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KATARIBA マガジン

イベントレポート – 後編 – 第7回シゴト場@ONLINE「誰ひとり取り残さずに、まなびにつなぐ仕事」

vol.177Report

カタリバの活動現場の最前線について、実際に働くスタッフからやりがいや具体的なチャレンジについてお伝えするイベント企画「シゴト場」。

第7回は、「誰ひとり取り残さずに、まなびにつなぐ仕事」。このテーマのもとに3つの事業で活躍する、加賀大資(アダチベース ディレクター)、野倉優紀(アダチベース Central 拠点長)、戸田寛明(災害時子ども支援sonaeru)、富永みずき(キッカケプログラム)の4名が登壇しました。

オンライン開催となった今回、約130名の方にご参加いただき、みなさんの関心の高さを感じました。そのイベントの様子をご紹介します。

イベントレポート前編はこちら


 

イベント後半では、採用チームの菊地をファシリテーターとして、パネルトークを行いました。

菊地麻子(写真右下):1983年名古屋市生まれ。南山大学外国語学部卒。新卒で大日本印刷株式会社に入社し、法人営業、事業開発に携わる。社内でキャリア研修などを企画・実施したことをきっかけに若者へのキャリア教育の必要性を実感、2013年カタリバに転職。広報・ファンドレイジング部を経て、採用・キャリア開発を担当。JCDA認定CDA

「ここが面白い!」という魅力、
仕事のやりがいは?

菊地麻子(以下、菊地):自分の仕事で「ここが面白い!」という魅力、やりがいはどんなところですか?

野倉優紀(以下、野倉):自分で考えて提案すれば、それを受け入れてもらえることが多いこと。自分の提案から新しい仕事が生まれていくこともありますね。

菊地:新しい仕事を生み出すことを楽しいと思える方にマッチしそうな環境ですね。実際にのぐ(野倉)が提案して実現したことはありますか?

野倉:例えば、私が活動するアダチベースでは、今年度から「高校生の新たなチャレンジのための奨学金制度」をスタートしました。大学生に対する奨学金は多くありますが、高校生が進路選択に関わる機会を得るための支援がないという課題感から提案した制度です。

菊地:活動のなかで必要だと感じたものを提案してつくっていけるんですね。ひろ(戸田)とみずき(富永)はどうですか?

戸田寛明(以下、戸田):事業を進めるスピードがとにかく速いということは魅力です。一般的な企業では、何か一つ決めるにも合意を得ることが大変なケースも多いかと思いますが、カタリバは「必要とされている時に、必要な支援ができなければ意味がない」という想いで、スピード感を大切にした意思決定をしています。たとえば、今年3月から開始したカタリバオンラインは企画立ち上げから6日でサービスを開始、7月の熊本豪雨では発災から5日後に子どもたちの居場所と遊び場を開設しました。4、5日で事業が立ち上がるような組織は、他になかなかないのではと思います。

富永みずき(以下、富永):キッカケプログラムでは、家庭全体の支援ができるということが魅力。お子さんに勉強を教えていくだけではない、保護者に対するサポートだけでもない、双方と関わり目線を合わせながらサポートしていく仕事というのは、他にあまりない取り組みなのではと思います。また、オンライン事業なので、全国各地、場合によっては海外の方も含めて巻き込んで取り組めることも魅力だと思います。

2月末、全国一斉休校が発表された直後に、カタリバオンラインのローンチ準備を進めるスタッフの様子(左下が戸田)

こんな人と一緒に仕事ができると
心強い

菊地:参加者の方から「活躍できる人物像は?」「求められる素養は?」というご質問を頂いていますが、いかがですか?

