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ヤングケアラーとその家族への食事支援から見えた効果とは?食事宅配プロジェクト活動報告

vol.271Report

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category #活動レポート

writer 編集部

カタリバでは2020年より、経済的事情を抱える家庭へオンラインでの伴走と学びの機会を届ける「キッカケプログラム」を提供していますが、プログラム参加者への調査から、実はその参加者の約7人に1人が「世話をしている家族がいる」ことがわかりました。そのことからカタリバでは、両親や祖父母・きょうだいの世話や介護、家事全般を担っている中高生とその家族への支援プログラム「キッカケプログラム forヤングケアラー」を2022年4月より本格的にスタートさせました。

そして本年度6月〜8月には、プログラムの一環としてヤングケアラーとその家族が食事準備に費やす時間をサポートするための食事宅配プロジェクトを実施。今回は、終了後参加者に答えてもらったアンケート結果を元に、ヤングケアラーの食事にまつわる現状と食事支援がもたらす効果についてレポートします。

■カタリバの食事宅配プロジェクトについて

<プロジェクト概要>
期間:2022年6月末〜8月末の間で9週間
対象家庭:キッカケプログラム利用者を対象として行ったアンケートで、子どもが家族のケアを担っていると回答があった54家庭
頻度:1週間に1回配達
量:家族人数×3食×8週間(人数は子どもと保護者世帯の人数に限る)
食事内容:冷凍のお弁当(メニューは都度カタリバが指定、民間企業に宅配までを発注)

提供価格:無料 

<アンケート調査概要>
期間:2022年9月1日〜12日
対象家庭:キッカケプログラム利用者を対象として行ったアンケートで、子どもが家族のケアを担っていると回答があった54家庭のうち、食事支援を全期間で受けた52家庭(子ども59名 保護者52名)
・調査方法:インターネット

食事支援で得られるのは、「物理的な時間」だけじゃない
ホッとする心の余裕と家庭円満
やりたいことに没頭する子どもらしい時間

まず、今回食事支援を受けた子どもたちの、食事にまつわる家事の現状について聞いてみました。

■あなた(子ども自身)が、家で食事を作ることはありますか?(単一回答)

小学生・中高生ともに6割以上が子どもが「(自分自身で)家で食事をつくる」と回答。私たちが支援を行うなかで把握している各家庭の状況はさまざまで、体調の悪い保護者に代わって食事を作っている場合もあれば、保護者が祖父母の介護や仕事で忙しいため、家族や幼いきょうだいのために食事を作るという場合も見られます。

■家で(子どもが)食事を作る頻度はどれくらいですか?(単一回答)

小学生は、週1日以上の頻度で食事を作っていると回答した子どもが約2割。中高生になると、週1日以上の頻度で食事を作ると回答した子どもが4割以上に上る結果となりました。

■家での食事の準備や片付けに関して、あなた自身が負担に感じるものについて教えてください。(複数回答)

中高生になると「買い物に行く」「材料を調理する」「洗い物や後片付けをする」といった役割への負担感増加が見られます。この傾向は、年齢が上がるにつれ、保護者からの子どもへの食事準備にまつわる期待値が上がることも要因の一つかもしれません。

■食事支援を受けて、(増えた)自由時間で何かできるようになったことはありますか。(複数回答)

中高生では、食事支援を受け7割近くが休息をとることができたと回答。そして、「親と過ごす時間」「資格取得や勉強時間の確保」「友人知人との時間」と回答が続き、食事支援を通して子どもらしい時間を生み出せたことが伺えます。裏を返せば休息や親子で過ごしたり、趣味や勉強にいそしむ時間も十分にとれないほど日々家事や食事作りに子どもたちが追われていることもわかります。

食事にまつわる家事は、慣れている大人であっても負担に感じるものです。家族の中で子ども以外に役割を担う人がいない場合には、家族の一員としての ”お手伝い” の範疇を越え、子どもの権利や子どもらしく過ごす時間を侵害する可能性があることを、私たちは改めて認識していく必要があります。

食事支援を受けた子どもたちからは、以下のような声が寄せられています。

・お弁当があると、親に余裕が出て、自分と親とが話す時間が増えた気がする。

・ご飯を用意する時間が減り直ぐに食べれるようになり、すごく楽になりました。そのぶん自分の時間も増え、お母さんに心配されることなく安心して食事をとることが出来ました。

・買い物に行く時間が減ったのはすごく有難かった。いつも学校帰りに行っているが、疲れている日は負担が大きかったので、そのぶん親と進路のことを話したりする時間が取れた。

・作る時間が短縮されたので、バタバタせずにゆっくり生活できるようになり、気が楽になりました。また、調理器具や、後片付けが精神的に大変でしたが、それが無くなったので気持ちにも余裕が出てきました。

・今まで自分で料理を作っていた時は、大体2時間〜3時間ほどかかってしまい他の事ができなかったのですが、食事の宅配が来るようになってから時間に余裕ができました。

また保護者からも、

・家族全体で、大変時間に余裕が生まれました。食に対し、積極的になりました。良い変化を与えていただきました。

・子どもとの時間をつくることができたし、私自身の精神的負担もかなり減りました。

・子どもも私も自分の時間がとれ子どもは友達との時間もてるようになって明るくなったと感じます。

・食事の用意を子どもに頼むこともありました。思春期なので面倒な顔をされたりすると、こちらも気分が悪くなりますが、時間に余裕ができたので頼まずにすみ、親子関係も良好でした。

という声が寄せられました。

食事支援はヤングケアラーの負担軽減だけに止まらない
家族全体を好循環させる切り札に

今回の調査を通して、ヤングケアラーやその家族にとって、いかに食事に関わる家事負担が大きいものかがわかると同時に、短期的にでも食事支援がそれらの家事を代替することは、子どもだけでなく家族全体に前向きな効果があらわれることがわかりました。

それは、食事支援によって保護者にも余裕が生まれ、家庭が安心安全な場所になったこと、さらに保護者と子どもとの関係性に良い変化が及ぼされたことが大きく関係しているかもしれません。

このことからもカタリバは、食事支援を持続的に実施することは、ヤングケアラーとその家庭全体の生活を向上させ、ヤングケアラーの課題解決の一助になりうるのではないかと考えます。

一方、私たちが取り組まなければならないヤングケアラーにまつわる課題は、今回のようにケアの負担の大きさの問題だけに止まりません。「子ども自身からはアラートを外に発信しにくい」「周囲の人々がヤングケアラーの存在に気づき、必要なサポートにつなげていくことが難しい」といった、”支援につながる難しさ”も喫緊で取り組んでいくべき課題です。現在進めている茨城県とのヤングケアラー支援連携協定では、この ”支援につながる難しさ” という課題に挑戦しています。

今後もカタリバでは、子どもやご家族の困りごとに寄り添い、さまざまな負担軽減につながる取り組みを模索しながら、ヤングケアラーの子どもたちがより子どもらしい時間を過ごし、未来の選択肢を豊かに広げていけるプログラムを開発していきたいと考えています。

-文:藤井 聖子

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KATARIBAMagazine編集部が担当した記事です。

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