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「教育者こそ、実践で学び続けるべき」カタリバの長期インターンで学んだこと。

vol.177Interview
Profile

水橋 誉 Homare Mizuhashi 元NPOカタリバ実践型インターン

1997年生まれ、宮城県仙台市出身。宮城県で中学校の数学教員になるために東北学院大学へ進学する。大学1年時に、自身も奨学金を借りている「一般財団法人あしなが育英会」の活動に参加。親を亡くしたり、親が障がいで働けなかったりする家庭の子どもたちの心のケアや互助活動に取り組む。2019年4月から1年間大学を休学し、福島県立ふたば未来学園中学校・高等学校に併設する放課後施設「双葉みらいラボ」でカタリバでの長期インターンに参加。2020年4月より大学に復学し、来春には大学院進学を控えている。

家庭でも学校でもない
「場」の必要性を痛感した

ー教職課程の履修やあしなが育英会の活動だけではなく、さらにカタリバでのインターンにも参加された水橋さん。「教育」に対してさまざまな切り口からアプローチしていた水橋さんが、カタリバを知ったきっかけから教えてください。

大学1年の頃、あしなが育英会の活動の一環として高校生たちと3泊4日のサマーキャンプへ参加したことです。

参加した高校生は、親を亡くしたり、親が障がいで働けなかったりする家庭の子どもたち。4日間という短い時間にもかかわらず、ほとんど初対面の状態だった彼らが、ゲームなどで打ち解け、お互いに学校のことや生活のこと、将来のことなどを対話しながらどんどん思考を深めていく様子を目の当たりにしました。ぼくが見ていた高校生たちのなかには、「もしかしたら自分はこういうことをやりたいのかもしれない」と将来の目標を見つけた子もいたほどです。

生徒たちからの相談に応じる水橋(写真はカタリバ長期インターン着任後のもの)

ー濃密な4日間だったのですね。詳しいエピソードを教えてください。

自分が担当していた班に、看護師志望の高校生がいたんですよ。ただ、通っているのは商業系の高校。周りからも卒業後は会社勤めすると思われていたし、進学費用への漠然とした不安はあったものの、本当は看護師の夢を諦められていない子どもでした。

ぼくはメンターとして、まずはひとりで抱え込んでここまできたことをきちんと認めてあげようと思いました。両親に気を遣ってしまう部分、友達には相談できない部分をしっかりと承認してあげる。すると、ようやく安心してくれたみたいで、改めて看護師という夢に挑戦してくれました。個人的な感覚ですが、困難さを抱えている子どもほど抱える悩みが多様で、決して1人では解決できないような状況にあるような気がして。

あらためて、高校生という大人への入り口に立つタイミングで、学校でも家庭でもない場所に身を置いて、先生でも親でもない第三者と対話を重ねていくことにはすごく意味があると実感して。そのことをあしなが育英会の職員さんに話したら、紹介してくれたのが『「カタリバ」という授業――社会起業家と学生が生み出す “つながりづくり”の場としくみ』という本でした。本を手に取って、代表今村の考え方と行動力に感銘を受けたことを覚えています。

長期インターン着任後一番最初に取り組んだ、新高校1年生向けの歓迎イベントで自己紹介をする水橋

ーでは、数ある選択肢のなかでカタリバのインターンを選んだ理由は? そもそもなぜインターンすることにしたのでしょう?

大学1年〜2年とあしなが育英会の活動に取り組んで来て、3年では「学校でも家庭でもない、高校生が対話するための場づくり」に力を入れてみたいと思うようになっていました。うまく説明できませんが、「子どもたちとの対話は彼ら・彼女らが将来を切り開くために必要なことだ」と使命感すら抱いていましたね。この使命感を持って社会に対して何ができるのかを知るためにも、1年間の休学も視野に入れていました。そこでGoogleで検索をかけたところ、ヒットしたのがカタリバの長期インターンでした。

もともとあしなが育英会で見ていたような、親を亡くしたり、親が障がいで働けなかったりする家庭の子どもたちと対話したいと思っていたので、カタリバが、困難を抱えた子どもたち向けの放課後施設を運営していたり、学校と連携して子どもたちのナナメの関係づくりに取り組んでいたことは、チャレンジする理由として大きかったですね。

いかにして生徒たちの主体性を引き出すか

ー結果として、カタリバが福島県立ふたば未来学園中学校・高等学校内で運営する生徒のための居場所「双葉みらいラボ」で長期インターンの活動をされたと。ここでは、どういった活動をされていたのでしょうか?

