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「経験を積んでもう一度子どもたちの力に」インターンを経て、再びカタリバを選んだわけ/NEWFACE

vol.284Interview

date

category #インタビュー #スタッフ

writer 大島 彩花

Profile

加瀬仁美 Hitomi Kase マイプロジェクト全国事務局

1996年生まれ、神奈川県出身。明治大学国際日本学部在学中に、日本の若者の自己肯定感に関する課題や学校教育に関心を持ち、卒業までの4か月間、マイプロジェクト全国事務局にてインターンとして活動する。大学卒業後、人材会社での派遣営業を経て2022年にカタリバに入職。現在はマイプロジェクト全国事務局にて、広報やバックオフィス、連携団体の伴走などに携わる。

ここ10年で、仕事のあり方・捉え方は、まったく違ったものになってきている。終身雇用は崩壊、転職は当たり前のものとなり、複業やフリーランスも一般化。テクノロジーの発達によって無くなる仕事予想も大きな話題となった。給料や肩書よりもやりがいや意味を重視する若者も増え、都会から地方にUIターンすることも珍しくなくなった。世界が一斉に経験したコロナ禍をへて、今後ますます働き方は多様に変化していくだろう。

そんな中カタリバには、元教員・ビジネスセクターからの転職・元公務員・元デザイナーなど、多様なバックグラウンドを持った人材が就職してきており、最近は複業としてカタリバを選ぶ人材もいる。その多くは20代・30代。彼らはなぜ、人生の大きな決断で、いまNPOを、いまカタリバを選んだのか?

連載「New Face」では、カタリバで働くことを選んだスタッフから、その選択の背景を探る。

マイプロジェクト全国事務局の一員として、高校生の探究学習を支える加瀬仁美(かせ・ひとみ)。学生時代はインターンという形でカタリバに携わり、大学卒業後は民間企業に就職。3年間の実務経験を積み、満を持して再びカタリバの門戸を叩いた。

「できることなら大学卒業後、すぐにでもカタリバに入職したかった」と語る彼女。彼女のカタリバへの思いを駆り立てるきっかけとなった、学生時代・前職の経験に迫る。

“自分で決める”から、自信が生まれる

ー学生時代、カタリバのインターンを経験した加瀬さん。どんな学生だったのでしょうか。

ひとことで表すと、周りの目を気にするタイプ。幼い頃から「周りにとってのいい子でいなきゃ」と思い詰めてしまう癖があり、自分の行動に自信を持てない学生でした。

転機となったのは、大学進学です。地元から離れたことで、人間関係がガラッと変わりました。そのなかで驚いたのは、皆が自分の意見をしっかりと持っていること。対する私は、会話のなかで「仁美はどうしたいの?」と問われ、言葉に詰まることもありました。

大学3年生の頃にはアメリカ留学も経験しましたが、理由は「周りの同級生が留学していたから」。やはり周囲に流されてしまった私は、自分の意志で決めることができない自分を周囲と比べ、このままじゃダメだなと自己肯定感の低さに悩み続けていました。

ー実際に留学を経験してみて、いかがでしたか?

「自分の行動を自分で決めることで、自信が生まれると知りました。自己肯定感に悩み続けた私にとって、大きな学びでしたね。

留学中は、慣れない環境に心が折れてしまったこともありました。そこで感じたのは、どんな決断も最後は自分で決めたことでなければ、困難に直面したときに乗り越えられないということ。

そこで改めて「自分自身で決めること」の大切さに気づき、留学の目標・目的を定め直すことに。自分で決めたことを自分で乗り越えた経験は得ることも多く、何よりも大きな自信になりました

ーカタリバに出会ったのは、留学後ですよね。

内閣府が発表している『子ども・若者白書』によると、日本の若者の自己肯定感は世界各国と比較しても最低水準。子どもたちの自己肯定感の低さは、日本社会が抱える課題の1つです。

留学から帰国後、かつての自分のように自己肯定感に悩む子どもの力になりたいと思っていたタイミングで、カタリバに出会いました。

ーインターン期間もマイプロジェクト全国事務局で活動されています。なぜマイプロジェクトだったのでしょうか?

