CLOSE

認定NPO法人カタリバ (認定特定非営利活動法人カタリバ)

〒166-0003 東京都杉並区高円寺南3-66-3
高円寺コモンズ2F

お問い合わせ

※「KATARIBA」は 認定NPO法人カタリバの登録商標です(登録5293617)

Copyright © KATARIBA All Rights Reserved.

KATARIBA マガジン

Google社員が高校生と“教育”について本音で議論!カタリバ at Google 2023レポート

vol.300Report

date

category #活動レポート

writer 田中 嘉人

カタリバが運営する、全国の高校生が地域・学校の枠を超えて学び合うオンラインサービス「カタリバオンライン for Teens」。誰もが「やりたいこと」を叶えられるように、さまざまなプログラムを提供しています。
最近、新たな取り組みとしてスタートしたのが、企業とのコラボレーション。

高校生活だけではなかなか生まれない社会で活躍する大人との出会いの場、企業の取り組みに触れることで日常やキャリアの可能性を広げる新たな”学びの場”をつくっていきたいという想いから始まりました。

企業のみなさまからも次世代育成や社会貢献活動の一環として、将来世代との共創や組織づくり・人材育成の新たな取り組みとしてお声がけいただき、続々と展開されています。

そして今回実現したのが、Google合同会社(以下、Google)とのプログラム。2023年7月2日(日)、Google 社員18名と全国の高校生41名が参加し、Google の組織カルチャーや取り組みを起点に“教育”について共に考えていくイベント「カタリバ at Google 2023」が Google オフィスで開催されました。

Google のみなさんとの企画実現に至った背景、高校生と社会人が共に創る学びの場、そこから生まれた気づきなど、当日の様子をレポートします。

高校時代にGoogleと出会った社員の存在

今回のプログラムを発案・企画してくれたのが、Googleの久我穂奈実(くが・ほなみ)さん、野本日彩子(のもと・ひさこ)さん。実は二人とも、Googleとの出会いの1つが、高校時代に参加したGoogleとカタリバのプログラムでした。

左から野本さん、久我さん

入社以来「いつかカタリバにお返ししたい」という気持ちを胸に抱いていた二人。

社員のボランティア活動のひとつとして、「高校生に学びの機会を届けたい」という申し出がカタリバにあり、7年ぶりにGoogleとカタリバのプログラムを再始動することになりました。

オープニングでは、緊張の面持ちの高校生たちを前に、アイスブレイクも兼ねて久我さんと野本さんが自己紹介。Googleへの入社のきっかけがカタリバのプログラムだったこと、二人とも同じプログラムに参加していたことが明かされると、高校生たちは驚きの表情を見せていました。

その後、グループに分かれ、高校生とGoogle社員も自己紹介と今回のイベントへの参加理由について語ります。

高校生からは「教育をテーマに探究活動をしていて、いろんな人と意見交換したかった」「どうしたら今の日本の教育をもっと良くできるのか当事者として考えたい」「大学とか将来を考えるためにGoogleについて知りたかった」など、“教育”への関心や課題感、Googleという会社への興味を感じさせる声が出てきました。

場が温まったところで、いよいよ本題。まずはGoogleの歴史や、大切にしているカルチャー、ユニークな取り組みについて紹介がありました。

ミッションとして「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする」を掲げていること。多様性(Diversity, Equity&Inclusion)を大事にしていて、多様なチームメンバーとの協働が、高いパフォーマンス・収益・イノベーション・新しい価値の創出につながっていることが語られます。

続いて、Googleが発見した「成果の出るチームの共通点」が明かされます。Googleのチームで大切にしているのが2つ。

ひとつが「Psychological safety(心理的安全性)」です。心理的安全性とは、組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対しても安心して発言できる状態のこと。

心理的安全性を担保するための必要な因子として、
● 話しやすさ「何を言っても大丈夫」
● 助け合い「困ったときはお互い様」
● 挑戦「とりあえずやってみよう」
● 新奇歓迎「異能、どんと来い」
の4つが紹介されました。

もうひとつは、「Think 10x / Moonshot thinking(10倍思考)」です。Google社内では“不可能への健全なる挑戦”とも言われており、何かゴールを設定する際に10倍で考えて、型破りかつワクワクする未来を描くことを指します。

その他にGoogleの社内におけるユニークな取り組みや制度などが紹介されました。いずれも教育や学校生活においても応用できそうな考え方に、高校生たちも興味津々でした。

<今回紹介された社内のユニークな取り組みや制度>
・Coffee chat
相手への理解を深めたいときに「Coffee chatをお願いします」と声を掛ける。仕事中に30分ほど時間をもらってお互いの理解を深めていく。

・20%プロジェクト

自分の仕事以外に、自分の20%の時間を好きなことに充てられる制度。ちなみに、久我さんは人に興味があったので、「Talent Engagement」や「GoogleServe」に、野本さんは幼児教育に興味があったので「Google for Education」と「YouTube Kids」のチームにそれぞれ20%ジョインした。

・kudos(クドース)

新入社員に感謝を伝える際、本人はもちろんマネージャーをはじめとする他メンバーにも共有する。

・g2g(Googler to Googler)

Google社員が他のGoogle社員に何かを教える取り組み。ヨガ、トライアスロン、ピアノ、料理、キックボクシングなど、プロ並みの経験・スキルをもつメンバーからレクチャーを受けられる。

