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生成AI「ChatGPT4」が発展する中、私たちの役割と共存を考える[代表のつぶやき]

vol.285Voice

date

category #代表のつぶやき

writer 今村 久美

2023年3月17日(金)~3月20日(月)まで、G1サミット(様々な立場の方々と議論を重ねる企画)が北海道で開催され、参加させていただきました。今年はもう、どこのセッションも生成AIの話でもちきり。私自身、先週ChatGPT4を体験してから「私たちに残される役割はなんだろう」と脳内がぐるぐるして、このサミットでさらにわからなくなっていたのですが、「なるほど」な出来事が2つあって、それがつながり、そろそろ2023年3月段階の現在地は見え始めつつある気がします。

1つ目のなるほど:カタリバの保護者LINE相談チームのリーダーからきた返信が、なるほど!

北海道の会場から、カタリバの保護者LINE相談チームに「ChatGPT4を使って対応の質と生産性をあげられる活用ができないか検討してほしい。特に初期対応に使ったら良いのではないか?」と伝えました。それに対して、リーダーの藤井 理夫からこんな返信が。

藤井「過去の蓄積履歴をChatGPT4に回答させたらどうなるか見てみたいし、活用方法はぜひ検討しましょう。しかし……今現時点での相談は、正解や情報提供を求めたケースは少なくて、『誰かにこの苦しい気持ちを聞いて欲しい』という共感や肯定に価値を置いたものがほとんど。上手くAIが人に共感できたとしても、相談相手がAIやBotだと知ったら興ざめするのか、逆に機械だから安心するのか、そこも開発ポイントになりそう。Botモードか、人モードかをユーザーが選択できるのも良いかもしれない。でも、伴走している保護者の方からこの季節に届く、『また桜が咲く季節になりましたね』とか『うちの子がいよいよ卒業式を迎えました』という会話は、AIだと生まれないかもしれない」

→ なるほど、そっか、そうだった……カタリバの特徴は、精度の高い情報提供コンシェルジュではなくて、対話型伴走企画だった……!代表、ブレてちゃだめじゃんと反省……。ただし、ChatGPT4を使うことで、難易度の高い課題にぶち当たっている人とのやり取りなど過去の蓄積と、世界の文献・論文情報とを照らし合わせながら回答のたたき台をつくらせ、人間はそのたたき台を編集しながら対話をするなどの使い方はできそう。

2つ目のなるほど:安宅 和人さんとご飯を食べているときの一言が、なるほど!

安宅さん「会話の価値のほとんどは、情報の網羅性や論理性にあるのではなくて、差し込み角度と比喩にある。いまこのテーブルでこのメンバーでご飯を食べながら、空気を感じて、表情を見合って、何かを伝える。場を壊さないような情報量と声の大きさで。人間はそれを無意識にやってる。それが生成AIにはできない。最後、人間に残るのは知覚かもしれない」

→ なるほど……。子どもたちが多用する「やばい」「すごい」「かわいい」も、無意識に文脈を理解し合っているから成り立っているんだな。しかし、知覚や認知力しか人間の役割価値として残らないなら、今よりずっと高い能力の獲得がみんなに必要になるというようにも聞こえる。

情報の非対称性なんてなくなる社会に価値として残るのは、相手の気持ちや認知特性を察して、意味づけをして言葉で伝える力。子どもの教育論でいえば、テストのあり方も、授業の使い方も、本気で変えていかないといけない。今年の大学入学共通テスト(センター試験)は、思考・判断・表現の比重が高くなっているように見えた。最新の統計データや図解や報道などの情報を突き合わせて、判断をして、解答させるものもあり、良い意味で高度化しているように見えたけど、近いうちに自分の頭だけで完結すること自体意味をなさなくなる……?いや、訓練としては大事か。わからない。

本気で取り組んで、汗や涙を流して考えたり挑戦したりする体験や、人とぶつかって戸惑うこと、大喧嘩して折り合って仲直りすること、当たり前を疑って自分で変えていけること。何かを美しいと思える体験をしたり、大自然の脅威や荘厳さを感じたり、毎日たくさんびっくりすることに出会ったり……例えばそういうようなことこそ、しっかりゆったり時間をとって与えてあげたい学びの経験なんだと思う。

しかしこれが一部の、「選べる人が選べる学校」にだけ実装されていく世の中ではなくて、どんな環境の子どもたちにもちゃんと届く、つまり公立学校の教育でも比重をきちんと置いていける日本の教育にしていくことに、私は貢献し続けたい。

と思いながら……ひとまず今は、息子が何度起こしても起きなくて、朝から何度も叫んでいるというのが、学力論よりずっと手前の現実ですが……!


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Writer

今村 久美 代表理事

79年生まれ。岐阜県出身。慶應義塾大学卒。NPOカタリバ代表理事。ここではゆるくつぶやいていきます。

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