼ全ての公立学校にコミュニティ・スクールが普及していて、これは全国でも珍しいと聞いています。

そういった土壌があるからこそ、生徒も地域の方や先生方も、マイプロジェクトに理解がありますし、積極的に関わってくれるのだと思います。また、財団の皆さんも元学校長の方々などで、教育に対して熱い想いを持って一緒に取り組めたことが大きな要因だと感じています。

和泉:スタートアップキャンプから最後の振り返りプログラムまでの約半年間、ずっとメンターが伴走する点も、各地の地域パートナーの方々から驚かれます。そのような長い期間伴走するのは、マンパワー的に難しい場合が多いのだそうです。でも、山口県では初年度からそれができているんです。

とはいえ運営面では、去年も今年も「葛藤の連続」という感じです。これが本当にメンターさんや高校生のためになっているのか、価値がちゃんと届いているのか、悩みながら懸命に取り組んでいると言うのが正直なところです。

―その中で、どのような手応えや喜びを感じますか?

山下:昨年も今年も多くのチャレンジをしていますが、普通は前例のないことをやろうとすると、周りの大人が止めると思うんです。「そこまでやらなくていいよ」とか「それの実績はあるの?」などと言って。

ところが「やまぐち若者MY PROJECT」では、主催者の方々もメンターの方々も、皆が「やったらいいよ」と背中を押してくれます。さらには、権限までどんどん委譲してくださるんです。

創意工夫を凝らしながら高校生のやりたいことを引き出し、応援していこうという姿勢を、関わる皆さんが持っています。そうした臨機応変に対応する周囲の大人たちがとても魅力的で、感動もしています。

綿重:今年から参加している身ですが、私もその点をすごく感じます。周りの大人の方々が、「高校生の学び」ということに一番の重きを置いていて、彼ら・彼女らの成長のために前のめりに関わってくださっていることが、とても素敵だと感じています。

和泉:高校生たちが心躍っている姿を見ると、やはりうれしいです。高校生の「~したい」を応援・サポートすることを通して、大学生や社会人もさらに刺激を受けるという流れができていて、大きな手応えになっています。

今年度末の「法人化」を視野に入れながら
チームとしても個人としても探究し続ける

―とても良いムードで運営されていることがわかります。今後の予定や目標はありますか?

和泉:実はやまぐち若者MY PROJECT運営チームの法人化を考えていて、今年度末の立ち上げを検討しています。まだ確定ではありませんが、「心が動く創りたい未来へ挑戦しつづける人であふれる社会」というビジョンにしたいと考えています。

―「心が動く創りたい未来へ挑戦しつづける人であふれる社会」のイメージとは?

和泉:私自身、大学生になって、ワクワクすること、大切にしたい、どうにかしたいと思うことなど、自分の心が動くことは何なのかがわからなくて苦しんでいましたし、そうした人たちを多く見てきました。そんな心動くことと出会う機会を創っていきたいですし、そうした出会いを育む挑戦を支えていきたいと考えています。

そして、こうした社会をこの4人だけでなく、県内のさまざまなエリア・立場の方々と共に創っていきたいんです。県内各地に良い意味での火種を創る者がいて、各地でその炎が燃えまくっている状態が理想です。

昨年度行われた「やまぐち若者MY PROJECT」の発表会の様子

―最後に、4人それぞれの目標や予定も聞かせてください。

小川:来年は大学3年で就活も始まりますので、自分はどうしたいのかを、これから考えていこうと思います。ただ、マイプロジェクトには何かしらの形で、ずっと関わって行きたいです。マイプロジェクトに参加している高校生と同じくらい、目指したいものや作りたい未来を見つけて、全力で頑張る経験をしたいです!

綿重:会社の仕事と山口での活動では、学べることが全く違うので、しばらくはこのまま両方を頑張りたいと思っています。体力的に大変な時もありますが、どちらも楽しくてやっていることですし、このチームの雰囲気がとても良いのでつらさは全く感じません。そして、大学時代に憧れていたキラキラした大人に、自分もなっていきたいです。

和泉:山口県の教育の土壌を耕して行きたいという目標は、現在も変わっていません。マイプロジェクトはそのための重要な手段ですので、まずはマイプロジェクトに力を注ぎつつ、何が本質的に必要なのかを考えながら、法人としても個人としても活動していきたいと思っています。そして、楽しく、日々心躍ることができていたら最高です(笑)。

山下:私はキャリア教育などを担当しているので、目標を言わなければいけない立場なんですが、先のことは何も考えていないというのが正直なところです(笑)。

現在は仕事を5つくらい並行して走らせています。どの仕事も何か貢献できそう、繋がったらおもしろそうと感じながらやっているものなので、今しばらくは目の前にあるものに取り組み、波に乗り続けたいと考えています。

その中にはもちろん、このメンバーとやっているかけがえのない取り組みも入っています。この取り組みは、自分が抱えているモヤモヤ感や、今最も気になっている「愛」というものについても明らかにできるチャレンジだと思っているので、そうしたテーマも追求しながら続けていきたいですね。

やまぐち若者MY PROJECT
■特設サイト:https://sites.google.com/view/yamaguchimypro/

-文:かきの木のりみ
-写真:やまぐち若者MY PROJECT運営チーム 提供


 

●全国高校生マイプロジェクトでは、本記事でご紹介した「やまぐち若者MY PROJECT運営チーム」をはじめとする全国の17団体/個人の皆様と「地域パートナー」としてパートナーシップを結び、マイプロジェクトの学びを全国に広げる活動を行なっています。
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●また12/10(金)まで、今年度の「マイプロジェクトアワード」に向けたエントリーも受付中です。一人でも多くの高校生のご参加をお待ちしています。
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#01/「生き生きした若者が育つ環境をつくりたい」 その思いから自衛官を辞め、地域パートナーに転身。 彼が目指す「日常的な学びの場と未来の形」とは
#02/「若者が自分の思いを大切にできる社会にしたい」という想いで立ち上がった青年二人が、 ものすごいスピードで進化させている、長野県の探究学習プロジェクトとは
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#04/「地元の高校生が、いつか地域のプレイヤーとして戻ってきて、未来の高校生を刺激する。そんな循環をつくりたい」彼がマイプロジェクトのパートナーになったわけ

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編集部 編集部

KATARIBAMagazine編集部が担当した記事です。

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