全国高校生マイプロジェクト」は、高校生が自身の関心をテーマにプロジェクトを立ち上げ、実行を通して学ぶ探究型学習プログラムです。

留学を経て「自らの意志をもって行動することの大切さ」を学んだ経験から、まさに前述の社会課題(日本の子どもたちの自己肯定感が低い)に一石を投じる、これからの日本にとって必要なプロジェクトだと確信しました。

インターンに参加したのは、大学4年生の秋頃から社会人になるまでの数ヶ月間。年に1回開催されるマイプロジェクトに取り組んだ高校生の発表会である「マイプロジェクトアワード」の開催を支えるメンバーとして、準備や事務作業に携わりました。

前職で感じた、きっかけ格差の深刻さ

ーカタリバに魅力を感じつつも、大学卒業後は民間企業に就職されたのですよね。

カタリバでの活動は「子どもたちの自己肯定感を育みたい」という私自身の思いと重なる部分も多く、正直なところ卒業後もカタリバで働きたい気持ちは山々でした。でも、私は学生時代に教育を専攻していたわけではないし、インターンとして参加した期間もごくわずか。今の私では、カタリバの力になれないと思ったのです。

「カタリバで活躍できるだけの力を身につけてから再挑戦したい」と思い、一度は民間企業へ就職することにしました。

ー民間企業はどのような軸で選びましたか?

「人と関わる業界」という点で教育に通じる部分があるのではないかと考え、人材業界に絞りました。加えて、「なるべく早くカタリバに戻って貢献したい」という思いから「若手のうちからキャリアを積める企業であるか」を重視。

最終的にご縁をいただいたのが、前職で3年間お世話になった総合人材会社です。介護業界の派遣営業として、介護施設と派遣スタッフの仲介や、就業フォローなどを担当しました。

ー前職で印象的だったことを教えてください。

育った環境によってその後の人生が左右される、「きっかけ格差」を感じたことです。

前職では、学生時代とは比にならないほど多様なバックグラウンドを持つ方々と関わる機会がありました。

多くの人と関わる中で気づいたのは、私が常識だと思っていたことが、ほかの人にとっては必ずしもそうではないということ。私にとっての常識は「限られた環境で育ったからこそ形成された考え」にすぎないのだと気づきました。

ーと言いますと?

これまでの私は、「本人が努力さえすれば困難は乗り越えられる」と信じていました。中学・高校と剣道部に所属し、自分の努力が試合の結果として返ってくる環境に身を置いていたことも影響していると思います。

一方で世の中には、社会のなかでその人らしく生きていくために必要な経験や知識に触れる機会が与えられなかった方もいます。まさに、「きっかけ格差」ですよね。「個人の努力だけではどうにもならないこともある」と知りました。

同時に、カタリバのビジョンである「どんな環境に生まれ育っても、未来をつくりだす力を育める社会」が、どれほど社会に必要とされているかを改めて考えさせられましたね。人材業界での経験を通して、カタリバへの入社意欲がますます高まりました。

「子どもファースト」で、彼らが自信を持てる機会を増やす

ー前職での勤務を経て、再びカタリバの門戸を叩いた加瀬さん。今の仕事内容について聞かせてください。

マイプロジェクト全国事務局の一員として、主に広報やバックオフィス、連携団体の伴走など経験を積みながら様々な業務に携わっています。

ーどんなときに仕事のやりがいを感じますか?

マイプロジェクトに参加した子どもたちから前向きな感想をもらえたときです。

「同世代の子の頑張る姿が励みになった」「活動を進めるうちにプロジェクトに自信を持てるようになった」といった前向きな声を聞けるのが本当にうれしくて……。

私たちの仕事が子どもたちの変化につながっていると思うと、「やってよかったな」と感じますね。

ーカタリバに転職して感じた、前職との違いがあれば聞かせてください。

大きく分けて2つあります。

1つは、仕事上で問題が生じたときの判断基準です。前職では介護施設と派遣スタッフの仲介を担う立場である以上、双方の立場を考えた上での臨機応変な対応が求められました。

一方で、カタリバの判断基準はいかなるときも「子どもファースト」。子どものことを第一に考えた上でジャッジすることは、カタリバの全職員における共通理解として浸透しています。

もう1つは、成果の現れ方です。前職では売上という数字の形でダイレクトに現れていましたが、カタリバでは必ずしもそうではありません。成果の可視化が難しく、入職当初は「自分は子どもたちや仲間の力になれているか?」と不安になってしまうこともありました。

上司からのフィードバックを積極的にもらうよう心がけることで、今では少しずつ自信を持って働けるようになっています。カタリバでは一緒に働くメンバーに対するフィードバックを大切にする文化があるので、ありがたいですね。

ー入職して改めて感じる、カタリバの良さは何ですか?