・Dog Policy

愛犬と一緒に出社できる制度。繁忙期などは犬の存在がチームを和ませることも。

教育の課題って何だろう? 当事者である高校生たちと考える

Googleについて理解を深めたところで、グループに分かれて、今の「教育」「学校」について「授業・活動」「人間関係・コミュニティ」「雰囲気・ルール」「環境・建物」というテーマごとに好きなところと嫌いなところをディスカッションしていきます。

模造紙と付箋を使って意見を出している様子

オフラインのメンバーは模造紙や付箋を活用しながら、オンラインのメンバーはJamboardを使用して対話を深めていきます。

きれいにまとめなくていいのでまずはたくさん出す、好き/嫌いの「なぜ」も意識しながら共有する、批判するのではなく当事者としての願いを大事にする、などのルールを土台にしながら、高校生とGoogle社員それぞれの視点で様々な声が出てきました。

Jamboardでのディスカッション

ここでは印象的だった意見の一部を紹介します。

・生徒が主体となって学校をつくっていけると楽しい
・ただの集団教育や黒板を写すだけの授業は嫌い
・なんでも話せる先生がいると嬉しい
・学校生活において男女差を感じることがある
・校則がないことはメリットでもあり、デメリットにもなり得る
・座学ではなく実技型のテストが増えると楽しそう
・先生と授業以外でコミュニケーションを取る機会を増やしたい など

高校生たちのまなざしの客観性の高さを感じると同時に、「学校に縛られずに生きていきたい」「(どんな環境でも)自分から行動を起こせば楽しくなる」といった意見も。生徒によって、合う学校は異なるという発見もありました。

続いて、これからの「教育」「学校」についてアイデアを出し合っていきます。“今の「教育」「学校」についての意見”を踏まえ、先ほどと同じチームで理想を語っていきます。

Google社員と高校生がディスカッションする様子

Jamboardでのディスカッション

“今”と比較して“これから”は具体的な意見が多いように感じます。同じく、印象に残った意見を紹介します。

・「g2g(Googler to Googler)」のように、生徒間で教え合える取り組みはどうか
・アクティブラーニングを取り入れた方がいいのではないか
・英語は、社会とのつながりのなかでたとえば海外ホームステイなどを組み込むことで主体的に学べるようにした方が能力が伸びるのではないか
・共通のクラウドベースの教材を活用すれば、先生による授業内容の差が出にくいのではないか
・先生と生徒がリスペクトしあえる学校がいいと思う
・生徒が主体的に学校づくりに関わっていくことが大切
・それぞれの教科が社会に出たときどう活きるのかがわかれば、学ぶ目的がクリアになり、モチベーションアップにつながるのではないか
・Google社員のみなさんが自分のキャリアは自分で選択しているように、私たちも自分のキャリアをふまえて、好きな授業を選べるようになりたい
・ITツールをどんどん活用したい

オープニング時のかたさはすっかり取れ、積極的に意見を発信した高校生たち。前半でのGoogleのカルチャーや取り組みの説明もヒントにしながら新たな発想が取り込まれていきます。特に「学校の授業と社会とのつながり」「先生-生徒や生徒同士の関係性」「学ぶ目的」への問題意識を感じられる結果となりました。

Googleと日本の教育のこれまで。そしてこれからを考える1日に

最後に、Google社員の皆さんと今日1日のグループワークを振り返る高校生たち。これからの学校生活に対する想いを口にしました。

「高校が大学進学のための予備校のような立ち位置になっている。この学校にいてよかったと後悔したくないし、もっと青春していきたい

「意欲的な同級生が少なく、真面目に議論するのが恥ずかしい印象。でも、今日1日『Think 10x / Moonshot thinking(10倍思考)』で考えるとアイデアがたくさん出たので、この体験を学校へ持ち帰りたい」

「社員さんが発した“仕事がなくてもGoogleは行きたくなる”という言葉が印象的だった。学校こそ授業や部活がなくても行きたくなる場所であるべきなので、Googleのような居場所を目指していきたい」

Googleの社員のみなさんたちも高校生のみなさんにエールを贈りつつ、今日1日を振り返りました。

「高校生たちはみんな、自分が考えていること、感じたことをストレートに話しているのが印象的でした。日本の教育環境に不満を抱きつつも、諦めることなく、自分にできることを模索し、主体的に改善に取り組もうとする姿勢に刺激をもらいました」

「Googleのカルチャーや取り組みへの印象も聞けて、自分たちの会社について改めて考えるきっかけになりました。社会に対する課題意識という意味では、高校生のみなさんの想いとGoogleとで共通する部分も多く、自分たちが取り組んでいることを振り返る機会にもなりました

高校生はもちろん、Googleのみなさんにも刺激となる取り組みとなった今回のイベント。まだ何色にも染まっていない高校生たちだからこそ、世の中の事象と忖度せずに向き合える部分は大いにあるように感じます。

今後も「カタリバオンライン for Teens」では、教育と企業の境界を溶かし、高校生と大人が共に学び合い、日本の未来を創っていくキッカケづくりを、さまざまな企業とチャレンジしていきたいと考えています。興味をもっていただけた企業の方は、ぜひお声がけください。


 

本取り組みにご興味がある方は、
以下お問い合わせ/資料請求フォームよりご連絡ください。

お問い合わせ/資料請求フォーム

Writer

田中 嘉人 ライター

ライター/作家 1983年生まれ。静岡県出身。静岡文化芸術大学大学院修了後、2008年にエン・ジャパンへ入社。求人広告のコピーライター、Webメディア編集などを経て、2017年5月1日独立。キャリアハック、ジモコロ、SPOT、TVブロス、ケトルなどを担当しながら、ラジオドラマ脚本も執筆。

このライターが書いた記事をもっと読む