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子どもたちの新しい居場所を全国に!ユースセンターってどんな場所?

vol.266Report

date

category #活動レポート

writer 編集部

内閣府の調査によると、子どもたちの約20人に1人が「どこにも居場所がない」と感じています(※1)。また、「居場所」と思える場所が多くある子どもほど、自己肯定感などの前向きな感情がもてる傾向にあることも同調査では確認されています。これらの結果から、希望をもって成長していくために居場所の存在は重要だと言えるかもしれません。2023年新設予定の「こども家庭庁」の基本方針でも居場所についての言及があるなど、国全体でも子どもたちの居場所の必要性が認識され始めています(※2)。

カタリバは今まで、10代の意欲と創造性を育む居場所「ユースセンター」の運営を全国で行ってきました。

昨年度からは「ユースセンター起業塾」と称して、日本全国で10代の子どもたちの居場所づくりに挑戦する団体を対象に、ユースセンター立ち上げを支援する事業をスタート。現在、1期生として14団体が活動しており、この度、2期生となる団体の募集も開始しました。

今回は1期生である2つの団体へインタビューし、ユースセンターのイメージや活動に取り組む方のユースセンターへの想い・目指している姿をお伝えしていきます。

※1 内閣府「子ども・若者の状況及び子ども・若者育成支援施策の実施状況」(子供・若者白書)
https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/r03gaiyou/pdf/r03gaiyou.pdf

※2 内閣官房 Ι こども政策の新たな推進体制に関する基本方針
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo_seisaku/pdf/kihon_housin_gaiyou.pdf

子どもたちが辛いときこそ「一緒に頑張ろう」と言える存在に

左から伊澤貴大さん、伊澤絵理子さん

まなびや もも(以下、もも)」は、伊澤貴大さん(以下、貴大さん)・伊澤絵理子さん(以下、絵理子さん)ご夫婦が香川県高松市で運営するユースセンターです。

古民家を改修したスペースで、主に学校や家で居づらさを感じている子どもに居場所・学習支援・食事などを提供しています。

――はじめに、 ももを始められたきっかけを教えてください。

絵理子さん:きっかけは私自身の原体験です。幼いときに父親が他界し、ひとり親家庭で育った私は頼れる人が少なく、いつも孤独感を感じていました。そんなある日、保健室の先生が「学校ではお母さんと思ってくれていいよ」と言ってくれて。その言葉にとても救われたんです。

自分も子どもにとって同じような存在になりたいとの思いから、大学卒業後に中学校の先生になりました。教師はとてもやりがいがありましたが、やりたいこと以外にやるべき業務も多くあり、自分が目指す関係性を子どもと築くのはとても難しいことでした。

同じ時期に、歳の離れた弟が不登校になり、当事者としての悩みに触れる機会が増えました。その中で、不登校の子どもたちが新しい環境へ足を踏み入れる際に直面するハードルの高さを知ったんです。

だからこそ、何か動き出したいと思ったときに、気軽に顔を出せるような場所を作りたいと思うようになりました。

――その想いが、もも設立へとつながったのですね。ももにはどんな子どもたちが訪れますか?

貴大さん:日々、さまざまな事情を抱えた子どもたちがやってきます。不登校や不登校傾向にある子どものほか、精神疾患や発達障害の子どもも通っています。加えて、家に居場所がないと感じている子どもにもニーズがあるようです。

絵理子さん:大人はどうしても課題を抱えた子どもたちの行動に制限をかけてしまいがちです。でも私たちは、子どもに「やってみたい」という気持ちがあるなら、「やめたほうがいいんじゃない?」と制限をかけるのではなく、「一緒にやってみよう」と言えるような存在でありたいと思っています。

自分のタイミングでいい。子どもたちには、そう思ってほしい

ももへ訪れる子どもたちへ学習支援している様子

――これまで、活動をしてきて良かったと思えたことはありますか?

絵理子さん:ももに通っていたAさんの話をさせてください。Aさんはもともと高校生ボランティアとして関わってくれていたのですが、ももに通い始めて1年ほど経ったあるとき、自身の発達障害の話を切り出してくれたんです。

中学校までは周りの助けを得られていたものの、高校へ進学してからは頼れる先を失ってしまったようで。

当初は保護者へ相談しようとしたのですが、Aさんは「親に知られるのは嫌だ」と。やっと悩みを打ち明けられたAさんに対して、こちら側が先走ると今まで築き上げた関係性が一気に崩れてしまうと感じ、まずはAさんのペースに合わせることにしました。

専門家の方から見れば少しもどかしいやり方かもしれませんが、ももとしてはこのやり方で良かったと思います。時間をかけて、本人が前に進めるまで待つ。そして一緒に考える。「自分のタイミングでいいんだ」と思えるまで寄り添って支援できるのが、ももらしさなのかもしれません。

――カタリバが運営するユースセンター起業塾に参加してみていかがですか?