野倉:本日、紹介している事業は、ネガティブな状況を改善して乗り越えていくという側面が強いです。だからこそ、ポジティブに物事を転換して捉えて、現状よりも未来は必ず良くなると信じて仕事を進められることが大事だと思います。ネガティブな感情を抱いてしまいそうな瞬間もあるなかで、いかにポジティブに取り組み続けるかという姿勢が求められますね。

戸田:大きく2つあると考えています。1つは、柔軟であることです。日々変わる被災地の状況に合わせて支援の内容を変えていかなければいけないので、臨機応変に対応する力が求められます。もう1つは、相手の感情に引っ張られ過ぎないように、自分を律することができることです。私たちの活動では、被災経験を経て感情が不安定になっているお子さんと接することも多くあります。その際に、不安定になっている感情に引っ張られすぎてしまうと、支援する側が心のバランスを崩し、適切な支援を行うことが困難になってしまうからです。

富永:ひろさん(戸田)の話した点は、キッカケプログラムの活動でも同じだと感じています。特に、1つ目の柔軟さは、明確な答えのないテーマに向き合い続けるカタリバでは、とても大切だと思います。また、そうした環境において自分でゴールを設定して、更にプラスαのところまで取り組んでいく姿勢が求められます。

菊地:みずき(富永)が話してくれた「自分でゴールを設定する」ことや、のぐ(野倉)が話してくれた「新しい仕事を生み出せる」ためには、カタリバに所属するかどうかの前に、自分自身が強い想いを持って取り組めるテーマを持っているかどうかということが大切になりそうですね。そうした想いを持っている方に参画してもらえるといいなと、カタリバの採用担当としても考えています。

ネガティブな状況、明確な答えのないテーマに向き合う仕事だからこそ、スタッフ間での対話の機会と言語化を大切にしている(写真は2019年の全社会議の様子)

事業間での連携はどれくらいある?
どのように行われている?

菊地:今日は「誰ひとり取り残さずに、まなびにつなぐ仕事」というテーマに関わるみさなんに集まってもらいましたが、カタリバという組織の中で、同じテーマで活動している事業間での連携はありますか?

富永:困窮世帯の支援を行っているキッカケプログラムでは、様々な悩みを持たれているご家庭を支援しています。そのために必要な、悩みに対しての対応の仕方、専門的な知見を持っているのがアダチベースです。ですので、アダチベースでの研修会に参加させてもらうことなどを検討して、アダチベースの培ってきたノウハウをキッカケプログラムに活かすための連携を進めています。

野倉:アダチベースではコロナの影響で今年からオンライン支援をスタートしており、今後も継続していく予定です。そうした経緯から、もともとアダチベースで働いていた職員がキッカケプログラムに異動して、部署間の橋渡し役を担っており、オンラインのノウハウをキッカケプログラム側から学んでいます。また、中学時代にアダチベースで支援していたものの、高校入学後は忙しくて来館することが難しくなったという子どもたちが、キッカケプログラムに登録したことで継続的な支援を受けられている、というケースも生まれています。

戸田:7月の熊本豪雨の支援でも、キッカケプログラムとの連携がありました。被害の大きかったエリアでは学校に通えない子どもたちも多くいたので、キッカケプログラムで調達していたPCとWi-Fiを貸与して、学校の授業を遠隔で受けられるよう支援しました。被災直後の避難所にいる子どもたちに対して、学校と連携してこのようなICT支援を行った事例は、おそらくこれまでにはなかったのではと思います。

菊地:カタリバオンラインとキッカケプログラムというオンライン事業をインフラとして、各事業でも活用している状況だということがよくわかりました。カタリバ組織全体としても、今後もそういった横連携は積極的に行っていこうと考えているところです。

オンラインアダチベースに取り組むスタッフ。画面越しに子どもたちとコミュニケーションを重ねた

不安定な状況にある子どもたちと接する際に、
意識していること

菊地:先ほどの「活躍できる人物像」の話を受けて、参加者の方から「不安定な状況にある子どもたちと接するときに意識していることは?」というご質問を頂いていますが、いかがですか?