大きく分けて2つあります。

ひとつは、先ほども少し触れた、学校内に併設する生徒のための放課後の居場所「双葉みらいラボ」の学習支援担当です。学習支援担当といっても、ぼくのメインミッションは学力を高めるための学習指導ではなく、生徒の学びへの意欲を高め、自立的に学習を進められるようにサポートすることでした。主に、生徒が放課後に利用する自習室の運営・そこでの学習サポートや、生徒の学習意欲を高めるためのイベントの企画を担当していました。

「身の回りにあるトピックと教科の知識と紐づいていること」を生徒に実感してもらうために実施した学習イベント。生徒たちが身近なトピックを入口に、数学や世界史といった教科を学ぶ目的を再認識し、学習意欲を高めていくことを狙い、水橋自身が企画・実施した。

もうひとつは、ふたば未来学園高校の「未来創造探究(総合的な探究の時間)」の学習メンターです。ふたば未来学園高校は、原発事故で休校になってしまった5つの高校の意思を受け継ぐかたちで開校した学校。カリキュラムの特色の一つでもある「未来創造探究」は、震災と原発事故という人類が経験したことのない災害によって、解決困難な様々な課題に直面したこの地だからこそできる、地域課題解決型プロジェクト学習です。この授業では、生徒たちが自分が取り組むテーマを決めて、地域の課題を解決していくためのプロジェクトを企画・実行しています。ぼくが担当していたのは、数あるテーマのなかでも「スポーツ」。主には、スポーツ系の部活動に取り組み、将来の進路もプロ選手やスポーツに関わる仕事を目指す生徒たちの伴走役を務めていました。

ー仕事をするうえで気をつけていたことはありますか?

「生徒の主体性を生み出すこと」です。特に探究学習においては、「何かを実行して何かに気づく」というプロセスを、いかに主体的に経験してもらえるかを大切にしていました。

探究学習の進め方として「テーマの設定」「リサーチ」「実行」「まとめ」の4つの段階があるのですが、最初の「テーマ設定」でつまづくことが多い。当然といえば当然なんですよ。高校生で「スポーツの可能性と地域の課題のつながり」や「課題を解決するためのプロジェクトのテーマ」を考えること自体、難易度は高い。スタートの段階で「子どもたちとスポーツをやりたい」ぐらいの温度感だとしても仕方ないと思うんです。

だから、ぼくらが「じゃあどういうやり方があるだろうか」「こういうひとに話を聞いてみたらどうだろう」と後押しする。でも、サポートしすぎると“やらされ感”のようなものが生まれてしまい、彼ら・彼女らの主体性が育まれません。とはいえ、彼ら・彼女らが路頭に迷ってしまっては意味がないので、自走できるようなるまではある程度サポートが必要で……この塩梅が、すごく難しいんです。

「未来創造探究」の時間、テーマ設定に取り組む生徒たちに伴走する様子

こういったサポートの塩梅はスタッフそれぞれが工夫していくのですが、ぼくの場合は地域の小学校やスポーツ教室に「実はふたば未来学園高校の高校生たちがこういう活動をしていまして……」と相談し、生徒たちが行動しやすい枠組みをつくるように心がけました。生徒と先生、町の人との繋がりを考え、1年間、一度も気が抜けたことはなかったですね。

ーインターンを通じて、水橋さんに変化はありましたか?

「子どもたちの可能性を信じる力」が身についたと思います。以前から意識はしていましたが、自分の関わり方次第で生徒たちの可能性を伸ばしていけることを実感しました。

いま思うと、カタリバのインターンに参加するまでは、ぼく自身も主体性がなかったんですよ。だから1年間活動して、生徒たちにかけた「主体的に学ぼう」「周りと協力して進めていこう」という言葉が、ブーメランのように自分に返ってくることが何度もあって。自分のなかでは葛藤を抱えながら、生徒たちと向き合ってきました。正直、至らない点もあったと思います。伴走者として最適なサポートができていなかったかもしれない。

ナナメの関係の存在として、双葉みらいラボにきた生徒たちと語らう様子

探究学習に関しては自らの主体性が問われる場面が多々ありました。良し悪しはわかりませんが、生徒たちのテーマについて、本人たちを飛び越えて、あたかもぼく自身のテーマのように必死に考えていることもありました。気になったことを調べてみたり、ふくらませてみたり、気がついたら自分ごとのように取り組んでいて。そんなぼくの姿をみて、影響を受けて行動に移してくれた生徒たちもたくさんいたんです。立場は変わっても、学びに対して主体的になることの意義を感じることができました。

主体的に学び続ける存在であるために

ー水橋さんが広義での「教育」に関わり続ける意味はなんなんでしょうか?