絵理子さん:ユースセンター起業塾で一緒に頑張っているみなさんと交流することで、視野が広がり、視座を高めることができています。

貴大さん:定期的に面談をして活動を支援してくれるカタリバやETIC.(エティック)のコーディネーターがいつも親身になって相談や悩みを聞いてくださるので、頑張ってやっていこうという気持ちが湧いてきますね。

自身の原体験から活動をスタートし、さまざまな困難を抱えた子どもたちに居場所を提供している伊澤夫妻。高校を卒業し、大学進学後や就職した後も、ももを頼りにする若者が大勢います。常に子どもたちの考えを大切にし、時間がかかってもそばで寄り添おうとするスタンスがあってこそ、多くの子ども・若者が安らげる居場所として大きな信頼を寄せているのでしょう。

目指すのは、たまり場のような場所

左から黒澤さん、北澤さん、新谷さん

次にご紹介する団体は、能登半島の最北端、石川県珠洲市で活動する「ガクソー」です。メンバーには芸術大学の出身者もおり、アートやデザインを起点に子どもたちに考えること・伝えることの大切さを広める活動を行ってきました。

どんなきっかけでアートやデザインとユースセンターが結びつき、ユースセンターの立ち上げへとつながっていったのでしょうか。

団体メンバーの北澤晋太郎さん(以下、北澤さん)、楓大海さん(以下、楓さん)、木津歩さん(以下、木津さん)、黒澤秀さん(以下、黒澤さん)、新谷健太さん(以下、新谷さん)にお話を伺いました。

――アートやデザインに強みをもつみなさんが、ユースセンターを始めようと思ったきっかけについて教えてください。

木津さん:もともと教育や子どもをテーマとしていたわけではなく、まちの中にたまり場のような場所をつくりたいという考えがあったんです。

新谷さん:居場所を作るというのもそうですが、当初は地域の文化発信・メディア形成を行うことで、珠洲全体の文化形成に影響を与えていこうというコンセプトで活動を始めました。

楓さん:子どもたちに目が向いたきっかけは、受験生に実施したアート・デッサンの試験対策でした。子どもたちと対話する中で、そもそも子どもたちがもっている選択肢が少ないと感じたんです。たとえば「とにかく国公立大学への進学を目指せ」という風潮があって、志望校が限られてしまっている。子どもたちが自分の意志で選び、熱量をもってのめり込めるものがないのではないかという疑問が生まれました。

――アート・デッサンの試験対策を行ったことがきっかけで、「教育・子ども」×「アート・デザイン」をコンセプトにしたユースセンターが生まれたんですね。

北澤さん:とにかく子どもたちが熱中できるものを応援したくて。その気持ちを形にするには、まずは自分たちが子どもたちに背中を見せなくてはいけない。自分たちが熱中できて、ちゃんと自分の言葉で語れるのが、アートとデザインだったんですよね。

黒澤さん:そもそも、珠洲でアートやデザインに触れる機会は限られています。学びたくても機会に恵まれず、可能性の扉を自ら閉ざしてしまう子どもたちも多い。ガクソーがその扉を開くきっかけになればと思います。

楓さん:生きていくうえでは、白か黒かではない「グレーな部分」を知ることが大切だと思っていて。アートやデザインはそれを知るためにはとても良い方法で、自分自身の考えを整理したり、表現したりする際にも役に立つと思います。

どんな人でも自分の「好き」や「愛」を語れるように

ガクソーへ訪れた子どもたちがアートやデザインに触れている様子

――ユースセンターの取り組みのなかで何を目指していきたいですか?

北澤さん:今の子どもたちは、自分のやりたいことを言いづらい環境にあると思います。普段やりたいと言えないようなマニアックなことや、人目が気になるようなことも、ガクソーに来れば包み隠さず言えるような環境をつくっていきたいです。

イメージは、「ドラえもん」に出てくるような土管だけがある空き地ですかね。余白があって、遊び場であり、たまり場でもある感じ。自分たちで自己決定をしながら、今あるものでやりたいことを実現できる、そんな場所です。

木津さん:世間とは隔離された「小さな環境」といえるような場所ですね。世間の常識とは違う常識が、ここでは当たり前にまかり通るといったイメージを目指しています。

楓さん:最終的には、子どもか大人かみたいな枠組みにしばられることなく、地域の人が自由に集まって、それぞれの好きなもの、愛してやまないものを語れる場所になってほしいと願っています。

子どもたちに限らず、ガクソーが多くの人の「愛を語れる」場所になってほしいというみなさん。その言葉にあるように、インタビュー中も地域の方々が自由に立ち寄り、本を借りていったり、立ち話をしたりする様子も目に入りました。拡張版ユースセンターと言えるような居場所の実現も、そう遠くはない目標なのかもしれません。

ユースセンターづくりに取り組みたい方を募集!

今回は、ユースセンター起業塾で活躍する2団体のインタビューをお届けしました。ユースセンターと一言でいっても、取り組む背景にある想いや目指す未来はさまざまであることがおわかりいただけたのではないでしょうか。

自分のまちでもユースセンターを立ち上げたいと思われた方は、10代の子どもたちの居場所づくりを行う団体を支援するユースセンター起業塾の「事業創造コース」説明会へぜひご参加ください!

▼ユースセンター起業塾「事業創造コース」について
https://www.katariba-kigyojuku.com/course-1

▼「事業創造コース」公募説明会の申し込みフォーム
https://forms.gle/me1mN7vnKzEBoHYM6

▼説明会の日程
12月3日 (土)10:00-11:00@オンライン(zoomウェビナー)

▼公募期間
2022年11月21日(月)〜2023年1月16日(月)15:00


 

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KATARIBAMagazine編集部が担当した記事です。

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