一緒に働くメンバーの温かい人柄です。インターン時代から、ずっと感じていました。

例えば私が所属しているマイプロジェクト全国事務局では、社歴の浅い私でも気軽に意見を出せるよう、先輩方が積極的に話を振ってくださいます。難しい内容のミーティングであっても安心して発言できるのは、周囲のフォローがあってこそです。

「心の安全基地」という考えを大切にして子どもの居場所作りにも注力するカタリバですが、私たちの職場環境にも近い雰囲気を感じますね。

ー最後に、加瀬さんがカタリバでの仕事を通して成し遂げたいことを教えてください。

マイプロジェクトを通して、少しでも多くの子どもが自分と向き合い、自信を持てる機会を増やすことです。

学習指導要領の改訂により2022年度から探究学習が必修化されたことで、先生からの紹介や授業の一環として、マイプロジェクト全国事務局が開催するイベントや発表機会に参加してくれる高校生も増えました。それゆえ、必ずしも全員が会の最初から積極的ではない場面も見られます。

でも、参加動機を問わず、マイプロジェクトが「自分はどうしたいのだろう?」と自分に向き合うよいきっかけになったらいいなと思います。実際、はじめは積極的ではなかったけれど、マイプロジェクトアワードで出会った他の高校生に触発されて笑顔が増えたり、主体性が垣間見えるようになる例は珍しくありません。

マイプロジェクトに、もとから意欲的な子にもそうでない子にも、自分と向き合うきっかけをつくり出したいです。

「『いつかはカタリバへ』という思いはありましたが、決して前職が嫌になって転職したわけではありません。むしろ働く環境に恵まれていたからこそ、3年間頑張れました」と、笑顔で話す加瀬。カタリバに対する思いと同時に、常に周囲への感謝を忘れない「謙虚な姿勢」が感じ取れた。

「カタリバには『こんな先輩になりたい!』と思えるメンバーが集まっている」と話してくれた彼女自身も、いずれは後輩にとっての素敵なロールモデルになってくれることだろう。


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Information
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■「全国高校生マイプロジェクトアワード2022全国Summit」 観覧受付中

今回ご紹介した加瀬も関わる実践型探究学習「全国高校生マイプロジェクト」では、毎年12月から3月にかけて、探究学習に取り組んできた全国の高校生が集う、日本最大級の学びの祭典「全国高校生マイプロジェクトアワード」を開催しています。

2023年3月25-26日に開催される「全国高校生マイプロジェクトアワード2022全国Summit」では、各地域Summitや動画選考などを経て学びのロールモデルとして選ばれた48プロジェクトの発表を予定しており、オンラインでの一般公開も行います。探究学習に取り組んできた高校生の学びの発表に関心のある方は、ぜひご参加ください。

全国高校生マイプロジェクトアワード2022 全国Summit 概要(一般公開日のみ)

●全国Summit DAY1
 開催日:2023年3月25日(土)
 時 間:10:15 – 16:30(予定)

●全国Summit DAY2
 開催日:2023年3月26日(日)
 時 間:10:10 – 16:30(予定)

  • ■観覧申込方法:こちらよりメールマガジンを登録いただいた方に、申し込みのご案内をいたします。
  • ■観覧に関する詳細はこちら
  • ■お問い合わせ:summit-mypro@katariba.net(担当:全国高校生マイプロジェクト事務局)

 ※ 取材をご希望の方はこちらのフォームへご入力ください。


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Writer

大島 彩花 ライター

ライター/エンジニア 1996年生まれ。栃木県出身。首都大学東京(現:東京都立大学)にて都市政策を専攻。卒業後はSIerとして生命保険会社のシステム設計・開発に従事。その後、個人事業主としてライターのキャリアを本格的にスタート。現在は独立し、IT系・教育系メディアにて、取材記事やイベントレポートを中心に執筆。

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