やっぱり子どもが好きなんですよね。

だから彼ら・彼女らがイキイキと過ごしていけるように、サポートしてあげたい。生徒たちが「こんなことやったんだけど、すごく楽しかった」と楽しく喋ってもらいたいし、それがぼくのサポートによるものなら、これ以上嬉しいことはないんです。

カタリバで長期インターンに参加してよかったのは、その想いを改めて実感でき、いままで自分が言語化したことのなかった教育に対する想いを言語化できたこと。カタリバが大事にしている考え方とぼく自身が教育や子どもたちに対して考えていることの共通点があるから、自信を持って言葉にできる。その経験はすごく大きかったです。

長期インターンの1年間を共に過ごした、カタリバの職員・インターンたち

ー今の活動や、今後どんな道を進もうと思っているのか、教えてください。

大学復学後は、インターンに参加前から支援対象として考えていた貧困家庭の子どもたちへの学習支援に携わっています。具体的には、南三陸の中学校に通う希望者約20名を対象とした高校受験支援キャリア支援などです。

また大学卒業後は、日本大学大学院の教育学科に進み研究を行うことが決まっています。もともとは教育者として、子どもたちを支えたり、サポートしたりする人生を想定していたのですが、カタリバでのインターンを通じて、考えが変わりました。「子ども自身が学びの主体者だとしたら、自分は第2の主体者であるべき。だったら、とことん学びの主体者になろう」と思い、研究という道に進むことを決めました。いじめや不登校を力づくでなくすのではなく、その起きる原因をたどる。絶対的な正義で子どもたちを導く教育者ではなく、思考し続けることでいい方向へ導いていく。そんな教育の関わり方を模索していきたいと思っています。

カタリバでの長期インターンで、改めて「教育」と向き合ってみたら、自分自身が学ぶことも含めて「教育」が好きだということに気がつきました。自分が学ぶ姿勢をゆるめなければ、子どもの課題を解決する方法はいくらでもある。自らの使命感が向く方角に、主体性をもって、取り組んでいきたいと思います。

ーでは最後に、カタリバの長期インターンを検討している学生にひと言お願いします。

今ご自身が考えている教育の課題は、本当に課題なのか。解決方法は、本当に解決につながる方法なのか。教育の世界には、机の上だけではわからないことがたくさんあります。カタリバのインターンは、現場での子どもたちとの関わりを中心とした実践型です。実践を通じて、教育の課題にアプローチしている大人たちから刺激を受けられる環境です。きっと新しい視点が得られるし、自分の成長につながるはず。本気で実践できる環境だからこそできるチャレンジを、カタリバで体験してみてほしいと思います。

ふたば未来学園の生徒たちとの集合写真

水橋が経験したインターンシッププログラムの概要

[活動期間]
2019年4月〜2020年3月

[活動場所]
双葉みらいラボ(福島県立ふたば未来学園中学校・高等学校内)

[担当ミッション]
1/学校内に併設する生徒のための放課後の居場所「双葉みらいラボ」の学習支援担当
(同施設内の学習スペースの運営・生徒の学びへの意欲を高めるためのイベント等の企画・実施)

2/同校の考査学習支援期間中における、大学生ボランティアを招いた学習支援プログラムの企画・実施

3/「未来創造探究」(総合的な探究の時間)においてプロジェクト活動に取り組む生徒への伴走

4/定期的に訪れる大学生ボランティアのマネジメント

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Writer

田中 嘉人 ライター

ライター/作家 1983年生まれ。静岡県出身。静岡文化芸術大学大学院修了後、2008年にエン・ジャパンへ入社。求人広告のコピーライター、Webメディア編集などを経て、2017年5月1日独立。キャリアハック、ジモコロ、SPOT、TVブロス、ケトルなどを担当しながら、ラジオドラマ脚本も執筆。

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