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KATARIBA マガジン

学校の中に「ほっと」くつろぐリビングのような空間を。足立区で挑戦する “空き教室” を活用した居場所づくり

vol.269Report

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category #活動レポート

writer 編集部

昨今、学校現場では定年退職などによる教員の大量離職や、産休・育休取得者が増えたことなどによる「教員不足」が問題となっています。

文部科学省のガイドライン(※1)でも、子どもたちを学校だけで見守るのは難しいこと、社会全体で子どもを取り巻く環境を整備していく必要があることが示されています。

そのような状況下カタリバは、学校と保護者・地域住民みんなで学校づくりに取り組む「コミュニティ・スクール」への転換を図っている、東京都足立区の足立区立花保中学校(以下、花保中学校)と協働し、空き教室を活用した、学校の中に子どもたちのための新たな居場所をつくる取り組み「ASK-After School Katariba」(※2)(以下、ASK)を開始。

ASK-After School Katariba(ASK)の様子

学校内の新たな居場所は学びの場にとどまらず、お家のリビングルームのように、生徒たちが自由に過ごすことができて、さまざまな学びのきっかけにつながることができるような居場所「ochanoma(おちゃのま)」を開設しました。

今回、ochanoma開設に携わったカタリバ職員の前林正洋(以下、前林)に、ochanoma開設までの軌跡やリビングルームのような居場所が生み出す価値、今後の展望について聞きました。

(注釈)
※1 文部科学省『学校現場における業務改善のためのガイドライン』P29

※2 ASK-After School Katariba(ASK)
先生方が職員会議などを行っている時間の裏側で、カタリバのスタッフが学習支援を行っている

前林 正洋/NPOカタリバ アダチベース職員
1991年生まれ、埼玉県川越市出身。大学時代にカタリバでボランティアを行い、社会課題に真摯に楽しくアプローチすることを魅力に思う。大学卒業後は株式会社LITALICOに入社し、発達が気になる子どもと家族の支援に従事。教室長として店舗の管理や人材育成なども行う。結婚して子どもが生まれて一年間育児休暇を取得し、復職のタイミングでカタリバへの転職を決意。現在はアダチベース両拠点の高校生支援を統括している。また足立区立花保中学校との連携プロジェクトを推進中。

教室の中に “ナナメの関係” が。学校へ第三者が入る価値

——ochanomaとは、どのような空間ですか。

子どもたちがASKで勉強して疲れたときにトランプをして遊んだり、私たちのような先輩と話をしたりするなど、リビングのように自由に過ごせるような場所をコンセプトに作りました。

もともとochanomaはコンピュータ準備室だったのですが、昔はあまり使われていませんでした。その活用できていなかった場所を活かそうと、ochanoma開設を企画。花保中の校長先生や副校長先生、先生方が共感・理解してくださったおかげで実現できました。

また、花保中学校は地域の方々に守られていると日々感じます。ochanomaは学校の理解はもとより、在校生と卒業生と地域の方々の協力によって作られた場です。すでにこの場を活用して様々な取り組みが行われています。

部屋のつくりは、学校の先生方や地域の方、子どもたち、そして私たちという4者で、どんな部屋にしたいかアイディアを出しあい作り上げてきました。

ASKに来た子どもに、カタリバのスタッフが学習支援を行っている様子

——カタリバが運営に入ったことでのメリットは何でしょうか。

カタリバが大事にしているナナメの関係を体現できることはひとつのメリットだと思います。例えば、「タテの関係」である保護者や学校の先生に対して、「ヨコの関係」である同級生など、これまでのタテやヨコの関係の人には言いづらいことでも、利害関係がまったくないちょっと年上のお兄さんお姉さんのような「ナナメの関係」である人であれば、フラットな話ができます。

それを花保中で体現できているのは、花保中の方々が、子どもたちにとってナナメの関係がすごく大事という点に共感してくださっているからです。

——学校の中で居場所支援を行う価値はどこにあるのでしょうか?

何か支援が必要な子に対してできるだけ早くサポートに入れることが挙げられます。私たち第三者が入って得た情報を学校の先生方にも共有させていただくことで、より良い教育や支援につながるといいなと考えています。

子どもも大人も自然体でいられる場所

——今後、ochanomaをどのような空間にしていきたいですか。

学校や地域、保護者の方々や、子どもたちの意見を大事にしながら、みんなにとってプラスになる場所の使い方ができるようになることが、一番良いと思っています。

ochanomaはASKの延長線上で作られたという経緯もあり、現状は部屋が空いている時間に、ASKを利用できる人しか訪れることができていません。

ただ、花保中に通っている子どもたち全員にとって、この場所が一つの居場所になり、何かあったときには自由に気軽に使えるようになることが本当の理想。そしてゆくゆくは、地域の方もふらっと立ち寄ってお茶を飲んで帰るというように、だれでも自由にアクセスできる場所になると良いなと思っています。

——ochanomaは一言でいうと、どんな場所でしょうか?

「子どもも大人も自然になれる場所」です。大人にとっては肩書きや固定観念が外せる場所ですし、子どももほっとひと息つける場所になっています。私自身ochanomaを利用していて、大人も自然に問いが生まれて、考えさせられる場所だと感じています。

多様な人・価値観が共存する居場所を全国に

ochanomaで生徒たちと一緒にUNOをする前林

学校というと、生徒にとっては学びの場。今まではくつろぐ場所がそれほど多くありませんでした。しかし、ochanomaを通して、先生も生徒も、羽を伸ばせる居場所があることの大切さを実感しているように思います。

また、居場所があるということだけでなく、学校にこれまであった「タテの関係」や「ヨコの関係」とは異なる「ナナメの関係」が生まれたことで、生徒たちの悩みや問題の発見にもつながります。

先生の負荷が増大する中、今後は学校だけでなく、コミュニティや社会全体で子どもたちを見守ることが必要です。カタリバはochanomaを、多様な人が自由に集まり、多様な価値観が尊重されて混ざり合うような場にしていきたいと考えています。

また花保中だけでなく、このような場所を全国各地に広めることも見据えて、日々の活動を続けていきます。

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編集部 編集部

KATARIBAMagazine編集部が担当した記事です。

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