野倉:どの部署も大切にしていることだとは思いますが、自分一人で子どもたちのすべてを変えられるということはなくて、周りにいる色々な人たちとの輪の中で子どもたちは変わっていくと考えるよう意識がけています。その感覚はみんな共通して持っているはずです。また、アダチベースでは、臨床心理を専門とする大学教授に顧問として関わっていただき、毎月子どもたちとの関わりの事例にアドバイスを頂くなど、専門家の知見もお借りしています。

富永:不安定な状況にある子どもたちと接する際に大切なのは、傾聴・受容・共感の三本柱だと言われています。お子さんのケアはもちろん、キッカケプログラムの取り組みのなかでは、保護者に対するケアがお子さんに対するケアにつながることもあります。保護者への伴走では、保護者のナナメの関係にあたるペアレントメンターが、この三本柱を心がけて取り組んでいます。

保護者への伴走支援を行うペアレントメンターたちのミーティングの様子(上段中央が富永)

カタリバへのエントリーを
検討されている方へ、メッセージ

野倉:カタリバが採用のイベントをオンラインで実施しはじめたのは今年からなのですが、コロナ禍を経て、こうした変化が子どもたちの現場にも現れています。今後、学校教育もオフラインとオンラインのハイブリットで進んでいくなかで、経済的な理由などでそこから取りこぼされてしまう子どもたちも沢山出てしまうだろうと考えています。そうした、網目からこぼれ落ちてしまいそうな子どもたちに対して、私たちのようなNPOが社会の潤滑油のような存在として活動していくことが、日本全体にとってプラスになるのではと考えています。その仲間になってみたいと思ってくださる方に是非ご応募いただきたいです!

戸田:参加されている皆さんの顔が見えづらいため、この場の盛り上がりは大丈夫かな?という不安を終始感じていましたが(笑)、もっとワイワイと皆さまとお話できる機会がまたあれば嬉しいです。コロナ禍や災害といった突然の危機に、もともと厳しい状況にある生活困窮世帯の子どもたちはより追い込まれてしまう傾向があります。そうした子どもたちを支えたいという想いを持った方と出会えるといいなと思っています。また、野倉くんがさきほど話していたように、自分たちだけで子どもたちを取り巻く課題の全てを解決できるわけではありません。ボランティアの方々、行政、他団体など、多くの方と連携しながら「面」で子どもたちを支援していくことが大切だと考えています。カタリバの活動に職員として参加していただくだけでなく、そうした形での輪も広げ、様々な形で協働していければと考えています。

富永:ありがとうございました!キッカケプログラムに関心をお持ちいただいていた方に、ちゃんとお伝えできたかなと反省も残りますが、そのなかでも質問やチャットを通して、皆さんそれぞれが今日の話に何らか感じてくださっている様子を見て、「これからもっと頑張らないと」と背中を押された気持ちです。カタリバに属する私たちは、ただ「いいこと」をしたい、見えている範囲で表面的に何かを解決したい、と考えているわけではありません。支援すべき子どもたちは、見えないところにまだ何万人もいます。そこを常に意識しながら活動しているメンバーが集まっています。同じ志を持っている人であればきっと活躍できる場所だと思うので、カタリバとの関わりを深めていっていただけると嬉しいです。


 

イベントを終えて参加者からは、「ホームページだけではわからない雰囲気を感じられてよかった」「想いに共感したので、ぜひ一緒に働きたい」「他のポジションの説明会にも参加してみたい」といった感想が挙がりました。

まだ支援が届かずに孤立しているすべての子どもたちのために、カタリバでは新規事業の開発や既存事業のアップデートに注力しています。そうした取り組みには、時に困難が伴いますが、今回登壇した職員に共通していたのは、より良い未来を信じて前向きに働いているということ。

「カタリバの活動に職員として参加していただくだけでなく、様々な形で協働していければ」という戸田の言葉にあるように、職員、パートナー、インターン、ボランティアなど、NPOには多様な関わり方があります。想いを同じくする方は、まずは門を叩いてみるのも選択肢の一つなのかもしれません。

 

現在カタリバで募集中の関連ポジション

■アダチベース(正職員)
首都圏の中高生に居場所を届けるユースセンター職員
■アダチベース(パート職員)
困難さを抱える子どものための居場所運営・学習支援スタッフ
■災害時子ども支援「sonaeru」
災害時の子ども支援を最前線でリードする「sonaeru」運営スタッフ

Writer

編集部 編集部

KATARIBAMagazine編集部が担当した記事です。

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