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「奨学パソコン」を借りて、中1長女の成績が学年トップに。複数の困難を抱える「ひとり親家庭」の希望[代表のつぶやき]

vol.163Voice

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category #代表のつぶやき

writer 今村 久美

yahoo個人で、下記の記事を掲載したところ、大きな反響をいただきました。

「収入が2ヶ月で2万円。娘2人とどう生きれば」。あるシングルマザーに、パソコンとWi-Fiを届けた

「ウェブニュースを見て、取り組みを知りました」「恥ずかしながら、このプロジェクトを通して日本の貧困家庭の現状を知りました」という連絡とともにご寄付をくださった方もいます。

今回は、参加している家庭が抱える困難をデータから紹介し、私たちが出会ったひとり親家庭のシミズさん(仮名)と、中学1年生の長女アキちゃん(仮名)の話をしたいと思います。

「奨学パソコン」を使う人のうち
7割は、ひとり親家庭

まず、このプログラム利用者のうち222名に生活実態などのアンケートを行ったところ、7割はひとり親家庭でした。

厚生労働省の全国ひとり親世帯等調査によると、2015年の母子世帯の母親自身の年間の就労収入の平均は200万円。養育費・手当や給付金・実家からの仕送りなどを足しても、母子世帯の母親の年間収入は平均243万円です。

母1人、子2人の家庭をモデルとして考えてみると、2015年のOECDの基準では、3人世帯の場合、可処分所得が211万円に満たない世帯は相対的貧困となります。

普段から自転車操業のようなギリギリの生活だった母子家庭。収入がコロナ禍によって少し減ってしまうだけで、あっという間に”貧困”になってしまうのです。

不登校や発達障害など。
お金以外にも「困難」が重なり合っている

また、アンケートに答えた222名のうち14.4%の子どもが不登校の傾向を示しています。文部科学省の調べよると、年度内に連続または断続して30日以上欠席した生徒を”不登校”としていますが 、その割合は小学校で0.7%、中学校では3.6%(「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」)。キッカケプログラム参加者の不登校の傾向は、平均より何倍も高いのです。

ほかににも、全体の19%の子どもは発達障害の傾向を持っているという結果も出ました。うち8割は、実際に医師の診断を受けています。

キッカケプログラムは、応募のときに生活保護、児童扶養手当、就学援助などの受給証明を出していただき、困窮している世帯であることを確認しています。

アンケートから見えてきたことは、そうした家計の困窮に加え、(1)ひとり親である(2)子どもが発達障害傾向がある(3)子どもが不登校傾向である、などの複数の課題を家庭内に重複して抱えていることでした。特別支援学級に子どもが通っている、障害者手帳を持っている、日本語がうまく話せないなどの場合もあります。

家計の困窮以外に何かしらの課題や困難を抱えている家庭の割合は、全体の83%にものぼりました。プログラム利用者の動向については、大学とも連携してより詳しく調査していきますが、ただ給付金を渡すだけではない支援が必要だということではないでしょうか。

勤め先がすべて閉店、
3人の子どもをひとりで育てる

なかなか難しい現実の中ですが、小さな希望も生まれはじめています。

首都圏に住むシングルマザーの、シミズさん(仮名)。8年前にシングルになり、小学生から中学生までの3人の子どもたちをひとりで育てています。ネイリストとして複数の美容室などに勤めていましたが、コロナで勤め先がすべて閉店してしまいました。

紹介でお客さんを集めて、自宅や出張で施術したりと頑張るものの、収入は半分以下に。学校がお休みとなり子ども3人が家にいる中、依頼があったら行かなくてはいけないという不定期な仕事をこなすのも大変でした。子ども達との会話も増えたものの、いさかいも増えていきました。

「収入も激減しているし、コロナでずっと自宅にいてイライラするし、親子関係もうまくいかない。どうしたら」。そんな風に悩んでいたときに、中学1年生の長女・アキちゃん(仮名)がたまたまテレビで見かけたのが、カタリバの”奨学パソコン”のニュースでした。

お母さんにケータイを借りてインターネットで検索し、プログラムの説明を読んだアキちゃん。「これに参加してみたい」と伝えられたシミズさんはすぐに応募。6月にはパソコンが届き、兄妹でオンラインプログラムに参加することができるようになりました。

成績が学年トップに。
「高校で特待生になりたい」

もともと勉強が好きで真面目、小学校でも成績がいい方だったというアキちゃん。けれどこれまでは家計の状況から、塾には通えておらず、独学で勉強していました。カタリバに参加して「こういう風に勉強してみたらもっといいんじゃないかな」とアドバイスを受けることで更に成績が伸び、1学期の最後のテストでは、学年で1番をとったといいます。

今は「高校に特待生で入れるように頑張りたい」と考えて、すでにどこの高校がいいか考え始めているそう。「『いつかはカタリバで働いてみたい、恩返しがしたいな』と、家でアキが話してくれるんですよ」とシミズさんは嬉しそうに教えてくれました。

もちろん、大変なことがないわけではありません。アキちゃんの妹は、コロナでの一斉休校以降に、不登校気味になっています。シミズさんも、家計の困窮に加えて、「ひとり親」「子どもの不登校傾向」など複数の困難があることは事実です。

「学校に行かないという日も、家でカタリバオンラインには参加しています。少し年上のお兄さんお姉さんの話を聞いて刺激を受けているようで、親とは違うナナメの関係って大事なんだなと感じます。子どもを受け止めてくれる居場所ができたから、私も安心していられます」

「負の連鎖が続いている、明るくたのしく生活したい」と5月の応募時に話していたシミズさん。3ヶ月経ち、彼女の表情は、少し和らいだように感じました。

彼女1人を、
”頑張ることができた幸運な事例”にしたくない

大変な状況だけれど、小さな希望が生まれ始めている。そしてその小さな希望を、”たまたま頑張れた”ラッキーな事例にしたくない。

「大変な中でも頑張れる人はいるよ」「やるかやらないかは自己責任だよ」ではなくて、困窮する子どもを、誰ひとり取り残さない社会にしたい。子どもには、家庭環境を背負う責任はなにひとつありません。

『奨学パソコン』の費用の一部を集める「あの子にまなびをつなぐ」プロジェクトのクラウドファンディングでは、そんな想いに共感してくれた方が1200人以上集まっています。ひとりひとりの力は小さいかもしれないけれど、手を取り合うことで大きなうねりを作っていけると感じています。

次の世代の子どもたちに希望をつないでいくために、まずは大人が協力していけたらと思います。

クラウドファンディングページ:https://readyfor.jp/projects/manatsuna

Writer

今村 久美 代表理事

79年生まれ。岐阜県出身。慶應義塾大学卒。NPOカタリバ代表理事。ここではゆるくつぶやいていきます。

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