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【調査レポート】探究学習に取り組んだ高校生は、「キャリア上の困難を乗り越える力」が社会人と同等かそれ以上であることが明らかに

vol.372Report

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category #活動レポート

writer 編集部

カタリバは2013年から、高校生が自ら問いを立て、課題を解決する探究プログラム「マイプロジェクト」の推進に取り組んでいます。2022年度からは、高等学校において「総合的な探究の時間」が必修化されました。不確実性の高い現代社会において、自ら問いを立て、課題を解決し、そのプロセスから学び次の問いにつなげていく力がより一層求められています。

一方で、生徒個々人がさまざまなテーマを設定し課題に取り組む「探究学習」の授業では、「授業案やカリキュラムの設計が難しい」「単なる調べ学習で終わってしまう」などの課題も。カタリバが2023年に全国の教員232名を対象に行った調査(*1)では、探究学習を推進している担当者の95%が「課題を感じている」と回答していました。

今回は、実際に探究学習に取り組んだ生徒たちにはどのような変化がみられ、その経験がどのようなことにつながっているのかなどを把握するため調査を実施しました。

*1:探究学習の推進における課題調査(2023年、認定NPO法人カタリバ)
https://www.katariba.or.jp/news/2023/03/20/40481/

探究学習に取り組んだ高校生の3つの特徴

本調査は、探究学習(マイプロジェクト)に取り組む高校生2,459名を対象に、オンラインアンケート形式で実施しました。その結果、以下のことがわかりました。

●探究学習に取り組んだ高校生は、「キャリア上の困難を乗り越える力(キャリアレジリエンス)」が社会人と同等かそれ以上
●探究学習で身についた力TOP3は「主体性」「実行力」「課題発見能力」
●調査に参加した高校生の約9割が、マイプロ/探究の経験が進路の選択に役に立ったと回答

以下で、それぞれの特徴の詳細をご説明します。

■探究学習に取り組んだ高校生は、「キャリアレジリエンス」が社会人と同等かそれ以上

心理学者のジョン・D・クランボルツ氏によって1999年に発表されたキャリア理論によると、「キャリアのターニングポイントの8割は予想できない偶然の出来事が影響する」とされています。このように予測不可能な出来事が避けられない中で、仕事や進路の変化にも柔軟に対応し、前向きに行動できる力のことを「キャリアレジリエンス(*2)」と言います。

今回の調査の中でキャリアレジリエンスの項目に注目したところ、探究学習に取り組んでいる高校生は、社会人と比較して同等、もしくはそれ以上にキャリアレジリエンスのスコアが高いという結果が出ました。

※本調査は大学生用キャリアレジリエンス測定尺度(児玉, 2017)の項目を用いて実施した。<参考文献*a>
※先行研究は、児玉(2015)の文献を引用。ただし、問題対応力とチャレンジ因子など、一部概念名や質問項目が対応していないものがある。<参考文献*b>
*2:児玉真樹子 「大学生用キャリアレジリエンス測定尺度の開発」 学習開発学研究第10巻 2017年 pp.15-23

■探究学習で身についたと思う力TOP3は「主体性」「実行力」「課題発見能力」

今回の調査で、探究学習を通じて身についた力として「主体性(81.9%)」が最も高く、80%以上の高校生が選択していました。次いで「実行力(71.4%)」「課題発見力(63.1%)」と続きます。

■高校生の約9割が、マイプロ/探究の経験が進路の選択に役に立ったと回答

進路選択への影響について問う設問では、87.9%の高校生がとてもそう思う・そう思うと回答。約9割の高校生が、探究学習の経験が進路選択に役立ったと感じていることが分かりました。

■調査概要

調査名:全国高校生マイプロジェクトに関する調査
調査方法:インターネットでのアンケート調査
調査地域:日本全国
対象者:全国高校生マイプロジェクトアワード2024に出場した、探究学習に取り組む高校生2,459名
実施期間:2024年12月13日~2024年12月25日

<参考文献>
*a 児玉真樹子 「大学生用キャリアレジリエンス測定尺度の開発」 学習開発学研究第10巻 2017年 pp.15-23
*b 児玉真樹子「キャリアレジリエンスの構成概念の検討と測定尺度の開発」心理学研究 2015 年 第 86 巻 第 2 号 pp. 150– 159

先生が “探究” を探究する場
「探究スタートアップラボ」参加校エントリーを受付中

高校で「総合的な探究の時間」が必修科目となってから3年が経ちますが、探究学習の推進に課題を感じている先生も少なくありません。カタリバではそんな先生方を対象に2024年に「探究スタートアップラボ」を始動。20校の先生方へ3回にわたってワークショップ形式の研修を行いました。

そしてこの度、2025年度の参加校のエントリー受付を開始しました。今年度は10校程度の採択を予定しています。詳細に関するオンライン説明会を予定していますので、ご関心のある高校の先生は以下よりお申し込みください。

■オンライン説明会
<日程>
・5月27日(火)19:00~20:00
・6月 2日(月)19:00~20:00

<お申込みフォーム>
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSd8N_xll6jYQfA_xA6sWM6TfucN8hY2VYoTLcbN8Oza-y4kCw/viewform

いずれかご都合のよい日程へご参加ください。2024年度研修参加校による実践事例の発表内容が日程によって異なるため、両日に参加いただくことも可能です。
ご都合がつかない場合は、アーカイブ視聴も可能です。アーカイブ視聴を希望の場合も、上記のフォームよりお申し込みください。
※探究スタートアップラボのエントリーにあたっては、説明会参加またはアーカイブ動画視聴を必須としています。

■2025年度 探究スタートアップラボ研修内容(予定)
説明会で詳細をお伝えします。

<第1回>
・テーマ:先進校フィールドワーク・伴⾛⼒強化研修
・日程:2025年9⽉2⽇(⽕)もしくは9⽉16⽇(⽕) ※どちらかの日程に参加
・場所:福島県立ふたば未来学園中学校・高等学校

<第2回>
・テーマ:カリキュラム開発研修・校内議論作戦会議
・日程:2025年11⽉8⽇(土)
・場所:桜美林大学(新宿キャンパス)

<第3回>
・テーマ:振り返り発表会・マイプロジェクトアワード全国Summit⾒学
・日程:2026年3⽉下旬
・場所:都内

高校時代に正解のない問題に向き合い、探究することで、未来への創造力を引き出す。
そのための探究学習プロセスを日本全国の高校生に広げるため、マイプロジェクトでは引き続き取り組みを行っていきます。

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編集部 編集部

KATARIBAMagazine編集部が担当した記事です。

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